国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会(第2回)議事録

2024/12/09  文部科学省 

国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会(第2回)議事録

1.日時

令和6年10月30日(水)15時00分~17時00分

2.議題

  1. 地方教育施設の視察報告
  2. 国立青少年教育振興機構が主催する教育事業について
  3. 有識者からのヒアリング
  4. 意見交換等
  5. その他

3.出席者

委員

青木委員、秋田委員、糸川委員、植田委員、岡田委員、笹本委員、佐藤委員、長野委員、難波委員、野口委員(副座長)、萩原委員、原田委員、平野委員(座長)、帆足委員、増田委員

文部科学省

平野社会教育振興総括官、高木地域学習推進課長、小沢青少年教育室長、葛城青少年教育室長補佐

オブザーバー

独立行政法人国立青少年教育振興機構:古川理事長、長谷川理事、伊藤理事、松田理事、牛田所長、水澤所長

発表者:株式会社ATARAYO取締役会長 関口陽介

4.議事録

【葛城青少年教育室長補佐】 定刻になりましたので、ただいまより第2回国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会を開会いたします。
本日は、委員の皆様におかれましては、御多用の中御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本日は、会場とウェブ会議システムのハイブリッド形式での開催となっております。通信環境の状況などにより音声が聞き取りづらいなどの不具合がございましたら、ウェブ会議システムのチャット機能にてお知らせいただければと思います。また、本日の会議については、「国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会の公開について」に基づき、文部科学省のYouTubeチャンネルにてライブ配信を行い、報道関係者や一般の方々の傍聴を受け入れておりますので、御承知おきください。
ウェブ会議システムから御出席いただいている委員の皆様に御案内いたします。会議中、御発言をいただく機会以外には、マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。また、御発言の際には、画面下部にあるリアクションの項目から挙手のアイコンをクリックしてお知らせください。座長より順次指名があります。指名された後、マイクのミュートを解除して御発言いただきますようお願いいたします。なお、御発言後は手を下ろすのアイコンをクリックし、挙手アイコンが表示されていない状態にしていただくよう御協力をいただければと思います。
会場で御参加の委員の皆様におかれましては、御発言の際には席札を縦にしてお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。資料は、資料1から資料6までの7点になります。不足などがございましたら、お申しつけいただければと思います。
それでは、以降の進行は、平野座長にお願いしたいと思います。


【平野座長】 皆様、こんにちは。座長に御指名いただいております平野でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、まず初めに議題(1)として、10月3日に実施した国立夜須高原青少年自然の家の視察について簡単に御報告をした後、議題(2)として、国立青少年教育振興機構から、地方施設における青少年に対する教育事業についての御説明を、そして、議題(3)として、2名の有識者の方から御発表をお願いしている次第でございます。株式会社ATARAYOの関口さんは、前の用務の先からこちらに向かっておりますので、遅れて参加するということをお聞きしております。御発表それぞれありますが、それに関する質疑や意見交換は後ほどまとめてお時間を取っておりますので、その際にどうぞよろしくお願いいたします。
それでは初めに、10月3日に実施いたしました夜須高原青少年自然の家の委員視察について御報告をいたします。
資料1を御覧ください。資料1にありますとおり、私を含めて6名の委員の皆様方と、実際の現場を視察してまいりました。25番目の国立青少年教育施設、すなわち4番目に新しい施設として福岡県に設置された夜須高原ですけれども、昭和63年、1988年の開所から37年目に入っておりまして、老朽化などの施設の課題を見させていただきました。その際、施設職員の皆さんにおかれましては、施設が満室の状況にもかかわらず、また、雨の中、御対応いただきまして、本当にありがとうございました。感謝申し上げます。
施設の概要につきましては、資料1に簡単にまとめておりますので、お時間のあるときに御覧をいただければと存じます。
視察に参加された委員のうち、植田委員より説明に補足をいただけるということでございますので、よろしくお願いいたします。お手元には机上配付資料があるかと思いますので、それを御覧いただきながら、本日は他の議事もございますので、3分程度でお願いできればと存じます。よろしくお願いいたします。


【植田委員】 今、座長からお話がございましたように、私も同行させていただきました。28施設のうち60年以上経過しているものが3施設、50年以上が10施設、40年以上が10施設、そして30年以上は5施設ございまして、30年を経過したまだ比較的若い施設を訪問させていただきました。
私の視点は、この施設を民間の事業者が投資対象として、今後、商業的に一部使うことができないかということで、いわゆる収入を増やす目的としてこの施設がどうであるかという点が1点と、もう一つは、現在のこの施設の、いわゆる維持管理がどのように行われているかという、この2点を見るということで行ってまいりました。
ここで全て詳しくお話しすることができないのですが、写真を見ていただきますと、まず食堂に通されたのですが、食堂に入った瞬間、写真にありますように、使用禁止という状態でした。ですから、使える水道の蛇口が非常に限定的になっているということです。
これは天井に水漏れができていて、それを貼っているわけですけど、その貼った上にまた水漏れが重なっているという形になります。
これは厨房の上でございます。厨房の上の水漏れというのが、修繕としては十分適切に行われていないために、新たなものが発生しているというふうに思われますが、ここで御注目いただきたいことは、学生さんのためのお食事は1食で提供されているわけですけれども、若干何品か選ぶのですが、これを商業的に、いわゆる一般の方々に来てもらってこの施設を使う、楽しんでもらうとなりますと、厨房機器が、恐らく相当投資をしないと、いわゆる一般の食堂とかレストランで出せるものというのはかなり難しいのではないかということで、厨房機器に対する投資金額がかなり大きくなるというふうに見て間違いないと思います。
これは見ていただくように大変楽しい光景ですが、実はこの体育館の天井も雨漏りがしておりまして、網が張ってありまして、何らかのものが落ちてこないかということを懸念しているところであります。
これは何ともない写真に思えると思いますが、雨が降ると、床の下から水がずっとあふれてきまして冠水をする。そうすると職員の方々は冠水したものを布で拭き取るという作業が毎回起きてくるということだそうです。
これもそうですね。これもここが水浸しになる。なぜ水浸しになるかというと、壁の向こう側で雨漏りが起きている。ですから、外から見ると何も見えないですが、建物全体の中で雨漏りがいろいろ伝わって、ここで冠水をするということになっております。
これは報告書にありますけど、ボイラー室の劣化で、三十数年経っているわけですけど、結果としてこういう形でなっております。
これは私どもが見ているときに、ぽたぽたぽたぽたどこからともなく雨漏りがしているので、こういう缶を置いてあるということです。
これは地下に雨漏りというか、このボイラー室の様々な部分から水がたまって、それをポンプで常時汲み上げないと、ボイラー室が使えないという状態です。
これは当初設立時のコントロールセンターですから、三十数年前のコントロールセンターがここにあって、実際これはもう使えなくなっているので、この更新費用には、やはり1,600万とか2,000万とかというお金かかるという話を聞いております。
これは宿舎のいわゆる寝泊まりするところへの入り口ですが、見ていただけますように、ドアのところが剥げているわけですけど、これは職員の方が順番に剥げたところをペンキで塗っていく作業をされているんですが、まだこれは順番が来てないのでこういう状態で、放置されているという形です。
これは講堂です。セミナーとかを行うところですけれども、外壁が壁面劣化というか、一般的に商業的に使うということにおいては非常に課題かなというふうに思っております。
これはエレベーターなんですけれども、これは今、使用不可になっております。階段を上がらなきゃいけない。なぜこんなことが起きているかというと、いわゆるエレベーターで不調があったときに、そういう兆しがあるわけですけど、音がするとか、ドアが開けにくいとか、そういう段階で工事が入っていれば、当然これはまたすぐ再開できるわけですけど、それが結果的には予算もなく放置もされた結果として使用不可になっているということです。まだ建って三十数年です。
これはトイレで、ここもやはり使えないものは取りあえず使わないようにという形で対応されています。
もう3分間になりますので総論として、いわゆる適切な維持管理が現状、予算の関係で行われていない状況であって、これを商業的に活用するためには相当な、いわゆる改修工事であるとか、先ほど申し上げた厨房の機器の購入であるとか、様々な投資がここでないと、なかなかこれを商業的に使うということができないということもさることながら、今の目的のためにも、早くこれに対する管理方法として、収入の面では今申し上げたわけですけど、管理方法としては、やはり、いわゆる事後保全ではなくて、予防保全のほうに切り替えていきませんと予算がないということで、ひたすら建物が劣化していくということでございます。今申し上げたように、60年以上、50年以上というのがほとんどでございますので、30年以上でこういう状況であるとすることは、ほかの施設は、推して知るべしということなのかなと感じた次第です。
以上です。


【平野座長】 植田委員、詳細な御報告ありがとうございました。
このほか視察に参加された委員を中心に、御発言がありましたら挙手にてお知らせいただければと思います。なお本日は、青少年教育振興機構や有識者からのプレゼンも控えておりますので、各委員短めの御発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。原田委員、お願いいたします。


【原田委員】 短めの質問です。
昔アメリカにいた頃、あちらの社会教育施設、特に公園レクリエーションの施設は、年間予算の1割が必ずメンテナンスのために費用を置いておくと。短期の修理と長期、長期の場合はそれを積み立ててやるということで、施設がかなり劣化せずに維持されていたというのを覚えているのですが、国立青少年教育施設青年はそういう仕組みにはなってないのでしょうか。


【平野座長】 ただ今の御質問は。


【長谷川理事】 なっておりません。機構の予算全体の中で人件費、管理費と事業費を賄う構造になっております。


【原田委員】 それと、壊れたら直すみたいな、そういうイメージですよね。だから、「これは大丈夫だからしばらく置いておこう」みたいな感じで定期的なメンテナンスができなかったというのがこの現状を呼び起こしていると、そういう理解でよろしいでしょうか。


【平野座長】 いかがでしょうか。


【長谷川理事】 基本的にはおっしゃるとおりでありまして、財政事情が厳しい中でございますので、日頃の点検とか整備できる範囲では各施設でやっていただいており、実際に機構の予算を使って本格的な修理などをするのは、安全管理上真に必要なもの、これをやらないと本当に利用者にとって危険だというものに限定せざるを得ないというのが正直なところでございます。


【原田委員】 ありがとうございました。


【平野座長】 ありがとうございました。
ほかよろしいでしょうか。よろしいですかね。ありがとうございました。
それでは、続いて議題(2)に入りたいと思います。まず、初めに、今回の論点と前回の振り返りについて、事務局より御説明をお願いいたします。


【小沢青少年教育室長】 事務局から資料2-1、2-2について御説明申し上げます。
まず、資料2-1は前回の会議でもお示ししている資料でございますけれども、2ページ目を御覧いただきますと、今回は教育プログラムといいますか教育事業の話ということで、ここで論点の1-1という形で3つ掲げさせていただいております。こちらにつきましては、この3の論点の案について議論を深めていただくために、別途資料を用意しております。まず、前回の会議の振り返りとして、資料2-2を御覧いただければと思います。
こちらは、第1回の会議で、委員の方々から様々な視点で御意見を頂戴いたしまして、それを概要としてまとめております。紙面の関係で若干複数の委員の方々の意見をまとめさせていただいておりますが、大体このような御意見を頂戴したと思っております。
この中で本日御議論をいただく教育事業のところに関して言いますと、左のほうの教育事業・研修支援事業といった論点1のところですが、この中で言いますと、例えば、1番目の、人々の価値観が変わっている中で、青少年機構がどういった取組をしているのかについて、改めて普及啓発と宣伝・広報に力を入れていくことが必要ではないかといったところであるとか、あるいは働き方改革、学校現場の変化に応じた工夫が必要であるとか、あるいはその下の下で言いますと、方向性を定め、誰に何の提供を必要としているのか、機構が行うべきことを明確にすべきではないかであるとか、あるいは下のほうの2つで言いますと、社会的に意義のある施設であることを、様々な教育プログラムなどを通して打ち出していくことも必要ではないかといったような御意見がありました。
そういった中で、本日の議論ということで、資料2-1に戻っていただきまして、こちらの5ページを御覧いただければと思います。3つの点について詳しめに更にブレークダウンをして、検討の視点という形で御用意をさせていただいております。
本日発表者としてお越しいただきました株式会社ATARAYOの関口会長におかれましては、後ほど民間の集客施設でどのようなことを行っているのかということで御発表いただきます。もちろん、民間事業者の方が行っていることを、単純に独法で同じ手法でやればいいのかというと、そのような単純な話でもないと思いまして、例えば民間事業者の方で言えば、やはり対象者に対して納得感のある、価値あるものが提供できなければ、当然ながら収益を得て事業を続けていくことが直ちにできなくなるという厳しい現実があろうかと思います。そのような環境の下で事業を続けていらっしゃるという点が大事かと思っております。
機構には国からの運営費交付金が支出されているわけですが、法人として価値をつくり出し提供するという意味では同じでありまして、機構がその役割に求められている価値を、いかに効果的に全国の青少年に対して届けて、持続可能なサイクルを回していくかということが大事かと思っております。
そのような中で、こちらの先ほどの3点を見ますと、例えば1点目の、国立青少年教育施設として実施するべき教育プログラムとは何なのかといったところでございますけれども、まず、丸のところで言いますと、青少年教育のナショナルセンターとして、先導的な役割を果たす「質」と「量」という話があろうかと思います。「質」というのは、先ほど申し上げました価値そのものでもありますし、「量」といったものも、価値を高めるために必要な場合もあろうかと思います。その中で、例えば次で言いますと、各施設で実施するべき取組というのは何なのかといったところでございますと、例えば調査研究の成果であるとか、あるいは国際的な視点、あるいはアウトプット、その他も、公立の施設等に与えるインパクトなど、いずれも事業の価値を高めていかなければいけないものになろうかと思います。
次の、教育事業の実施に当たって、社会課題や利用者のニーズを把握するための工夫は十分になされているかというような点でございます。ニーズの把握の体制はどうあるべきかということですけれども、現在あるニーズの把握といったものをどのような形で適切に行うかというのも重要ですし、あるいはまだ顕在化していない潜在的なニーズを掘り起こして新たな価値をつくり出すということも重要であります。それ自体は、当然ながらは、まだ競合するものもない状態ものですので、価値に直結すると考えられます。例えば、調査研究などの力というものが発揮されるところだと思っております。
続いて、持続可能な事業であるためには成果を検証し、次につなげていくようなPDCAのサイクル、目標を立てて、それを検証していくといったところが重要であるわけですけれども、そういった点について十分機能しているのかどうかというったところの部分というものも重要かと思っております。
続いて3つ目ですけども、多様な体験活動の機会と場を提供する上で、これまでにない形態の取組が考えられないかというところですけれども、例えばハードありきの発想にとらわれず、価値ある教育提供というところを考えると、様々な取組の形態が考えられるのではないかといういった点も重要と思い、具体的に記載しております。
以上、教育事業は、機構として、全国の施設を通じて価値ある教育プランというものを提供していくものでございまして、そういった持続性ある事業モデルを考える際に、今と比較して何が必要になるのかといったところが話になるかと思いますので、この後、青少年機構からの御説明、あと青木委員と関口様からの発表も踏まえつつ、御議論いただけますとありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
説明は以上でございます。


【平野座長】 御説明ありがとうございました。
本日は、今、事務局から説明のありました、特に資料2-1の5ページの検討会第2回の論点と検討の視点、これらの論点につきまして御議論をいただければと思います。
それでは、今お話ありましたように、国立青少年教育振興機構より、青少年機構が主催する教育事業についての御説明をどうぞよろしくお願いいたします。


【松田理事】 それでは、青少年機構の理事の松田でございます。私から、地方施設における青少年に対する教育事業について御説明させていただきます。よろしくお願いします。
資料2枚目を御覧ください。本日は、地方施設で実施する教育事業の概況から課題までを御説明させていただきまして、資料として添付しているものもございますので、随時御参照いただいたり、後ほど御覧いただければと思います。
3枚目の資料を御覧ください。機構では、青少年教育の振興及び健全な青少年の育成を使命といたしまして、教育事業や研修支援を通して「体験の風をおこそう」運動、「早寝早起き朝ごはん」国民運動に取り組んでおります。また、全国で体験活動の機会や場を充実させるとともに、青少年の基本的な生活習慣の確立を目指すように、まずは大きな全国的な事業を展開しております。本日はこの中でも、特に地方施設における国立青少年交流の家、自然の家で行われている、教育事業とその運営について御報告させていただければと思います。
次のスライドを御覧ください。資料4枚目でございます。教育事業の区分は、青少年に関するモデル的事業、社会の要請に応える体験活動事業、課題を抱える青少年を支援する体験活動事業、国際交流事業、青少年教育指導者の養成事業の5つの区分で行っております。1つずつ事業を御説明させていただきますと、モデル的事業では、モデル的プログラムを通した効果測定等を大学の研究者等と共同で実施する実践研究事業や、施設の特色を生かしたプログラム開発を行う特色あるプログラム事業、高校生の探究活動等を支援する、地域探究プログラムを実施しております。
次に、社会の要請に応える体験活動事業では、各地域で求められる課題に応じまして、青少年の自己成長を図る事業や、防災学習、環境学習など、政策課題に対応した事業を実施しております。
次に、課題を抱える青少年を支援する事業では、児童養護施設、ひとり親家庭、不登校、ひきこもり等課題を抱える青少年を支援するため、専門機関と連携した事業を実施しております。
次に、指導者養成事業では、青少年教育に関わる指導者等を対象にした安全管理研修やボランティアの育成事業、絵本専門士養成、自然体験活動指導者の育成等を行っています。
また、こちらに事例として記載してございませんが、5つ目の国際交流事業では、機構本部が主体となり、地方施設等も会場としながら、ミクロネシア諸島自然体験交流事業、日中韓子ども童話交流事業、日独青少年交流事業等を実施するとともに、施設が主体となっている事業としても、地域の団体と連携したイングリッシュキャンプ等を実施しております。
資料5枚目を御覧ください。ここからは、教育事業の現状について、数値等で御説明させていただきます。いずれも令和5年度の状況となっております。まずは施設利用者に占める教育事業参加者の対比です。上段は日帰り総利用者数に占める教育事業参加者数です。全利用者の14%、5万4,333人となっており、下段には宿泊総利用者数の割合を示してございますが、こちらでは全体利用者の2.3%、2万9,062人となっております。
6枚目を御覧ください。5つの大区分ごとの全施設での事業実施数の状況です。一番多いのは黄色の部分、社会の要請事業で、総事業数337事業で全体の52%となってございます。また、一番少ないのは、国際交流事業で9事業、1.4%となっております。
7枚目の資料を御覧ください。全施設の事業実施数と参加者数の平均を表でまとめてございます。また、最大事業実施施設、最小事業実施施設の状況も比較しているところでございます。全施設平均では年間24事業、2,002人を対象に実施となってございます。いずれも社会の要請事業の数が大きく占めております。また、最大実施施設と最小実施施設の差が大きいということも、特色になってございます。
8枚目の資料を御覧ください。次に、教育事業に係るコストとしては、まず、収入構造の資料でございます。教育事業収入は、運営費交付金、寄附金、委託事業費等の外部資金、参加費で担われておりますが、全体のうち58%が運営費交付金からの収入で、28%が参加費収入となっています。こちらでも社会の要請事業の占める割合が多くなっており、一方、国際交流及び指導者育成事業は低くなっております。
資料9枚目を御覧ください。支出の状況です。事業費の支出は、大きくは旅費、謝金、物件費となっており、前のスライドの収入総額と等しくなりますが、これ以外に事業の企画・運営等に係る職員の人件費コストがかかっているという状況でございます。
資料10枚目を御覧ください。収入・支出について、27施設平均と最大事業実施施設、最小事業実施施設における事業の収入・支出の数値を比較しております。全施設平均では、人件費以外では641万円となっております。最大事業実施施設では、参加費の割合が多くなっているというところです。
続きまして、11枚目の資料を御覧ください。次に、地方施設における教育事業実施上の取組について御説明させていただきます。
12枚目の資料を御覧ください。教育事業における年度の事業企画から実施、終了後の評価のプロセスを示しているのが、こちらの資料の図になってございます。前年度11月に本部から教育事業等方針の方向性を示し、これを受けて施設において、施設全体の運営方針と併せて教育事業の方針、年間計画概要を決めていくという流れになってございます。また、個別事業ごとの企画実施、評価までの流れは施設により多少異なりますが、基本的には破線枠内にあるような流れで進められております。
資料13枚目を御覧ください。これは教育事業の広報の方法を示しております。従来型としてまとめておりますのは、対象学校等へチラシを配布する、公的な機関にチラシを置いていただく、ホームページへの記載などが中心ですが、加えて現在、SNSでの広報、GIGAスクール構想で学校で1人1台子供たちに端末が配布されているということを活用してメール等で案内するなど、より効果的、効率的な広報に努めております。また、今年から機構における広報活動の強化を目的に、広報キーパーソンを本部各部署と全施設に配置しまして、本部と施設の連携を取った広報活動の一元化を進めているというところでございます。
資料14枚目を御覧ください。続きまして、事業の収入構造に関連して、参加費の微収に関する考え方でございます。令和4年度までは参加者に関わる食事代、保険代等の実費のみを徴収しておりましたが、運営費交付金等の削減等の要因で、事業実施に係る経費に影響が及んでいることから、活動実施に係る経費も含めて受益者負担という形で取扱いを変更しており、施設では事業ごとに参加費を設定しております。
資料15枚目を御覧ください。次に、教育事業における関係機関との連携の事例です。事業の目的をより効果的に達成するために、地域の企業、あるいは自治体、民間団体と連携しながら事業を展開しています。資料にございますような2事例のように、環境科学教育、防災・減災教育など専門性の高い内容について、講義形式ではない、より体験的なアクティブ・ラーニングというようなスタイルでの学びを提供できるように留意しているところでございます。
続きまして、16枚目を御覧ください。ここからは、教育事業における青少年教育研究センターの関わりについて御説明いたします。とりわけ青少年教育施設において、研究センターを持っているのは本機構の非常に大きな特色でございますが、このセンターでは青少年の現状と課題を明らかにする調査研究の実施と、その成果の普及啓発とともに、施設の教育事業の実践効果の分析等へ参画し、その成果、課題を分析し施設へフィードバックする役割を担っております。概してセンターの研究は学術性の高い、例えば、体験等の経年比較を行っておりますような、政策立案にもよく基礎データとして利用されるようなものの一群と、青少年教育に関わる様々な知恵や処方をプログラム等で生み出す開発的な研究と、それと実践と一緒になりまして、実践の評価を行い、新たな改善の方向を探るというような、大きく3つのスタイルの研究をともに関連づけながら進めているというところがございます。これにより、教育事業における調査研究の企画がエビデンスを基にした取組として展開され、その実践の結果を更に分析し、政策に生かすという、機構の中でのプラットフォームといたしました政策、実践、調査研究の三位一体化ということが具現化するように努めております。
続きまして、資料17枚目を御覧ください。その事例として、ここでは第1節の青少年交流の家の事業を紹介いたします。センターの関わりとして、施設の事業企画に参画し、センターの研究成果を融合した事業とし、アンケート調査項目設定、評価分析手法等に助言し、成果として小学校の教育課程と関連づけた登山の探究力を測定する評価指標を作成できたこと、さらにそのことによって教育課程との往還の可能性を示したことは、この取組の成果として挙げられるところでございます。
続きまして、資料18枚目を御覧ください。こちらは淡路青少年交流の家での事例です。施設周辺の地域資源の探索と言語化の提案、事業目的を踏まえ、事業の各活動と大目的・目標の関係性を構造的に整理する事業の仮説構造の設定を支援し、その妥当性の検証を行い、事業の成果と課題点として施設にフィードバックしております。これによる成果として、施設の特色の具体性が増し、当事業のESDとしての価値づけが明確となり、また、事業の仮設構造を作成、実装できたこと、その活動と目標・目的の関係性を評価できたことは成果となっております。SDGs達成の鍵となるESDを中心にした教育活動をしっかりと行い、検証することで、他施設や自治体へのモデルケースとして普及を図っているというところでございます。
続きまして、資料19枚目を御覧ください。ここまでは教育事業の概況と取組について御説明させていただきましたが、この後、教育事業の事例を、さらに地方施設の具体という形で2施設から御発表いただきます。
それでは、まず、阿蘇青少年交流の家からお話しいただきたいと思います。お願いいたします。



【牛田所長】 阿蘇青少年交流の家所長の牛田と申します。本日は、当施設で実施しておりますジュニアジオガイド講座について説明いたします。
本事業は、小中学生の参加者がユネスコ世界ジオパーク認定の阿蘇カルデラをフィールドに、火山、草原、湧水などについて学び、その成果を左上の写真にありますように、阿蘇が見渡せる観光地、大観峰にてガイドを行うものです。
2の実施期間ですが、参加者は9月から10月にかけて、1泊2日の講座を全3回受講します。対象者は小学校5年生から中学校2年生で、今年度は募集枠24名に対し21名の参加、申込みは23名でございました。フィールドについては、次のスライドで説明します。
講師としまして、環境省やジオパーク推進協議会など、官民多くの関係者に関わっていただいており、専門性を有する部分を担当していただいております。事業目的としましては、視点1に記載の、子供たちが主体的に学ぶ楽しさを体得するという学びとしての視点に加え、視点2に記載の、地域にある国立施設として、地域が抱える課題等への教育の視点からのアプローチを行うことも目指しているところです。
フィールドについては、広大な阿蘇カルデラ全域を使っておりまして、最終日に北外輪山にあります大観峰という場所で子供たちがガイドをするプログラムでございます。
特に工夫したことを3点記載いたしました。1点目は、子供たちの自主性、主体性を伸ばすため、体験活動をメインに学習すること。2点目は、子供たちの自主性、主体性を引き出すため、スタッフは支援に徹すること。3点目は、ICTを良い意味で積極的に活用することです。
このスライドは、事業の成果を測るために実施している各回のアンケート結果です。回を重ねるごとに、子供たちの中で不安がわくわくに変化している様子がうかがえます。
このことは、ここに記載のアンケートの自由記述からも伺うことができ、子供たちの変容や達成感が垣間見えます。
3に記載したのは、子供たちの姿やガイドを聞いた方々の様子です。子供たちが主体的に楽しく学んだことがガイドに表れ、それは聞いてくださった観光客の方々にも十分伝わっていました。また、様々な方々との関わりが良いキャリア教育になっています。さらに閉会式での参加者のコメントからは、学んだことを自分事として考えていることが確認できました。
10のアウトカムについてですが、この事業を通して、記載のようなアウトカムにつながると考えており、他の教育事業にも同じようなことが期待できるというふうに考えております。今後、それをどう把握するかを検討しながら取り組んでまいりたいと思います。
広報については、他事業を含め、関係教育委員会にも相談しつつ行っておりますが、本事業に関しては、ジオパークの事務局にも担っていただきました。ただ、12に記載のとおり、定員に達していないことから、更に広報の工夫が必要だと感じています。なお、本事業については、学校行事が多い時期に3週間連続参加ということも影響しているようです。13の外部との連携については、多くの関係機関から、様々な形で支援をいただいています。特に環境省からは、子供レンジャー活動業務委託費として45万円の措置をいただいており、事業費の一部として活用しております。
課題としましては、継続的に質の高いボランティアを確保すること、参加者の確保に関すること、募集だけでなく成果の広報を効果的に行うことなどが考えられます。なお先日、地元紙には、本事業の様子を大変大きく記事にしていただきました。
最後にまとめとして4点記載しておりますが、特に国立施設として、3点目の地域貢献ということ、4点目の人材育成というこの2つについては、常に意識をしながら取り組んでいるところでございます。今後とも、充実を図っていきたいと考えております。
以上で、阿蘇の説明を終わります。


【松田理事】 ありがとうございました。
続きまして、妙高青少年自然の家から御報告いただきます。よろしくお願いします。


【水澤所長】 妙高青少年自然の家所長の水澤です。妙高からは、チャレンジキャンプ2024について説明いたします。次をお願いします。
小学校5年生から中学校3年生までを対象とした14名で実施しました。新潟県の日本海から長野県の野尻湖までを徒歩で移動し、最後に妙高山と火打山を縦走登山してゴールする、高低差2,462メートル、総移動距離100キロメートルのビッグチャレンジです。
本事業は、ビッグチャレンジを通じて自己肯定感を育むことを狙いとしています。また、心理的な課題や発達障害などを含む様々な個性や特性を持つ子供たちを参加者の一部とする統合型キャンプに位置づけています。今年度はADHDと診断されたり、その傾向を認められたりしている4名を含んで実施いたしました。また、本キャンプ最終年度の今年は、統合型キャンプマニュアルの作成も考えています。
妙高青少年自然の家では、御覧の3つをキャンプキーワードとして掲げ、狙い達成と参加者の成長につなげるように工夫しています。
特に統合型キャンプに位置づけている本事業では、参加者の実態や保護者の願いなどをつかみ、安全安心でかつキャンプの狙いに迫るため、面談を重視しました。中でも課題を抱えている子供の面談は、臨床心理士でもある筑波大学の坂本教授から担当していただき、実態把握に努めました。
キャンプ終了1か月後のアンケートから一部を紹介します。1人目の中学3年女子は、キャンプを振り返り、自己肯定感の向上を……(音声途絶)


【松田理事】 ネットが途切れたようですので、私のほうで代わりまして、簡単に御説明を継続させていただきたいと思います。
資料の34枚目をもう一度御覧ください。1人目の中3女子は、キャンプを振り返り、自己肯定感の向上というのも強く感じているというようなところの事例でございます。また、2人目の中1男子は、通級指導教室に通っておりましたが、学年委員長の役割を誇らしく感じたというようなところを言っております。また、3人目の小5男子は、外国籍の子供に対して受け止める気持ちを持ち、自分の成長として共感的に捉えて、自分も新しい態度なり価値観を身につけたさまを書いているというところでございます。
下段は、課題を抱えている子供を参加させた母親の記述でございます。こちらは様々な診断を下され、服薬もしている小5男子の母親でございますけれども、感謝の気持ちを言葉で表すようになってきたということを捉えています。また、2人目と3人目は、同じような状況にある小6女子と中2男子の母親でございます。それぞれに我が子がキャンプ後、柔軟な対応ができるなど、自分の気持ちをコントロールして成長している姿を見ているというところでございます。
ネットがつながりましたので、資料35枚目のところから、水澤さん、お願いしてよろしいでしょうか。


【水澤所長】 大変失礼いたしました。35ページ、参考事項として4つ記載してあります。中でも3つ目、筑波大学の坂本教授の事前指導やキャンプの帯同によって、関係職員がキャンプスキルだけでなく、発達障害に対する認識を深めることができ、力をつけたと思っています。
最後4つ目です。妙高では、これまでも長期キャンプを通して得た知見を報告書にまとめて発信してきました。これはナショナルセンターとして大切な使命の1つと考えています。今年も事業報告書と併せて統合型キャンプマニュアルの作成に力を尽くします。
最後に、長期キャンプを継続してきた歴史の一端を1人の大学生に注目して、1ページにまとめました。時間がありませんので、お読みいただければ幸いです。
以上で事例紹介を終わります。


【松田理事】 ありがとうございました。お時間いただいておりますが、最後に私から、教育事業における課題について説明させていただきたいと思います。38枚目の資料を御覧ください。
「量」と「質」の両面から、国立として実施すべき事業の取組、及び効果の検証を強化するということが、まず1点目でございます。多くの事業を実施しており、青少年の健全な育成に成果を上げてまいりました。今後、国の施策、社会の要請、青少年教育を取り巻く状況にも鑑み、国立として実施すべき事業についてさらに精選して実施し、成果を積み上げていく必要があると考えております。
2点目といたしましては、公立施設等との連携強化及び普及促進でございます。モデル事業等の成果について、公立施設等の置かれる状況も踏まえながら、社会全体として、このような非日常的な、あるいはある種不条理な体験を通して、非常にたくましく変化に応じた子供を育てていく、このような活動を推進していくために、連携普及を進めていくということが必要だと思っております。これは本機構がネットワークのハブになることの必要性と可能性ということでもございます。
3点目は、持続的な教育事業の実施・推進です。運営費交付金の削減等の状況も踏まえ、教育事業全体の収支構造の見直し、検討も、重要な視点、必要な視点だと思います。
最後に、職員の人材育成でございます。教育事業の企画立案や指導力、体験活動のスキル、人と人をつなぐコーディネート力など、施設職員のある種専門性に基づいた能力の向上、育成というものを進める必要性と、それを支える人的な体制整備が必要になると考えております。
大変お時間いただきましてありがとうございました。これで私からの御説明は終了させていただきます。よろしくお願いします。


【平野座長】 松田理事、御説明ありがとうございました。
それでは、続いて議題(3)として、有識者の方から御発表いただきます。まずは青木委員から、体験活動のニーズはどこにあるのかに関連して御発表いただきます。よろしくお願いいたします。


【青木委員】 よろしくお願いいたします。そうしましたら、少しお時間をいただきまして、御説明させていただきたいと思います。今回、第2回の検討会に向けまして、文部科学省から体験活動のニーズについて少し説明をということでしたので、私からお話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
体験活動のニーズといっても非常に幅が広いところだと思います。例えば、レジャー的な観点からもいろいろな調査が出ているような状況ですが、今回は青少年教育といったところで、特に子供、保護者の視点、また、主たる利用団体である学校の視点から、体験活動のニーズというものを少し考えてみました。考えるに当たっては、青少年機構の青少年教育研究センターが行っている調査の結果を中心に分析し、私なりに考察を行っております。参考にした調査結果につきましては、お手元の資料の後ろに参考資料としてつけておりますので、そちらも併せて御覧いただければと思います。
あと、今日お話しさせていただくことは、1つ目はニーズを考えるということで、子供・保護者の視点、また、学校の視点からお話をさせていただき、それを踏まえ、私案になりますが、今後求められることとして、そこに示しております3つの点について御説明をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
まず、体験活動のニーズを子供・保護者の視点から考えた場合、体験活動に対する最近の保護者の意識としては、大きく3点のことが挙げられると思っています。まず1つは、自分の子供の頃に比べて、今の子供たちは、遊べる場所とか、体験活動の機会が少なくなっていると感じている保護者は多いということです。また、新型コロナの流行以前は、子供たちが体験活動ができる機会、これは学校内外問わずなのですが、十分にあると思っている保護者は増加傾向にあったのですが、コロナ禍以降は減少の傾向が見られています。また、体験活動の重要性については、最近、特に非認知能力の観点から言われておりますが、保護者の意向としては、体験活動よりも勉強を優先させたいと考える保護者が徐々に増えつつある状況にあります。これについては、機構の調査だけではなく、ベネッセの調査でも同様の結果が見られておりますので、やはり教育、勉強といったところの関心が高い保護者は増えているという傾向にあるのではないかと思っております。
その上で、今の子供たちの自然体験活動の現状を見ていきますと、機構が長年、子供たちの体験活動の実施状況を調査しておりますが、過去16年間の調査結果を見ますと、家族や友達と一緒に自然体験を行っている子供の割合というのは大きくは変わらず、横ばいくらいな感じです。しかし、例えば、青少年教育施設であったり、自然学校といった民間団体が行うような自然体験活動への参加率は減少傾向にあります。特に最近の状況としてコロナ禍以降の状況を見ますと、子供会とかPTAが行う自然体験活動への参加率が大きく低下し、一方で、スポーツクラブであったり、学習塾の行う自然体験活動の参加率が高くなっている状況です。全体的に減少しているのですが、これまで子供たちの体験を身近で担ってきた子供会、PTAの活動が一気に減ってしまって、その代わりにスポーツクラブや学習塾の割合が高くなったというような状況です。
参加しなかった主な理由を調査結果から見ますと、まずは子供が関心を示していないという割合が高かったです。あわせて保護者の方が、時間的負担が大きいであったり、団体や行事があることを知らないといったようなことも挙げられております。さらには前回調査と比較をすると、団体や行事があることを知らないであったり、参加方法が分からないといったような保護者の割合が増えている状況にあるので、もしかすると体験活動の場や機会の情報がしっかりと保護者の方々に届いていない状況にあるということが示唆されるのではないかと考えております。また、今、体験格差ということが非常に言われておりますが、教育費の少ない家庭の子供であったり、子供と体験活動を一緒にすることが苦手と感じている保護者の子供ほど体験活動の機会、これは自然体験のみならず、スポーツであったり文化的な体験であったり、そういった様々な体験活動の機会が少なくなっていて、経済的な観点だけではなくて、そういった家庭というような生育環境によっての体験格差が見られているような状況にあります。
保護者・子供が望む体験活動というのはどういうものがあるのか。基本的には子供たちがこういうことをしたいということがあったり、保護者がこういうことを子供たちにしてもらいたい、また、現実問題できているかどうかという調査結果があるのですが、その差を見ていくと、例えば、お店や会社などでの職業体験であったり、農業とか林業とかの勤労生産体験とか、国際交流体験とか科学体験とか、あとは食育に関わるもの、自然観察に関わるような体験というのは、したいけれどもできていないというギャップの大きい体験になります。
また、例えば、自然体験とか、異世代交流とか、社会貢献という体験に関しては、したいことの上位に入っているのですが、同時にできているというところの上位にも入ってくるので、そういった意味では、ニーズがあってできている体験もあるという状況です。この結果から考えられることとしては、例えば、自然体験とか異年齢交流とか、そういった従来しっかりと行ってきた活動については、提供する環境が充実してきたことで、現在の需要に対して供給がうまくいっているのではないかということです。ただ、それらの需要というものも、特に今、放課後・休日の体験活動が多様化している中で、ほかの活動に需要が流れていったり、さらには少子化の影響もあって、そもそもの従来の自然体験といったような活動に対するニーズも縮小してきているかもしれないということを個人的に感じているところです。なので、その他の活動に対して、ニーズは少ないかもしれませんが、職業体験とか、勤労生産体験とか、国際交流体験といったニーズがあるけど提供できていない活動というものにも着目をしながら、それらの活動を充実させていくということが、青少年の体験活動の充実を図る上でも大切になってくるのではないかなと感じているところです。
子供が参加する体験を選ぶときに重視するポイント、これは保護者の視点なのですが、幾つか挙げると、好奇心をくすぐるような内容であったり、普段の学校や生活ではできないような内容、また、子供たちが達成感を味わえる内容であったり、自然の大切さや自然を満喫できるような内容、こういったものが保護者のニーズとして挙げられているという調査結果もあります。
先ほどまでは保護者・子供の視点ですが、ここからは学校団体のニーズになります。これも青少年教育研究センターが行った調査結果を基にお示ししておりますが、ここでは大きく3つのデータを示しております。学校団体が利用する施設を決める際に重視することであったり、満足に関する項目になりますが、まず、重視する項目としては、安全管理体制が整っているかどうかといったところ、また、施設・設備が充実しているか、自然環境が豊かか、例年利用しているかどうか、食物アレルギー等に対応しているかどうかといったところから施設を選ぶ傾向にあります。
一方で、使った後なのですが、満足度に関する影響については、宿泊施設や研修施設がきれいだったかどうか、施設設備が充実しているかどうか。また、利用料金、安全管理の体制、近隣の環境といったものが影響しているということになります。私自身も、大学で様々な施設を利用する中で、公立も国立もいろいろと使わせてもらっておりますが、利用者の立場で考えると、やはり清潔さというのはかなり影響があるなと思っております。ただ、その際のポイントというのは、新しさではなくて清潔さなんです。古くてもきれいに清掃されていればその辺りは影響はないのですが、新しくても利用者任せできちんと清掃されていない施設とかは、やはり印象がなかなか良くないなと思うので、その辺りを工夫して、うまく施設の清潔さを保っていくことが大事なのかなと思っております。
あと、利用する施設を検討する際に参考にした情報としては、大きくは3つが上位に入ってくるのですが、まず、自校のほかの先生からの情報であったり、施設のホームページの情報、施設のパンフレットといったような紙媒体の案内情報といったものが挙げられております。特にその中でも、自校の教員からの情報というものが、他の項目より高い割合を示しておりました。なので、例えば、例年使っていて使い勝手もいいから使っているという団体も多いと思うのですが、そういった施設が利用できなくなってほかの施設に乗り換えてしまったようなことが起こると、ほかの先生から聞く場合に、「いや、今ここを使っているからこっちだよ」となってくると、以前使っていた施設に戻すというか、利用者を取り戻していくのは結構苦労する部分があるのではないかと感じているところがあります。
学校側が集団宿泊活動で児童生徒にさせたい体験活動としては、ここに挙げられているような5つの項目が上位に上がってきます。これを見ていただくと、先ほどの子供や保護者が望む体験とは少し内容が異なってくる、傾向が異なってくるところがあるのかなと思っております。今回は教育事業がメインテーマではあるんですけれども、研修支援、学校団体は主に研修支援が多いので、そういったところで考えると、事業形態によって体験活動のニーズというのはどういうところにあるのかを分析しながら、それに応えていくような対応を考えていく必要があるのではないかと感じております。
集団宿泊活動の計画や実施の際に求める支援ということで、学校側としては、こういったことを施設に支援してもらえると助かるといったところでは、まず、特別な配慮を要する児童生徒に対する施設・設備の充実や対応といったところ、2つ目は、安全管理体制の整備、3つ目は、施設・設備の充実、その他、利用に対する柔軟な対応であったり、利用に関する手続の簡略化・簡素化といったところが挙げられております。特に今、学校教育を中心にインクルーシブ教育システムの構築というものが求められている中で、特に施設が特別支援を必要とする子供たちに対応できているかどうかというのは、学校側としてもかなり重視する視点なのかなと思っております。なので、これからの施設運営においては、スペシャルニーズという視点も欠かすことができない視点になってくると思っております。
それ以外にも、安全管理の充実もありますが、例えば、柔軟で親切丁寧な対応であったり、手続の簡素化、または利用や活動に関する情報の充実、「その他にも」の下のところにも書いてありますが、一般的な体験活動プログラムの直接指導ということで、例えば登山であったり、キャンプファイアーであったり、野外炊事であったり、よく行われているような体験活動も、やはり専門家に指導してもらいたいというニーズもあるということになります。特に学校側は今、本当に働き方改革が求められていて、先生方の負担がかなり大きい中で、そういったところは、餅は餅屋に任せたいというようなところもニーズとしては強くあるのではないかと感じております。
こういったところが、体験活動のニーズとしてデータを基に考えたところになります。これらを踏まえ、これから求められることは何かといったところで、大きく3つ、御提案を述べさせていただこうと思います。まず1つは、体験活動に関するニーズの把握と現状分析の強化ということで、特に利用者情報の管理と活用というものが重要になってくるのではないかと思っています。今のところ、施設の利用者の、例えば利用登録ということがされているのかどうかわからないのですが、今後は利用者登録をしてもらって、利用者情報を管理・分析しながら、施設の運営であったり、青少年教育の振興に活用していく。例えば、広報面でも、登録をしてもらっている方々にイベントの案内を流すとか、そういったことも含めてやっていくようなことが重要になってくるのではないかと思っております。
あわせて、先ほど青少年機構からも説明がありましたが、青少年教育研究センターとの連携強化というものも、特に利用促進という観点から行っていくことも重要になってくると思います。特に、私も研究センターに関わっている立場ですので、教育事業の教育効果であったり、事業の質の改善につながるような研究を行ってきましたが、これからは利用促進に関わる、例えばマーケティングの観点とか、施設のマネジメントに関するような研究にも取り組んでいき、施設の運営に生かしていくということも必要になるのではないかと思っております。あわせて、今回の発表では、子供・保護者、学校に着目をして、そのニーズについて少し考えましたが、青少年団体とかのニーズに関するデータとか、特別支援教育に関する視点、ニーズというものがなかなかデータとして見当たりませんでした。なので、特に青少年団体は施設の主たる利用者になってきますので、そういったところのニーズを拾うような調査というものも必要になってくるのかなと思います。
また、利用の仕方を考えると、私も施設を利用する立場で、大きくは2つの立場があるなと思っているのですが、1つは自分たちで何でもできるから、ただ場所と用具を借りて自分たちの考える活動をさせてくれというパターンと、活動はできれば専門家の指導に任せたいといったパターンもあると思うのです。私も学生を引率して連れて行くんですが、自分が指導してしまうと、学生の変化とか様子を見ることができないので、そこはお任せをして、自分は横から子供たちの様子とか学生の様子を見たいというニーズもあります。そういった利用目的であったり、活動内容とか、団体の状況によって利用に対するニーズも異なってくると思いますので、利用者に寄り添ったサービスを行うにはどういった運営の在り方がいいのかということも検討していく必要があるのではないかと思っております。そういったところを青少年教育研究センターと連携をしながら、教育事業や事業運営に生かしていくことができればいいのではないかなと思っております。
次は、ニーズを踏まえた体験活動のプログラムの開発と利用者サービスの向上ということで、先ほどの子供たちや保護者の意見を見ますと、職業体験とか勤労生産体験といった活動が、やりたいけどできていないような状況がありましたので、施設の立地を生かした体験プログラムの新規開発、既に行われているところも多いと思うのですが、改めて地域の実情やニーズに応じて開発をしていくという視点を持つことも大事なのではないかと思っております。あわせて、先ほどもお伝えしたように、一般的な体験活動の直接指導を充実させていくということも、ニーズに応えていく上では必要になるのかなと思います。
ここでは記載をしていないのですが、先ほど、子供の体験格差の話をした際に、経済的な格差だけではなく、保護者の考えとして、苦手に思っている保護者は、なかなかそういった体験活動の場に踏み込みにくいということであれば、家族・グループ向けの体験活動プログラムの充実というものも、視点としては入れていく必要があるのかなと思います。ただ、イベントとしてやるパターンもあれば、施設に利用してきてもらっている家族に、例えば、何家族か集まれば登山活動をしますよといったような、主催事業として立てなくても、研修支援で利用してもらっている人たちに、集まったらプログラムの指導をしますよというような形でもできると思うので、家族利用を促すためにも、そのような取組があってもいいのかなと思っております。
あともう一つは利用者サービスの向上ということで、宿泊施設、研修施設の清掃の徹底であったり、施設・設備の充実。特に特別支援を要する利用者への対応といったところでは、ユニバーサルデザインの充実であったり、施設によっては冷暖房が完備されていないところもありますので、そういったところの充実、それ以外にも安心安全な環境づくりであったり、そこにも書いてありますが、要望に対する柔軟な対応など、要は施設の利用の利便性・快適性・安全性の向上というものを目指していく必要があるのではないかと考えております。
そのほかにも利用の手引きであったり、体験活動プログラム集など、活動とか施設利用に関する案内情報の充実というものも、利用者サービスの向上として求められることではないかなと思っております。ただ、既にこういったことはなされていると思うのですが、今のままでは足りないという部分もあるかもしれないので、改めてここからどうクオリティーを上げていくのかということを考えていくことも大事なのかもしれないと思っております。
最後になりますが、ここは体験活動と子供・保護者をつなぐ仕組みづくりということで、先ほどの話の中で、保護者の方からは、イベントを知らないとか、団体をそもそも知らない、参加方法が分からないというようなこともありましたので、これは施設の事業運営ではないかもしれませんが、ナショナルセンターとして、施設の利用やイベントへの参加を促すような仕組みづくりをやっていくことも大事なのではないかと思っております。青少年教育施設の利用を促進していくためには、施設ごとに地域で頑張っていくだけじゃなくて、全体的な利用を促進するような環境づくりが必要かなと。今、民間ベースでも、子供の体験活動とか遊びに関するポータルサイトも充実してきていますが、そういったサイトも活用しながら施設はイベント情報を流していると思うのですが、企業が行う楽しいイベントの中に紛れ込んでしまうとなかなか伝わりにくいということもあると思うので、そういった意味では、青少年教育施設の利用であったり、自然学校といった団体の催すイベントに特化したマッチングサイトなどを構築し、国立施設の利用を促していくとともに、公立施設や青少年教育団体を巻き込みながら、体験活動の場や機会と、子供と保護者をつなぐような仕組みづくりをしていくことが大事になってくると思っております。
また、先ほどの機構からの説明にもありましたが、アウトリーチということもとても重要かなと思っております。なので、先ほどの仕組みづくりに加え、学校の授業であったり地域のイベントに出向いて体験活動の指導を行うなど、体験活動と子供と保護者を直接つなぐような、地道なアウトリーチ活動も大切になってくると思っております。
さらに生育環境による体験格差が課題となる中、こうした活動を通じて、子供と体験のつながりがなかなか持てない家庭への支援というものを考えていくことも必要と思っております。
最後一言申し上げますと、体験活動のニーズを把握して、そういった子供たちに体験活動をきちんと届けることが大事になります。機構の場合、ナショナルセンターなので、政策課題に対応した事業を行うということはとても大事なことなのですが、体験活動の推進には、子供や保護者のニーズに合った事業を展開していくという視点も大事になってくると思います。特に都市部と地方では、選択できる体験はすごく差があると思いますので、地方では、ニーズを踏まえ、体験しづらいものを提供していくというような観点も持ちつつ、教育事業の企画運営をやっていくことが大事かなと思っております。
私からは以上となります。御清聴ありがとうございました。


【平野座長】 青木委員、どうもありがとうございました。
それでは、続いて、株式会社ATARAYO取締役会長の関口さんから、資料5にありますとおり、国立教育施設の振興策に関する一考察というテーマで御発表いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


【関口氏】 株式会社ATARAYOの関口と申します。よろしくお願いいたします。
私は、国立青少年機構さんとはキッザニアの立ち上げを広報マーケティング部長として担当させていただいたあたりでお声がけいただきまして、絵本専門士講座の講師なども含めて、それから、今回対象になっている地方の教育施設の職員研修の講師などにもお呼びいただいて、10年以上お付き合いさせていただきながら、今は専門学校の講師をしたり、いろんな企業のコンサルタントなどをしながら、体験教育に関わっているという状況でここに来た次第でございます。あくまで私は民間企業、特に民間の集客施設の運営の視点から、今日発言させていただくということで、先ほども御指摘もいただきましたように、私の今日の発想がそのまま国立の施設、また政策の方向性と一致するかどうかは非常にちょっと甚だ私としても疑問なんですが、一考察として聞いていただければと思います。よろしくお願いいたします。では、資料に沿って説明させていただきます。
まず、事例として5つの視点から、今日はお話しさせていただければと思っております。1つ目の視点がコンテンツ開発です。このコンテンツ開発というのは、あくまでプログラムの開発とか、実際の体験で何をやっていくかということで、既にいろんな事例の御説明もあった中でのお話ですが、このアート&クリエイティブキャンプというのは、今年の夏、私がプロデュースして、関西学院大学の甲斐教授、また、アーティストの喜多氏に参画していただいて、尼崎市立美方高原自然の家で親子で参加していただき、2泊3日で13万2,000円の金額で実施させていただきました。尼崎市の美方高原自然の家というのは、今回の地方施設に非常に近い形の施設で、通常尼崎市内の方がお泊まりになると2,000円、市外の方でも大体3,000円強の金額のところ、大体2泊3日で2人で13万2,000円ですから、大体10倍くらいの金額設定をさせていただいて、こういったプログラムをさせていただきました。非常に実験的な取組で、参加者は20人弱ぐらいで、8家族ぐらいの方々に参加していただいたのですが、非常に満足度が高く、リピート意向も高いというイベントができた次第でございます。
具体的な内容としては、大学品質のレクチャーといったことを社会的にも発信し、さらに今の時代、なかなか簡単な理論的な発想では解決できないものに対しての回答が、僕は1つアートだと思っていて、こういうアート要素、それから大学品質のレクチャー。これは大学の先生が実際にレクチャーをしていただく。子供に対しても親に対しても、そして親子に対しても、そしてこの大学の先生、甲斐教授は野外教育の専門家でもありますので、こういう専門家を集めて非常に内容の濃いプログラム開発をすることによって、これだけの金額のサービスを提供し、そして非常に高い満足度、リピート意向ということを実現できたということがありました。ここから言えるのは、もちろん民間の施設は皆そうなのですけど、やはりコンテンツの開発ですよね。ただ単に非常に恵まれた自然環境に広大な施設を持っている、そこで実際何をやるのか。どんな成果があって、どういうふうな持ち帰るものがあるのか、こういったものをやはり緻密に設計して、これを社会的に発信していくということが非常に重要なのではないかということで、第1点目の視点として挙げさせていただきました。
次は、私がマーケティングを専門としている人間なのであえてお伝えするところでありますし、今さらというところですけど、やはりデジタルマーケティング。残念ながら今の地方施設を見たところ、まだまだこれに非常に大きな課題があって、改善の余地があるだろうというところがあるかと思います。非常に教科書的なお話でございますので、この下にありますAISAS、今デジタル時代を迎えて、注意喚起をして、興味を持っていただいて、検索していただいて、最終的には予約していただいて、それをSNSで拡散すると。本当にこれは大学の授業でやっているような内容でございますが、まだまだこの時点にできることがあると思っていますし、民間企業ではこれがないとほとんど集客はできないところの中で、やはり国立の施設にも、この視点をさらに上げていただきたいなと。この次のページも同じです。
そのためには、社会的な情報発信を効果的に行うPR、そしてそのPRを受皿として魅力的なホームページ、さらに動線を緻密に計算した後の予約システム、これがなかなか今できてないところがもったいないのではないかなと。多分民間の施設であれば、何をかけてもここにお金を入れてすぐ改善することによって、もちろん国の施策等もあるかと思いますが、民間であればこういうことを考えるのではないかということで入れさせていただきました。
それから、国立の教育施設でございますので、学校団体、幼稚園も含めた教育団体へのアプローチが非常に重要だと。現在も、使用しているシェアの中で非常に大きなパイを持っているということでございます。民間企業でも、この教育団体の位置、教育団体への営業というのは非常に重要なファクターになっています。特に、既に私、キッザニアやめてもう10年ぐらい経っていますが、キッザニアの中でも教育団体へのアプローチというのは非常に重要な活動でした。ですから、ちょっと細かいですが、一つ一つ読んでいきたいと思っています。これは私の体験でもあり、私の部下が営業施策として実際に行っていたことを文字化したものなので、民間企業ではこういったことをやりながら、一つ一つ学校にリーチして来ていただいているという状況を確認させていただければと思っています。
1番、メールや電話でのコンタクトに対しては、基本的に対応しない。学校というのはなかなか、この中に教育関係の方もいらっしゃるので一部ちょっと失礼な表現もあるかと思うのですが、なかなかメールとかでは対応していただけない。つまり、一般企業のなかなか道理がなかなか通用しないというところがあるかと思います。
2、パンフレットなどの郵送物は、基本的にごみ箱直行と。大体パンフレットを送っておいたら、きっと見ていただけるだろう、きっと来ていただけるだろう、きっと問合せいただけるだろう、これはないというのが現実。
3番目、学校コンタクトは授業時間帯を避けた放課後で、教員の帰宅前の16時から18時がゴールデンタイム。こういうのは経験的に我々の営業チームは理解して、なるべく授業時間帯にかけて迷惑をかけない。そして16時以降、そして18時前に御連絡することによって、やっとリーチできるというようなことは確かにありましたね。
4、初回面談では相手にされなくても、複数回の訪問で話を聞いていただけるようになる。遠方ならなおさらと。実際に足を運んで、時間をかけて、断られたとしてもまた行くみたいな昭和なスタイル、これが現実に今でもやっているスタイルで、これでもやっぱり掘り起こしをしていかなくちゃいけないと。
5番目、学校側の視点としては、基本的に無料でのサービス提供が当然だと考えていると。これも企業の社会科見学、工場見学などは基本無料だったりすることが多いのです。その中で、私が前職としてきたアートアクアリウム美術館もそうですし、キッザニアもそうですし、もちろん、私はディズニーにも所属していたが、非常に高額な金額の入場料を取って子供たちの体験をいざなうので、ここに対しても非常に難しさがあります。これを超えていろんな民間施設は来ていただくような活動をしているというところでございます。
6番目、有料の場合はその効果などに関して、エビデンス等があると非常に理解されやすい。これは国立の施設に関しては非常に統計の資料とか研究所とかデータをお持ちですので、ただこれをどうやって活用しているか。例えば、私がキッザニアに在職中は、キッザニア白書というものを作って体験活動を大学の先生と論文を書いて、これをエビデンスとしてお持ちするといったような活動をやることによって学校の支持を得たといったような効果もございました。
7番目、校内、園内では校長が圧倒的な支配力を持っている。最終的には何とか校長に食い込む、校長に理解されれば多数校の校長が集まる校長会に紹介してもらい、そこで資料配布、うまくすればプレゼンテーションを行う機会を狙えると。これも実際にこういう活動をしていました。何とかして校長先生の御理解をいただくような、そこのプロセスをどうやって戦略的に練っていくか、そのために何度通うのか、どういう資料を持っていくのか、どういう説明するのかみたいなことは非常に重要でした。同じように幼稚園でも、こういったことはあったと思います。
9番目、教育機関は主に教員研修を頻繁に行っており、この場を活用する戦略を練る。施設の営業説明のための時間を与えられないので、マーケティングやマネジメント研修等のコンテンツを開発し、その延長で施設説明を行う。これも実は私、以前在職中、教員のマネジメント研修、教員のマーケティング研修の講師をやって、そのときに施設の説明をさせていただくような時間をいただくといったような仕組みを作ったりしていました。
10番目、校内、園内のキーマンを押さえる。ときには校長、園長。これはキーマンを押さえるというのはどこの組織でも同じなので、足しげく通って誰がキーマンで、どのボタンを押せばいいのか、これを実現することによって横のつながり、さらにはPTA協議会とか、PTAの会長とか、いろんな横の展開ができてくるというようなところです。
11番も比較的似ています。地元の学校・幼稚園で実績ができると信頼感が醸成されて、野球チーム、サッカーチーム、子供会もターゲットになって広がっていくといったようなところ。
12番、学校訪問する際は、1日4校程度の訪問を目指し、1校はアポイント取る。3校はアポイントなし。結果的には1校対面のミーティングができて、1校は御挨拶ができて、2校は門前払いを食らうと。門前払いでも、先ほど申し上げたように、次のアプローチに、「以前来たときにはなかなかお会いできなくて」という言葉が言えれば、学校の先生は優しいので会っていただけるんですよね。
13番目、都心部はレンタルバイクが有効と。これは15分ごとの課金なので、学校というのは残念ながら駅の近くにあるわけではないんです。そうした場合に効率的な営業するには、レンタルバイクがいいと。これは私の部下が一生懸命言って、領収書を切るときにそんな会話がなされたということがございます。
とにかくいろいろ言いましたが、学校1校に来ていただくのは本当に大変なんですよ。ここに書いてあるように、足で稼ぐ地道なドサ回りと。こういった活動することによって1校1校。前職の話ですけど、その中でキッザニアというのは来場者の大体1割ぐらいを学校で占めると。ただ、1割といっても平日の1割ってなかなか集客施設にとっては非常に大きいんです。土日というのは、デジタルマーケティングで個人客を集中的に集めることができるんですけど、学校のある平日というのを一定のレベルの集客をするというのはなかなか難しいことで、だからここまでやっぱり時間と手間をかけて、一つ一つ営業していくというのが我々の戦略でした。多分今でも。私はキッザニアの後にアートアクアリウム美術館という美術館の責任者もやっているんですけど、そのときもこれと同じことをやっていますね。そのときはコロナだったのでさらに難しかったんですけど、民間の集客施設はほぼやはりこういった活動をしながら、1校1校学校の先生と意見を通わせながらプログラムを開発し、営業しているという状況が御理解いただけたらというふうに思って、お時間を使わせていただきました。
次、この写真はキッザニアのホームページからいただいたんですが、協賛会社の開発ですね。ここの視点も国立の施設の中でできるかどうか、これは私の判断するところではないのですが、やはりいろんなベネフィットプランを開発して協賛プランをつくり上げるといったようなことは、民間施設だったら考えてもしかるべきではないかなというふうに思います。聞いたところによると、資料によると、国立青少年施設、27ですか、28ですか、年間の昨年の来場者数が大体170万人と聞きました。キッザニアの来場者数が大体年間で70万から80万人。ということは、一個一個の施設で考えるとそれほど大きなボリュームにはならないんですけど、協賛開発をする時点で一番大切なのは来場者数なんです。どれだけの方々にリーチできるかということになります。そうなってくると、170万人の来場者数があれば十分協賛開発はできるのではないかというふうに、私は民間的な思想であると考えます。
その170万人というのはたしか昨年のベースですので、コロナ前だと多分300万人から350万人ぐらいいらっしゃるはずなんですよね。これは非常に大きなボリュームを持っている施設だというふうに考えます。もちろん単独の施設ではそこまでいかないんでしょうけど、それでも地域の中小企業とか、そういうところから掘り起こしを考えれば、いろんな協賛開発というのは可能性があるのではないかと、私は個人的には思った次第でございます。
最後、ホスピタリティーです。これも今回お声がけいただいた中に何か入れられないだろうかというお話をしていただいて、なかなかホスピタリティーというのはいろんな施設でも難しいテーマになっていまして、それぞれの施設、それぞれの特有の事情があってホスピタリティーを育んでいるんだと思うんですけど、1つキッザニアの事例を、私が在職していたときのホスピタリティー事例として皆さんに御紹介させていただきたいのがあります。
キッザニアでは50ぐらいのパビリオンがあって、そのパビリオンというのは、警察署だったり、消防署だったり、すし屋さんだったり、ハンバーガーショップだったり、ピザショップだったり、それぞれの施設の中で、子供たちがユニフォームを着て職業体験をして、最終的にはキッザニアの中で使える通貨と記念品をもらって帰ると。1つのプログラムが大体30分ぐらいかかるので、1日で5つか6つぐらいのプログラムをやってお帰りになるという状況なんですけど、そのエピソードを1つ紹介させていただくと、例えば一番左の子をA君というふうに仮説をするとしたら、未就学児のA君が警察署で体験をして、警察署のパビリオンでは証拠品を集めて指紋を採取して、その指紋から犯人を割り出して、最終的には、警察手帳と施設の中で使えるキッゾという通貨をもらう、お給料をもらって、お疲れさまでした、御苦労さまでしたといって、学生のアルバイトさん、ディズニーでいうとキャストさんみたいなのがいて、その方に指導していただいて、最終的にはそのキャストから警察手帳をもらって、お給料をもらって御苦労さまでしたって終わるんです。
次のパビリオン、この未就学児のA君はピザショップに行ったんですよ。ピザショップでまた別の体験として、ピザのユニフォーム、エプロンをして、今度はピザ作りをしていたら、先ほど警察署にいたアルバイトの男性スタッフさんが、今度はピザショップでまたいたと。これはよくアルバイトのシフトチェンジで、何時から何時まで警察官やってねと。次はアルバイトチェンジなんで、何時以降は今度はピザショップに入ってねというようなことがよく起こるんです。そのときに、その未就学児なんですけど、ちょっとやっぱりおかしいなと。さっき警察署にいた人が何で今、ピザショップにいるんだということになって、その子はアルバイトの学生君に聞いたらしいんです。「さっき警察署にいたよね。何で今ピザやっているの、おかしいんじゃないの。」と言ったんですよ。そうしたらその学生アルバイトは即座にピザショップのコーナーに男の子を連れていって、「今僕は潜入捜査をしているんだよ。だから、君はあまり大きな声で僕の素性を明かしちゃ駄目だよ。」というような対応をしたんです。
これが僕は、キッザニアのすばらしいホスピタリティーだと思うんですよ。それが学生アルバイトが、ちゃんとそこまで瞬時に対応するんです。多分私はそれができないと思うんですが、ここは学生アルバイトでもそれだけの訓練と、それから、やっぱり子供たちの夢を壊しちゃいけないというちゃんとしたアイデンティティーを持って、その対応をしたというのを私は聞いて、この話をいろんなところでするんですけど、こういう民間のホスピタリティーですね。こういったものが、もちろん今の国立青少年の施設にも大変なホスピタリティーと大変なプロフェッショナリズムがあるんですけど、そこにもう一つ、こういった発想をもし入れられることができたら、また新しい良い世界が広がってくるのではないか、新しいチャンスが広がってくるのではないかというようなことを思った次第で、今日は5つの視点、民間からの発想としてお伝えさせていただきました。
以上です。どうもありがとうございました。


【平野座長】 関口さん、どうもありがとうございました。
それでは、少し今日はいろいろな皆さんのお話を聞く時間に充てましたが、これからは自由討議の時間とさせていただきます。今、青少年機構からの御説明、それから青木委員、関口様からの発表等をお聞きいただいて、質疑、あるいは御意見、自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。佐藤委員、お願いいたします。


【佐藤委員】 皆さん、発表ありがとうございます。一つ一つの発表に、これも聞いてみたい、これどうなんだろうということがいっぱいクエスチョンが頭の中に浮かびましたが、その中で1つだけちょっとお伺いしたいと思います。
機構、あるいは青木委員のお話に関連するかもしれませんけれども、役割としてモデル事業、ある意味先導的な事業であったり、社会課題に対する事業であったりという取組の事例が発表されたと思うんですけれども、これをペーパーの上では公立の施設に普及、広げていくという視点がありますが、果たしてどこまで広がっているんでしょうかということをちょっとお聞きしたいなというふうに思います。
つまり、モデル事業が機構の中で行われるテスト事業だけで終わっていないかと。その成果を、もう少し関係する団体や何かに実際にその事業が委嘱できているのか否かというようなことの感想なり、御意見なりをちょっとお伺いしたいと思います。
以上です。


【平野座長】 御質問ありがとうございます。まず、機構のほういかがでしょうか。


【松田理事】 ありがとうございます。その部分は大変課題意識も持って取り組んでいるところでございますけれども、一定程度の成果と、やはり御指摘のあるような、まだ不十分だというところが共存しているという認識でおります。特に広がらないときの原因といたしまして、そもそもが社会教育という領域の中での、ある種内容が非常に多岐にわたるとともに、当事者の主体性というものが非常に重視される中で、多様な環境とか状況を抱える現場が、エッセンスとしては受け取ってもらえても、いわゆる単純な横展開のような形での抱え方が、やはりやりにくいというような領域の特性のようなものも少しあるのかなと感じています。
加えて、事業部長も今来ていますので、少し詳細のことについて加えさせていただきたいと思います。


【秋山教育事業部長】 青少年教育振興機構の教育事業部長の秋山と申します。
今、松田理事から御説明ありましたことについて補足といいますか、現場レベルということで、おっしゃるとおり様々な状況があって、全てが現場のほうで、公立施設で取り入れていただいているかというところは懸念があるところであります。私たちの取組として、普及啓発の内容というと、やはり事業で行った調査研究の成果を施策のほうで取り入れていただくというのはある程度をやられているのかなという認識はございますが、例えば長期キャンプであったり、事業で行ったモデル的な事業の内容といったものをそのまま公立施設のほうで取り組んでいただけるかというと、なかなかそこは難しいところも現状あるかなというふうに思っております。
また一方、公立施設のほうも整理、統廃合といった現状があるというふうに聞いておりますので、ただ、事業そのものを公立施設のほうで取り組んでいただいているという、展開されている事例も幾つかございまして、例えば北海道であれば、大雪青少年交流の家で以前行いました高校生を対象にした生徒会フォーラムといったものが、今、道立施設のほうで地域ごとに行われているといった事例もございます。こういった事例は、そのままというのは難しいケースの中で取り組んでいただいた事例だというふうに思っております。
そのほか、公立施設の職員研修という意味で、施設の職員にも来ていただいて、教育事業の中で一緒に取り組んでいただくことで、そのノウハウであったり、プログラムといったものを肌で感じていただきながら、そのエッセンスを公立施設の中に生かしていただくということが、もしかしたら一番取り組みやすいのかなというところでもございますので、各地域の状況も踏まえながら、公立施設であったり自治体と連携をしながら、どこまで取り入れていただけるかというのは、それぞれの地域で今、取組を進めているところでございます。
以上でございます。


【平野座長】 ありがとうございます。
関連して、青木委員、いかがでしょうか。


【青木委員】 ありがとうございます。国立で行われている主催事業について、公立の施設がどこまで取り入れているのかというのは、私も正確には把握していないですが、ただよく言われるのが、国立がやっているものは政策課題に対応したものなので、そういった意味では予算も規模も大きくやっているので、公立としてはなかなか取り入れづらいといった声も聞くことがあります。しかし、その一方で、やはりノウハウの部分というのは、先ほどの話にもあったようにうまく生かしているところもあるのではないかと思っております。
かなり古い話になるのですが、私は以前、室戸にある施設に勤務していた経験があるのですが、そこでスクールウォーターワイズという海のプログラムを行っていたのですが、これについては指導方法であったり、やり方であったり、そういったノウハウの視察に来ていただいて、NPOの団体が自分たちの施設でやるといったようなことはありましたので、注目度とか内容によってはうまく生かされている部分があるのではないかなと思うところがあります。


【平野座長】 ありがとうございます。
佐藤委員、いかがですか。


【佐藤委員】 ありがとうございます。やはりなかなかこれ、広げるのは、今もお話ありましたように、予算規模とか、あるいは大学との関係でできるとかというところはどうしても国立の施設と公立の施設のギャップみたいなのがあるものですから、そういう中でも青木委員が言われたような、恐らくお金をかけずともできる内容のものもあると思いますので、そういったものの情報発信を取捨選択していただきながら発信をしていただけると、公立の施設や民間団体、あるいはNPOなんかもできるのではないかなというふうに思いますので、なかなかそういった配慮が難しいところだとは思いますけれども、そういう点もよろしくお願いしたいと思います。
以上です。


【平野座長】 ありがとうございます。
原田委員、手が挙がっております。よろしくお願いします。


【原田委員】 青木委員の発表の資料にある15ページについて少しお聞きしたいのですが、2つお答えいただきたいなと思います。
まず、子供会やスポーツ少年団体とか、PTA、自治体みたいな、団体でやる参加率がぐっと減っていると。これはひょっとしてコロナの影響で、見知らぬ人と一緒に、例えばキャンプとかそういうのをやるのは嫌だねというのでこうやって下がったのかどうか、これが1点目です。
その下に、家族や友達だと割合が減ってない、むしろ増えていると。これは非常にコロナのことを言えば安全にキャンプができるし、グランピング施設みたいにふっと予約して行ける施設も増えたみたいなところがあるのかなと思うので、となれば、今後の社会教育施設のターゲットとしては、こういう家族や友達、先ほど、学校へのドサ回りという非常にビビッドな話がありましたけれども、むしろそういう組織・団体よりも、家族や友達をこれからのメインのターゲットにしていけば、ある程度の需要を獲得することは可能なのでしょうか。
以上です。


【平野座長】 ありがとうございます。
青木委員、いかがでしょう。


【青木委員】 ありがとうございます。今、原田委員から御質問いただいた2点についてですが、まず、1点目の子供会、PTAの参加率の減少ですが、私が聞く限りの話ですが、多くはコロナによって夏のキャンプとかが中止となり、これが数年続いたことによって、そもそも復活させることが難しくなっているという話をよく聞きます。なので、人と関わるということよりかは、そもそも事業体自体がなくなっている可能性が高いという印象があります。それが例えば、国立施設の利用者数にも影響している部分はあるのではないかなというところです。
2点目、家族とかの利用については、やはりアウトドアブーム、今は大分落ち着いてきたとはいえ、やはり家族での利用というのは増えている状況にあります。その中で、ページをめくっていただきまして17ページになりますが、ここに家族や友達などと一緒に行う自然体験活動といったところで、これは教育費による実施率の違いなのですが、やはり教育費をかけている家庭はそれなりの家庭だと思うのですが、そういったところは割合が高い。一方で、やはり教育費をかけられない家庭は低いといったところもありますので、今回数字を出していないのですが、前回調査から今回調査にかけては推移のギャップも広がっているので、家庭をターゲットにするということは当然あると思うのですが、併せてそれに対する体験格差へのケアというものも同時に行っていく必要があるのかなと思っているところです。
以上です。


【原田委員】 ありがとうございます。


【平野座長】 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。帆足委員、お願いいたします。


【帆足委員】 機構さんに2点質問があります。今、お話が出ていたのですが、参加費を令和5年度から上げていらっしゃるということなのですけれども、予算がなかなか厳しい中で参加費を取って少しでも収益につなげていくということだと思うのですが、利用者さんの反応は、参加費を上げるということに対してどれくらいアレルギーがあるのか、それとも受け入れていただいているのか。これは、今後参加費を取るのか取らないのかという判断に関係すると思うので、ここを1点聞きたいです。
あとすみません、続けてもう一つ。広報キーパーソンをつくられたということなのですけれども、実際どういう方がどういうお仕事をされているのかということと、広報と同時に、営業のキーパーソンというか、営業に力を入れる方も必要なんじゃないかと思うのですけれども、この辺りの人材の育成をどうしているのかということをお聞きしたいです。


【平野座長】 ありがとうございます。では、機構のほうでどうぞ。古川理事長、お願いいたします。


【古川理事長】 たまたま本日、地方施設の所長とオンラインミーティングをしている中で、料金設定の話が出ました。1つは、大都市に近い、例えば中央などでは、子供の施設使用料が、600円から900円になっても、みんな利用には来るのではないかと。受益者負担であるとか、参加費が上がっても需要は減らないのではないか、という感触がありますということを言われまして、これはすごく地域性というのがあります。今後、お金を受益者負担でいただくときも、やはり地域で高く取れる施設とそうではない施設、それから、季節によって上げる、下げるみたいなことも必要になるのではないかということは、本日話をしていて感じました。これはすごく地域によって支払ってくださる感覚が違うのではないかという話が出ておりました。
また、広報キーパーソンや営業の話が出たんですけれども、今現在のところ営業部というのがなくて、営業に回れるというところが、もちろん我々本部以外に各地方施設27、オリンピックセンターもありますけれども、それぞれに任せてやっていただいているという状況です。営業のスキルがあるかとか、資料作成がちゃんとできるかというのがすごく課題で、相手のニーズに合わせた、事前にしっかりそこをつかんでからこういうものを作っていくんだよという話が今日も出ていたんですけれども、まだそこは民間のようにはできてないなという、そういう考えです。伸ばしていかなきゃいけないと思っています。


【平野座長】 よろしいですか。


【帆足委員】 はい。ありがとうございます。


【平野座長】 ほか、いかがでしょうか。
では、植田委員、お願いします。


【植田委員】 青木委員から、先ほど体験活動のニーズはどこにあるということでお話があったのですが、スライド7ページのところで、利用する施設を決めるときに重視することや満足度に影響することということで、重視することで安全管理の体制が整っているかというところですね。これは、私はあくまでも先ほど申し上げた視点で、いかに収入を増やすか、いかに費用を下げるかという点で考えるんですけれども、安全管理の体制というのは、いわゆるカメラを設置するということで、昔はカメラの設置は非常にお金がかかったんですけど、今はかなり一般的になってきて、カメラ一台一台も安価になっていますし、カメラが分析する内容も男女、年齢、全て分かるような体制になっておりますので、そういうデータも取るということで、特に御父兄であるとか学校で、安全管理としてこれが整っていますよということのために、あえてそれをつける。ほかに問題があったとしても、この目的を達成するためにはこれが必要なんだという、そういう視点が必要かなと。
それから、満足度に影響することというのは、先ほど最後に強調されたんですけど、清潔さということですね。宿泊室や研修室等の清潔さ、それから、施設・設備の充実というのがありました。私のほうで写真を見せていただいたように、非常に私、懸念していますのは、やっぱりこの部分が、要するに非常に重要なことは、年度ごとに悪化していくということなんですよね。悪化していくということに対する対応がないんで、現時点での分析とか、現時点における課題とかということじゃなくて、悪化することを前提に何をしなければいけないのか、どういう形で予算をつけなきゃいけないのかということになるんですけれども、それは論点のほうでもございましたけど、青少年教育以外の観点で価値を見いだし、持続可能な経営を行う視点を持つということが書いてあるわけですけれども、やはりこの28か所の施設を違った視点でどのように活用できるかということを考え、そこから収益を生み出していく。その収益が、安全管理のデジタル化であるとか、宿泊施設や研修施設の、少なくとも現状を維持するぐらいでなければ、多分予算がないのでどんどんどんどん悪化していきますから、そうすると来られた方は1回来て、もう次に来るのはやめましょうという話になっちゃいけないわけなので、その意味で、現状認識としては、やはりこれらの28の施設はどんどんどんどん環境的には悪化していくと。それで満足度も当然減っていくわけですから、それに対応するためには、やはり収入というものをどういう視点で考えるか、あるいは、費用というものをどうやって抑えるかということについてもお考えいただくということが必要だと思うんです。
1つ今、我々の世界で大きなポイントになっているのが防災ということで、いわゆる東南海地震、あるいは首都直下地震の場合に、地震なり津波があったときに、会社であり個人がどこに避難できるかという場所をあらかじめ予約するという世界が生まれつつあるんです。これは企業であり個人であるんですけれども、面白い事例では鳥取県のある町がそういう受入れ体制をつくって、年間で、個人であれば1万円、家族であれば2万円ということで、来た方には食事を提供しますと。宿泊施設を、これは実費払うんですけど、こういう28の施設もそういういわゆる被災というものがあったときの受入れ施設として、そして、受入れ施設で受けるために、常時、平時からお金をいただくと、その施設を維持するためにという考え方が今、マーケットの中でも出てきますので、そんなのもまた1つ収入の道になるのではないかなというふうに思った次第です。そういう様々な観点で、収入を増やし、それをもって満足度、あるいは重視することが実現されなきゃならないかなと思います。


【平野座長】 ありがとうございます。
何かいかがでしょうか。どうでしょう。ほか、よろしいでしょうか。すみません、増田委員、お願いします。


【増田委員】 ありがとうございます。改めてお話を伺いつつ、資料の2-1の論点のⅠ-1のところを見てたのですが、国立でしかやらないこと、国立でしかできないことということを考えたときに、今日のお話もすごく重なるなと思いながら、やはり大きな部分だと指導者養成というところがあるのかなと思っておりまして、前回も少し発言させていただいたのですが、今、文科省、環境省のほうで一緒に進めていただいていた環境教育等促進法の基本方針の中で、今、やはりやらなくちゃいけないのが気候変動教育と、それから生物多様性保全の教育だということが挙げられています。そのようなものに関わってきた者として非常に危惧しているのが、教員免許状更新講習というものがなくなったことによって、学校の先生たちがそのようなそういうものに触れる機会がなくなってしまったということです。教員免許状更新講習に関してはいろいろ賛否両論あるのかもしれませんが、学校の先生方が今の課題というか、今、地球で起きている課題に対してどのように自分たちの教育に生かしていくかというところのインプットをしていただく機会でもあったのかなと思っていますし、そこのところで環境教育、ESD等のことをお伝えできる貴重な機会だったのかなとも思っています。
それに関わっていく機会をどう作っていこうかということが、今、環境教育やESG関係者で話をしていることなんですが、そういったところというのは、やはり国立でしかできないところにも重なっていくのかなと思っていまして、ぜひそこは文科省と機構さんのほうでということでやっていかれることなのかもしれませんが、そこが僕は国立でしかできないこと、やらないことに重なってくるのかなということを、改めて今日の取組なんかも聞きながら思ったところです。
以上です。


【平野座長】 御意見ありがとうございます。今、増田委員がおっしゃったことは、教員免許状更新講習でそういうような機会があったものの、その制度がなくなったことに対してどう対応していくかということかと思いますが、多分、各地方施設では実施されていると思いますが、県の教育委員会が独自でやる教員の研修事業がたくさんあります。そういうところともっとうまくタイアップしながら、情報をいただきながら、教員のための研修事業で、重大な政策課題としてのテーマを教員の皆さんに知っていただくような場を、国立施設ならではの在り方として提供していったらどうかという、そういう御提案にも受け取りました。ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。青木委員、どうぞお願いします。


【青木委員】 ありがとうございます。先ほどから委員の方々のお話をお聞きしまして、2点ほどお話をさせていただければと思います。
1点は、機構に要望というよりはお願いなのですが、先ほど佐藤委員からあった、教育事業の成果がどこまで普及しているのか、また公立に生かされているのかといったところです。各施設は一生懸命報告書を作って出してはいるのですが、多分あまり見られていないんじゃないかと思っています。というのも、施設のホームページにアップしていることはされていると思うのですが、あとは配ったりもしていると思うのですが、機構のホームページで検索できるサイトがあるんですが、そこには載ってないんです。なので、やはりデジタルをうまく活用しながら、検索をして見つかるような、要はノウハウの蓄積も含めてやっていく必要があるのではないかと思っています。今、地方施設の報告書を見るところが施設に行かないと見られないので、それではなかなか伝わらないので、その辺りは少し工夫をしていただけるとありがたいと思っているところです。
2点目なんですが、これは先ほど帆足委員と植田委員からも、利用料や参加費の話がありましたが、この会議を議論していく上で考えていかないといけないのは、どこまで自己収入といったところを考えていかなければいけないのかという観点かなと思っています。特に最近は、幼児であったり高校生であったり、義務教育の範囲を超えたところの学校教育の無償化というものが進んでいるわけですが、その一方で、これまで子供の育ちにおいて、学校教育と社会教育は両輪だという考えの下、国立施設については受益者負担以外は無償で進めてきた経緯があります。ただ、それを方向転換ということで、今後は自己収入増を目指していくというふうに考えていくと、今後、有償化を進めていく中で、学校教育との差が広がっていくのではないか、さらに子供の育ちに対する学校教育への期待とか、求めるものが、今でも大きいと言われている中で、更に大きくなっていくのではないかと懸念されます。さらに放課後や休日に行われる体験活動というものは、ある意味自由競争で行われているため、今、体験格差と言われている中で、更にその格差が広がっていくのではないかといったところが懸念されるのではないかなと思っています。
ただ、やはり国の財政的な問題もあるということなので、自己収入を上げていくということは大事なことだとは思うのですが、ナショナルセンターとしてあり続けるためには、国としてどこまで財政的な負担をしていくのかということについては、考えていく必要があるのではないかなと感じているところです。
例えば、運営費の中で、人件費とか、施設修繕費とか、政策課題に対応した事業の経費などについては国が負担する。でも、それ以外の足りない部分については、施設・設備とか用具の使用料であったり、活動の指導料とか、受益者負担にしてもらう、できるところはそういったところを自己負担にしてもらって収入を増やしていく。要は、どこまで増収を目指せばいいのかというところです。そこがある程度明確にならないと、参加費にどれだけ上乗せするのか、利用料にどれだけ取っていくのかというのがなかなか明確になりづらいのかなと感じたところです。
この前、夜須高原に視察に行かせていただいた際、利用料を今上げてますと言っていたので、どういう基準で上げているんですかとお聞きしたら、まだそこはなかなか明確にしづらいという話を聞きましたので、そういったところを今後どこまで考えていけばいいのか、ある程度基準があると分かりやすいのではないかなと思ったところです。



【平野座長】 すみません、お待たせしました。萩原委員、お願いします。



【萩原委員】 身につまされる思いで、発言をするのが本当に苦しかったんですけれども、検討会第2回論点と検討の視点の論点Ⅰ-1の一番下に、「多様な体験活動機会と場を提供する上で」というところの下の検討の視点に、例えば集団宿泊が困難な未就学児のアウトリーチ型教室の実施など、施設利用を前提としない類型による取組を行われているかということで、恐らくこちらに向かう必要があるのかなというふうに思っています。というのは、28施設全てが老朽化して、施設の管理だけで、うちのNWECもそうなんですけれども、相当のものすごい膨大な、莫大な税金が投入されている中で、ここに安全性とかいろんなものを加味していったときに、もっともっとお金がかかっていく。そういったときに、どういう本当に質の高い体験学習とか、そういうのをしていくのか。これを来てくださいではなくて、やっぱりアウトリーチ型にしていくときに、ほかの民間の施設を使ったり、あるいは行政との連携であったりとか、企業との連携とか、そういった新しいこれまでと違うアプローチを考えていかないと、施設ありきで考えていくと堂々巡りになっていくなという気がものすごくいたしました。
青木委員のおっしゃるとおりで、やはり体験格差というのが非常に大きな問題になっていて、キッズドアなんかの調査によると、シングルマザー含めてそうなんですけれども、経済的格差だけではなくて、皆さん親が忙しいので、体験のところに連れていけないという問題もあって、夏休みはないほうがいいという衝撃的な調査結果も出ておりました。そういったところに対してどういうふうに対応していくのか、まさにナショナルセンター、国立だからこそできることは何なのかということを、この機会にしっかりと見ていく必要があって、そこにどのように税金を投入していくのか。やはり体験格差を生まないような、そういった仕組みが必要なんじゃないかなというふうに思いました。
それから、キッザニアさんに関しては、大変孫がお世話になっていまして、私も何度も行かせていただいて、いいなと思いながら、こういうところとの連携、キッザニアさんとの、それぞれの得意分野のところとの連携というところとか、そういったものを今後もっと、前向きを含めてですけど、考えたらいいなと思いました。
先ほど「質」の担保という話があったかと思いますけれども、どれだけそういう人たちと触れ合えるかというか、そういったこともアウトリーチ型でしていくと可能性が高くなってくるのかなとも思いました。以上です。


【平野座長】 御意見ありがとうございます。非常に多方面からの御意見をいただきました。ありがとうございました。
今日は発表の時間もあり、限られた時間でしたので、まだまだお話しいただきたい点がたくさんあるかと思いますが、ちょうど時間となりましたので、本日予定していた議題は終了したということにさせていただきます。
本日は、教育事業ということが議論の中心テーマではありましたが、当然のことながら、それを中心にしながら、様々な観点でお話をいただきました。次回からも各論の議論をしていきますが、当然各論といえども全体的な観点からいろいろな御意見をいただけると思いますので、次回以降、また様々な御意見を頂戴いただければと思います。本日は、御協力いただきましてありがとうございました。
それでは、最後に、今後の検討会の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。


【高木地域学習推進課長】 スケジュールの前に、ちょっとすみません、事務局から。本日はありがとうございました。
資料2-1の2ページでございますけれども、本日御議論いただきたかったのは教育プログラムの内容で、どちらかと青少年向けのいろんな活動に対して、ぜひ御議論いただきたいなと思っておりました。論点Ⅰ-2の部分というのは次回お願いすることになるのですが、こちらがどちらかというと青少年以外、大人向けの関係の話とか、あと青少年を受け入れるに当たっての施設としての環境とか、そういったことを御議論いただこうかなと思っているところでございますので、次回よろしくお願いいたします。
また、資料同じところの5ページでございますけれども、今日御議論いただいたこと、非常にいろいろと我々もありがたかったんですけれども、機構全体としては、本部のところに青少年教育センターがあって調査研究を行われて、それを踏まえて、企画立案に基づいた事業を地方施設でやっていただいている。もしくは青少年の交流事業に関しましては、やはり本部としていろいろと見ていくと。その上で地方施設がどう絡むかといった観点が今後必要なってくるのかなと。本部の頭脳機能と地方施設の役割といった観点も、今後御議論いただきたいなと思っているところでございます。
そういった役割があった上でのその下のところでございますけれども、それぞれオールジャパンとしてのニーズをどう把握して、地方の個々のニーズをどう受け止めて、各施設がどう成果目標等を掲げて回していくのかといったことが重要かなと思っておりましたので、今回、5ページのような資料を御用意させていただきました。次回もこういった形で、もう少し御議論いただけるようなブレークダウンした資料をお渡しできればなと思っているところでございます。
では、次回以降の日程でございます。


【葛城青少年教育室長補佐】 資料6を御覧ください。皆様の出席可能な日を取りまとめまして、より多くの委員に参加いただける日程として、第3回以降の日程をお示ししております。第4回が2月4日、第5回が3月5日という部分が、今回新たに追加した部分でございます。第3回以降の日程で、既に御予定が入っている委員におかれましては、大変申し訳ございません。もし日程調整が可能必要な場合にはであれば、オンラインでも結構ですので、ぜひ御参加いただければと思います。
また、本日の議事録については、後日委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
私からは以上です。


【平野座長】 それでは、以上をもちまして、第2回の検討会を終わります。本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

総合教育政策局地域学習推進課青少年教育室