日本ファインセラミックス・東北大学が 骨再生材料リン酸八カルシウム(OCP)の世界初の量産化に成功

2024/03/19  日揮ホールディングス 

2024 年 3 月 19 日

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日本ファインセラミックス・東北大学が
骨再生材料リン酸八カルシウム(OCP)の世界初の量産化に成功
-最先端技術で、社会課題解決に向けた新規事業を創出-

日揮ホールディングス株式会社(代表取締役会長 CEO 佐藤雅之)は、日揮グループの機能材製造事業会社である日本ファインセラミックス株式会社(代表取締役社長 田中宏、以下、JFC)が、骨の再生能力に優れ、生体吸収性が高い「リン酸八カルシウム(英名:Octacalcium Phosphate、略称:OCP)※1」について、今般これまで困難とされてきた量産化に世界で初めて成功し、幅広い医薬品・医療機器製造会社との協業を目指してサンプル出荷を開始しましたので、お知らせいたします。

1.背景及び目的

日本は現在、世界でもっとも人口の高齢化が進み「超高齢社会」に入っており、世界的にも 2030 年にはイタリア、ドイツ、スペインなどの国々でも「超高齢社会」を迎える見通しです。こうした人口の高齢化に伴い、骨折、変形性脊椎症、変形性関節症、骨粗鬆症等、骨関節疾患に罹患した患者数が増加し、一度骨の病気になると QOL(Quality of Life:生活の質)が著しく低下するため、その治療方法として、優れた骨再生材料のニーズが高まっていくと予想されています。

セラミックス製造会社である JFC は、新規事業として「骨の再生医療」に注目し、東北大
学大学院歯学研究科 鈴木 治教授による長年にわたる OCP の研究を基にして、その研究成果の社会実装化を更に加速させるため、臨床応用拡大を見込んだ OCP の量産化に関する共同研究開発を進めてきました(OCP は骨の無機成分である骨アパタイト結晶の前駆体に位置づけられる物質です)。

2.経緯

「骨の再生医療」に用いる素材となる骨再生材料の原料には、現在、リン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイト(略称:HA)や、β 型リン酸三カルシウム(略称:β-TCP)が使用されています。患者様の治療効果と早期の社会復帰を促すために、骨再生能力が高く、優れた生体吸収性がある骨再生材料のさらなる開発および商業化が求められています。

こうしたなかで、東北大学大学院歯学研究科の鈴木治教授は、1991 年の研究を嚆矢にOCP が持つ高い骨再生能力や優れた生体吸収性を見出し、同年に局所的に合成できかつ連続合成可能な反応管によるベンチスケールレベルでの合成手法を開発したほか、バッチ式晶析法による安定した合成方法(数 g/バッチ)を確立し、OCP の骨再生能力や合成法に関する研究を進めてこられました。しかし、それ以上のスケールアップは、OCP の品質確保の点(副生物の析出)で非常に難しく、ベンチスケールでの合成を超えられないという、課題を抱えていました。このため、JFC は鈴木教授らとともに OCP 合成のスケールアップに 2013 年に着手し、医薬品合成において注目されている連続フロー合成法のコンセプトを参考に、2023 年 3 月に副生成物を伴わない均一組成の OCP の連続晶析プロセスへの応用を成功させ、臨床評価に耐え得る量の合成を可能にしました。

3.今後の方針

JFC が確立した連続晶析プロセスによる OCP の生産能力は、1 時間※2当たり 170 g と飛躍的に向上しました。本プロセスによる製造法は、OCP 需要の増加に応じて更なるスケールアップが比較的容易に可能です。今後、JFC は、この OCP を原料に幅広い医薬品・医療機器製造会社との協業を通じて、OCP の製品化を目指します。

東北大学大学院歯学研究科の鈴木治教授コメント
1980 年代にバイオセラミックスブームが起き、1990 年代までに HA やβ-TCP の上市で、
リン酸カルシウム系の材料の開発は一段落した感がありました。しかし 2000年代になって、炭酸アパタイトといった生体吸収性のリン酸カルシウム材料の開発が新たに進められています。この間、私達の研究グループは 1991 年にベンチスケール合成方法の確立によって、ある程度の量を合成できるようになったことで、一連の学術研究を継続できかつ独自成果を上げたことで、現在、OCP バイオマテリアルが世界中の生体材料研究者や企業の技術者から注目を集めるに至っていると考えています。共同研究を続けてきた JFC が、ベンチスケール合成を発展させ、均一な品質を保ちながら臨床評価に耐え得るだけの量の合成が可能になったことは喜ばしい限りです。OCP の社会実装が進むことを期待しています。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.jgc.com/jp/news/assets/pdf/20240319j.pdf

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