皮膚血管肉腫治療薬の第II相試験開始のお知らせ

2023/10/26  株式会社 レナサイエンス 

2023 年 10 月 26 日

株式会社レナサイエンス

皮膚血管肉腫治療薬の第Ⅱ相試験開始のお知らせ

当社 PAI-1 阻害薬 RS5614 の皮膚血管肉腫*1の第Ⅱ相医師主導治験が開始されましたのでお知らせします。

1 次治療薬である抗がん剤パクリタキセル*2が無効となった皮膚血管肉腫患者を対象にパクリタキセルと RS5614 の併用による有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相医師主導治験を、東北大学、自治医科大学、九州大学、名古屋市立大学、国立がん研究センター中央病院、愛媛大学等の医療機関と共同で実施します。

皮膚血管肉腫は、血管内皮細胞*3ががん化した極めてまれな腫瘍です。血管肉腫に対しては抗がん剤パクリタキセルが1次治療薬となっていますが、パクリタキセルによる化学療法と放射線療法の併用においても、大半の症例では長期的ながんの縮小あるいは消失を得ることは困難な状況です。したがって、2次治療における有効性・安全性の高い治療法や治療薬の開発が望まれています。

PAI-1 は血管内皮細胞に発現していますが、血管肉腫において強く発現しており、PAI-1の発現が強い患者ではパクリタキセルの効果が不充分であることが報告されています。また、パクリタキセルは血管肉腫にアポトーシス*4を誘導しますが、PAI-1 を強く発現しているがん細胞はアポトーシスを起こしにくいことも分かっています。これら一連の知見から、パクリタキセルと PAI-1 阻害薬 RS5614 とを併用することにより、パクリタキセルの血管肉腫に対する治療効果が増強される可能性が強く示唆されます。

本治験は、パクリタキセルによる治療歴を有し、パクリタキセル無効後もパクリタキセル投与が継続されている再発あるいは切除不能な患者(2 次治療患者)16 例を対象にパクリタキセルと RS5614 との併用投与の有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相医師主導治験です。2023 年 8 月 17 日に治験届を提出し、同年 10 月 25 日に最初の被験者を登録いたしました。本研究で有効性を検証できれば、有効な治療薬のない皮膚血管肉腫患者に対して新たな治療法が提案できます。

なお、本件による業績への影響は現時点では特にありません。

以上

*1 皮膚血管肉腫
血管肉腫は皮膚がんの一種で、とりわけ頭皮の血管肉腫は 100 万人当たり 2.5 人程度とまれですが、極めて悪性度が高く、急速に進行し5年の無病生存率は 20%以下と報告され、標準的な治療法は確立されていません。各施設ですぐに複数の治療が実施されます。

*2 パクリタキセル
太平洋イチイの樹皮から抗がん作用が見いだされた化学療法剤(抗がん剤)で、現在は化学合成されています。細胞の分裂に関わる「微小管」に結合して、がん細胞の分裂をとめ、死滅させる(細胞死)と考えられています。

*3 血管内皮細胞
血管の内腔を覆う細胞です。血管内皮細胞は血管の構成要素となるだけでなく、血液と組織が酸素や栄養素などの物質交換を行う場として働き、さらには様々な生理活性物質を産生して組織や臓器の機能を維持する働きがあります。

*4 アポトーシス
不要になった細胞を除去するため、細胞自らがプログラムを作動して自殺する細胞死現象をいいます。

【ご参考:本適時開示に関する QA】
?皮膚血管肉腫はどのように治療されているのですか。
海外での臨床試験結果に基づき、2011 年に公知申請によりタキサン系抗がん剤であるパクリタキセルが保険適応となり、現在では血管肉腫治療の第1選択薬となっています。しかし、その後の多施設共同後向き研究から、血管肉腫においてタキサン系抗がん剤を用いた放射化学療法後でも長期寛解を得ることが困難であることが示されました。現在、セカンドライン治療としては抗がん剤であるパゾパニブ、エリブリン、トラベクテジンがありますが、有効性が高くないことや安全性に懸念があるなどの課題があり、有用な治療法・治療薬が望まれています。

?RS5614 は皮膚血管肉腫治療をどのように変えるのですか。
皮膚血管肉腫治療では、アポトーシス誘導剤のパクリタキセルが第1次選択薬として使用されており、これに抵抗性となった場合の有効なセカンドライン治療の開発が待たれています。1)血管肉腫では PAI-1 の発現が極めて強いこと、2)PAI-1 を強く発現しているがん細胞ではアポトーシス耐性になっていることから、PAI-1 阻害薬を併用することにより、パクリタキセルの血管肉腫治療効果を増強できる可能性に着目しました。本治験でRS5614 の有効性が証明されれば、皮膚血管肉腫患者において1次治療無効後の長期生存を誘導できる画期的な治療法となる可能性があります。

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