精神症状を伴う月経前症候群/月経前不快気分障害に対するピリドキサミンの第2相医師主導治験結果のお知らせ

2024/06/21  株式会社 レナサイエンス 

2024 年6月 21 日

株式会社レナサイエンス

精神症状を伴う月経前症候群/月経前不快気分障害に対する
ピリドキサミン RS8001 の第 II 相医師主導治験結果のお知らせ

当社は、近畿大学、東北大学、東京医科歯科大学、東京女子医科大学及びその他複数の民間の医療機関と共同で、精神症状を伴う月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)*1に対する RS8001(ピリドキサミン)の第Ⅱ相医師主導治験(プラセボリードイン*2、プラセボ対照二重盲検 3 群比較試験)を実施しました。

2024 年6月 21 日に本試験の全データ解析後の最終結果が纏められました。主要評価項目は統計的な有意差は認められませんでした。副次評価項目において実薬群での低下傾向がみられましたが有意差は認められませんでした。概要は以下のとおりです。

[結果]
PMS/PMDD に対するピリドキサミンの有効性、安全性及び用法用量を、無作為化二重盲検プラセボ対照3群比較試験により検討しました。

有効性
●最終評価時点(下図 v7)における?体期後期の DRSP negative mood*3の総和の月経周期3周期目(下図 v3)からの変化量を主要評価項目としましたが、本剤低用量群、本剤高用量群、プラセボ群で、統計的な有意差は認められませんでした。
●副次評価項目である DRSP Negative mood score 及び DRSP 総和の Visit3 からの変化量(絶対値)の平均値はプラセボ群に比べて低用量群、高用量群の順で大きかったものの、有意差は認められませんでした。
●副次評価項目である?体期 HADS の Visit 3 からの不安尺度合計点の変化量において、実薬群で低下する傾向がみられたものの有意差は認められませんでした。

安全性
●有害事象及び副作用ともに、本剤低用量群及び本剤高用量群に、特に多く発現したものはなく、本剤の安全性に問題はありませんでした。

以下、本治験の詳細を説明いたします。

社会が複雑になり多くの人がストレスを抱えて生活していますが、身体的な病気に比べて、精神的な病気に対する医療は未だ充分とはいえません。当社では、女性の社会生活が困難となる PMS/PMDD に対する治療薬の研究開発に取り組んでいます。PMS は、月経前の3~10 日ほど精神的症状や身体的症状が続き、月経が始まると軽快したり消失したりする女性に特有の疾患です。また、精神的症状がより重い場合は PMDD に分類されますが、現在では、それらは連続的な病気と考えるのが一般的になっています。生殖年齢女性の 70~80%が月経前に何らかの症状を有し、患者の日常・社会生活に影響を与える場合には治療対象となり、わが国での研究では、社会生活困難を伴う PMS の頻度は 5.4%、PMDD の頻度は 1.2%と報告されています。薬物治療としては、抗うつ薬(SSRI)*4や低用量ピル*5が適応外処方で使用されていますが、副作用や使用に対する抵抗感もあり充分に普及していません。当社は、PMS/PMDD に対する RS8001 の第Ⅱ相医師主導治験を、複数の大学、医療機関と共同で進めました(プラセボリードイン、プラセボ対照二重盲検 3 群比較試験、目標症例数 105例)。

2019 年度に日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創生事業(CiCLE)に採択され、2020 年 11 月から治験を開始しました。新型コロナウイルス感染の拡大時には患者来院数が大幅に減少したため症例登録が確保できないなど課題がありましたが、民間医療機関を追加し、院内ポスターや啓発用の冊子を作成し、治験調整医師による薬剤師対象Web セミナーを実施し、ボランティアパネルの活用等を行うなど対応しました。その結果、2023 年 10 月末までに目標症例数を超える 120 例の本登録を行い、2024 年 2 月には治験を終了しました。

精神領域における医薬品開発と同様に、本治験における最大の課題はプラセボ効果の影響です。そこで、プラセボ効果を排除するために、プラセボリードインという試験デザインを採用しましたが、依然ばらつきが大きく統計的有意差は認められませんでした。ばらつきの原因として、評価指標が検査値などの客観的な数値ではなくインタビューフォームという主観的な評価であったことや、PMS/PMDD の疾患は、幅広い対象患者を含んでいる可能性があり患者集団の不均一差が影響していたことが考えられます。

[今後の予定]
今後の開発方針については日本医療研究開発機構(AMED)と協議しております。

[業績への影響]
2025 年 3 月期業績への影響は現時点ではありませんが、今後開示すべき事項が生じた場合には適時開示いたします。

*1 精神症状を伴う月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)
月経前、3~10 日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものを PMS といいます。排卵のリズムがある女性の場合、排卵から月経までの期間(?体期)に卵胞ホルモンと?体ホルモンが多く分泌されます。この?体期の後半にこれらのホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことがPMS の原因と考えられています。精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。特に、うつ状態、焦燥感、不安感、強迫感、自己喪失感などの精神症状が前面に出る重症例で、社会生活に重大な障害になる場合を PMDD といいます。

*2 プラセボリードイン
プラセボには有効成分は含まれていませんが、心理的な効果で病気の症状が改善することがあります(プラセボ効果)。そこで、実薬投与の前に一定期間プラセボを服用していただき、プラセボ効果の大きな被験者を除外して治験を実施する試験デザイン(プラセボリードイン)を採用しました。

*3 DRSP negative mood
DRSP は Daily Records of Severity of Problems の略です。 PMS や PMDD は血液検査や画像検査での異常がありませんので、症状と月経周期との関連を観察することしか診断の手立てがありません。そこで、毎日自分の症状と月経周期を記録してその記録を医師が確認することが、正確な診断には必要です。DRSP は診断のための症状記録ツールとして開発され、英国産婦人科学会はじめ、国際的に推奨されています。

DRSP は臨床試験での PMS の重症度尺度としても、最も広く使用されています。21 項目の PMS 症状と、それによる日常生活への支障を問う 3 項目の、計 24 項目から成り、それぞれに 1(全く無い)~6(非常に強い)までの 6 段階を記載します。 DRSP negative mood は、DRSP の中でもコア症状である、depression, anxiety, lability, anger / irritability の総和です。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS09109/01bf2b16/9b1b/48e6/8053/efebdf6ac4c8/140120240621533987.pdf

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