石川県情報公開審査会からの答申について(行政情報サービスセンター(総務課))

2023/03/30  石川県  


令和5年3月30日





石川県情報公開審査会からの答申について
石川県情報公開条例(平成12年石川県条例第46号。以下「条例」という。)に基づき

公開請求のあった公文書の一部公開決定に対する審査請求に係る諮問について、本日、石川県情報公開審査会会長(小堀秀行弁護士)から、石川県教育委員会に下記の答申がなされました。

答申の内容は、令和5年3月22日に開催した石川県情報公開審査会(条例第26条の規定により非公開)において決定されたもので、答申書の写し及び答申の概要は別紙のとおりです。



答申第223号(諮問案件第285号) 石川県内の公立小・中・高・養護・盲学校に関する体罰事故報告書(加害教師の反省 文、顛末書、診断書、事情聴取記録、その他一切の添付文書等を含む)
(過去3年度分)
に係る公文書一部公開決定に対する審査請求についての諮問

総務課

行政情報サービスセンター

担当者:杉本

電 話:内線 3384
直通 225-1236


石川県情報公開審査会の答申概要(答申第223号)

1 審査請求の対象となった本件公開請求の対象文書(諮問案件第285号)
石川県内の公立小・中・高・養護・盲学校に関する体罰事故報告書(加害教師の反省文、顛末書 、診断書、事情聴取記録、その他一切の添付文書等を含む)過去3年分

2 本件公開請求に対する処分の内容
(1)一部公開決定
(2)非公開部分及びその理由
ア 非公開部分
・ 所属、氏名その他特定の個人を識別できる情報
・ 個人の権利利益を害するおそれのある情報
・ 人事管理に係る情報
イ 非公開理由
・ 石川県情報公開条例第7条第2号、第6号、第7号に該当
・ なお、当該審査請求後に第7号を削除し、第3号を追加

3 担当課
石川県教育委員会事務局教職員課

4 審査請求等の経緯
(1)令和3年 8月23日 公開請求
(4)令和4年 1月17日 諮問
(2)令和3年 9月30日 一部公開決定
(5)令和5年 3月30日 答申
(3)令和3年12月30日 審査請求

5 諮問に係る審査会の判断結果
石川県教育委員会(以下「実施機関」という。)は、本件審査請求の対象となった公文書につき、当
審査会が公開相当と判断した部分については公開すべきであるが、その余の部分について非公開とし
たことは妥当である。
該当条項
審 査 会 の 判 断 要 旨
行政手続条例
第8条
情報公開条例
第7条第2号
(1)主な争点

① 審査請求人は、行政手続条例第8条に照らせば、
「公開しない理由」が「公開しない部分」のいずれに該当するか、及びその理由を具体的に記載していないこ
とから、理由付記としては不備があるとの主張。
② 審査請求人は、審査請求の審議の最中に理由の変更を行ったことは、信義に反
するとの主張。
③ 審査請求人は、被害児童生徒の特定につながる場合、加害教員等の所属・氏名
等を非公開とする余地があることは認めるが、その判断にあたっては一般県民


を基準とすべきであるとの主張に対し、実施機関は、情報公開条例の解釈運用基
準において、
「請求権者であれば誰でも公開請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれると解する。」と主張。

(2)審査会の判断
① 理由付記の不備について
理由付記として不十分であり、非公開情報の非公開理由の該当性について判
断せず、処分取消の答申を行うことも考えられるが、かかる答申をした後、実施
機関が理由を追加・変更した上で、同一の部分を再度非公開とする可能性があ
り、当該処分に対して審査請求があれば、改めて審議することになり、非効率と
なる。
また、審査請求人は、本件処分を取り消し、公文書公開決定を求める旨を主
張しており、本件処分の違法性及び不当性の全般を審査の対象としている。
このため、紛争の一回的解決の利益を重視し、非公開情報の非公開理由の該
当性について判断した上で答申する。

② 審査請求後の理由変更について
最高裁判例において、
「一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である。」と示し
ていることから、一部公開決定通知書に記載した非公開理由以外の主張が認め
られないものではない。

③ 加害教員等の所属・氏名等の公開について
高松高裁裁判例(最高裁上告棄却決定)において、「体罰に係る情報は、その性質上、取扱いに配慮を要する(中略)被害生徒と特定の関係のある者が開示請求をする可能性が存することも併せ考慮すれば、本件においては、被害生徒の同級生を含む在校生やその保護者、近隣住民等が知り得る情報についても、「他の情報」に含まれると解すべき」と判示する。
このことから、学校の関係者や自宅周辺の住民という一定範囲の者にも、被
害児童生徒の特定がされることを可能な限り回避しなければならず、照合の対
象となる「他の情報」の範囲については、学校関係者等であれば保有している
又は入手可能であると通常考えられる情報についても除外することなく、被害
児童生徒の識別可能性を判断する。

(詳細については、答申書本文を参照のこと)

審議経緯 審査回数 8回

答申第223号
答 申 書
令和5年3月

石川県情報公開審査会


1

第1 審査会の結論
石川県教育委員会(以下「実施機関」という。)は、本件審査請求の対象となった公文書
につき、別表において、当審査会が公開相当と判断した部分(区分9)について公開すべき
であるが、その余の部分について非公開としたことは妥当である。

第2 審査請求に至る経緯
1 公開請求の内容
審査請求人は、令和3年8月22日付で、石川県情報公開条例(平成12年12月19日石川県条例第46号。以下「情報公開条例」という。)第6条第1項の規定により、実施機
関に対し、次の公文書の公開請求(以下「本件公開請求」という。)を行った。

(本件公開請求の内容)

石川県内の公立小・中・高・養護・盲学校に関する体罰事故報告書(加害教師の反省文、顛末書、診断書、事情聴取記録、その他一切の添付文書等を含む)過去3年度分
2 実施機関の決定
実施機関は、本件公開請求に係る対象公文書(以下「本件対象文書」という。)を特定し、

令和3年9月30日に情報公開条例第8条第1項の規定による部分公開を決定(以下「本件処分」という。)し、次のとおり公開しない部分及び理由を付して審査請求人に通知した。

(公開しない部分)

・所属、氏名その他特定の個人を識別できる情報

・個人の権利利益を害するおそれのある情報

・人事管理に係る情報

(公開しない理由)

石川県情報公開条例第7条第2号、6号、7号に該当
3 審査請求
審査請求人は、令和3年12月30日に本件処分を不服として、行政不服審査法(平成26年6月13日法律第68号)第2条の規定により、実施機関に対して審査請求を行った。
4 諮 問
実施機関は、令和4年1月17日に情報公開条例第19条第1項の規定により、石川県情
報公開審査会(以下「当審査会」という。)に対して、本件処分の取消しに係る審査請求に
つき諮問を行った。
第3 審査請求人の主張(反論)要旨
1 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、本件処分を取り消し、公文書公開決定を求めるというものである。



2

2 審査請求の理由等

(1)審査請求書における理由について
ア 原処分では、加害教員の所属・氏名を非公開にした具体的理由の記載がなく違法(行政手続条例第8条違反)
実施機関が所管する加害教員の所属、職名、氏名は、同所管するホームページにお
いて、定期人事異動表が公開されていることからも明らかなとおり、「慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報」にあたる。
しかしながら、原処分では、加害教員の「所属、氏名その他特定の個人を識別できる情報」を公開しないとしており、情報公開条例の解釈運用基準(以下「解釈運用基準」という。)に反している。
さらに、公開しない理由欄には号数だけが記載されており、どういう理由でただし
書規定を適用していないのか具体的な理由が示されていない。原処分は石川県行政手
続条例(平成7年10月6日石川県条例第33号。以下「行政手続条例」という。)
第8条に違反し、不当であり違法な処分である。

イ 加害教員の所属・氏名については、被害生徒の識別可能性を考慮したとしても、一般
県民が照合可能であるか否かを基準として公開すべき
加害教員氏名については、被害児童生徒の特定につながる場合非公開とする余地があ
ることは認めるが、その判断にあたっては一般県民を基準とすべきである。
また、学校はクラス名簿等を公にしておらず、一般人は教員の所属や氏名から生徒氏名と照合する手段がない。
したがって、加害教員氏名については、一般県民が被害生徒を識別できる場合を除き、
情報公開制度の趣旨を踏まえ適切に公開すべきである。

ウ 情報公開条例第7条第6号及び第7号の適用箇所が明らかでなく、理由の付記に不備
があり(行政手続条例第8条違反)、仮に加害教員氏名に適用したのであれば条例の趣
旨に反し恣意的であり違法
原処分では公開しない部分欄に「所属、氏名その他特定の個人を識別できる情報」「個人の権利利益を害する情報」「人事管理に関する情報」と記載してあるだけで、公文
書のどの箇所に情報公開条例第7条第6号及び第7号が適用されたのかわからない。
特に、情報公開条例第7条第7号については、解釈運用基準で厳格な基準が定められ
ている。
したがって、裁決にあたっては、適用箇所を明らかにした上で、要件に合致しない箇
所は全て公開するよう求める。
(2)実施機関の弁明に対する反論について
ア 加害教員の所属・氏名を非公開にした具体的理由の記載がなく違法。情報公開条例
第7条第2号ただし書イを適用した上で、加害教員の所属、氏名を公開すべき



3

本件処分においては、実施機関が石川県情報公開審査会答申第213号(以下「答申第213号」という。)を前提としているのであれば、当時の「特異な事例」との
指摘、反省を踏まえた上で処分しているはずである。つまり、今回公開された部分に
関して言えば、答申第213号で言うところの「個人の人格権と密接に関わりのある内容」、すなわち条例第7条第2号の「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」については、関
係者氏名の公開、非公開に関わらず常に非公開となる情報であることから、当然、非
公開となっているはずである。

こうした観点から本件公開文書をみると、少なくとも現在公開されている部分には
特異な記述は認められない。また、加害教員が行った体罰についても事実関係の調査、
報告内容の記載にとどまっており、当該教員が具体的にどのような懲戒、訓告処分を
受けたか推測できるような記述はない。つまり、現在公開されている部分は、懲戒処
分等の内容に関する情報そのものと認められる記述がなく、公務員の立場を離れた個
人としての評価をも低下させる公務員の私生活に影響を及ぼす情報とは認められない。

したがって、加害教員の所属、氏名については、審査請求書で指摘したとおり、実
施機関が自ら教職員の人事異動を公表しているという事実を踏まえ、「人事異動の公表その他実施機関により職名と氏名とを公表する樌行がある場合」(情報公開条例第7条第2号の解釈運用基準10(3))に該当するものとして、情報公開条例第7条
第2号ただし書きイを適用すべきことは明らかである。
イ 情報公開条例第7条第2号の「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別 することができる個人に関する情報」中の「他の情報」については、原則一般人基準
としたうえで、被害児童生徒の意向を確認すべき
実施機関が保有する児童生徒及び教員の県の保有個人情報については、石川県個人
情報保護条例(平成15年3月24日石川県条例第2号)第6条に利用及び提供の制
限に関する規定が定められている。

当該規定に従えば、県立学校、実施機関は自らの保有個人情報の提供相手、範囲に
ついて、目的内の場合は当然として、目的外の場合であっても把握していることにな
る。また、市町立学校においても、各々の自治体の個人情報保護条例に基づき同様に
把握していることになる。したがって、特定人基準の適用にあたっては、「近隣住民が請求者であった場合」といった漠然とした可能性の話ではなく、どのような範囲に、
どういった保有個人情報を提供しているのか具体的に示したうえで、適用した具体的
根拠を付すべきである。つまり、実施機関の弁明には、特定人基準を適用する背景や
根拠が欠けており理由がない。

上記に加え、体罰やいじめに係る個人情報の流通については、行政側の都合だけで
判断するのではなく、個人情報の自己情報コントロール権を尊重し、被害児童生徒本



4

人又はその保護者の意向に基づき行われるべきである。関係者の意向を確認する手続
きについては、情報公開条例第14条に定められている。

しかし、実施機関は本件処分について情報公開条例第14条に基づく手続きを行っ
た形跡がなく、被害児童生徒本人の意向は全く分からない。実施機関の対応には被害
児童生徒に寄り添うという視点が欠けており著しく不当である。

重ねて、一般の県民には教員の所属や氏名から生徒氏名を特定することはできず、
名簿等の学校内部の書類の入手による情報はむしろ解釈運用基準で示される「特別の調査をすれば入手し得るかもしれない情報」に当たると考える。個別具体の事案にお
いて情報自体の性質、教員が関わる生徒集団の規模等の周辺的な状況を考慮すべきで
あり、どのように個人識別性を判断したのか説明を求める。
ウ 情報公開条例第7条第6号及び第7号に関する弁明は非公開の理由を了知し得るも
のとは認められず、原処分には理由付記の不備があることから違法
実施機関は情報公開条例第7条第6号について縷々述べているが、公開された文書
では見出しも含めて黒塗りされている箇所が多数あり、実施機関の弁明が事実である
か検証することすらできない。実施機関の原処分には、理由付記の不備があることは
明らかであり違法である。

また、実施機関は、情報公開条例第7条第7号についても縷々述べているが、同条
同号の手続きについて何ら言及がない。正規の手続きを経ていないのであれば、同号
の適用は認められない。もしも、非公開を正当とする理由の有無に関わらず、「約束」
さえあれば非開示とすることができることとなれば、実施機関の恣意的判断で無制限
に非公開とすることができることとなり、条例の趣旨に著しく反する。

実施機関は、恐らく答申第213号の「情報公開条例第7条第7号に規定する『当該情報が公にされないことに対する当該個人(略)の信頼が保護に値するものであり、これを公にすることにより、その信頼を不当に損なうことになる』おそれも否定できない・・・」との箇所を参考にしたのだと思うが、この件はあくまで条例に沿った手
続きを行うことを前提としたものである。実施機関には、条例を遵守する義務がある。
条例に反する形での、非公開の約束は当然無効である。

実施機関の原処分には、理由付記の不備があることが明らかである。また弁明によ
ると、条例の解釈、適用に重大な誤りがあることは明白であり違法である。
(3)実施機関からの追加資料(ヴォーン・インデックス)に対する意見書について
ア 非公開理由の「加害教員等の氏名を公にすれば私生活に影響を及ぼす等、個人の権利を侵害するおそれがある」について
大阪高等裁判所平成23年(行コ)第153号同23年2月2日判決等の司法判断
では、体罰事故報告書に記載の情報は、職務遂行に係る情報であり、公務員のプライ



5

バシーではないとされていることから、体罰を行った加害教員等公務員個人の権利利
益を不当に害するおそれがあるとはいえないとしている。
また弁明書では、加害教員の氏名を公にした場合、私生活等に影響を及ぼすとして
いるが、先に挙げた関連判決では、そのような立場を取っていない。

イ 非公開理由の「学校関係者等が有する他の情報と照合すれば、被害児童生徒が識別されるおそれがある情報」について
体罰事故報告書における児童生徒の特定可能性の、いわゆる「特定人基準」につい
ては、先に挙げた関連判決等で、一般的には認められていない。
また「体罰事案の経緯」を、これを理由に覆い隠すことは、いたずらに個人情報を
盾に説明を怠っており、実施機関が事実関係を隠蔽していると不信感を抱かざるを得
ない。適切に開示することは、文部科学省が「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」等でも趣旨を示しているところである。
被害者氏名等の個人情報を除き、事案の経緯を公開することは、学校や県教育委員
会が説明責任を果たして体罰改善への姿勢を示すことになり、むしろ被害児童生徒や
その保護者をはじめとする県民の信頼回復に資すると考える。

ウ 非公開理由の「人事管理に関する情報であり、公にすることで公正又は円滑な事務事業の執行に著しい支障を及ぼすことになる情報」について
実施機関は「資料の表題」、「校長の加害教員への所見」等を非公開とするためにこ
の理由を挙げているが、これらを公開したことによる「著しい支障」の実質性や、
法的保護に値する蓋然性があるとはいえず、不当である。
また、これを理由に体罰事案後の「今後の対応」を伏せることは、著しく不当であ
る。
「公正又は円滑な事務事業の遂行」などというが、体罰事案後の対応を伏せること
で、改善の議論がなされず、結果として今日に至るまで、同様の体罰事案の防止に至
っていない。体罰事案における学校側の対応を公開することは、学校教育法が禁止し
ている体罰の抑止という、教員が最優先すべき本来の目的遂行につながる。体罰事案
の態様や処分を明らかに公にすることで、体罰抑止に向けた議論を進めるべきであり、
これは情報公開条例第一条の趣旨にも沿うものと考える。
エ 非公開理由の「公にした場合、PTA会長との信頼を不当に損なうこととなるほか 率直な意見交換に混乱を生じさせるおそれやPTA会長の不利益を与えるおそれがある情報」について

実施機関は「学校からPTA会長への学校の今後の対応及び加害教員の様子についての報告」を非公開とし、理由をこのように示している。体罰問題への対応について
の学校側による報告であるから、公開することで「PTA会長との信頼を損なう」ことや、「意見交換に混乱を生じさせるおそれ」、「PTA会長の不利益を与えるおそれ」があるとは認められない。

具体性や実質性を欠き、主観的形式的抽象的な主張を元に非公開部分に含むことは
不当である。



6

オ 非公開理由の「被害児童生徒又は保護者の発言等であり、他人に知られたくない機微情報」について
通常、機微情報とされるのは、個人の信条や病歴、性生活など他人に知られたくな
い情報に限られるべきである。心情の吐露等の発言は発言者の人格と結びついており
保護すべきだとしても、それを理由に、事案の経緯や単なる事実行為に言及した発言、
事務的発言を含む記述内容を広範に不開示することは許されず、記述内容に照らして
該当する部分のみに限って非公開とすれば足りる。例えば「保護者面談の日時・場所、参加者、問題点」等は、明らかに機微情報とは言えず、違法な不開示である。機微情
報自体は保護すべきであっても、非公開の理由として濫用することは許されない。
カ 追加資料(ヴォーン・インデックス)の提示で、不開示理由が変更されたことにつ
いて
実施機関は当初、被害児童生徒及びその保護者の発言について、情報公開条例第7
条第7号の非公開約束情報にあたるとしていたが、新たに示されたヴォーン・インデ
ックスによって、実施機関が当初認識していなかった別の理由に変更した。
情報公開の手続きにおいて、不開示理由を示すことが求められているにもかかわら
ず、不服申し立ての後、審査請求の審議の最中に理由の変更を行うことは、信義に反
している。
これは、審査請求人側に意見書提出を求めさえすれば、公平性を取り戻せるという
問題ではない。実施機関が当初、非公開部分について精査せず、不開示理由が曖昧な
まま非公開ありきで決定を出し、ヴォーン・インデックスを作成する段になって理由
を後付けしたと疑われる行為であり、当初から具体的な不開示の理由を用意していな
かった実施機関の決定自体の正当性を揺るがすものである。

第4 実施機関の主張(弁明)要旨

1 審査請求に対する弁明について

審査請求人から公開請求があった公文書に対応する「体罰事故報告書」については、教員
が体罰を行ったと疑われる事件が発生した場合に当該学校の学校長や市町教育委員会から実
施機関へ提出されるものであり、教職員の氏名・年齢・性別等や被害児童生徒の氏名・年齢
・性別・学年等のほか、事故に至る経緯や症状の程度、事故後の関係者への対応の内容等が
記載されている。
「体罰事故報告書」の加害教員の所属・氏名に関しては、公にした場合、公務員の私生活
等に影響をおよぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に
値するもの等を判断し、情報公開条例第7条第2号の規定により非公開としたものである。
なお、同号ただし書イにより、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にす
ることが予定されている情報に該当する場合には、公開するものとされているが、当該教員
の氏名を公にすべきと明文で規定し、又は公にすべきとの趣旨を含む法令又は他の条例はな
いほか、当該教員の氏名が、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するか否かについては、答申第213号において、「体罰事故報告書は、懲戒処