鉄骨補強部材を無溶接で接合する「アドジョイント工法」

2024/12/20  株式会社 コンステック 

既存H形鋼と角形鋼管に対応

 株式会社コンステック(大阪府大阪市/社長 茶家義明)と国立大学法人豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市/学長代行 若原昭浩)は、鉄骨造建物の耐震改修において、既存H形鋼と既存角形鋼管を対象とした、補強部材をエポキシ樹脂接着剤により接合する「アドジョイント工法」を開発しました。
アドジョイント工法は、独自の接着接合システムにより現場での溶接作業を完全に排除した新しい接合工法です。溶接作業を不要とすることで、火災リスクが抑えられ、煩雑な火気養生や残火確認といった付随作業も省略できます。これにより、工期の短縮と施工の柔軟性が大幅に向上します。


特に、可燃性物質を扱う工場や倉庫など、従来は火災リスクにより耐震改修が困難だった施設においても、安全かつ効率的な施工が可能となります。また、夜間や休日など限られた時間での施工にも対応できるため、施設の稼働を極力妨げることなく改修工事を実施できます。


図1 アドジョイント工法


【工法概要】
 アドジョイント工法の力の伝達機構は図2に示すとおりで、せん断抵抗部・引張抵抗部・圧縮抵抗部に分かれています。
 せん断抵抗部は複数枚の鋼板と接着剤から構成されており、一番外側の凹型プレートとベースプレートが嵌合接合されています(図3)。これにより、接着部には引きはがす力が生じないため、高い接着強度が期待できます(H形鋼タイプと角形鋼管タイプ、共通)。
 引張抵抗部はH形鋼タイプの場合、フランジ側面に設置されるボルトと引張抵抗PL、山形鋼とスペーサーから構成されており、既存フランジへの孔開けは不要です。ただし、角形鋼管タイプの場合、図4に示すM12程度の小径の貫通ボルトが必要で、フェールセーフのための最低限の孔開けを行います。
圧縮抵抗部はベースプレートからせん断抵抗プレートを介して、既存部材へ直接面圧により力を伝達する構成になっています。


図2 力の伝達機構

図3 部材構成


図4 角形鋼管タイプ





【特徴】
現場溶接を用いないため、厳重な火気養生が不要
既存部材にボルト孔を設けないため、断面欠損が生じない
(角形鋼管への側面接着時には、最小限の孔開け有り)
接着部に引張力が生じないため、せん断方向の高い接着力に期待できる

【性能確認試験】
 各種試験を実施し、その性能を確認しています。


H形鋼タイプの試験

角形鋼管タイプの試験

面外加力試験

                  写真1 各種試験状況

【関連発表論文】
- 中尾貞治,神谷章太,鈴木公平,津之下睦,池永周造,山本梨乃,松本幸大:既存H形鋼部材に対する耐震補強材の接着接合法に関する研究 その1 接合法概要と実験概要,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造III,pp.951-952,2023.7
- 神谷章太,津之下睦,鈴木公平,中尾貞治,池永周造,山本梨乃,松本幸大:既存H形鋼部材に対する耐震補強材の接着接合法に関する研究 その2 実験結果とFEM解析,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造III,pp.953-954,2023.7
- 中尾貞治,津之下睦,鈴木公平,神谷章太,池永周造,樋口彰悟,松本幸大:既存角形鋼管柱に対する耐震補強材の無溶接接合法に関する研究 その1 接合法概要と要素実験,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造III,pp.1361-1362,2024.7
- 神谷章太,津之下睦,鈴木公平,中尾貞治,池永周造,樋口彰悟,松本幸大:既存角形鋼管柱に対する耐震補強材の無溶接接合法に関する研究 その2 FEM解析と面外加力実験,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造III,pp.1363-1364,2024.7


【問い合わせ先】

株式会社コンステック 技術本部
https://www.constec.co.jp/

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