ゾルベツキシマブ FDAが承認再申請を受理

2024/05/31  アステラス製薬 株式会社 

ゾルベツキシマブ FDAが承認再申請を受理

- 承認された場合、米国でファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体となる可能性あり -

2024年05月31日

アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Claudin(CLDN) 18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの治療薬として開発中のゾルベツキシマブについて、5月30日(現地時間)、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から生物学的製剤承認申請書(Biologic License Application:BLA)を受理した旨の通知を受領しました。承認された場合、米国で上記対象疾患に対するファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体となる可能性があります。FDAは、新たな審査終了目標日(Prescription Drug User Fee Act date:PDUFA date)を2024年11月9日と定めました。

米国では、2024年に26,890人が胃がんと診断され、10,880人が同疾患により死亡すると推定されています1 。早期胃がんの症状は、より一般的な胃に関連する疾患と重複することが多いため、進行期または転移期、つまり腫瘍の発生源から他の組織や臓器に転移した後に胃がんと診断されることが多いと言われています2 。転移期の患者の5年相対生存率は7%です1

FDAからゾルベツキシマブの医薬品製造受託機関の施設を査察した結果、未解決の指摘事項があるため、PDUFA dateまでにゾルベツキシマブを承認できない旨の通知を2024年1月4日に受け、アステラス製薬は2024年5月9日(現地時間)に今回のBLAを再提出しました。FDAは、ゾルベツキシマブの有効性や安全性を含む臨床試験結果に関連した懸念は表明しておらず、追加の臨床試験も求めていませんでした。

今回のBLAは、第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の結果に基づいています3,4 。SPOTLIGHT試験では、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ホリナートおよびフルオロウラシルを組み合わせた療法)群とプラセボ+mFOLFOX6療法群を比較しました。GLOW試験では、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較しました。

SPOTLIGHT試験およびGLOW試験において、スクリーニングされた患者の約38%が、免疫組織化学染色において腫瘍細胞の75%以上で中等度から強度の染色強度を示し、CLDN18.2陽性と判定されました3,4

2024年3月26日に、日本においてビロイ(R) 点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))は、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、製造販売承認を取得しました5 。ビロイ(R) は、上記適応症において、世界で初めて承認を受けた抗CLDN18.2モノクローナル抗体となりました。アステラス製薬は複数の国と地域の規制当局にゾルベツキシマブの承認申請を提出しており、当局で審査中です。

アステラス製薬は、アンメットメディカルニーズの高い胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんに苦しむ患者さんに新たな治療選択肢を提供することを目指しています。

本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。

以上

切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんについて
胃がんは、世界中で5番目に多く診断されるがんです7 。米国では、胃がんの患者数は130,263人と推定されており、希少疾患に分類されています1.8 。2024年に26,890人が胃がんと診断され、10,880人が同疾患により死亡すると推定されています1 。徴候や症状には、消化不良や胸やけ、腹部の痛みや不快感、悪心や嘔吐、下痢や便秘、食後の胃の膨満感、食欲不振、食事中に食べ物がのどに詰まる感覚などがあります2 。より進行した胃がんの徴候には、原因不明の体重減少、衰弱と疲労、吐血、血便などがあります9 。胃がんに関連する危険因子には、高齢、男性、家族歴、ヘリコバクター・ピロリ感染、喫煙、胃食道逆流症などがあります2,10 。早期の胃がんは、胃に関連する一般的な疾患と症状が重なることが多いため、進行期や転移期、すなわち腫瘍の発生部位から他の体の組織や臓器に広がってから診断されることが多いと言われています2 。転移期の患者の5年相対生存率は7%です1 。食道胃接合部腺がんは、食道が胃に結合する領域から発生する腺がんです11

ゾルベツキシマブについて
ゾルベツキシマブは、開発中の膜貫通型タンパク質CLDN18.2を標的として結合するキメラIgG1モノクローナル抗体です。ゾルベツキシマブは、承認された場合、米国でファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体となる可能性があります。ゾルベツキシマブは、がん細胞表面のCLDN18.2に結合することにより作用します。この結合相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)という2つの異なる免疫系経路を活性化することにより、がん細胞死を誘導します6 。ビロイTM 点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))は、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、日本において製造販売承認を取得しました5 。米国においてゾルベツキシマブが、開発中の用途で承認を受けるあるいは市販される保証はありません。

第III相SPOTLIGHT試験について
SPOTLIGHT試験(NCT03504397)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ホリナート、フルオロウラシルを組み合わせた療法)群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、英国、オーストラリア、欧州、南米、アジアの215カ所の医療機関で565人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+mFOLFOX6療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群の無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)です。副次評価項目には全生存期間(Overall Survival: OS)、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、生活の質(Quality of Life: QOL)に関するパラメーターが含まれます。SPOTLIGHT臨床試験のデータは、2023年1月19日の口頭発表で2023年米国臨床腫瘍学会消化管癌シンポジウム(ASCO GI)中に発表され、その後2023年4月14日にLancet誌に掲載されました3

第III相GLOW試験について
GLOW試験(NCT03653507)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ(IMAB362)+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、欧州、南米、アジアの166カ所で、507人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+CAPOX療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群のPFSです。副次評価項目には、OS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、QOLに関するパラメーターが含まれます。GLOW試験のデータは、2023年3月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで最初に発表され、2023年6月3日の2023年ASCO年次総会においても口頭発表され、その後2023年7月31日にNature Medicineに掲載されました4

アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+(R) )の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。

注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。

参考文献
1. National Cancer Institute. Surveillance, Epidemiology, and End Results Program. Cancer stat facts: stomach cancer. Available at https://seer.cancer.gov/statfacts/html/stomach.html. Accessed 04-26-2024.
2. American Cancer Society. Signs and symptoms of stomach cancer (01-22-2021). Available at https://www.cancer.org/cancer/stomach-cancer/detection-diagnosis-staging/signs-symptoms.html. Accessed 11-13-2023.
3. Shitara K, et al. Zolbetuximab plus mFOLFOX6 in patients with CLDN18.2-positive, HER2-negative, untreated, locally advanced unresectable or metastatic gastric or gastro-oesophageal junction adenocarcinoma (SPOTLIGHT): a multicentre, randomised, double-blind, phase 3 trial. The Lancet. Published online April 14, 2023; S0140-6736(23)00620-7.
4. Shah, M.A., Shitara, K., Ajani, J.A. et al. Zolbetuximab plus CAPOX in CLDN18.2-positive gastric or gastroesophageal junction adenocarcinoma: the randomized, phase 3 GLOW trial. Nat Med (2023). https://doi.org/10.1038/s41591-023-02465-7.
5. “Astellas’ VYLOYTM (Zolbetuximab) Approved in Japan for Treatment of Gastric Cancer.” Astellas, 26 Mar. 2024, https://www.astellas.com/en/news/29026. [Press release].
6. Sahin U, et al. FAST: a randomised phase II study of zolbetuximab (IMAB362) plus EOX versus EOX alone for first-line treatment of advanced CLDN18.2-positive gastric and gastro-oesophageal adenocarcinoma. Ann Oncol. 2021;32(5):609-19.
7. Sung H, et al. Global cancer statistics 2020: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-49.
8. National Institutes of Health National Center for Advancing Translational Sciences. About - Genetic and Rare Diseases Information Center. https://rarediseases.info.nih.gov/about. Accessed 11-13-2023.
9. National Cancer Institute. Stomach cancer treatment (PDQ(R)): patient version (08-24-2021). Available at https://www.cancer.gov/types/stomach/patient/stomach-treatment-pdq. Accessed 11-13-2023
10. American Cancer Society. Esophageal cancer risk factors (06-09-2020). Available at https://www.cancer.org/cancer/esophagus-cancer/causes-risks-prevention/risk-factors.html. Accessed 11-13-2023.
11. American Cancer Society. About esophagus cancer (03-20-2020). Available at https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8614.00.pdf. Accessed 11-13-2023.

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