生活習慣病領域や循環器疾患治療剤、希少疾患領域など 医療用医薬品44品目の国内市場を調査

2024/05/30  株式会社 富士経済 

第24052号

生活習慣病領域や循環器疾患治療剤、希少疾患領域など
医療用医薬品44品目の国内市場を調査

― 2033年市場予測(2023年比) ―
■生活習慣病領域 9,475億円(8.8%減)
肥満症治療剤は大きく伸びるが、糖尿病治療剤(DPP-4阻害剤)特許切れの影響などで縮小
■循環器疾患治療剤 6,084億円(1.8%増)
長期収載品は減少傾向。心不全治療剤や脳卒中治療剤は堅調に伸びる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、縮小が続くも肥満症治療剤が大きく伸びる生活習慣病領域、SGLT2阻害剤の適応拡大で慢性腎臓病治療剤の伸びが予想される腎疾患治療剤、対象治療剤各々が伸びる希少疾患領域など、7分野44品目の医療用医薬品の国内市場を調査した。その結果を「医療用医薬品データブック 2024 No.2」にまとめた。

この調査では生活習慣病領域、循環器疾患治療剤、腎疾患治療剤、泌尿器科領域、血液疾患治療剤、希少疾患領域、注目感染症ワクチン・治療剤について最新の市場動向をまとめ、将来を展望した。

なお、免疫疾患やアレルギー疾患などの治療剤をまとめた調査結果を2024年4月に発表した。抗がん剤や中枢神経領域、産婦人科領域、眼科・耳鼻科領域などについても今後調査を行い、冬以降に発表する。

◆調査結果の概要

■生活習慣病領域

生活習慣病領域は、糖尿病治療剤、糖尿病合併症治療剤、非アルコール性脂肪性肝疾患治療剤、高血圧症治療剤、脂質異常症治療剤、痛風・高尿酸血症治療剤、肥満症治療剤を対象とする。糖尿病治療剤が5割前後を占め、高血圧症治療剤や脂質異常症治療剤などの規模も大きい。市場は、薬価改定やジェネリック医薬品普及の影響を受けていることから縮小が続いている。
近年、糖尿病治療剤で「ツイミーグ」(住友ファーマ)、「マンジャロ」(田辺三菱製薬)など新薬の発売や、高血圧症治療剤「エンレスト」(ノバルティス ファーマ)の適応拡大などがあるが、長期収載品の減少の影響が大きいため、中長期的に市場は横ばいから微減で推移し、2030年頃に1兆円を割り込むと予想される。

●肥満症治療剤

2023年までは肥満症治療剤は「サノレックス」(富士フイルム富山化学)のみであり、禁忌要件や用法・用量の条件があることや、保険適用条件が厳しいことなどから市場は横ばいで推移していた。2024年2月にGLP-1受容体作動薬「ウゴービ」(ノボ ノルディスク ファーマ)が発売された。高度肥満かつ、一定の条件を満たした場合のみ保険適用となるが、市場は大幅に拡大するとみられる。
現状、複数メーカーによりGLP-1受容体作動薬などで糖尿病治療剤の肥満症への適応拡大の開発が進められている。フェーズⅢでは新規成分となる経口剤、フェーズⅡでは配合剤が開発品としてラインアップされており、それらの発売による市場への貢献が期待される。

●糖尿病関連治療剤(糖尿病治療剤、糖尿病合併症治療剤)

糖尿病治療剤は、高齢化による潜在・治療患者の増加、また、治療期間の長期化により、市場拡大が続いている。2010年代後半にDPP-4阻害剤やSGLT2阻害剤の配合剤が発売され、多剤併用から配合剤への処方シフトが進んだこともあり、市場は拡大した。2020年代に入っても配合剤やSGLT2阻害剤は伸びているが、2021年に「メトグルコ」「シュアポスト」(ともに住友ファーマ)にジェネリック医薬品が発売されたことから、市場は微増にとどまっている。2024年は「ツイミーグ」の限定出荷解除による実績増加や「フォシーガ」(小野薬品工業)などSGLT2阻害剤の伸びが期待される。しかし、DPP-4阻害剤の特許切れが2025年頃から続き、2020年代後半にはSGLT2阻害剤の特許切れも出てくるため、中長期的に市場縮小が予想される。

■循環器疾患治療剤

抗凝固剤・ヘパリン製剤、抗血小板剤・末梢血管拡張剤、心不全治療剤、不整脈治療剤、狭心症治療剤、肺高血圧症治療剤、利尿剤、脳卒中治療剤を対象とする。
2023年時点では抗凝固剤・ヘパリン製剤が市場の4割以上を占めている。特に直接経口抗凝固薬(DOAC)が伸びている。しかし今後は、主力である「リクシアナ」(第一三共)や「イグザレルト」(バイエル薬品)、「エリキュース」(ファイザー)が特許期間の満了を控えているため、薬価改定やジェネリック医薬品への切り替えにより市場縮小が予想される。2023年と比べると心不全治療剤や肺高血圧症治療剤、脳卒中治療剤は伸びるが、ほかの治療剤は苦戦するため、市場は6,000億円前後で推移するとみられる。

●心不全治療剤

2020年は「サムスカ」(大塚製薬)の大幅な薬価引き下げにより市場は縮小した。しかし、SGLT2阻害剤の「フォシーガ」(小野薬品工業)、「ジャディアンス」(日本ベーリンガーインゲルハイム)の適応拡大により、2021年、2022年の市場は10%以上の拡大が続いた。2023年はジェネリック医薬品の影響を受けた「サムスカ」の縮小により市場は縮小したが、2024年はSGLT2阻害剤の伸長により好調である。
当面は「フォシーガ」と「ジャディアンス」のSGLT2阻害剤と、エビデンスの認知が進み処方を拡大させているARNI製剤「エンレスト」(ノバルティス ファーマ)がけん引し、市場拡大が続くとみられる。2028年から2030年にかけて「フォシーガ」「ジャディアンス」のジェネリック医薬品発売が予想されるため、一時的に市場縮小する年もあるが、現在の開発品が発売されることにより、長期的には市場は拡大するとみられる。

■腎疾患治療剤

腎性貧血治療剤、高カリウム血症・尿毒症治療剤、高リン血症治療剤、低リン血症治療剤、二次性副甲状腺機能障害治療剤、慢性腎臓病治療剤、そう痒症治療剤、透析用剤を対象とする。
薬価改定やジェネリック医薬品の影響で市場は縮小していたが、近年は「クリースビータ」(協和キリン)、「ロケルマ」(アストラゼネカ)などが発売されたことから、拡大が続いている。また、2021年に「フォシーガ」(小野薬品工業)が慢性腎臓病の適応を取得して以降、「カナグル」(田辺三菱製薬)、「ケレンディア」(バイエル薬品)、「ジャディアンス」(日本ベーリンガーインゲルハイム)と慢性腎臓病適応を取得する製品が相次ぎ、市場拡大に寄与している。当面は慢性腎臓病治療剤や低リン血症治療剤「クリースビータ」、高カリウム血症・尿毒症治療剤の「ロケルマ」の伸びにより、市場は堅調な拡大が予想される。

●慢性腎臓病治療剤

2021年にSGLT2阻害剤である「フォシーガ」、2024年に「ジャディアンス」が慢性腎臓病の適応を取得している。2022年に「カナグル」と「ケレンディア」が2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の適応を取得した。「フォシーガ」や「ジャディアンス」を中心に処方が進んでおり、当面は市場拡大が続くとみられる。
開発品としては、SGLT2阻害剤の配合剤の開発がフェーズⅡであり、新たな治療選択肢として処方が広まることが期待される。2018年に「腎領域における慢性疾患に関する臨床評価ガイドライン」、2023年に「早期慢性腎臓病治療薬の開発における臨床評価ガイドライン」が日本腎臓学会により発表されており、新薬開発を促進する動きがみられるため、今後も適応拡大を含めた開発品の展開や新規の参入が期待される。

■希少疾患領域

ヒト成長ホルモン剤、重症筋無力症治療剤、視神経脊髄炎治療剤、ライソゾーム病治療剤、ハンチントン病治療剤、その他希少疾患治療剤を対象とする。「ソリリス」(アレクシオンファーマ)の2017年の重症筋無力症、2019年の視神経脊髄炎への適応拡大、2020年の視神経脊髄炎治療剤「エンスプリング」(中外製薬)発売などにより、2020年以降市場は急拡大している。また、2023年は軟骨無形成症治療剤の「ボックスゾゴ」(BioMarin Pharmaceutical Japan)の実績拡大が市場を押し上げている。2024年以降は重症筋無力症治療剤や視神経脊髄炎治療剤などの伸びにより、市場拡大が予想される。

●重症筋無力症治療剤

2017年に「ソリリス」が全身型重症筋無力症の適応取得を契機に、疾患啓発活動を通じて処方患者の開拓を進めたことから、2018年より市場は急拡大している。2022年は「ユルトミリス」(アレクシオンファーマ)が全身型重症筋無力症の適応を取得したことに加え、「ウィフガート」(アルジェニクスジャパン)の発売により市場拡大が続いている。2023年は「ユルトミリス」「ウィフガート」の伸長がけん引し、前年比40%以上の拡大となった。これらの製品の実績伸長により市場は拡大が続くと予想される。フェーズⅢ、フェーズⅡの開発品が多数控えており、2020年代後半も新薬発売による市場拡大が予想される。

◆調査対象

生活習慣病領域
・糖尿病治療剤
・糖尿病合併症治療剤
・非アルコール性脂肪性肝疾患治療剤
・高血圧症治療剤
・脂質異常症治療剤
・痛風/高尿酸血症治療剤
・肥満症治療剤

循環器疾患治療剤
・抗凝固剤/ヘパリン製剤
・抗血小板剤/末梢血管拡張剤(腰部脊柱管狭窄症を含む)
・心不全治療剤
・不整脈治療剤
・狭心症治療剤
・肺高血圧症治療剤
・利尿剤
・脳卒中治療剤

腎疾患治療剤
・腎性貧血治療剤
・高カリウム血症/尿毒症治療剤
・高リン血症治療剤
・低リン血症治療剤
・二次性副甲状腺機能障害治療剤
・慢性腎臓病治療剤
・そう痒症治療剤(透析)
・透析用剤

泌尿器科領域
・過活動膀胱/神経因性膀胱治療剤
・前立腺肥大症治療剤
・夜尿症治療剤
・勃起不全治療剤

血液疾患治療剤
・血友病治療剤
・遺伝性血管性浮腫(HAE)治療剤
・発作性夜間ヘモグロビン尿症治療剤
・血小板減少症治療剤
・血液製剤
・その他血液疾患治療剤(止血剤、鉄剤)
・低亜鉛血症治療剤

希少疾患領域
・ヒト成長ホルモン剤
・重症筋無力症治療剤
・視神経脊髄炎治療剤
・ライソゾーム病治療剤
・ハンチントン病治療剤
・その他希少疾患治療剤

注目感染症ワクチン・治療剤
・COVID-19ワクチン/治療剤
・インフルエンザウイルスワクチン/治療剤
・RSウイルスワクチン/予防薬
・帯状疱疹ワクチン/子宮頸がんワクチン

2024/5/30

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