GSK、局所進行性のミスマッチ修復機能欠損を有する直腸がん患者さんを対象としたJemperli(dostarlimab)の臨床試験において100%の完全奏効率を継続的に示す良好な結果を発表

2024/06/14  グラクソ・スミスクライン 株式会社 

14 June 2024

GSK、局所進行性のミスマッチ修復機能欠損を有する直腸がん患者さんを対象としたJemperli(dostarlimab)の臨床試験において100%の完全奏効率を継続的に示す良好な結果を発表

この資料は、英国GSK plcが2024年6月3日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細はhttps://www.gsk.comをご参照ください。

<2024年6月3日 英国ロンドン発>

GSK、局所進行性のミスマッチ修復機能欠損を有する直腸がん患者さんを対象としたJemperli(dostarlimab)の臨床試験において100%の完全奏効率を継続的に示す良好な結果を発表

  • 今年のASCOで発表されたメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの最新の解析結果によると臨床的完全奏効の患者さんは42例

  • 現行の標準治療でQOLへの悪影響に直面する患者さんへの新たな治療選択肢の必要性

  • dMMR/MSI-Hを有する直腸および大腸がんでのdostarlimabの追加試験で被験者募集

GSK(本社:英国)は、ミスマッチ修復機能欠損(mismatch repair deficient、以下dMMR)を有する局所進行性直腸がんの手術に代わる初回治療としてJemperli(dostarlimab)を評価したメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center、以下MSK)との共同研究である第II相臨床試験について、最新の長期結果を発表しました。本試験では、dostarlimabの投与が完了した患者さん42例において100%の臨床的完全奏効率(cCR)が示されました。本試験における臨床的完全奏効は、病理学的完全奏効の達成、または磁気共鳴画像法(MRI)、内視鏡検査、直腸指診による腫瘍の形跡が認められないことと定義されています。評価した最初の24例の患者さんでは、追跡期間中央値26.3ヵ月(95%CI: 12.4~50.5)の時点で臨床的完全奏効が持続していました。

今回得られた最新データは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2024年次総会(5月31日~6月4日、シカゴ)において、口頭発表されました(抄録番号LBA3512)。今回発表した第II相臨床試験の最新結果は、2022年ASCO年次総会での発表とNew England Journal of Medicine誌に同時掲載された結果に続くものとなります1

GSKのR&Dオンコロジー部門のグローバルヘッドでシニアバイスプレジデントのヘシャム・アブドラ(Hesham Abdullah)は次のように述べています。
「42例の患者さんで腫瘍を示す形跡が認められなかったとする今回のデータは驚くべきものです。これらの結果は、dMMRを有する局所進行性直腸がん患者さんの根治を目指す治療におけるdostarlimabの可能性について理解する重要な一歩となりました。現在、特定の大腸がんに対してdostarlimabの評価を行うAZUR-1およびAZUR-2試験が進行しており、今後それらの結果についても期待しています。」

dMMR/高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high、以下MSI-H)を有する局所進行性直腸がん患者さんに対する現在の標準治療(standard of care、以下SoC)*は、化学療法と放射線による初回治療の後に、腸管や周辺組織の一部とともに腫瘍を切除する手術を行うものです1。その結果、ほとんどの患者さんで当初は良好な転帰が得られますが、最終的には3分の1近くの患者さんにおいて、がんが体の他の部位に転移することで死亡に至ります(遠隔転移)2。さらに、SoCとして行う手術や化学放射線療法によって、腸管や泌尿器の機能障害、性機能障害、二次性のがんや不妊症などの長期的な有害事象を発症し生活の質に大きな悪影響を及ぼす可能性があります1

*欧米の標準療法であり、日本の標準療法については、大腸癌治療ガイドライン医師用等を参照ください。

MSKの大腸がん部門長、若年性大腸がん・消化器がんセンター共同センター長であり、本第II相試験の治験責任医師であるアンドレア・セルセック(Andrea Cercek)医師は次のように述べています。
「これらの結果は、dostarlimabがdMMRを有する局所進行性直腸がんの新たな治療法として、日々の生活を脅かすような治療を必要とすることなく、持続的かつ完全に腫瘍を退縮させる可能性を示しています。臨床医の立場から、dMMRを有する直腸がんの標準治療の影響で患者さんがQOLの低下により活力を失っていくのを直接目にしており、このような患者さんへのdostarlimabの可能性が見出されたことを嬉しく思います。」

なお、dostarlimabの安全性および忍容性プロファイルは、既知の安全性プロファイルとおおむね一致しており、本試験でグレード3以上の有害事象は報告されませんでした。

現在、dMMRを有する局所進行性直腸がんの初回治療としてdostarlimabが承認されている地域はありません。GSKは、AZUR治験プログラムを通じて、dMMR/MSI-Hを有する進行または転移性大腸がん患者さんを対象としたdostarlimabの評価を臨床試験で進めています。AZUR-1試験は、多施設共同非盲検国際共同第II相試験の治験であり、未治療のdMMR/MSI-Hを有する局所進行性直腸がん患者さんを対象に、化学療法、放射線療法および・または手術療法の代替治療としてdostarlimabを単独投与したときの有効性および安全を評価しています。AZUR-1試験は、MSKのセルセック医師が主導しているdMMRを有する局所進行性直腸がんを対象としたGSKとの共同試験で得られた結果を確認することを目的としています。AZUR-2試験は、未治療のT4N0またはステージIII(切除可能)のdMMR/MSI-Hを有する結腸がん患者さんを対象に、周術期にdostarlimabを投与した時の有効性をSoCと比較検討する第III相試験です。

dMMR/MSI-Hを有する直腸がんについて
直腸がんは、大腸のうち、肛門の直前に位置する直腸に発生するがんの一種であり、大腸がんという総称の一部に分類されることが多いがんです3。大腸がんの診断件数は世界で3番目に多くなっています4。米国では、年間で約46,220人が直腸がんと診断されると推定されています5。直腸がん全体のうち約5~10%はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)/高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)となっています(これは細胞内で間違ってコピーされたDNAの適切な修復に影響する異常があるということです)6。ミスマッチ修復機能欠損の状態は、抗PD-1療法による免疫チェックポイント阻害に対する効果を予測できるバイオマーカーであるとされています7,8。このバイオマーカーを有する腫瘍は、子宮体がん、大腸がんやその他の消化管のがんで通例多くみられますが、その他の固形がんでもみられることがあります9-12

Jemperli(dostarlimab)について
Jemperliはプログラム細胞死1(PD-1)受容体阻害薬であり、GSKが現在実施中の免疫腫瘍領域の研究開発プログラムにおいて中核に据えられています。臨床試験プログラムとして、婦人科がん、大腸がん、肺がんを対象にJemperliの単独投与や他の治療との併用投与を検討する試験などを行っており、これらの試験から革新的な結果が生まれる可能性を秘めています。またJemperliは、初発進行または再発のdMMR/MSI-Hを有する子宮体がんの一次治療として化学療法との併用で用いる初めてで、かつ唯一のがん免疫療法として承認されています。

米国では、Jemperliとカルボプラチンおよびパクリタキセルとの併用療法に続くJemperliの単剤療法が、FDAの承認を受けた検査でdMMRと判定された、もしくはMSI-Hと判定された初発進行または再発の子宮体がんの成人患者さんに対する治療として承認されています。本適応に関する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)は、FDAの画期的治療薬(Breakthrough Therapy)として指定されました。また、Jemperliの単剤投与が、FDAの承認を受けた検査においてdMMRと判定された再発または進行性子宮体がんの成人患者さんで、プラチナ製剤を含むレジメンでの治療中または治療後に進行が認められ、根治手術または放射線療法の対象とならない患者さんへの治療として承認されています。さらに、食品医薬品局(FDA)が承認した検査でdMMRと判定された再発または進行固形がん患者さんのうち、前治療中または治療後に進行が認められ、十分な代替治療がない患者さんに対してもJemperliが適応とされています。本適応は、腫瘍縮小効果が認められた患者さんの割合および効果の持続性を根拠として、迅速承認されました。検証的試験で臨床上の有効性を実証することができれば、固形がんに対する本適応の承認が継続されます。

JemperliはAnaptysBio社で開発され、2014年3月に署名された共同独占的ライセンス契約によりTESARO, Inc.社が権利を有しています。上記契約に基づきGSKは、JemperliおよびTIM-3拮抗薬であるcobolimab(GSK4069889)に関し、進行中の研究、開発、商品化および製造に責任を負っています。

オンコロジー領域におけるGSK
GSKは新たな治療領域としてオンコロジー領域に注力しており、がん免疫療法および腫瘍細胞標的療法の画期的な治療法の開発を通じて、血液悪性腫瘍、婦人科がん、その他固形腫瘍領域を中心に、患者さんの予後改善に向けて取り組んでいます。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

1 Cercek A, Lumish M, Sinopoli J, et al. PD-1 blockade in mismatch repair-deficient, locally advanced rectal cancer.N Engl J Med 2022; 386: 2363-76.
2 Smith JJ, et al. Rectal Cancer Consortium.Organ Preservation in Rectal Adenocarcinoma: a phase II randomized controlled trial evaluating 3-year disease-free survival in patients with locally advanced rectal cancer treated with chemoradiation plus induction or consolidation chemotherapy, and total mesorectal excision or nonoperative management.BMC Cancer.2015 Oct 23;15:767. doi: 10.1186/s12885-015-1632-z.PMID: 26497495; PMCID: PMC4619249.
3 Sung H, Ferlay J, Siegel RL, et al. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries.CA Cancer J Clin.2021;71(3):209-249. doi:10.3322/caac.21660.
4 SEER Explorer.SEER Explorer Application.Accessed April 19, 2024.Available at https://seer.cancer.gov/statistics-network/explorer/.
5 Siegel RL, Giaquinto AN, Jemal A. Cancer statistics, 2024.CA Cancer J Clin.2024;74(1):12-49.Doi:10.3322/caac.21820.
6 Cercek A, et al. Mismatch Repair-Deficient Rectal Cancer and Resistance to Neoadjuvant Chemotherapy.Clin Cancer Res.2020 Jul 1;26(13):3271-3279. doi: 1158/1078-0432.CCR-19-3728.Epub 2020 Mar 6.PMID: 32144135; PMCID: PMC7348681.
7 Le DT, et al. PD-1 blockade in tumors with mismatch repair deficiency.N Engl J Med.2015;372(26):2509-2520.
8 Marabelle A, et al. Efficacy of pembrolizumab in patients with noncolorectal high microsatellite instability/mismatch repair deficient cancer: results from the Phase II KEYNOTE-158 study.J Clin Oncol.2020;38(1):1-10.
9 National Cancer Institute at the National Institutes of Health.Definition of mismatch repair deficiency.Accessed April 19, 2024.Available at: https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/mismatch-repair-deficiency.
10 Lorenzi M, et al. Epidemiology of microsatellite instability high (MSI-H) and deficient mismatch repair (dMMR) in solid tumors: a structured literature review.J Oncol.2020. doi.org/10.1155/2020/1807929.
11 Zhao P, et al. Mismatch repair deficiency/microsatellite instability-high as a predictor for anti-PD-1/PD-L1 immunotherapy efficacy.J Hematol Oncol.2019;12(1):54. doi: 10.1186/s13045-019-0738-1.
12 Laken H, Kehry M, Mcneeley P, et al. Identification and characterization of TSR-042, a novel anti-human PD-1 therapeutic antibody.European Journal of Cancer.2016;69, S102. doi:10.1016/s0959-8049(16)32902-1.

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