アルツハイマー病治療剤「レケンビ(R)」(レカネマブ)中国において新発売

2024/06/28  エーザイ 株式会社 

アルツハイマー病治療剤「レケンビ(R)」(レカネマブ)中国において新発売米国、日本に続く、世界で3カ国目の発売

エーザイ株式会社

バイオジェン・インク

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、このたび、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体「レケンビ®」(中国製品名:「乐意保®」、一般名:レカネマブ)について、中国において新発売したことをお知らせします。本剤は、2024年1月に「アルツハイマー病による 軽度認知障害及び軽度の認知症の治療」の適応で、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を 取得しました。今回の中国での発売は、米国、日本に次いで3カ国目となります。

「レケンビ」は、アルツハイマー病(AD)における可溶性Aβ凝集体(プロトフィブリル*)に 選択的に結合するとともに、Aβプラークの主要構成成分である不溶性Aβ凝集体(フィブリル)にも結合し、脳内のAβプロトフィブリルおよびAβプラークを減少させると考えられています。これらの作用により、ADの進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを実証し、承認された、世界で初めてかつ唯一の治療薬です。

エーザイは、2024年の中国におけるADによる軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症(総称して早期AD)の当事者数を1,700万人と推定しており、今後高齢化の進展と共に増加していくと考えています。中国では、エーザイが、販売ならびに専門MRによる情報提供活動を行うとともに、オンラインとオフラインを融合させた独自の早期ADの診断・治療パスウェイの構築を進めています。商業医療保険やプライベート検診、ナーシングホームなどとの連携のもとで、疾患啓発やプレスクリーニング機会を広く提供し、ハイリスクな方には専門病院への早期受診の促進や、JD Health(京東健康)との合弁による、認知症に重きを置いた高齢者向けオンライン健康プラットフォーム「Yin Fa Tong(イー・ファー・トン)」への紹介を行います。「Yin Fa Tong」には、現在約30万人のユーザーと、約6,000人の医師が登録されており、近隣の病院や専門医の紹介のほか、オンライン診療、「レケンビ」投与後のフォローアップを行います。また、血液バイオマーカーを活用した早期ADの確定診断の実装に向けたエビデンスの構築を推進しています。

中国では、まずはプライベートマーケットにおいて本剤の発売を行います。エーザイとの提携のもとで、薬剤費の一部保障も含むADに特化したヘルスケア保険が、中国の大手医療保険仲介会社により開発され、既に発売されています。

これらの取り組みにより、中国におけるADの早期発見・診断・治療の推進と認知症エコシステムの構築を実現し、AD当事者様の「生ききる」を支えるべく、全力を尽くしてまいります。

レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2

以上

本件に関する報道関係お問い合わせ先

  • エーザイ株式会社

    PR部

    TEL:03-3817-5120

  • バイオジェン・インク

    パブリック アフェアーズ

    public.affairs@biogen.com


<参考資料>

  1. 1. 意保®」(レケンビ)製品概要

中国製品名:「乐意保」(レケンビ)

中国一般名:仑卡奈单抗注射液(レカネマブ注射液)

効能・効果:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の治療

用法及び用量:通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する

有効性成分含量:200mg(2mL)/1バイアル

薬価:レカネマブ注射液200mg 2,508中国人民元/1バイアル

  1. 2. レケンビについて

「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は米国、日本、中国および韓国で承認を取得しています。米国、日本、中国および韓国における「レケンビ」の適応は以下の通りです。

  • 米国:アルツハイマー病(AD)の治療、ただしADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要がある
  • 日本:ADによる軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
  • 中国:ADによる軽度認知障害及び軽度の認知症の治療
  • 韓国:成人のADによる軽度認知障害および軽度の認知症の治療

「レケンビ」の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました3,4。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。

レカネマブについて、欧州(EU)、英国など、14の国と地域で承認申請を行っています。また、2024年3月に静注維持投与に関する米国食品医薬品局(FDA)への生物製剤承認一部変更申請(sBLA)を提出し、2024年6月に受理されました。2024年5月に、利便性向上をめざし開発を進めている皮下注射(SC)製剤について、米国FDAに、Fast Track指定の下、維持投与に関する生物製剤承認申請の段階的申請を開始しました。

2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer’s Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

  1. 3. Yin Fa Tong(イー・ファー・トン)について

Yin Fa Tongは、エーザイ株式会社の中国子会社である衛材(中国)投資有限公司と、JD Health(京東健康)との合弁会社「京颐衛享(上海)健康産業発展有限公司」によるオンラインビジネスです(中国名:銀髪通)。Yin Fa Tongは、認知機能セルフチェック、カウンセリングなどが受けられるコミュニティサービスのほか、医療機関の紹介やオンラインでの相談、予約、受診などが可能な医療サービスなどを提供するプラットフォームです。「レケンビ」に関しては、Yin Fa Tong内に認知症専用のモジュールを設け、対面での受診前のオンラインコンサルテーションのほか、「レケンビ」投与に向けた診断検査が可能な病院の紹介、MRI実施タイミングの通知や治療期間中のオンラインコンサルテーションを受けることが可能です。

  1. 4. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について

エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

  1. 5. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について

2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

  1. 6. エーザイ株式会社について

エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。

エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

  1. 7. バイオジェン・インクについて

1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。

バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

Biogen Safe Harbor

This news release contains forward-looking statements, about the potential clinical effects of LEQEMBI; the potential benefits, safety and efficacy of LEQEMBI; potential regulatory discussions, submissions and approvals and the timing thereof; the treatment of Alzheimer’s disease; the anticipated benefits and potential of Biogen’s collaboration arrangements with Eisai; the potential of Biogen’s commercial business and pipeline programs, including lecanemab; and risks and uncertainties associated with drug development and commercialization. These statements may be identified by words such as "aim," "anticipate," "believe," "could," "estimate," "expect," "forecast," "intend," "may," "plan," "possible," "potential," "will," "would" and other words and terms of similar meaning. Drug development and commercialization involve a high degree of risk, and only a small number of research and development programs result in commercialization of a product. Results in early-stage clinical studies may not be indicative of full results or results from later stage or larger scale clinical studies and do not ensure regulatory approval. You should not place undue reliance on these statements.

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参考文献

1. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z

  1. 2. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer’s Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
  2. 3. Eisai presents full results of lecanemab Phase 3 confirmatory Clarity AD study for early Alzheimer’s disease at Clinical Trials on Alzheimer’s Disease (CTAD) conference. Available at: https://www.eisai.co.jp/news/2022/news202285.html Last accessed: February 2024.
  3. 4. van Dyck. C, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. The New England Journal of Medicine. DOI: 10.1056/NEJMoa2212948. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948


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