構造ヘルスモニタリングシステムを開発

2024/08/05  西松建設 株式会社 

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構造ヘルスモニタリングシステムを開発

お知らせ2024年08月05日


- 地震リスク評価の精度向上を目的に、再現性の高い解析モデルを自動推定 -

当社は、地震リスク評価の精度向上を目的に、地震時の計測データから建物の挙動再現解析モデルを自動推定できる構造ヘルスモニタリングシステムを開発し、当社の東京都港区内の事務所ビルで運用を開始しました。
本システムにより、地震発生時に実際の建物から得られた計測データをもとに、将来予想される地震に対して、高い精度でのリスク評価を可能としました。
本システムは、当社が検証実験などの開発全般を担当し、株式会社構造計画研究所がシステム設計を担当しました。


■ 背景
各自治体や企業は、大地震に備えるため、所有する建物の安全性を監視できる構造ヘルスモニタリングシステムの導入を進めています。構造ヘルスモニタリングシステムに関連する技術開発も活発化しており、当社においても技術検証を行ってきました。
構造ヘルスモニタリングシステムは、建物の設計段階で行われる建物の耐久性や安全性を目的とした解析とは異なり、計測データを基に設計段階で得られた解析モデルを調整することで、将来予想される地震に対して高い精度でのリスク評価を可能とします。しかし、解析モデルを調整する作業には多くの時間と労力を要します。
当社は、この問題を解決するために、地震時の計測データから建物の挙動再現解析モデルを自動推定できる構造ヘルスモニタリングシステムを開発しました(図1)。


図1 開発した構造ヘルスモニタリングシステム



■ 概要と特徴
本システムは、一般的な構造ヘルスモニタリングシステムに計測データを逆解析**)することで建物の挙動再現解析モデルを自動推定できるものとなります。

本システムのフローを以下に記します。ここで、一般的な構造ヘルスモニタリングシステムは①~③となります。

? 地震発生
① 各所のセンサで振動データを計測
② 管理PCに計測データを収集し、建物の継続使用の可否を自動判定
③ 判定結果を外部PCなどへメール配信することにより、関係者へ早期に情報通知
④ 管理PCで、計測データから解析モデルを自動推定
⑤ 推定した解析モデルを用いて地震リスク評価や地震被害の検証も短時間で実施可能(個別検証)



■ 今後の展開
本システムを各自治体や企業のBCP支援ツールの一つとして提案することで、防災減災の実現に向けた社会貢献を果たしていきます。
また、本システムは、建物だけでなく橋梁などの土木構造物にも適用可能と考えられるため、今後その検証を進めてまいります。

*)構造ヘルスモニタリング(Structural Health Monitoring:SHM)
構造ヘルスモニタリングシステムは、加速度計などのセンサを構造物の適所に設置し、地震被災時などの構造物の揺れを計測することです。これは人間の定期健診に例えられます。特に大地震被災直後は、構造物の継続使用についての即時判断が重要となります。その判断材料を得るため専門家による目視確認が行われますが、対象となる構造部材の数は多く、それらは一般的に仕上げ材などで覆われ、確認に時間を要することから二次災害の発生も懸念されます。そのため、建物継続使用に関する判断材料を早期に得ることができる構造ヘルスモニタリングシステムが注目されております。

**)逆解析
建物の設計で用いられる解析(正解析)は、既知である入力波(想定地震波など)および対象建物の解析モデルから、解析モデルの応答波を推定する流れとなります。
一方、逆解析はセンサの計測データである入力波および応答波からシステム同定手法(本システムでは部分空間法)を適用して、解析モデルの各種パラメータを同定する流れとなります。逆解析により、地震時の挙動を再現する解析モデルを推定できます(図2)。

図2 逆解析の概要



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