「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期」ナノシリカ中空粒子を用いた断熱性・耐擦傷性壁装材を開発!~世界最高の断熱塗料を愛知から世界へ~

2024/09/18  愛知県  

「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期」ナノシリカ中空粒子を用いた断熱性・耐擦傷性壁装材を開発!~世界最高の断熱塗料を愛知から世界へ~

ページID:20240918 掲載日:2024年9月18日更新 印刷ページ表示

​​ 愛知県と公益財団法人科学技術交流財団(豊田市)では、産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期※1」を2022年度から実施しています。

この度、「プロジェクトCore Industry(コア インダストリー)※2」の研究テーマ「ナノ中空粒子を用いた環境対応建材の研究開発※3」において、名古屋工業大学の藤 正督(ふじ まさよし)教授、玄々化学工業株式会社(津島市)、株式会社サンゲツ(名古屋市)らの研究チームは、ナノシリカ中空粒子※4を用いて、断熱性と耐擦傷性を兼ね備えた壁装材(壁紙)及び樹脂ガラス用の塗料を開発しました。

従来の壁装材や樹脂ガラスには、断熱性と耐擦傷性を併せ持つ製品はありませんでした。今回開発した塗料を塗装した壁装材と樹脂ガラスは、断熱性と耐擦傷性を兼ね備えることから、カーボンニュートラル※5時代に必要なゼロエミッションハウス・ビル※6の内装材等への利用が期待されます。

この技術の詳細は、2024年10月11日(金曜日)に知の拠点あいちにて開催するセミナーで紹介します。参加費は無料です。多くの皆様の参加をお待ちしています。

1 開発の背景

​2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で成立したパリ協定において、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑える努力をすることが定められ、これを背景に各国はカーボンニュートラル社会構築に動き出しました。エネルギー資源の見直し、脱炭素プロセスの構築は勿論のこと、生活や生産様式を根本から見直す努力が始められています。その中でも多くの人々が参加可能なテーマとして、サーマルマネージメント(熱の管理)の見直しがあります。加えて、持続可能性の視点から物が長く使えることも必要です。そこで本研究では、重点研究プロジェクトIII期で製品化したナノシリカ中空粒子を活用し、ゼロエミッションハウス・ビルの内装材等に利用可能な耐久性の高い断熱性材料の開発を実施しました。具体的には、断熱性と耐擦傷性を併せもつ壁装材と樹脂ガラス用の塗料を開発ターゲットとしました。

2 開発の概要

​図1に示すナノシリカ中空粒子は、通常のシリカに比べ熱伝導率が非常に小さな空気(0.0241W/(m・K))が内包されているため、これを塗料に分散させることにより、塗膜の断熱性を大きく改善することが期待できます。また、塗膜表面の中空粒子により表面硬度をガラスと同程度に改善することも期待できます。

図1 ナノシリカ中空粒子の電子顕微鏡写真

上記の考えに基づき、壁装材と樹脂ガラスの断熱性と耐擦傷性を改善すべく2種類の中空粒子含有塗料の開発を行いました。その結果、各ターゲットに応じて中空粒子の配合量や分散工程等を調整することにより、両ターゲットに対して断熱性と耐擦傷性を備えた塗膜の開発に成功しました。

壁装材については、既製品の断熱壁装材に比べて一桁低い熱伝導率0.1W/(m・K)以下を達成しました。また表面硬度の指標である鉛筆硬度をガラス並みの9Hに改善すると共に、摩耗輪試験(CS-17 ,1kg ,8000回転)での無損傷を達成し、既製品を上回る耐擦傷性を実現しました。

一方、樹脂ガラスについては、既製品の鉛筆硬度は2B~HB程度しかなく、傷つきやすい欠点がありましたが、今回開発した塗料の塗装により、鉛筆硬度を9Hまで大幅に改善すると共に、摩耗輪試験での無損傷を確認し、既製品を大きく上回る耐擦傷性を実現しました。また、熱伝導率も既製品の約1/2に低減することに成功しました。

さらに樹脂ガラスに対しては、図2に示すような透明性(光透過率90%以上)を達成し、視界確保や意匠性の面でも問題ないことを確認しました。

図2 樹脂ガラスへの塗装結果

(中空粒子の分散工程の調整により、右から左に透明度が上昇。最左サンプルは、ほぼ透明(光透過率90%以上)で活字が鮮明に識別できる。)

なお、樹脂ガラスに関しては、再塗装により樹脂ガラス基材が再利用できるサーキュラーエコノミー(CE)※7プロセスの構築を目指した研究を続けています。

3 期待される成果と今後の展開

断熱性と耐擦傷性を併せ持つ塗膜を得るための2種の塗料を開発しました。今後これらの塗料を用い、1つは壁装材として商品化を進め、将来的にはゼロエミッションハウスやビルの内装材としての利用を目指します。もう1つは、図3に示すような断熱性能と耐擦傷性に加え透明性を併せ持つ樹脂ガラス(ポリカーボネート)での実用化を目指します。これにより、カーボンニュートラル時代に必要とされる断熱性能を有し、軽量で耐久性の高い樹脂ガラスが得られます。これら2つの断熱材の利用により、図4に示すような壁も窓も断熱で、環境に優しく、年中快適な高断熱住宅の実現を目指します​。

図3 断熱・耐摩耗・透明塗料の樹脂ガラス

図4 壁も窓も断熱で、環境に優しく、年中快適な高断熱の住宅

4 社会・県内産業・県民への貢献

社会への貢献

カーボンニュートラル時代に必要なサーマルマネージメントに用いる材料技術の提供。

県内産業への貢献

プロジェクト参画企業での建材としての製品化及び愛知県内の自動車、建機、農業等への横展開。

県民への貢献

新市場開拓による県内企業雇用促進への貢献。県民の温暖化対策、電気料金高騰に対する解決手段、生活のQOL向上への貢献。

5 セミナー案内内容(詳細は案内ちらしを御覧ください。) [PDFファイル/1.09MB]

(1)概要

演 題:ナノ中空粒子を用いた環境対応建材の最前線(講演90分、展示品見学30分)

講 師:名古屋工業大学 教授 藤 正督氏

日 時:2024年10月11日(金曜日)午後3時から午後5時まで

場 所:あいち産業科学技術総合センター1階講習会室

(豊田市八草町秋合1267-1)

主 催:愛知県、(公財)科学技術交流財団

定 員:60名(申込先着順)

参加費:無料

(2)申込方法

以下のメールアドレスにお申込みください。

メールアドレス:juten-ci@astf.or.jp

件名に「セミナー10/11参加申込」と入力し、企業名・所在地・所属・氏名・電話番号・メールアドレスをご記入の上、上記メールアドレスまでお送りください。

(3)申込期限

2024年10月9日(水曜日)午後5時

申込期限前でも定員になり次第締め切ります。

(4)申込み先

公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部

担当:新庄、吉田、村瀬

所在地:豊田市八草町秋合1267番1

電話:0561-76-8380

7 問合せ先

【重点研究プロジェクト全体に関すること】

あいち産業科学技術総合センター 企画連携部企画室

担当:佐藤、日渡、村上

所在地:豊田市八草町秋合1267番1

電話:0561-76-8306

公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部

担当:新庄、吉田、村瀬

所在地:豊田市八草町秋合1267番1

電話:0561-76-8380

【本開発内容に関すること】

国立大学法人名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター 駅前地区

担当:教授 藤 正督

所在地:岐阜県多治見市本町3-101-1クリスタルプラザ

電話:0572-24-8110

【用語説明】

※1 知の拠点あいち重点研究プロジェクト

付加価値の高いモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に大学等の研究シーズを活用したオープンイノベーションにより、県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新たなサービスの提供を目指す産学行政の共同研究開発プロジェクト。2011年度から2015年度まで「重点研究プロジェクトI期」、2016年度から2018年度まで「重点研究プロジェクトII期」、2019年度から2021年度まで「重点研究プロジェクトIII期」を実施し、2022年8月から「重点研究プロジェクトIV期」を実施しています。

「重点研究プロジェクトIV期」の概要

実施期間

2022年度から2024年度まで

参画機関

16大学 7研究開発機関等 88社(うち中小企業59社)

(2024年8月時点)

プロジェクト名

プロジェクトCore Industry

・プロジェクトDX

・プロジェクトSDGs

※2 プロジェクトCore Industry

概要

世界を牽引して未来を創りつづける愛知の基幹産業の更なる高度化に資する技術開発に取組む。

研究テーマ

【研究開発分野】自動車・航空宇宙等機械システム(ハード)

1 スマートファクトリーの完全ワイヤレス化に向けた非接触電力伝送

2 超高効率エレクトロニクスを実現するMBDと融合した革新的素材開発

【研究開発分野】高効率加工・3Dプリンティング

3 金属3D造形技術CF-HMの進化による航空機部品製造用大型ジグの革新

4 積層造形技術の深化によるモノづくり分野での価値創造とイノベーション創出

【研究開発分野】次世代材料・分析評価

5 塗膜/外用剤の次世代分子デザインに向けた3次元可視化法の確立

6 カーボンニュートラル社会実現に向けた先端可視化計測基盤の構築

7 人工シデロフォア技術を用いた大腸菌群検出技術・装置の開発

8 高機能複合材料CFRPの繊維リサイクル技術開発と有効利用法

9 ナノ中空粒子を用いた環境対応建材の研究開発

参画機関

7大学 3研究開発機関等 35社(うち中小企業22社)(2024年8月時点)

※3 ナノ中空粒子を用いた環境対応建材の研究開発

概要

知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期の成果であるナノシリカ中空粒子を活用し、断熱建材の研究開発に取り組み、カーボンニュートラル時代に必要なゼロエミッションハウスやビルに貢献する材料開発を実施する。具体的には、断熱+耐擦傷性壁装材と断熱+耐擦傷性塗料(樹脂ガラス用)をターゲットとする。さらに、時代が求める低炭素化の為のサーキュラーエコノミープロセスも構築する。

研究リーダー

名古屋工業大学 工学研究科 教授 藤 正督 氏

事業化リーダー

玄々化学工業株式会社 取締役 大木 博成 氏

参加機関

(五十音順)

〔企業〕

合同会社F-Plan(多治見市)

株式会社サンゲツ(名古屋市)

玄々化学工業株式会社(津島市)

〔大学〕

国立大学法人名古屋工業大学(名古屋市、多治見市)

〔公的研究機関〕

あいち産業科学技術総合センター(豊田市)

公益財団法人科学技術交流財団(豊田市)

※4 ナノシリカ中空粒子

内部に空孔を持つ粒子径が約100ナノメートルのシリカ粒子のことです。

※5 カーボンニュートラル

二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ排出量を実質ゼロに抑えるという概念です。

※6 ゼロエミッションハウス・ビル

環境負荷を極力小さくするように設計されたハウス・ビルのことです。

※7 サーキュラーエコノミー

あらゆる段階で資源の効率化・循環的な利用を図りつつ、付加価値を最大化することを目指す社会経済システムです。

このページに関する問合せ先

​あいち産業科学技術総合センター企画連携部
企画室(担当:佐藤、日渡、村上)
豊田市八草町秋合1267-1
電話:0561-76-8306

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