ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行について ~小金丸工業株式会社との契約締結~

2024/09/30  株式会社 池田泉州ホールディングス 

2024年9月30日

ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行について
~小金丸工業株式会社との契約締結~


株式会社池田泉州銀行(頭取 CEO 鵜川 淳)は、2024年9月30日(月)、小金丸工業株式会社(代表取締役 小金丸 潤子、本社 大阪府富田林市)に対し、ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実行しましたのでお知らせします。

ポジティブ・インパクト・ファイナンスとは、企業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響とネガティブな影響)を分析・評価し、お客さまが設定されたKPI(重要業績評価指標)の達成支援等を通じて、環境・社会課題の解決と、企業価値向上に繋がることを目的とした融資商品です。

小金丸工業株式会社は、オフィス・商業施設建築の基礎工事や、橋桁工事などの杭基礎工事において使用される「ケーシング」と呼ばれるパイプ状掘削機のリースを主な事業としています。同社はリース業として循環型社会へ貢献するとともに、水質汚染や土壌汚染防止などの環境対策や、従業員のワークライフ・バランスの推進など労働環境の整備に積極的に取り組んでいます。

本ファイナンスにおいては、「循環型社会の形成」、「ワークライフ・バランスの推進」を目的に、リース事業の拡大や、従業員の休暇制度の拡大など、6項目においてKPIを設定しております。

なお本件は、評価にかかる手続きが国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合していることについて、株式会社日本格付研究所(代表取締役社長 髙木 祥吉)から、第三者意見を取得しています。

(ファイナンス概要)
実行日 2024年9月30日(月)
融資額 1億円
資 金 使 途 運転資金
モ ニタリング 設定したKPIの達成状況・進捗状況を、当行が年1回以上情報共有し、KPIの達成を適宜サポートしていきます。
第三者評価機関 株式会社日本格付研究所

※詳細は添付資料をご参照下さい。
(添付資料)
・株式会社日本格付研究所による第三者意見
・ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書

(企業概要)
会社名 小金丸工業株式会社
本社所在地 大阪府富田林市甘南備1908
創業 1987年3月
代表者 代表取締役 小金丸 潤子

以 上

第三者意見書

2024年9月30日
株式会社 日本格付研究所

評価対象:
小金丸工業株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス
貸付人:株式会社池田泉州銀行
評価者:株式会社池田泉州銀行
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR)

結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。

I. JCRの確認事項と留意点

JCR は、池田泉州銀行が小金丸工業株式会社(「小金丸工業」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、池田泉州銀行による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定したPIF原則に適合していること、および、環境省のESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。

PIF とは、SDGsの目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。

PIF 原則は、4つの原則からなる。すなわち、第1原則は、SDGsに資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できること、なおかつネガティブな影響を特定し対処していること、第2原則は、PIF実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第3原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第4原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。

UNEP FIは、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIFイニシアティブ)を組成し、PIF推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。池田泉州銀行は、中小企業向けのPIFの実施体制整備に際し、これらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIFイニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、池田泉州銀行にそれを提示している。なお、池田泉州銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF原則等で参照しているIFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。

JCRは、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF原則との適合性を確認した。

① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクトエリア/トピックにおける社会経済に関連するインパクトの観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。

② 日本における企業数では全体の99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1

③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。

II. PIF原則への適合に係る意見

PIF原則1 定義

SDGsに資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できること、なおかつネガティブな影響を特定し対処していること。

SDGsに係る包括的な審査によって、PIFはSDGsに対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。

池田泉州銀行は、本ファイナンスを通じ、小金丸工業の持ちうるインパクトを、UNEP FIの定めるインパクトエリア/トピックおよびSDGsの169ターゲットについて包括的な分析を行った。

この結果、小金丸工業がポジティブな成果を発現するインパクトエリア/トピックを有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。

SDGsに対する貢献内容も明らかとなっている。

PIF原則2 フレームワーク

PIFを実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。

JCRは、池田泉州銀行がPIFを実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。

(1) 池田泉州銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。

1 経済センサス活動調査(2016年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は資本金5千万円以下または従業員100人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員20人以下の企業をさす。

(出所:池田泉州銀行提供資料)

(2) 実施プロセスについて、池田泉州銀行では社内規程を整備している。

(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、池田泉州銀行内部の専門部署が分析方法及び分析ツールを、UNEP FIが定めたPIFモデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。

PIF 原則3 透明性

PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。

・本PIFを通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング

PIF 原則 3 で求められる情報は、全て池田泉州銀行が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。

PIF 原則4 評価

事業主体(銀行・投資家等)の提供するPIFは、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。

本ファイナンスでは、池田泉州銀行が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のイ- 4 - ンパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。

III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見

インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスをESG金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。

本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の4要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である小金丸工業から貸付人である池田泉州銀行に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。

要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの 要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの 要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの 要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの

また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。

IV. 結論

以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。

また、環境省のESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。

(第三者意見責任者)
株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長

梶原 敦子

担当主任アナリスト

川越 広志

担当アナリスト

間場 紗壽

本第三者意見に関する重要な説明

1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界

日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省ESG金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCRの現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。

本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及びJCRが独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIFによるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCRは調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。

2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等

本意見作成にあたり、JCRは、以下の原則等を参照しています。

国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則 環境省 ESG金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース 「インパクトファイナンスの基本的考え方」

3. 信用格付業にかかる行為との関係

本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。

4. 信用格付との関係

本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。

5. JCR の第三者性

本PIFの事業主体または調達主体とJCRとの間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。

■留意事項

本文書に記載された情報は、JCRが、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCRは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCRは、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見はJCRの現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCRが保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCRに無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。

■用語解説

第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。

事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。 調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。

■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等

・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)

■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.sihd-bk.jp/CGI/fresh_news/fresh_news.cgi?mode=frame&seq=0000002464

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