大学院部会(第115回) 議事録

2024/10/17  文部科学省 

大学院部会(第115回) 議事録

1.日時

令和6年7月11日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 情報公表の促進について
  2. 卓越大学院プログラムの中間評価及び今後の大学院教育の拠点形成について
  3. 高等教育の在り方に関する特別部会の議論について
  4. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、迫田雷蔵、須賀晃一、菅裕明、高橋真木子、塚本恵、永井由佳里、濱中淳子、宮浦千里、横山広美、和田隆志の各委員

文部科学省

(事務局)伊藤高等教育局長、森友審議官、吉田高等教育企画課長、髙見高等教育企画課高等教育政策室長他

5.議事録

【湊部会長】それでは、所定の時刻になりましたので、第115回大学院部会を開催したいと思います。本日は御多忙のところ、皆様御参加いただきありがとうございます。
本日は、佐久間委員と堀切川委員から御欠席という御連絡を頂いておりますが、他の先生方には御参加いただいておりますので、十分定足数に達しております。
それではまず、事務局の方で人事異動がございましたので、御挨拶をお願いしたいと思います。
最初に伊藤高等教育局長、お願いいたします。

【伊藤高等教育局長】委員の先生方、こんにちは。御紹介いただきました、本日付で新しく高等教育局長を拝命いたしました伊藤でございます。これまでも高等教育局担当の審議官として、この大学院部会をはじめ、高等教育局に関係する仕事をしてまいりましたので、継続性という観点で、引き続き委員の皆様から御指導いただきながら、大学院、又は大学行政にしっかり取り組んでまいりたいと思いますので、御指導のほどよろしくお願いいたします。

【湊部会長】よろしくお願いします。
続きまして、森友審議官から一言お願いいたします。

【森友審議官】失礼します。私も本日付で伊藤の後任として、高等局担当の審議官に着任いたしました。御指導のほどよろしくお願いいたします。

【湊部会長】よろしくお願いします。
それでは、会議に先立ちまして、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【金井大学院振興専門官】高等教育政策室大学院振興専門官の金井でございます。会議に先立って、何点か御連絡させていただきます。
ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手ボタンを押していただき、部会長から指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言をよろしくお願いいたします。御発言の際は、通常よりも少し声を張っていただければと思います。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いします。
資料につきましては、議事次第に記載のとおりです。
事務局からは以上となります。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは、早速、議事に入りたいと思います。本日は、議題を3つ用意しておりますが、最初の議題は、情報公表の促進についてでございます。昨年度まで、本大学院部会にて、特に人社系の大学院教育の在り方等の議論をして、昨年12月に「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について」という審議まとめが取りまとめられたところであります。改めてこの件については、委員の皆様の御尽力に感謝したいと思います。
とりわけこの審議まとめの中では、大学院教育改革を推進し、社会に開かれた質保証を実現するために、特に学生や大学院進学希望者に対して、その教育研究に関する情報を積極的に公表して、社会に対する説明責任を果たすことが重要であろうということになりまして、標準修業年限以内の修了者の割合等につきまして情報公表を促進することが提言されております。
本件の検討状況について、事務局からまず説明をお願いしたいと思います。では、高見室長、よろしくお願いいたします。

【髙見高等教育政策室長】それではまず、資料1の3ページ目にあります関連文書を御覧ください。
昨年12月に取りまとめていただいた、大学分科会の審議まとめにおいては、進学前の情報提供が不十分だったために、進学後の学生が失望するというミスマッチが生じている、外部からの適切な評価を通じた教育研究の質の向上に向けた取組が十分に行われていないといった課題も頂きまして、各大学の学位プログラムにおいて、学位を取得するために要する平均年数などの情報の公表が進むよう、学校教育法施行規則の改正を含めて検討する、などの御提言を頂きました。
またこれを受けて、本年3月、盛山文部科学大臣の下で取りまとめた「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」においても、標準修業年限以内に修了した学生の割合など、教育情報の公表の促進を図るために、学校教育法施行規則の改正を検討すること等を示しております。
これらを踏まえまして、制度改正に向けた具体的な検討を文部科学省で行ってまいり、考え方を整理したものが資料1の1枚目でございます。こちらの冒頭に記載のとおり、進学を希望する者が事前に学位取得に関する見通しを持って大学院を選択し、また計画的にキャリアパスを構築すること、あるいは大学が学位授与の公表を通じた教育研究の質向上に取り組むことは、多様性に富む者の大学院進学を促進する上で極めて重要であります。こういったことから、大学院における学位授与の状況に関する情報公表を促進するため、各大学院が公表すべき情報、これを学校教育法施行規則、文部科学省令でございますが、こちらに追加するとともに、通知においてその具体的な内容を示すことを考えております。
学校教育法施行規則に追加する具体的な条文については現在調整中でございます。標準修業年限以内に修了した者の占める割合、その他学位授与の状況に関すること、こういった形で条文として規定することを想定しております。
その上で、通知におきましては、1つ目の丸にあるとおり、標準修業年限以内で修了した者の占める割合としまして、具体的には、ある年度で入学した者のうち、標準修業年限以内に修了した者の割合を示すことを考えております。その際の公表の単位については、大学院設置基準における標準修業年限の記載も踏まえた上で、研究科あるいは専攻、又は学生の履修上の区分ごと、こういった単位での公表を想定しております。
また、2つ目の丸でございますが、その他学位授与の状況に関することとして、最低限公表していただきたい事項を記載しております。まず、修了した者の割合の裏返しとしまして、標準修業年限以内で修了せずに退学した者の割合、あるいは、標準修業年限以内で修了していない留年者、長期履修学生を想定しています。また、ある年度に修了した者がどのくらいの期間で学位を取得したかについても、進路希望者にとっては重要な情報であるため、学位を取得するために要した年数ごとの修了者の割合、こういったことも最低限記載していただきたい事項とすることを考えております。
また、3つ目の丸でございますが、その他公表を推奨する事項として、まず標準修業年限以内で修了していない者について、修了していない原因を考えております。
修了認定、あるいは学位の授与というのは、各大学の方針に基づいて行われるものであり、大学院には様々な事情を持つ学生がいることを踏まえますと、標準修業年限を超過していることは、一概に否定されるべきものではありませんが、標準修業年限超過の背景事情は、大学院の進学希望者が進学先を選定する上で重要な要素と考えられます。留学、あるいは長期履修など、様々な事情で標準修業年限内に修了できない方もいると思いますので、標準修業年限内で修了していない割合の数字のみが独り歩きしないよう、その原因についても併せて公表いただくことが重要と考えております。
また、修了者の進路の全体状況につきましても公表を推奨する事項としております。現行の学校教育法施行規則におきまして、既に就職の状況等に関することが情報公表の対象となっておりますけれども、必要な情報を分かりやすく公表するよう、改めて周知をしたいと考えています。特に大学院の修了者に関しましては、進路を捕捉できていないといった事例も多く見られるため、大学にはその進路状況を正確に把握することを求めていきたいと考えております。
また最後のポツになりますが、公表した数値の分析・解説については、今回標準修業年限内で修了した者の占める割合などを、新たな公表事項に加えることとしておりますが、修了に至らなかった理由は多様でありまして、修了率の数値の公表のみでは、教育研究の実態を適切に伝えることができないと考えられるため、各大学において、その数字が何を意味しているのかを分析して、数字への評価、あるいは今後どのような対応を図っていく予定なのか、そういったことを幅広く解説していただくことが期待されます。
また分析の過程で研究所に関する課題が把握された場合には、改善に向けた取組を実施するなど、各大学におきまして、教育研究の質の向上に向けた取組を進める契機としていただきたいと考えております。
なお、令和7年4月1日施行を予定しているところでございます。
私からの説明は以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございます。ただいま御説明いただいたように、皆さんご記憶かと思いますが、大学院生に対するアンケート調査を行い、その解析のプロセスで、特に人文社会系を中心に、標準修業年限を超えて学位取得に至る割合が非常に高いということが、議論になりました。
それも含めてその議論の過程で、これから大学院へ進もうという希望者、とりわけ外国からの希望者に対して大学の情報を開示しておく必要があるのではないかという指摘もありました。そういうことで今回のこの提案は、新たに学校教育法施行規則の中に、標準修業年限内で修了した者の占める割合、その他の学位授与の状況に関する情報について開示すべきであるという追加事項を設けたい、というものでございます。
具体的に学位授与の状況に関する情報として、どういうものを想定するかということですが、今回は幾つかの項目が案として示されております。ここで一番柱になるのは、標準修業年限内で何%の学生が学位を取得したか、あるいは米国流にもっと一般的に言えば、学位取得に至るまでの平均修業期間は何年か、という言い方もできるでしょう。表現はともあれ、その情報を開示するということが一番大きな柱で、それに付随して、様々な関連情報も公表する、開示するべきではないか、というような提案でございます。
それでは、今日はまずこの提案につきまして委員の皆様の御意見を伺って、最終的に、どういう事項がこの開示の対象として推奨されるのが望ましいかという合意が得られれば有り難いと思っております。それでは、委員の先生方から御意見があれば、御自由にお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
それでは、迫田委員からお願いいたします。

【迫田委員】ありがとうございます。こうやって情報を公開、公表していくというのは非常に大事なことで、去年の議論でも出ておりましたけれども、非常にいいことだと思います。
ただ少し気になっておりますのは、昨年の議論のときにも申し上げたのですが、これが義務として、またノルマとして何かやらなきゃいけなくなったというふうに、取られないように是非お願いできたらなと思っています。今回の公表する項目というのは、飽くまでもいわゆる「規定演技」のところであります。それよりも大事なのは、どうやったらその標準修業年限内で修了することができるのか、その期間でどれだけ成果が上げられるのかということだと思うので、それを支える体制だとか施策だとかという、各大学がどんな努力をしているかということが見えるように、是非お願いしたいなと思います。
この中で言うと、その他の公表した数値の分析・解説の中に入るのかもしれませんが、是非前向きな取組が皆さんにとっても分かる、そういう公表のやり方にしていただけると有り難いなというふうに思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。その点もこれまでの本部会で随分議論になりました。これはいわゆる学部における留年などとは状況が違うし、各大学の大学院ディプロマポリシーも関係してくるだろうと思います。ただやはり学生側からすれば、事実としてどういう状況であるのか知る権利のようなものがあると思いますので、逆に大学側としては、やはりそういう情報を事実として開示しておくことは必要なのではないかと思います。ただいまの御指摘の点は正にそのとおりで、これを一律な方法で強制するとか、これをある種ルール化するとか、そういうことではないのではないかと思っております。ありがとうございます。
それでは、川端委員、お願いいたします。

【川端委員】ありがとうございます。今の迫田委員と本当に同じ方向です。
2点ありまして、1つは、これが進学する学生たちにとってどういう影響を及ぼすかというときに、少し気になるのが、退学という単語です。修士だとか学部の人間にとって退学というのはなんか「退学」なのです。ドクターの人間にとっての、論文書くまでに少し時間があったり、生活上の問題があったりいろいろなことがあって出しますよという単位取得退学と、受け取り方が恐らく全然異なった風に受け取られるかもしれないので、そこをしっかりと伝えるというところを是非お願いしたいです。
もう1点は、標準修業年限内とすると、オンか、オフになってしまう点です。
要するに、3年生の終わった3月31日までに取れたかどうか。その先、10月に取れたのだけれど、それはオフになっているという。その状態が厳格にやればやるほど、余りよくないかなと。理系でも、論文がうまく通らなくて10月になってしまいましたとか、産学連携でもそうやって就職する人間もいるわけで、だから3月末でオンかオフかというので出すのであれば、その後例えば2年以内に(博士を)取ったというデータも一緒に出すとか、それだけのオン、オフでないような表現のさせ方を少し御検討いただければと思います。

【湊部会長】ありがとうございます。その点は全く同感でありまして、単位取得退学というのは当然あって、これは課程をきちんと修了したという、むしろポジティブな意味もあって、あと学位論文は少し遅れてフォローしますよというようなことなので、ここは言葉遣いをきちんとやるべきです。単位取得退学なら単位取得退学ということをきちんと記載すべきであろうと思います。
それから、今御指摘の2点目も私が冒頭に申し上げたのと同じで、標準修業年限はあくまで標準の修業年限です。だから標準修業年限内に終えたという言い方はどうも抵抗があって、それは少しニュアンスが違うのではないかと思います。標準年限があたかも上限であるかのように聞こえますが、標準というのは飽くまで標準なので、だからむしろ一般論として言えば、学位取得までに要した期間と言う方がより妥当で、少なくともグローバルにはそれが普通であろうと考えています。この点をどのように表現するのかということについては、きちんと合意を取っておいた方がいいのではないかという気もしております。ありがとうございます。
それでは、小長谷委員、お願いいたします。

【小長谷委員】ありがとうございます。私の勤めていた場所での現状を観察すると、先生の側が非常に御熱心でした。指導が熱心である余り、学生、特に留学生がじっくり指導を受けて期間が延び、生活苦に陥るという状況でした。教えていないわけではないけれど、そういう矛盾が発生しています。
ですから、数字をこうやって公表することはとてもいいことだとは思いますが、それだけではなくて、やはり先生側の意識改革を必要としているという点では、一種のファカルティー・ディベロップメントであると思います。だからこの具体的な取組について、数字を述べるだけではなくて、どういうふうにしようとしているかというような取組を書いていただくことで、組織における教員全体での意識改革をしていただくことをお勧めしたらいいのではないかと思っております。よろしくお願いします。

【湊部会長】ありがとうございます。それも非常にリーズナブルな御意見であると思います。私も全くそのとおりだと思います。単に数字のため、ということになってしまうと、本末転倒になりかねない。やはりどれだけ、ある意味効率の良いきちんとした教育ができるかということだろうと思うのですが、これは今回まだ議論になりませんけれども、やはり大学院教育をどう考えるかということに対する大学側の、つまり教える側の意識性の問題もあるのだろうと思います。
例えばイギリスでは学位論文の学術的評価もさることながら、この教育課程を非常に大事にしています。非常にプラグマティックで、トランスファラブルスキルというコンセプトもここから出てきたものだと思いますが、そういう教育プロセスをきちんとやる。だから大学院生にとって、それ自体がある種のクオリフィケーションになる。だから、学生の数も学位取得者も非常に多い。
一方で逆の見方をすると、これはひとつの見方ですけれども、イギリスの学位論文のクオリティー、いわゆる学術的なクオリティー一般については、ヨーロッパでは必ずしもそれほど高くない、ということも聞きます。それは大学院をどう捉えるかという基本的な問題なのだろうと思うのです。そういう意味で、大学院で何を教えて、学位にどの程度の学術的な価値を求めるか、これは個々の大学の特性にもよると思いますけれども、そういうディプロマポリシーについての合意もきちんとつくっておいた上で、これくらいの標準修業年限でこれくらいのことを求めるというような形で持っていかないと、単に数字が独り歩きすると、学生にも無用なストレスをかけることになりかねません。学生側からすれば、自動的に学位が保証されるかのように思われるのも本意ではないということもあるでしょうから、ここは将来的にそういう議論も念頭に置いた上で、なるべく学位教育課程と学位論文の両方に対して余り一方的なバイアスのかかった誤解を与えないような表現で、きちんと本意を伝えるような形にしないといけないのかなと思います。
何か随分ややこしいことを言ってしまったようですけれども。ありがとうございます。
それでは、加納委員、お願いいたします。

【加納委員】ありがとうございます。今回の追加事項、これは決して大学院に進もうとする学生、進学する学生のためだけのものではなくて、企業、それから大学にとっても大きな効果があると思います。大学にとっては、これは正にリクルートのプロモーションになるわけで、大学に多くの学生さんたちに来ていただくためのいわゆる一つのアピールになるかなと。そういう認識を大学側の皆様には持っていただくような形で、規則という形になっていますけれども、対応していただきたいというのが1つ。
それから2つ目は、企業なのですが、正にこの下から2行目のところに、修了者の進路の全体状況と書いてありますが、これは恐らく先ほどのプロモーションという意味も含むのですけれども、企業にとってみれば、この大学からこれだけの企業に対して、あるいは官公庁に対して、人材が進路として選んでいるという一つのアピールポイントになる。一方で企業にとってみれば、大学、いわゆる博士課程を修了した学生が、多くの企業若しくは官公庁に就業している、いわゆるキャリアパスを実現しているというアピールにもなるわけですから、これは3つの観点で、是非ポジティブに推進していただくような形になればというふうに思いました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。非常に大事な御指摘をいただきました。こういう情報を大学がポジティブにきちんと公表することは、むしろ大学にとってプラスになるというようなことであろうと思います。ありがとうございます。非常に良い御指摘であったと思います。
それでは、横山委員、お願いいたします。

【横山委員】ありがとうございます。大変よろしいことだなというふうに拝見しております。
幾つかございます。まず数だけではなくて、各大学でもし可能であれば、具体的な事例をお示しいただくとよろしいかと思います。特に人社系は、キャリアが非常に多様といいますか、思いもよらないところに新しい道を見つけて活躍する方もいて、それぞれのキャリアは非常に興味深いもので、そういう意味で型にとらわれないキャリアもたくさんあるのだというのを、幅を持ちながらお見せできることも重要かなというふうに思っております。
あとは少し細かい点なのですが、大学は社会人が、人社系にはかなり多くいらっしゃいます。そうすると長期履修制度といいまして、もちろん皆様よく御存じのように、最初から博士は5年で取りますというふうに言ってくる方も、かなりの割合いらっしゃるのです。それと今議論している内容が、なかなか外から見ると分かりにくいと思いますので、その長期履修制度についても是非コメントしておいていただくとよろしいかなというふうに思いました。
あと1つ、更に細かいことなのですが、よく入学案内の説明会をするときに、学生が意外と知らないことが、例えば博士号の取得要件で、原著論文が2本要りますといったようなことが意外と知られていないのです。例えば私のいる東大の情報学環なんかですと、理系出身の博士進学希望者というのは一定数いるのですが、その方たちは漏れなく年数が長くなります。というのは、当然のことながら修士論文でやった研究が違うテーマなので、いわゆる修士からやり直す必要があるという状況なわけです。
そうしますと、その原著論文2本を書くのにどれくらいの時間がかかるのかというのが、やはりなかなか想像しにくいと。博士の多くの大学が同じ条件だと思うのですが、原著論文が要ることで計画してほしいというのが分かるように、卒業要件を何か見やすいところに出しておくということも、一つ重要かなというふうに思っている次第です。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。これももっともな御意見で、やはりいろいろな大学院固有の用語が出てくるので、それは丁寧に分かるようにしておかないと、大学院進学希望者が、全部そういうことを知った上で入学するとは限らないということもあります。それは御指摘のとおりだと思います。
もうひとつ面白いと思ったのは、このような発信を逆に、大学の「売り」というか、宣伝にもうまく使えるということもあるだろうという部分です。だから単に大学が義務的に、こういうことをやらされるということではなくて、大学が情報開示に対して上手にアドバンテージを取って、自大学の展開や拡大を図りうるというような受け取り方をしていただければ、有り難いのではないかという気もいたします。ありがとうございます。
それでは、菅委員、お願いいたします。

【菅委員】ありがとうございます。私からは1点だけお願いですが、アンケートにしても、どういうふうに情報を開示するかにしても、まずキャリアを先に出してほしいのです。
考えがちなのは、学位は何年かかりました、それからキャリアはこうですと出るのですが、先にキャリアを出してほしいと思います。その上で、本来ではそのキャリアと年数をリンクさせるのが理想的な出し方ですが、そこまでつなげることができないにしても、順番としては、キャリアがまず出て、それから何年というリンクが出ると、これだけで印象が随分違うので、そこだけは気をつけていただけたらなと思います。アンケートを取るにしても情報開示にしても、そのように配慮していただけたらよろしいかと思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。それも非常に大事な御指摘で、是非考慮させていただきたいと思います。ありがとうございます。
それでは小西委員、お願いいたします。

【小西委員】ありがとうございます。先ほど湊委員長と川端委員が言ったことにも重複するのですが、標準修業年限のこの標準という言葉が気になっています。社会人の博士課程の学生は、最初から3年ではなくて5年で完成させたいという人がおりますので、標準がどうなのかなということです。
横山委員のお話にも通じますが、大学院によれば、学術会議に登録している、もちろん海外でも構わないわけですが、1~2本査読付き論文を要求しています。全く要求していない大学院もあろうかと思います。そうしますと、3年間で必要な単位取得などは終わっているが、査読が通らないから4年、5年になる場合も、今では非常に多くなってきているので、その意味で標準修業年限という言葉に少し違和感があります。2つ目は、学位を取得するために要した年数ごとの修了者の割合という記載がありますが、この辺りが妥当なのかなという気がいたします。
最後に1つ確認なのですが、以前はよくあった単位取得満期退学、今ではその名称が変わっていると思うのですが、就職が先に決まって退学して、その後、復学して学位を取るというのが、今でも文系の場合は結構残っているのですが、これも修了には入らず、その外になってしまうということですよね。ですから、今私がお話しした3つの事例は結構よくある事なので、そういう意味において標準という言葉が少し気にかかるということです。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。そうですね。ひとつの言い方が、状況によって必ずしもひとつのことを意味するとは限らないということもありえますが、これは要するに、どういう情報を開示したいかというエッセンスは分かっているわけですから、それをどのように大学の特性に合わせて表現するかということなのだろうと思います。そこを一律にこういうやり方でこういう形で開示してください、というようなかっちりとした規則で定めるというのもどうなのでしょうか。ある程度、裁量があっても良いのではないでしょうか。要は知りたい情報が分かれば良いわけで、それをどのように表現するかということだろうと思います。

【髙見高等教育政策室長】先生、少しよろしいでしょうか。

【湊部会長】はい。

【髙見高等教育政策室長】 標準修業年限という言葉のお話がございましたが、若干補足でございます。大きな方針としては先生方がおっしゃっていただいたような形で、単にこの省令に規定する事項だけではなくて、やはり多角的な観点からしっかり情報公表をしていただくことが、非常に重要になってくると思います。
標準修業年限という言葉でございますが、大学院設置基準の第3条、あるいは第4条において、修士課程の標準修業年限は2年、あるいは博士課程の標準修業年限は5年等のように規定がございます。基本的にはこの規定に則っていただくということでございますが、ただ一方で、先ほど先生がおっしゃった満期退学の話、あるいは留学したりとか、査読論文でなかなか結果が出てこない、あるいは長期履修、様々な事情がありますので、そういった様々な事情もしっかりと情報公表の中で公開していただくということが、非常に重要になってくるのかなと思っております。

【湊部会長】そうですね。だから規定にある標準修業年限という言葉について、修了とは何を指すのかという話にもなってくるのでしょうが、そこは厳密に意味を追求してもあまり生産的とも思えないです。端的に言えば実質的に課程を終わるということと、それから実際に学位の授与に至るというプロセス、その両方の時間的なスケールの平均的な状況が分かれば良いということですよね。そこはもう少しフレキシブルに対応できればよろしいのではないかと思います。ありがとうございます。
それでは、濱中委員、お願いいたします。

【濱中委員】よろしくお願いいたします。先生方よりいろいろな意見を伺いながら、なるほどと思って聞いていたのですが、もう1点。修了までにどれぐらいかかるかというのは、先生方の、大学教員の意識だったりとか、査読論文だったりとか、そういったいろいろな事情が絡んでいるということも出ているのですが、一方でやはりディプロマポリシー(DP)の話というのも、結構大事な観点のような気がしています。どのようなDPで標準修業年限内に修了できたのか、できていないのかというところが大事になってくるのではないかなというような気がいたします。
従いまして、退学した者の割合だったりとか、修了していない上記以外の割合だったりとか、年数ごとの割合だけだと、数字が少し独り歩きしてしまうところもあるかもしれず、DPとセットでこの数字が見られるような、何らかの工夫が必要なのではないかなということを少し思いました。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございます。私もそれは非常に大事なところだと思います。ディプロマポリシーはどこの大学院にもあると思いますが、結構抽象的な言い回しで観念的な表現が多いようです。本来ならば、この学位というのはどういう資格を含んでいて、どういうクオリフィケーションを受けているか、といったところが、実はもっと必要なのだろうと思うのです。自大学を見ているからそうかもしれないのですが、非常に観念的なのです。そこはしばしば、逆にトラブルの原因にもなるようです。例えば一人前の研究者として独り立ちできるなど、実は何のことだかよく分からないところがあります。ディプロマポリシーの資格取得内容については、もう少し大学に実体的で具体的な吟味をお願いしないといけないのではないか。その上で、そういうポリシーとの関係で、修了の年限の問題という話もリンクしてくるのだろうというのは、全くそのとおりだと思います。ありがとうございます。どんどん問題が出てきますね。
須賀委員、お願いいたします。

【須賀委員】濱中委員と湊先生のまとめで、私の言いたかったことはほとんど言えているような気もするのですが、実は標準修業年限の中身がディプロマポリシーであると思います。それがきちんと理解されていて、5年で修了できるものにすることだと思います。それが実際にはもう少し積極的に示されていて、例えばコースワークで何をやって、それにどれくらい時間がかかるかということは、それぞれの学校で決めているはずだと思います。
その辺まできちんと書いていただくと、5年で修了というのは実は、今までのお話でいきますと、単位取得退学のレベルまでにこれだけのことが出来上がっているというのであって、それが、コースワークの中身として書かれていたり、それをきちんと評価できるシステムがあって、それで資格が取得されていたり、ということになっていると思います。
最後のところで論文が通るかどうかは、先ほどの論文提出資格によります。我々の大学では、例えばポイント制にして、査読論文が何ポイントだとか、そういった類いの方法をとっている研究科があります。査読が通るまでに時間がかかるので、その論文を学会で発表しているとか、そういったところまでポイントに数えてあげようというようなことを少し試みながら、標準修業年限内で修了させることができる工夫をしているのですが、そういった中身や、具体的に教えていることを詳しく書けば、もう少しこの意味ははっきりしてくるかなというように考えておりました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。そのとおりであると思います。そうですね、これについてはもう少し議論した上で、最終的にはこういう事項として文科省から要請されるにしても、その意図するところがきちんと分かるように示すべきでしょう。単に数字が標準修業年限よりはるかに超えているから、もっと何とかしろとか、あるいはアンケートにもありましたが、年に2、3回しかメンターが話を聞いてくれないのは駄目だから何とかしろとか、そういうことではなくて、やはり日本の大学院教育の実体がもう少しきめ細かく分かるようにするための手段としてこういう情報開示をきちんとやっていただきたいと思います。
それが学生、希望者に対して説明責任を果たすことになるのだということで、大学側にも要請する場合には丁寧にお願いし、文部科学省の意図をよく理解していただいた上で、こういう事項については最低限きちんと開示していただきたいというようにするべきだろうと思います。このことについてはもう少し詰めた上で、皆さんの御意見をまとめさせていただきたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

【髙見高等教育政策室長】先生、ありがとうございます。先生方から頂いた様々な意見を踏まえて、先ほど申し上げたように省令改正、あるいは通知の中でも、ちゃんと趣旨がより明確になるように、しっかり大学にも伝わるようにしていきたいというふうに思っております。その際にはまた個別に、先生方にもいろいろと御相談させていただくこともあると思いますので、よろしくお願いいたします。

【湊部会長】そうですね。是非よろしくお願いします。前向きにこういう方向で検討していくということで、皆様には御理解いただければと思います。ありがとうございます。
それでは、時間の関係もございますので議題2に移りたいと思います。2番目の議題は、卓越大学院プログラムの中間評価及び今後の大学院教育の拠点形成についてです。
この件につきましては、幸いといいますか、本部会の加納委員が、JSPSの卓越大学院プログラム委員会審査・評価部会の部会長を務めていらっしゃるということもございますので、まず加納委員から、この中間評価の結果について、簡単に御説明いただければ有り難いと思います。その後事務局から、政府の政策文書での記載について御説明いただければと思っております。
では加納委員、お願いいたします。

【加納委員】了解いたしました。それではよろしくお願いいたします。卓越大学院プログラムは、昨年度をもちまして全ての中間評価が終わりました。また、平成30年度に採択したプログラムにつきましては、来年度からの事後評価という年度になってまいりました。ここで一つの中間報告といたしまして、この中間評価結果について御報告を差し上げたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
資料にて卓越大学院プログラムの全体像を示させていただいております。幾つかの目的、期待される取組等を掲載しております。大きくはやはり、高度な知のプロフェッショナルの人材を育成していく、そのための大学院に改革していく、新しい大学院の姿を形成していくという、一つの大きなプログラムになってございます。
平成30年度から令和2年度に至る3期間におきまして、合計で17大学、30プログラムが採択をされております。これを一つ一つ御紹介差し上げると時間がなくなりますので、基本的には、平成30年度、これは13大学15件、それから令和元年度採択分につきましては、9大学11件、それから令和2年度採択分につきましては、4大学4件のプログラムが採択されております。この30件のプログラムは、昨年度、令和5年度をもちまして、全てのプログラムにおきまして中間評価を完了したということになります。
さて、中間評価というのはどういうものかといいますと、このプログラムは、例えば平成30年度に採択されますと、令和3年度に中間評価、令和6年度に事後評価という、7年間のプログラムになってございます。これは一般的にプロジェクトとして、平成30年度に開始したから令和6年度に終了するというものではなくて、飽くまでも文科省からの支援期間として、いわゆる弾み車を回す期間として7年間という期間を設定させていただいておりまして、基本的にはその支援終了後は、各プログラム、あるいは各大学で、学内、全大学院に向けてその成果を水平展開するという、いわゆる独自のプログラムとして継続していくことを期待しているものでございます。
平成30年度につきましては、今申し上げましたように、令和3年度に中間評価を完了しております。令和元年度採択につきましては令和4年度、それから令和2年度の採択につきましては、令和5年度、昨年度に中間評価を完了しております。もう既に平成30年度採択分につきましては、今年度、もう事後評価の年度に入っているという状況になります。
評価につきましてはここに記載してございますように、総括評価基準といたしまして、SからDの評価をさせていただきました。項目につきましては、この評価項目アからカ、この視点で審査・評価部会員の現地訪問、現地視察、それとヒアリングに基づいて評価をさせていただいております。
評価結果が、30件に対して、まずS評価が9件ございました。それからA評価が16件、B評価が4件、惜しくも1件のC評価がございました。ただ、この後でも報告させていただきますけれども、このC評価、B評価につきましても、かなりねじを巻いていただきまして、またプログラムオフィサーの先生方の御指導、それから各評価委員の訪問、フォローアップ等も通じまして、現在このC評価、B評価についてもかなりの努力をされておられまして、高い評価レベルには到達しつつあるかというふうに考えております。
主にS評価、A評価で評価されたポイントといたしましては、やはりもう既にこの期間の中で大学院教育全体の改革につながってきているという部分です。その一つのパイロットプログラムとして、この卓越大学院プログラムというものを活用されているというケース。
それから2つ目は、いわゆる国内外で多様なキャリア実現に向けた目的意識が、学生の皆さんに利用されているというところが大きなポイントです。もう既に入学した当時から、どの方向に向けて自分のキャリアパスを描いていくのかということを、関心を持って学生自身が描こうとしている、こういうところのプログラムを非常に高い評価をさせていただいております。
それから3つ目は、PBL、プロジェクトベースドラーニングと言われておりますけれども、いわゆる連携する国内外の研究機関、さらには民間企業と強い連携をしつつ、外部人材を教員、あるいは指導員として招へいして、メンターとして学生の指導に当たっているケース。又は大学から企業、あるいは研究機関に赴いて、いわゆる単なるインターンシップではなく、その各企業、あるいは研究機関の一つの役割として研究を推進する、あるいは課題解決をしていくというプログラム。こういったプログラムによって、産官学連携で知のプロフェッショナルの育成に邁進(まいしん)されているという、強いプログラムも見受けられました。
さらにはこういったプログラムを通じて、単なる寄附ですとか、それから共同研究というものだけではなくて、この卓越大学院のプログラムそのものを活用しつつ、先ほどの企業に学生や教員が派遣されて、その企業の中の課題抽出や課題解決に向けた研究開発、検討を進めるという観点では、それを一つのいわゆるコンサルティング事業というような形で、費用を企業から徴収するというような、新しい資金獲得の手法、こういったことにもチャレンジされていて、支援終了後のプログラムの継続というものを確固たるものにされているというケースもございました。
ただ、幾つか課題も見えてきております。やはりこのプログラムが単にこのプログラムで終わることではなくて、当然このプログラムが支援終了後も継続していくということが大事なのですが、それに加えて、このプログラムをパイロットプログラムとして、大学院全体の教育、あるいは大学院教育システムの改革につなげていくというところ、ここについては、より大学側、プログラム側の一層の努力が期待されるところではあるかというふうに思っております。
また、2つ目といたしましては、いわゆる非常に学際的な学生、非常に幅広い分野の学生が、1つのこの卓越大学院のプログラムに参加しているということから、専門から少しずれた教育、自分が専門でない領域の教育も受けなければいけない。そのときの深さ、それから難易度の問題が、若干見えてきている部分もございます。こういった専門性に依存する部分の教育の方法ですとかバランスといったものにも、今後検討が求められるのではないかというふうに考えております。
更に学生の確保に対して積極的な取組が求められるかというふうに思っています。この卓越大学院は非常に厳しいプログラムで、当然ながら海外での履修、それから産学連携、例えば共同研究の執行ですとか、あるいは先ほど申し上げたようなインターシップを超えた取組といったものも、このプログラムのカリキュラムの中に入ってきてございます。
こういったところから、学生にとっては非常に厳しいプログラムだと見られているケースもありまして、今後、このプログラムを受講し、卒業、修了した学生が、いかにその後のキャリアパスで成功を収めるかということの紹介も含めて、今後、学生のモチベーション、このプログラムの参画に向けたモチベーションを与えるような取組が必要かなというふうに考えてございます。
最後になりますけれども、やはり資金の継続的な調達であります。いわゆる共同研究ですとか寄附金だけでは、学生の経済的な支援から、非常に高度な研究、こういったものを継続していくのには不十分なところにあります。こういった事業的な資金の調達の方法につきましては、先ほども申し上げましたように、新しい資金調達の取組への挑戦といったものが、各プログラム、さらには大学に求められるかなというふうに考えてございます。
総括になります。事業全体としての中間的な総括所見でございますが、残念ながら、2年目、令和元年度からは、新型コロナウイルスの感染拡大といったような問題がございました。
当初は、海外との連携がなかなか前に進まない、あるいはインターンシップが執行できないというような、数々の障害はあったわけですけれども、実は各大学でこの段階から、非常にオンラインの積極活用といったもの、さらにはいわゆるオンラインデータ、ビデオデータを含めた教育の方法というものが生み出されました。いろいろな改革をもちまして、このようなプログラムを予定どおり進めるというところに、非常に注力をされたというふうに受け止めております。この結果、多くのプログラムが順調に取組を進捗させているということも確認しております。
先ほどのところでも申し上げましたが、残念ながらBやCの評価となったプログラムにおいても、中間評価等の指摘事項、さらには委員によるフォローアップ、プログラムオフィサーの細かい御指導、それからフォローアップによって、かなりリカバリーが取られたという段階に来ております。既にB、Cを超えた成果に向けて活動を推進されているというところも確認させていただいております。
この採択全30件のプログラムにつきましては、現在それぞれの大学の中に存在する、あるいは共通的に存在する大学院教育の課題といったものを抽出いたしまして、改革をリードするパイロットプログラムとして改革構想をつくって、学長の責任の下、大学が主体的に体制を構築して進めるというプログラムでございます。
そういうことから、今後はこの中間評価結果、更に事後評価を踏まえて見直しされた計画等を執行し、補助期間終了後も学内外資源の継続的な活用、それから、この今回の卓越大学院プログラムで形成したプログラムを学位プログラム化していく、あるいは更にそのプログラムを水平展開し、ほかの大学院教育システムにもつなげていくといったところが今後の大きな課題であり、期待であるかなというふうに思っております。
30のプログラムが、それぞれ今、日本全国、北から南まで活動しており、非常に多くのノウハウ、それから工夫等も、このプログラムによって出てきております。これは実は審査・評価部会の委員が一番痛感しているところでありまして、委員からも、このノウハウの横展開というのが非常に重要ではないかなというようなことも訴えられております。そういうこともございまして、今後このノウハウの横展開に向けた仕組みということも重要なポイントになってくるかなと。いわゆる大学院改革の一つの普及促進といった観点での重要な取組になってくるかなというふうに考えてございます。
今後文部科学省様におきましては、本事業、さらには博士課程教育リーディングプログラム事業と、多くのプログラムが立ち上がってきておりますけれども、積極的なPR、それから普及、さらにはその成果の横展開に向けた取組というのも、この卓越大学院プログラムを一つの手本――と言うと非常に僭越(せんえつ)ではあるのですが――として、是非成功につなげていっていただければというふうに思います。
本事業で得られた知見、成果、課題、さらには国際卓越研究大学制度や地域中核・特色ある研究大学の振興、博士後期課程学生への経済的支援拡充といったような取組も、今後大学院教育施策の展開として、継続、さらには発展をお願いしたいというふうに思っております。
フォローアップにつきまして、若干簡単に説明しておきます。フォローアップにつきましては、まず卓越大学院プログラム委員会の御指導の下に、審査・評価部会の中では、フォローアップ担当委員を、1つのプログラム当たり3名程度でアサインさせていただきまして、実施状況報告書の確認、それから大学を訪問し、担当の先生方、さらには学生の皆さんとも意見交換をさせていただいて、それに対するフィードバックをさせていただいております。また現地視察報告書を作成いたしまして、全委員の共有、それから大学との共有という形で、このフォローアップをその活動に役立てていただいておるという状況でございます。
また一方で、プログラムオフィサーという先生もアサインして、これはプログラム当たり1名という形になってございますけれども、どちらかというと審査・評価部会でアサインされたフォローアップ担当委員は、審査の立場もありますので、名前も明かせないという状況ですが、ここに、大学のプログラムに寄り添って、いろいろな問題、課題に対してのアドバイス、さらにはフォローアップをするという形で、プログラムオフィサーの先生方には御尽力を頂いている状況でございます。この体制で、この大学のプログラムのフォローアップを進めさせていただいております。
大きく3つのフォローアップの取組を行っております。
まず1年に1回、必ずPOによるサイトビジット、現場を訪問させていただきまして、プログラム責任者やコーディネーター、さらには大学の責任者等へのヒアリングや意見交換、更に学生へのヒアリングも実施しております。そこから得られた改善すべき点など、個人情報を伏せた形で。これは学生からもいろいろな要望も出てまいります。学生さんが、誰が言ったのかと言わないでほしいという御意見、御要望もありましたので、お名前を伏せた状態で、学生さんからのいろいろな意見、それから要望といったものも、プログラム責任者を含めた執行側にお伝えさせていただいているという状況でございます。
それから中間評価。これはどちらかというと評価に当たりますので、アドバイスですとか、指導という立場ではございません。飽くまでも評価という形で、ヒアリングを中心に評価を行ってございます。惜しくもC評価になった大学につきましては補助金の減額ですとか、D評価では補助金打切りというものになってまいりますけれども、幸いというわけではないのですが、今回3つの3年間のプログラムにおきましては、D評価はございませんでした。C評価につきましても、残念ながら補助金の減額をさせていただきましたけれども、リカバーすべく、鋭意なる努力を進めていただいているという状況を確認してございます。
それから、今年度から始まります事後評価でございます。同じように、これは委員の判断も含めてですけれども、フォローアップを事後評価という形で進めさせていただく予定でございます。最終的にはこの事後評価は、大学改革に定着していくかどうかといったところが中心に評価されるという形になりますので、中間評価とは少し違った評価視点になるかというふうに考えてございます。
産業界との連携の具体例を幾つか挙げさせていただきます。例えば企業連携によるイノベーション創出ということで、これは産学連携で集まりまして、新しい構想ですとか問題提起、さらにはそれに対する対策。その対策のための研究開発。この研究開発の研究費を企業から受け取るというような形で、外部リソースを活用しながら、プログラムの学生が、いわゆる現実的な問題と向き合って問題解決をするというイノベーションの創出のプログラム。これは一つの例ですけれども、グローバル超実践ルートテクノロジープログラムということで、長岡技術科学大学が推進されております。
あとPBL科目の学修成果シンポジウムということで、これは一つの例で、東北大学の人工知能エレクトロニクス卓越大学院プログラムの例ではございますけれども、これもやはり産学連携で、学生の成果の報告ですとか、その成果に対する産官学連携でのフィードバックを頂くという観点で、シンポジウムを開催しております。
起業実践では、もう既に在学中からベンチャーを設立することを前提に、ベンチャーの企画から設立までを実践していく教育の中に、実践体験型の学習として取り入れられている事例でございます。もう既に履修生が在学中に起業するという事例もできております。
それから学外資金の調達、獲得等につきましては、連携企業とのインターンシップや企業研究者との検討会、研究講座の設置で財政基盤を強化するというプログラム。これは実際に共同研究のプログラムに非常に近いわけですけれども、これを超えた、例えば学生の自主交流会の実施、学生のモチベーションを喚起するような取組を産学連携の下に企画されているケース、さらには企業や履修生の間で若手研究者討論会を定期的に開催して、そのための費用を、あるいはもうこの時点で学生に対して企業が、いわゆる採用を前提としたお話をされているというケースも見受けられております。
また、物質・情報プラクティススクールです。これは先ほど申しました、私もびっくりした事例の一つなのですが、学生と教員を企業に派遣して、約2か月弱ですが、社内に滞在して、社内にある課題を発見し、それを解決する、提案するというプログラムになってございます。これは学生にとっては非常に貴重な体験です。今までどおりのインターンシップではなくて、一つの業務として進めていくということもございまして、これを単純にインターンシップとして受け入れているだけではなくて、このプログラムそのものを一つのコンサルティング業務として、企業に対してサービスを提供するという形で費用を頂いているケースでございます。
大学に対して費用を払って新しい大学の教育のスタイルですとか研究のスタイルといったものを学ぼうというような、そういうプログラムが、海外では非常に多く進んでいるわけですけれども、これを単に受けるだけではなくて、東京工業大学におきましては、そういったプログラムを自ら立ち上げていくことで学外資金を獲得していく、そういう仕組みにつなげたらどうかというような、いわゆる審査・評価部会委員ですとかPOの先生方からのコメントに従いまして、こういった成果も出ていっているという状況でございます。
更にいろいろ、異分野のマッチングワークショップですとか、それからインターユニバーシティ型の5年一貫博士人材育成ですとか、こういった日本の国内にある幾つかの大学と連携して、この卓越大学院プログラムを進めていくというような、そういうトライアルもされております。
各事業の継続、それから発展に向けた取組等につきましてです。東北大学の未来型医療創造卓越大学院プログラムにおきましては、未来データ(D)コース、未来技術(T)コース、それから未来社会(S)コースという3つのコースの学生が、それぞれのコースで卓越、知のプロフェッショナルを磨いているわけですけれども、その学生がチームを組んで、その地域に潜在する諸問題を起点として研究課題を探索するというような、バックキャスト型の研修も進めておりまして、こういったところからも、実務的な大きな成果も見えてきている部分もございます。
また、ダブルメンター制、それからリバースメンター制と。このリバースメンター制が非常に面白いのですが、生命医科学、それから理・工・情報、分野横断の教員が共同研究を進めていく中で、それぞれの研究室で学生の研究指導を行うような、いわゆる完全ダブルメンターといいますか、お互いの共同研究先の研究室で研究をしていく、こういう取組もされていたりします。いわゆる2人のメンター、完全なダブルメンター制度です。違う分野から、あるいは違う領域、違う視点からメンタリングを受けられるというような制度も導入されています。
それから、研究科等の連係の課程実施基本組織といったものも設立されています。やはりプログラムが非常に横断的であるというところから、それら全体をまとめる、ここでは九州大学の事例ですけれども、マス・フォア・イノベーション連係学部を設置して、横断的な取組を進められているという事例もございます。
また国際的な実践教育におきましては、本学の教員と、それから海外の教員が連携しながら、お互いに学生を受け入れるという制度、欧州の学生が日本に来る、あるいは日本から、このプログラムから欧州の大学に留学する、こういう制度を使いまして、デュアルシステムによってインターンシップを含む実践カリキュラムを策定しているということで、各大学いろいろ工夫をしながら、知のプロフェッショナル育成に向けた取組をされていると。
先ほどもございましたように、こういった多くのノウハウ、それから実施事例といったものがございます。これは是非広くノウハウの普及、展開を、全大学に向けて行えますような、そういう工夫が今後必要になってくるかなというふうに考えている次第でございます。
次は、キャリアパスのお話になります。これは比較すべきものかどうかというのは少しありますけれども、既に342名の卓越大学院プログラムを修了した学生さんがいらっしゃいますけれども、その約半分が民間企業、官公庁への就職を実現しております。49.7%という形になってございます。
日本国内全大学における令和2年度の修了者数を見ますと、決して遜色ない、さらにはこのプログラムの成果が生かされた、いわゆるキャリアパスの実現という形になっているかというふうに考えてございます。
以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございました。
それでは時間の制限もありますので、引き続き、今年度の政策文書の中に幾つか大学院のことを取り上げておられることについて、髙見室長からお話しいただけますか。

【髙見高等教育政策室長】はい。お手元の資料2-2を御覧ください。2ページ目でございますが、6月21日に閣議決定されました、いわゆる骨太の方針の抜粋を示しています。御覧いただきたいのは特に赤の部分でございますが、ここにあるように、産学官の共創を促進して、経済社会ニーズに対応した大学院改革を行っていく。あるいは博士号取得者の幅広い活躍の場の創出につながるような取組や処遇向上等を進めていく。こういったことを踏まえた上で、中長期的には世界トップ水準並みに博士人材を増やしていく。こういったことが記載されております。
次のページをお願いいたします。こちらは新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画ということで、これも同じ閣議決定でございますが、この中でも(10)、一番下のところでございますが、博士人材や若手研究者の活躍促進のために、多様なキャリアにつながる取組の推進、あるいはその処遇向上、さらには産学官が連携した活躍の場の創出、こういったことも記載されているところでございます。
さらに、次のページを御覧いただきたいと存じます。統合イノベーション戦略、こちらも6月初めに閣議決定されたものでございますが、この中では世界トップ水準の大学院教育を行う拠点形成などの記載がございます。
文部科学省におきましては、先ほど先生から御説明のあった卓越大学院プログラムの成果、またこれらの政策文書の記述、あるいは4月の本部会で説明しました、3月に文部科学省で取りまとめた博士人材活躍プラン、こういったことも踏まえて、来年度の概算要求に向けて、産学連携、あるいは国際協働の取組、さらには組織改革を進めるための大学院教育改革の取組を支援するプログラムについて、検討を進めていくこととしております。この後、今後の大学院教育改革の支援の在り方について、是非先生方から御意見を賜ればと思います。
なお、前回の大学院部会の博士プランの説明の中で、韓国において博士号取得者が増加している背景、理由について御質問いただきましたので、簡単でありますけれどもここで説明したいと思います。
まず1点目でございますが、歴史的背景として、戦後にアメリカの支援で優秀な若者が渡米して、博士の学位を取得した後、国内で要職に就くといったことが慣例のように定着して、韓国で要職に就く人の学歴が高いという状況を生み出したと、こういったことがございます。
また2点目でございますけれども、近年の社会的背景といたしまして、韓国は非常に学歴を重視する社会であり、高学歴が収入や社会的地位に直結する、こういったことで、学生自身、あるいは親が高学歴を求めているといったことがございます。就職率あるいは年収も、学士より修士、あるいは修士より博士が高いといった状況にあることも背景にございます。
あと3点目でございますけれど、韓国は科学技術に関して右肩上がりの積極的な投資を行っているということでございまして、研究開発費も研究者の数も博士人材の数も増えているといった状況もあるということでございます。
このように博士人材が韓国で増えている要因というのは、1つに絞ることは難しい状況ではございますけれども、こういった社会の土壌の中で、韓国政府全体で研究開発投資を出していくといったところが作用して博士人材が増えていると、こういった分析をしているところでございます。
私からの説明は以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございます。今お二人からお話がありましたけれども、一つは卓越大学院プログラムが中間点から後半に入ってきたので、文部科学省としては次期の大学院プログラムをどうするか、今まで一連の大学院プログラムが随分続いてきたわけですけれども、後継の大学院プログラムとしてどういうものをどう実施するのかということを、既に検討中であると伺っております。
二つ目として、様々な政策文書、骨太方針を含めた政策文書の中でやはり繰り返し出てくるのが、社会的経済的ニーズに対応した大学院教育改革であろうということです。
どうすれば博士号取得人材が大学のみならず社会の各層で、活躍できるような社会的環境が出来上がるのかを考えるべきだということが必ず出てきます。だから問題は、社会的ニーズ等に対応した大学院改革とは何を意味するのか、大学院教育の何を改革するのかということが大きな議論になると思います。
このように博士人材が社会で広く活躍できる社会的な風土をつくっていく必要があるわけですが、今は必ずしもそういう状況にないというのも皆さん御存じのとおりです。そういう風土を醸成していくためには、大学側の、あるいは社会側のどういったアクションが必要なのかということが重要ですが、これについては今いろいろな議論がなされています。
そういったことがこれからの課題になってくるということでございます。全体に非常に漠とした話ですけれども、少し時間がありますので、ここで今の2点を中心に、2つのお話を伺った上で、何かこれは是非言っておきたいということがございましたらお話を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
まず、小長谷委員、お願いいたします。

【小長谷委員】はい。丁寧な御説明ありがとうございました。卓越大学院の方なのですが、御説明の中で横展開ということを何度かお話になりましたが、この横というのは、大学の中で全大学にという意味でしょうか、他大学へという意味でしょうか、教えてください。

【加納委員】もう既に大学内でのこのプログラム成果の横展開というのは、学内の大学改革に向けた取組として進められているケースが多いと思います。ただ、やはり1つの大学にとどめておくのではなくて、こういった非常に高い成果は、いわゆる他の大学院も含めた大学院間での共有というのも必要かなというふうに、審査・評価部会委員の方からも意見が上がっております。そういう意味で、今日申し上げた横展開というのは、他大学への展開ということも含んでおります。

【小長谷委員】ありがとうございます。それで、やはり他大学の場合は、資金もなしにこのグッドプラクティスを真似なさいというのは少し難しそうです。もちろんおねだりしてばかりはいられない国家財政であることはよく分かりますけれども、採択されなかったところに対してフルサイズでなくてもいいからミニサイズあるいはプチサイズで支援されれば良いのにと思います。例えば、このプログラムを実施する中で、どこに投資すれば最も効率的に機能するかを、事業を通じて経験知として見いだして、次のステップの展開に提供するとか、あるいはこれだけ多様なプログラムだと、どれを真似たらいいのかよく分からないので、おたくの大学にはこういうのがいいのではないですかというように、見てくださるような、コンサルタント、あるいはこのプログラムに直接関わった方がたの、お産婆さん的経験を貸与していただくのはどうでしょうか。
文科省が雇い、その方を貸し出す仕組みです。知恵の貸出しですね。次のステップには、次の手法を、経験を踏まえて、小さな投資で大きな効果を狙えるような仕組みというのはあり得るのではないかと思って聞いていました。

【加納委員】ありがとうございます。正に今おっしゃったとおりのことで、卓越大学院プログラムにつきましては、各大学の取組について、冊子で学術振興会の方から発行されております。ただやはり審査・評価部会の委員といたしましても、それだけでは不十分じゃないかというような意見もありまして、この後川端委員も出てくると思いますので、少し御意見をいただければと思うのですが、正に有機的な展開をどのように図っていくかというのは、今後少し議論が必要かなというふうには思います。ありがとうございました。

【湊部会長】それでは、川端委員、お願いいたします。

【川端委員】ありがとうございます。名前が言えないということなので、このプログラムに関わってはいるのですけれども。
1点だけ言いたいのは、リーディング大学院のときに、大学院と産学連携というものをしっかりカップリングしましょうよという話をした。その次に、それを更に展開していって、学位プログラムというような新しい仕組みまで入れて、この卓越大学院という制度の展開が始まって、私たちはいろいろな機関に行ったりして、結局何をやっているかというと、先ほど小長谷委員が言われたように、大学執行部やマネージメントをしている教員たちのコンサルテーションをしたり、言わばカウンセリングをしたりしているのです。
そのノウハウは山盛りあって、もう1点は、リーディング大学院、それから卓越大学院と、成果が出るのはようやくこれからなのです。この成果を積み上げていかないと、またこれを崩して新しいことをやりますとやられると、結局何の成果がどうなったかが分からないままに新しいことを始めているという印象になります。
だから、今後の新事業構築では、各大学は何かまた新しいことをやらなくてはみたいな話になっているのではなく、今までこれだけやってきたものが全部積み上がって今になって。新しい博士の学生さんたちの話を聞いても、キャラが変わってきているし、先ほどのキャリアパスを見ても、半数ぐらいが、民間がいいとかいう話を延々言ったりする人たちがいっぱい現れているという。これをもっと積み上げていかないと、というので、加納さんが言われたみたいに横展開を。
今度はある意味では、ドクターの人間に生活費を払わなくても、新SPRINGとかいろいろなものが出ているので、そこを抜いた意味での事業費というもので、いろいろな形のものを更に積み上げるための事業というのをできるだけ多くの大学を巻き込んで是非やっていただけると、そこにカウンセラーではないですが、いろいろな人たちが活躍して、新しいものをつくっていくというのをやられるのがいいのではないかなというのが、すみません、提案でした。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは、次に和田委員、お願いいたします。

【和田委員】ありがとうございます。よろしくお願いします。
大変分かりやすい説明をありがとうございました。それぞれの最大項が大学院改革につながっている、また、これをパイロットプログラムとして横展開していくということに関しても、全く異論ございません。その中で、先ほど最後に出てまいりました統合イノベーション戦略2024のところで、大学院の改革の取組、2つ、産業連携、それと国際協働という言葉が出てまいりました。実際博士人材活躍プランにおいても、大学院教育の国際化という言葉が出てきております。
この中で、先ほど産学連携の取組のグッドプラクティスはありましたが、少し国際という観点のフォーカスがもう少しあってもいいのではないかなと思いました。例えば国際頭脳循環などのグッドプラクティス、そういったものを共有して、さらなる日本全体の国際化というところを進めていく、このように展開すればいいのではないかと思います。以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。それも非常に大事な局面だろうと思います。それでは、神成委員、お願いいたします。

【神成委員】加納委員、説明ありがとうございました。
リーディングプログラム、卓越大学院プログラムとつながって、今、川端先生からお話があったように、SPRINGという1万人の経済サポートのプログラムがあるわけなのですが、ここにおいても、個人の経済サポート以外にはプログラム運営費の手当はゼロですが、大学院教育プログラム改革ということを、ペアで提案してもらって審査するという形になっています。リーディングプログラム、卓越大学院を取ってきたような大きな大学は、そこでの教育ノウハウとかリソース、それから学内コンセンサスというか、ちゃんとしたものがあるので、すばらしいプログラムを提案してくるのですが、それ以外の大学も実は、リーディング大学院や卓越大学院で採択された他大学がやっているプログラムをモデル化して、大抵の大学院がインターンシップ、PBLによる社会課題解決への取組、それからトランスファラブルスキルでチームワーキングとか、プロジェクトマネジメントとか、コミュケーション能力開発、異分野融合の科目とか教養科目、それから副指導とか産業界のメンター、こういう項目をちりばめて提案してくる状況になっているので、この2つの先行したリーディングプログラム、卓越大学院プログラムでお手本的なプログラムを実施してきた経緯は、横展開、それから学内の展開という形で実現しつつあるということは間違いない状況です。加納委員はじめ、プログラムをサポートしてくださった委員の方々の御努力に敬意を表したいと思います。私の質問は、加納委員はたしかリーディング大学院にも関わっていたと思うので伺いたいですが、リーディング大学院と卓越大学院の違いというのは、後者は知のプロフェッショナルというところで、研究専門性に少し重心を移して、そしてもう一つ大事なのが、終わった後にプログラムを自走するために、外部資金を獲得するための産業界とのつながりを強くしなさいということだったと理解しています。その結果、1つのプログラムの予算は増えたけれども、全体のプログラムの数は減ったという形に落ち着いていると思うのですが、加納委員から見て、リーディング大学院のような取組等に比べて、卓越大学院の取組において、ここは違っていた、ここがよかったというところは、具体的に比較するとどこだったのでしょうか。

【加納委員】なかなか難しい御質問ですね。卓越大学院等はどうしてもやはり、研究で世界1級のプロフェッショナルを育成するというポジションにありました。そういう意味では、リーディング大学院がある程度学内に閉じた、いわゆる学際的な人材育成をしていくと。その中で高度な博士課程学生を、いわゆる強化していくといったところが中心だったのですが、やはり卓越大学院というのは外に出ていっています。
例えば大学間の共同研究につきましても、当然ながら国内大学との連携というのもございますけれども、ほとんどのケースが海外の大学との共同研究ですとか、インターンシップについても、海外との国際連携というのを非常に強く意識したプログラムでもありますし、また指導員の先生方もその意識が非常に強い状況になっています。そういう意味では、どうでしょうね、1つの大学を超えた取組になっているところが、やはり卓越大学院の大きな違いではないかなというふうに思います。
そういう意味では、博士課程進学の学生をやはり増員していくという一つの取組にリーディング大学院があり、その取組の中の更に発展形として、知のプロフェッショナルである高い高度な人材を育てていくのが卓越大学院と、こういう位置づけになっているのかなというふうに考えています。

【神成委員】ありがとうございました。

【加納委員】お答えになっていますでしょうか。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは、迫田委員、お願いいたします。

【迫田委員】ありがとうございます。リーディング大学院の時からずっと見てきていて、リーディング大学院から卓越大学院に変わったときに、研究の方に大分シフトしていったなと思い、若干心配していたのですけれど、先ほど就職状況のところを伺うと、ちゃんと社会に出ていくという方々が半分を占めているというのを聞いて安心しました。是非この点はずっと注視していただきたいなというふうに思います。
それと卓越大学院になったときに、文理融合というのが少し後退したような気がしていたのですが、やはりこれは確かにプログラムの問題というよりは、今我々が議論している人文社会系、こちらを分厚くしていかないと、なかなか文理融合という掛け声だけでは、変わっていかないのかなと思いました。これは感想ですけれども、やはりそこから社会を変えていくには、もちろんテクノロジーも重要なのですが、人文社会系の充実が欠かせないと思うので、ここをどれだけ分厚くしていけるかというのが課題かなというふうに感じました。以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。

【加納委員】少し私から、一言よろしいですか。文理融合はもう各プログラム、非常に積極的に進められております。当然ながら、文社系の卓越大学院プログラムはありますけれども、そういったプログラムの中にも、実はデータサイエンスの科目を入れたり、それから一方で、やはり理系の卓越大学院プログラムの中に、いわゆる科学の倫理を含めた倫理系ですとか経済、こういったようなプログラムもカリキュラムの中に組み込まれたりしていまして、恐らく文理融合は以前よりも非常に進んだ形でプログラム連携ができている、文理融合ができているかなというふうに、フォローアップ含めて拝見させていただいております。以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。それでは、村田委員、お願いいたします。

【村田委員】ありがとうございます。ちょうど先ほど加納委員の御報告で、いわゆる民間企業へたくさん就職しているというお話を聞いて、卓越大学院が目指したことが非常にうまくいきつつあるのだなというふうに思いました。
同時に文科省の方からも、いわゆる骨太の方針のところで、やはりイノベーションの会議の報告がありました。そういったことを考えますと、正にこれから日本がイノベーションを起こしていく中で、卓越大学院の制度がうまくいきつつ、民間に就職をしていって、そこでイノベーションを起こす力になっているのだなというふうに、ある意味すごく期待できるなと思ったのが正直なところです。
その上でなんですが、今、迫田委員から少しありましたけれども、もちろん文理横断のプログラムの中に科目があるのはよく承知をしているのですが、日本の場合、イノベーションがなかなか起こらない。特に発明、発見、特許に関しては、いわゆる世界ではトップクラスにありますが、それが実装化につながっていかないというところが一番大きな問題です。高等学校のときに25%ぐらいしか理系がないのですが、その25%の理系の人が物すごく優秀で頑張っていただいて、こうやってリーディング、あるいは卓越につながっているのですが、その次の中間層のところがいないので、それが実装化していかないという大きな壁があると思うのです。
ですから、せっかくここまで来たわけですから、次に、1つはもう少し幅を広げて、理系の方が今度はMBAを取るとかというような形に、次の社会実装へつなげる人材、少し裾野を広げるような方向に変えていかないと、結局は本当の意味でのイノベーションの実装化につながっていかないと考えます。
これはAIに関しても、東大の松尾先生が本にも書かれていますけれども、日本のAI研究者の量と質はトップクラスであると。しかし教える中間層がなかなかいないのですというお話と、正に同じことだと思いまして、せっかくここまで来た卓越大学院の制度と、正に政府としても、あるいは国としてイノベーション、博士人材を育てていこうというこの流れ、もう一つ、次の一歩の手を是非文科省の方でもやっていただければ、その実装化につなげる次の一歩がすごく大きいのではないのかなという気がしておりますので、是非そのところをお願いしたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

【湊部会長】ありがとうございます。そこも大事なポイントなのでしょうね。
時間も残り少ないので次に行きたいと思います。高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】ありがとうございます。中身についてはすばらしい御説明と、実際も本当に各大学ですばらしいお取組がなされたのだと思います。この資源をどう継続してみんなのものにしていくかという観点で、足元の話をさせていただきたいと思います。多くの文科省の事業が、手を挙げてもらった、いい大学のプランを実施するのですが、いずれも時限だと思います。このサイズ感を見ると、もし加納主査が御存じだったら伺いたいのですが、運営コストにおけるスタッフの割合を知りたいです。
というのは、恐らくどの30プログラムの案件に関しても、理念を持った教員、いわゆる研究者の方々のリーダーシップの下、数人の運営スタッフが実際回しているかと。活動中身を拝見するにも、かなりこれは手間がかかることばかりだとすると、やはりお財布状況を考えれば、事業終了後もこのままを実施、運営するのはほぼ無理だという中で、じゃ、どうするのかという話です。
ここまでは常に、いろいろな事業で全て同じ構造の問題が指摘されていると思うのです。なので、今回これはJSPSの方で、せっかく若手人材をしっかり育てなきゃという大きな波の中で、例えばこの30件の運営に当たられた、しかも大学のいわゆるプロパーの事務職員で、たまたまその何年間だけいた人ではない人というのが、川端先生がおっしゃっているような、UEAでしょうか、恐らく欧米の多くの大学にはプロとして存在する、教育の専門家ということになっているのではないかと思います。が、このままだと、恐らく時限の雇用で、その後はその知見が散逸し、同業者がいなく、集まる場もなく、消えていってしまうのではないかと、とても懸念します。
今後、例えばファンディングの中に類似のプログラムを運営した人たちが、今度はファンディング側でいる場所をつくるですとか、そういうことを少し考え始めてもいいのではないかと思いました。例えば、URAは今、十数年の政策の後に1,600人いますが、それとて多くの大学では点で存在して、やはり年に1回同業者が集まるところはみんなとても力を得て、各大学、ホームに帰っていくわけです。恐らくこの事業関係者は1,600までいかないので、そうするとますますこのプロがせっかく5年で培ったものが散在してしまうと思って、そこに懸念を持っております。
以上です。

【湊部会長】私もそこは大事なところだと思います。では、次に進んで、塚本委員、お願いいたします。

【塚本委員】ありがとうございます。私も卓越大学院に関わっておりますので、加えて3点コメントさせていただきます。1点目は、皆さまが既に御指摘なさいました産学連携の様々なパターンの成功例が出てきていることです。学学もありますし、国研が入るなど、産業界との連携も幅広くあって、しかもそれぞれのコラボがグローバルなところもあり、多種多様な事例となっていると思います。
2点目が参加している学生たちの意欲の高さと取組のマインドセットがすばらしいことです。評価が余り高くない卓越大学院のプログラムであっても、参加学生たちの志ややる気は前向きなため、卓越大学院生や卒業生からの学部学生への働きかけのようなものがあると、博士進学へのワクワク感や関心を高める刺激になるのではないかと思います。
3点目が取組事例の横展開についてです。失敗している例もあるので、抽象化して、これは避けた方がいいというような、「べからず集」的なものは同じ失敗を繰り返さないということで参考になるのではないかと考えます。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。
それでは、宮浦委員、お願いいたします。

【宮浦委員】ありがとうございました。少し気になっている点は、大型大学さんで複数のプログラムが動いていることです。例えば名古屋大学さんは4件とか、東京大学とか東北大学3件とか、よく見ると、何か部局の色彩が若干違っている。研究科ごとにやっているわけではないですよねという感じで、横展開されて大学で3つも4つも動くことがいいのかどうかというのが若干気になっていて、むしろ大型大学さんは予算規模を大きくして、1つのプログラムとして全ての研究科の学生がエントリーできるみたいな形の方が、もしかしたらいいのかもしれないと。
余りにも研究分野が交ざってしまうのでやりにくいということなのかもしれませんけれども、中堅の大学はみんな1件でやって、学長のトップの下でやっているのですが、大型大学さんは3件、4件とやっている。同じ年度に何件も採択されている。それに参加している学生さんは、途中でプログラムを変えたり、自由に動いたりできるのかというような質問をしたくなっていて、その辺りを次のプログラム構築をする場合には、学長のリーダーシップの下に本部が関わって大学院改革をするというミッションですので、複数個動かすというのは少しどうなのかなというのを感じました。
もう一つは、最後のプログラム修了者の方が民間に行かれているという数字、調査結果は非常に興味深く拝見して、成果になっているなと思うのですが、何分nの数がすごく違うということと、あと、医師の方がほとんど参加していないのだろうなというふうに読めてしまって、基礎・臨床の医学研究科の方もPBLとかほかの学生に交じってやっていないのかな、やればいいのにというのが、若干気になった点であります。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。大体御意見は出そろったようですね。最後のポイントは確かにそのとおりで、卓越大学院プログラムへの医系の参加が非常に少ないことは、この数字で明らかですね。

【金井大学院振興専門官】湊先生、すみません、事務局でございます。永井先生が挙手されていたと思いますので、御発言の機会、いかがでしょうか。

【湊部会長】はい。

【永井委員】永井です。すみません、少しマウスの調子が悪かったので打ち込みました。「未来の博士フェス」というのに昨日行ってきたのですが、学生たちってすごく画期的だったのですが、この卓越大学院プログラムは既に企業に就職している出身学生がたくさんいると思うので、そういう方たちに、こうしたいろいろな運営企画のアイデアなども出していただいたら面白いのではないかなと思ったのです。
企業にもすごく同年代の方たちがたくさんいるので、企業も交えた展開をするんだったら、この卓越大学院プログラムにこんな課題をやってほしいとか、むしろオファーしてもらうような、何かすてきな機会があるといいなと思いました。あと、なかなか採択されていない大学は参加しづらいという心の壁もありますので、そういうのを取っ払っていただけるとうれしいなと思うところです。以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。いろいろなご意見をいただきました。実は余り時間が残ってないので、最後に時間があればまたこの話題に戻りますが、まだ議題3がありますので、それを終えてからということにさせていただきたいと思います。
議題3は、中教審特別部会で現在高等教育の在り方に関する議論が進められておりまして、これは今夏に、中間まとめとして取りまとめられる予定と伺っています。これについては、当然大学院の問題も含む課題ですので、この中間まとめの骨子を事務局からお話しいただきます。多分それについて今日議論する時間はないと思いますが、まずは頭出しとして、事務局の方から説明させていただきたいと思います。
髙見室長、お願いいたします。

【髙見高等教育政策室長】それでは、お手元の資料3-1を御覧ください。こちらですけれども、中央教育審議会大学分科会の下に少子化時代の高等教育の在り方ということで、昨年の9月から大臣に諮問いただいて御議論いただいておりますが、特別部会7回にわたる議論の中で、6月28日に中間まとめ案としてお示しした内容でございます。
今後のスケジュールとしましては、夏頃に一旦中間まとめとして取りまとめていただいた上で、また秋、冬にかけて議論を重ねていって、年度内には一定の結論を得ると、こういった方向で今御議論を進めていただいているところございます。
本日ですけれども、事前にもう資料をお送りしておりますので、簡単にポイントのみ絞って御説明したいと思います。
まず1枚目、1ポツの部分でございますが、高等教育を取り巻く状況ということで、先日も、昨年生まれた子供の数が72万人台になったという報道もございましたが、急速に少子化が進んでいく中で高等教育を取り巻く状況は変化していると、こういったことを整理しております。
その上で、2ポツでございますけれども、今後の高等教育の目指すべき姿といたしまして、(1)の我が国の「知の総和」の維持・向上ということで、少子化時代の中でも、やはり知の総和というのをしっかり維持していくことが必要なのだ、数と能力の掛け合わせということを書いておりますけれども、こういったことが重要だということを大前提に示した上で、(2)にございますような質と規模とアクセス。これは高等教育における教育研究の質の向上、また規模については、社会的に適切な規模の高等教育機会の供給、アクセスについては、地理的又は社会経済的な観点からの高等教育の機会均等の実現、こういった3点についてしっかり進めていくことが必要だということを触れております。
また重視すべき観点、(3)にございますけれども、1から8まで、教育内容の改善、あるいは留学生、社会人等の学生を含めた多様性の確保、更に研究力の強化、経済的な支援の充実、更にデジタル化の推進。これは教学面、経営面、両方あると思っていますけれども、こういった観点。さらには大学の運営基盤の確立ということで、個々の大学のガバナンス改革、あるいは大学の自主性・自律性を向上していくという観点。更に7、8にございますように、高等教育機関とその入り口である初等中等教育、あるいは出口である社会との接続、さらには地域との連携、こういったこともしっかり進めていくことが必要だということで、草案として整理してございます。
次のページをお願いします。3ポツとして、今後の高等教育政策の方向性の具体的方策ということを整理しておりますが、先ほど申し上げた質、規模、アクセス、この3つの観点で分けております。
特に大学院教育改革に大きな影響があるところとしましては、この1から3に書いている中の3の部分でございます。大学院教育の改革ということで、こちらは本文、資料の3-2の31ページ以降になりますが、この中で大学院教育改革の考え方、あるいはその具体的な方策、こういったことについて整理して記載しております。31ページから32ページ、33ページにかけて、大学院教育改革に関する記載をしております。
また、規模の議論ということで、先ほど少子化の時代と申し上げましたが、例えば34ページの2、高等教育全体の規模の適正化に向けた支援という項目がございますけれども、この中でも、今後高等教育機関を、他人事ではなくしっかり向き合っていく必要があるということを書いてございます。その中で、例えば地域、産業のニーズに応じた学部・学科の再編、あるいは研究大学を志向する大学の学内資源の学部から大学院へのシフト、こういったことも、この規模の中でも触れられているところでございます。
概要資料の2枚目、2ページ目に戻っていただきまして、先ほど申し上げた規模の適正化、あるいはアクセスの確保、これは地理的な観点からのアクセス、あるいは社会的、経済的観点からのアクセス、こういったこともあるということで整理をしているところでございます。
また3ページ目でございますけれども、こういったことを踏まえた上で、機関別・設置者別の役割分担、あるいは連携の在り方として、(1)にあるような機関別の役割。これは大学、大学院、短期大学、高専、専門学校、こういった機関別の役割、あるいは(2)にございますように、国立・私立・公立大学の役割、こういったことも、しっかり今後議論を深めていただく必要あるかと思っています。
また5ポツでございますけれども、今後の高等教育改革を支える支援方策の在り方。いわゆる財政負担の問題でございますけれども、1の公的な負担、あるいは2にございますような個人・保護者の負担、あるいは3にございますような社会の負担、こういったものをそれぞれどういう形で考えていくのか。そういったことを踏まえて、今後の高等教育財政をどう支えていくのか。そういったことについて、中間まとめ以降も引き続き御議論いただきたいと考えております。
本日、大学院部会の先生方にも、これら全体について、特に大学院改革の話を中心に御意見いただきたいと思っておりますが、先ほど申し上げたとおり、夏には1回中間まとめで取りまとめた後も、また引き続き本部会においても、大学院の話を中心にいろいろ御意見いただきたいと思いますので、また引き続きよろしくお願いしたいと思います。
私からの説明は以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございます。高等教育の在り方に関する検討状況について、今概要を御紹介いただきましたけれども、改めて時間を取って、内容に沿いながら本部会でも検討させていただきたいと思っております。
今日は議題1、2で随分大学院教育の改革に関わる話をしてきまして、いろいろな御意見をいただきましたけれども、興味深いのは、最初は情報公開、情報開示の課題で、ディプロマポリシーをどういう形で表現していくかというファンダメンタルな話でした。他方で、学位プログラムの話が浮上し、非常に先端的な卓越大学院プログラムの紹介があり、確かにこれは相応の評価を上げていて、それを今後どう継続していくかという話題になりました。
考えないといけないのは、卓越大学院プログラムをどんどん拡げるとしても、現状では全大学院生のうち数%の学生の話を我々はしているという点です。横展開は大事だと思うのですが、これを例えば3%からやがて10%へと拡大していって、日本の大学院教育組織のインフラで、果たして100%まで行けるかという話ですが、私にはそういうふうには思えない。これはどこかで基本的な日本の大学院教育組織の構造インフラがバッティングするということが必ず出てくるのではないでしょうか。
非常に先端的な卓越大学院プログラムが幾つかの大学で実施されていますが、それは日本固有の大学院教育組織のインフラ構造から見て、自然にできているわけではない、かなり無理をしてやっているのです。政府の補助金を導入して、非常に良い結果を出していると思いますが、その延長として、日本の大学院教育組織が変わっていくかというのは、なかなか別の議論になってきます。学位プログラムの前提には学位プログラム遂行を支える教育研究体制があるわけですが、そこは大丈夫なのかという話にまでなってくるでしょう。
ファンダメンタルな議論としては、一番初めに議論したような学位取得のための標準修業年限の問題にしても、学位をどう位置づけるのかについて、学術的な質を求めるという要素と、それからいわゆる視覚的な要素と、そのバランスを日本は、あるいは各大学はどう考えていくのかというようなポイントに入ってきます。だから少し極端な話をしているわけですが、先ほど私は、大学院教育改革は何を指すのだろうということを言いましたけれども、恐らくそういうところがこれから課題として出てくるようにも思います。
とりわけこの卓越大学院プログラムが非常に良い結果を出してきていて、それを横展開する必要があるとなったときに、それをある種、特別なケースとしてやっていくと、どこかで齟齬が出てこざるを得ないのではないかと思います。日本の大半の大学院組織構造、いわゆる部局講座制、というのは戦後変わっていません。私は、いやでも卓越大学院プログラムがどこかでそのインフラとバッティングする日が来るのではないかと思っています。そこはやはり並行して、卓越大学院プログラムを実施するのと同時に考えていかなければならない。私の大学でも3つも卓越大学院プログラムを走らせていますが、担当教員はもういっぱいいっぱいです。
それから、マネージする要員もたくさん必要になってくる。だから非常に無理をした形でどこまで行けるのか、これが自然に、適正な研究教育組織インフラの上にこういう学位プログラムがあるという形にならないと、本当の大学院教育改革にならないのではないかという気もしています。その話はまた改めての議論になりますが、今日はそういう意味では非常に多角的に有効な議論をいただいたと、有り難く思っております。
その上でさらに、来るべく少子化社会で日本の大学教育の在り方の話までくると、もう大変になりますけれども、ここは少しゆっくり、本部会としては主に大学院に絞ってということになりますが、十分な議論を展開していただいて、政策課題や実際の大学の課題として成果を出していく必要もあります。我々は理念を通すことだけを求めているわけでもないので、なんとか形にしていければ有り難いと思っております。
今日はそういう意味で、皆さんで大いに議論していただいて、時間がほぼ過ぎてしまいましたので、最後の議題については、申し上げたとおり、改めてゆっくり時間を取って、まずは論点整理からさせていただきたいと思っております。
私からは以上ですが、最後に事務局から連絡事項があればお願いできますか。

【金井大学院振興専門官】本日は活発な御議論いただきまして、誠にありがとうございました。本日の議事内容を含めて何かお気づきの点がございましたら、事務局まで御連絡をいただければと思います。
なお、改めて時間を取ってということで、最後の議題についてお話が今あったところですけれども、こちらの議題3の急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する中間まとめ案につきまして、何か御意見等ございましたら、是非メールで御意見を頂きたいというふうに思っております。こちらの中間まとめ案について、可能であれば1週間以内ぐらいで、事務局の方まで御意見をお寄せいただけると幸いでございます。
また、本日の議題1の情報公表に係る規則改正につきましても、多くの御意見を頂きましてありがとうございました。こちらは制度改正を進めること、公表を進めていくことにつきましては、特段の反対の御意見はなかったのかなというふうに思っておりますけれども、特に公表に当たって留意するべきことですとか、各大学において様々な背景事情が違っていたりとか、そういった説明ですとか、前向きに取組を進めていくことについての解説をする、そういったことが重要だということについての多くの御意見を頂いたと思っております。
本日頂いた御意見を整理しまして、対応方策を資料としてまとめて、なるべく早めに先生方にメールで御連絡をさせていただきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
次回の開催日程等につきましては、改めて御連絡をいたします。
また、本日の会議の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りをした上で、文科省のホームページで公表いたします。
以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございます。そういうことなのでよろしくお願いいたします。最初の議題については、単にこういう規則をつくったから守ってくださいという形ではできるだけやりたくない。むしろ大学が自主的に情報開示をすることによって、大学がきちんとその大学のありようや考え方を示すことができる、セールスポイントになる、そういう形で上手にやっていただきたい。その上で、指定された情報は最低限きちんと公表いただきたい、という形でお願いするという姿勢が良いのではないかと思います。またそのやり方について御意見をいただければ対応させていただきたいと思います。
それでは、ほぼ時間になりました。今日はぎりぎりまでかかりましたけれども、長時間にわたり御意見をいただき、誠にありがとうございました。本日の部会はこれにて終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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