カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第2回)議事録

2024/10/30  金融庁  

カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第2回)議事録

1.日時:令和6年9月10日(火曜日)14時00分~16時00分

2.会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン

【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
それでは、定刻となりましたので、議事を開始させていただきたいと思います。オンライン参加のメンバーの皆様は、画面をオンにしていただけましたら幸いでございます。

改めまして、本年7月付で当庁の総合政策課サステナブルファイナンス推進室長に着任いたしました高岡と申します。よろしくお願いします。簡単に一言御挨拶させていただきます。

2050年カーボンニュートラルの実現に向けましては、このカーボン・クレジットが重要な役割を担い得るものと考えております。カーボン・クレジットが適切に活用されて、その期待される役割を十分果たすためには、カーボン・クレジットの取引市場の健全な発展をしっかりと推進していく必要があると考えております。
こうした観点から、カーボン・クレジットの取引の透明性・健全性に関する初期的論点を議論するこの検討会というのは、非常に重要な役割を担っていると考えております。専門的・実務的観点から座長をはじめ参加メンバーの皆様方に議論を進めていただけるということに関しまして、改めて感謝申し上げたいと思います。

第1回検討会では、カーボン・クレジットの需給に関する現状認識や問題提起があったと承知しておりますけれども、2026年度にGXリーグの排出量取引制度の本格稼働が予定されているなど、VCM を取り巻く環境も大きく変化することが予想されておりますところ、今から投資家保護を促進する観点からの議論を進めていただくということは、まさに時宜にかなったものだろうと思っております。
前回もカーボン・クレジットの品質や活用の意義、情報開示の在り方、それから、国際的な市場間の連携などについて様々な論点の提起がありました。議論の着眼点は多岐にわたると思いますけれども、本日御紹介いただく具体的な事例を通じたストックテーキングも含めまして、参加者の皆様の御知見を得ながらしっかりと議論が進められるよう、事務局として尽力してまいりたいと思いますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。

それではただいまより、カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第2回)の会合を開催したいと思います。
議事進行は、根本座長にお願いいたしたく存じます。それでは、根本座長、よろしくお願いいたします。

【根本座長】
座長を務めます早稲田大学の根本でございます。皆様御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、議事に移ります。最初に、事務局より、前回の振り返りと本日の進め方を御説明させていただきます。次に、前半のパートとしまして、山陰合同銀行の井上様、中国銀行の河内様、横浜銀行の松上様に地域金融機関の取組についてプレゼンテーションいただいた後に、プレゼンテーションへの質疑も含め御議論をいただきます。

次に、後半のパートとしまして、KlimaDAO JAPAN株式会社の濱田様、Climate Action Data Trustのカウンシルメンバーとして小圷様にテックの活用についてプレゼンテーションをいただいて、その後に御議論をいただきます。ぜひ活発な御議論をお願いしたいと思います。

それでは、最初に、事務局の金融庁から、前回の振り返りと本日の進め方について、簡単に御説明をお願いいたします。

【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
それでは、事務局より、お手元の事務局資料に沿って説明をさせていただきます。

まず2ページが、6月10日に開催されました第1回の議論の振り返りとなります。検討会の背景・趣旨といたしまして、先ほど高岡からもありましたけれども、国内外でカーボン・クレジット取引の拡大・多様化が見られると。証券監督者国際機構(IOSCO)が昨年12月に公表した報告書案の中でも、取引の透明性・健全性を確保する観点から幅広い提言が盛り込まれているといったことも踏まえまして、本検討会では、カーボン・クレジット取引の透明性・健全性を高め、投資家保護を促進する観点から、初期的論点を議論していくということになってございます。

2ページ目下のところですけれども、第1回の検討会で様々な御意見、御議論を頂戴いたしました。プレゼンテーションとして、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の各行からお取組についてプレゼンテーションをいただいたところです。

続いて、3ページ以下が前回の事務局資料の再掲でございます。まず3ページが、地域金融機関におけるカーボン・クレジット活用の一例ということで第1回で簡単に御紹介しております。先ほど座長からもありましたとおり、本日の前半部分で地域金融機関の皆様方からプレゼンテーションをいただく予定です。

続いて4ページが、活用の一例というところで、第1回でも事務局から簡単に御紹介をしておりました。

5ページ、6ページが、IOSCOの報告書案における関連する記載の抜粋でございます。6ページの上のところでテックに関連する記載がございますけれども、透明性・効率性・トレーサビリティーの向上や二重計上防止に資する等の利点があり得ると、こういった指摘がある一方で、場合によっては、商品の複雑化等そういったことを通じて、場合によってはリスクも考え得ると、そういった指摘が盛り込まれているところでございます。こちらのテックにつきましても、本日の後半部分でプレゼンターの皆様方からお取組の御紹介をいただく予定でございます。

こういったところを踏まえまして、7ページでございますけれども、本日御議論いただきたい事項というところで、地域、テックそれぞれについて記載させていただいております。

1点目、地域につきましては、カーボン・クレジット取引の多様化が見られ、地域金融機関の皆様方も積極的に関与されております。地域内でクレジットの組成・利用を行い、地域性を付加価値として訴求していくといった取組などもございます。地域の脱炭素における金融機関等の役割発揮が求められているという中で、カーボン・クレジットはどのような役割を担うことが期待されるかという点について御議論いただけないかと思っています。また、様々な取引形態が出てきておりますけれども、どのような応用可能性、留意点があるか、あるいは品質の確保や顧客説明の在り方等顧客保護の観点からどういった示唆があり得るか、これらの点について御議論いただけないかと思います。

2点目、テックについてですけれども、ブロックチェーン等のテックを活用する動きが国内外で広がりを見せております。IOSCOの報告書案の中でも、利点、留意点、それぞれ指摘がございましたが、こういったところも踏まえて、個々の取引や取引インフラにおいてテックをどのように活用していくことが考えられるかという点があろうかと思います。

最後、8ページは参考として、直近出ました金融行政方針における本検討会に関する記載を御紹介している参考スライドということになります。
事務局からの説明は以上となります。

【根本座長】
ありがとうございました。地域の脱炭素における金融機関の役割発揮が求められている中で、地域におけるカーボン・クレジット取引の事例について、まずはストックテイクしていくことが重要だと考えております。
このため、本日は前半のパートとして、山陰合同銀行井上様、中国銀行河内様、横浜銀行松上様にそれぞれ、各行におけるカーボン・クレジットの活用について御紹介をいただきたいと考えております。大体1つの銀行様10分内外と考えさせていただいております。
では、山陰合同銀行の井上様からよろしくお願いいたします。

【井上様】
ただいま御紹介にあずかりました山陰合同銀行の井上でございます。本日はこのような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、私どもごうぎんのカーボン・クレジットの取組について説明をいたします。

1ページ目を御覧ください。まず初めに、少しだけ私どもごうぎんの紹介をさせていただきます。資料上段に記載しております経営理念を柱に、山陰エリアを基盤に、山陽、関西、東京と広域な店舗ネットワークを有し、営業活動をしております。後ほど触れさせていただきますが、特に山陰両県は県土の70%以上が森林に囲まれる自然豊かな地域でございます。

2ページ目を御覧ください。こちらに私どもごうぎんのカーボンニュートラルへの取組をまとめています。2021年にカーボンニュートラル、サステナブルファイナンスについて、それぞれ野心的な中長期目標を設定いたしました。それぞれの目標は、資料左側に記載のとおりでございますけれども、現在、目標達成に向けてグループ一体となって融資先や地域全体の脱炭素を支援させていただいています。また、資料右側に記載しております、地域の脱炭素支援に関する特徴的な取組として、環境省の脱炭素先行地域づくり事業に主体的に取り組んでいます。全国の地域金融機関の中で最多となる3地域に共同提案者として参画しており、後ほど紹介させていただくごうぎんエナジーと共に取り組んでいます。

3ページ目を御覧ください。本日の検討会のテーマでもありますカーボン・クレジットの一つであるJ-クレジットの取組を紹介させていただきます。まず、私どもごうぎんがJ-クレジットに携わるきっかけでございますが、2009年、15年前に鳥取県より、オフセットクレジットJ-VERについて相談を受けました。当時、鳥取県は全国でも先駆けてJ-VERを取得していましたが、制度の認知が進まずに、制度普及と販売促進の両面に課題をお持ちでございました。

一方、私どものほうは、同時期の2006年、18年前でございますが、森林保全活動や環境保全に関するネットワーク会議を立ち上げておりました。その中で、いかにして森林保全への資金循環を生み出していくのかという課題に直面しておりました。後の2013年に国内クレジット制度とオフセットクレジットJ-VER制度が発展的に統合されてJ-クレジット制度になったわけですけれども、当時、このJ-クレジットが課題解決の糸口になると考えました。

その結果、鳥取県と一緒になり制度設計をいたしましたのが、J-クレジット地域コーディネーター制度でございます。現在は、制度の普及、販売促進について、山陰両県の自治体とも一緒になり活動しています。このコーディネーター制度は、販売者である自治体の制度であり、私どもは、ビジネスマッチング契約に基づき、資料右側のカーボンオフセットに取り組む事業者に対して、J-クレジットを活用したオフセット提案や、販売者とのマッチング提案を行い、J-クレジットの売買を支援しています。下段に掲載する写真が調印式への鳥取県知事の参加や、和牛肥育事業者によるカーボンオフセットの活用事例、保育施設における子供教育の一環で導入された事例でございます。

4ページ目を御覧ください。こちらがJ-クレジット販売仲介の累計実績です。グラフのとおり、制度開始当初は、認知度も低く、実績は低調に推移しましたが、近年のカーボンニュートラルへの関心の高まりから、2021年度を境に、件数、数量ともに急激に増加しています。直近の2023年度末においては、376件、1万2,104トンの販売仲介をしております。販売仲介の8割が森林由来クレジット、2割が再生可能エネルギー由来のクレジットの仲介となっています。購入者につきましては、約半数が鳥取県の事業者、3割が島根県の事業者となっており、近年、山陽・関西エリアのお客様にも徐々に広がりを見せています。

5ページ目を御覧ください。先ほど御説明しましたとおり、長年J-クレジットの販売仲介を行ってまいりましたが、カーボン・クレジットの活用をさらに進めるためには、需要と供給と流通を一体的に捉え、より主体的により深く関与することが必要と考えまして、昨年4月にJ-クレジット創出支援業務を開始いたしました。これにより、創出から販売まで一気通貫で支援できる体制を整えました。山陰には豊富な森林資源がありますので、これまでJ-クレジットを創出したことのない自治体や森林組合、林業関連事業者様などから多くの御相談をいただいており、現在、3先と森林由来のクレジット創出に向けて取組を進めております。一例として、今年4月に島根県奥出雲町と連携事業者を含めた3者で連携協定を締結いたしました。来年秋頃には新たな森林由来クレジットが誕生する予定でございます。

6ページ目を御覧ください。ここからは、厳密に言うとカーボン・クレジットではありませんが、非化石証書を活用した新しい取組を紹介いたします。今年の5月にごうぎんカーボンオフセットサポートローンという商品をリリースしました。こちらは、弊行の電力事業子会社であるごうぎんエナジーと連携し、左のスキーム図のとおり、借入人である取引先に対して、一定条件の下、非化石証書を寄贈する商品です。

お客様に脱炭素をテーマとしたアンケートを行う中で、山陰地区を中心に脱炭素への取組がなかなか前に進んでいないという危機感から、まずは我々の行職員や地域事業者の皆様に関心を持ってもらう、カーボンニュートラルについて考えてもらうきっかけとしてもらうことができるように、シンプルな商品設計といたしました。リリース後約3か月の実績として、19件のローンを実行し、約360万キロワットアワー、1,600トン分の削減量の非化石証書をお客様へお届けする予定でございます。

お客様の反応も、本商品の利用をきっかけとしてカーボンニュートラルを進めていきたいという前向きな意見を頂戴しており、好調な滑り出しであると考えています。今後、弊行独自のCO可視化ツールもリリースする予定で、より多くのお客様に対して、見える化、計画策定、計画実行といったフルラインナップで脱炭素に向けた取組を加速させていきたいと考えています。

7ページ目を御覧ください。最後に、2022年に金融機関として初めて設立した電力事業子会社であるごうぎんエナジーを紹介します。先ほども少し触れましたが、地域におけるカーボンニュートラルへの取組に課題を感じており、このままでは地域が完全に衰退してしまうのではないかという危機感がありました。その中で私どもごうぎんが、事業リスクを取ってでも先導的に進めていくことが必要なのではないかという考えに至りました。ごうぎんエナジーによる地域への再エネ供給が呼び水となり、地域全体にこの取組が加速することで、地域内の経済循環の拡大に加え、山陰が脱炭素先進地域としてブランド化することを目指しています。
PPA事業を中心とした発電事業を行っておりますが、8月末時点で官民合わせて28件のPPA事業契約をしています。右の図は、PPA事業を活用し、従業員向けと社用車用にEVのカーシェアを同時導入した事例です。

以上のようなカーボンニュートラルに向けた取組は、啓発活動を含めてまだまだ途上ですが、お客様の関心は少しずつ高まってきていると感じています。今後もごうぎんグループが主体となって、地域におけるカーボンニュートラルに向けたマインド醸成と早期実現に尽力してまいります。
私からは以上でございます。ありがとうございました。

【根本座長】
井上様、ありがとうございました。では続きまして、中国銀行、河内様にお願いいたします。

【河内様】
ただいま紹介いただきました中国銀行コンサルティング営業部の河内と申します。本日はこのような機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

そうしましたら、お手元の資料に基づいて説明をさせていただけたらと思います。資料の構成といたしましては、まず冒頭、弊行のサステナビリティ領域への取組の概要について簡単に触れさせていただいた後に、カーボン・クレジットを活用した具体的な取組事例について説明させていただければと思います。

右下2ページを御覧ください。こちらはちゅうぎんフィナンシャルグループのSDGs宣言でございます。ちゅうぎんフィナンシャルグループでは、「地域・お客さま・従業員と分かち合える豊かな未来を共創する」というグループ経営理念の下に6つの重要課題を設定させていただいております。その中で、表中下から2番目でございますが、重点課題の一つとして環境経営の促進を掲げております。カーボン・クレジットに係る取組に関しましても、地域や取引先の脱炭素化支援に必要なツールという位置づけで積極的に取組を進めてまいっております。

続きまして、右下3ページを御覧ください。こちらは弊行のサステナビリティ関連の支援メニューの一覧でございます。先ほど弊行グループの重点課題の一つといたしまして環境経営の促進があると説明をさせていただいたところでございますが、山陰合同銀行さんからの御説明にもありましたとおり、弊行営業エリアにつきましても、なかなかこういった領域への取組機運が高まっているとは一概には言えない現状でございます。

そういった中で弊行といたしましては、取引先への取組を促したり、知見を深めてもらう啓発活動を目的としたツールから、実際のお取組の可視化・分析ツール、また、実際の経営計画実現に向けた実行支援に関するツールまで一貫してラインナップをさせていただいているところでございます。本日はその中から、カーボン・クレジットに関連した取組でございます、表中①、②、③と記させていただいております、ちゅうぎんカーボンクレジットクラブ、それから、J-クレジットの創出・販売支援業務、SDGs私募債の取組について説明をさせていただきます。

続きまして、右下4ページを御覧ください。こちらがちゅうぎんカーボンクレジットクラブの取組概要でございます。こちらは2024年1月より運営を開始させていただいた、太陽光発電設備設置者向けのプログラム型J-クレジット創出プロジェクトでございます。J-クレジット創出を行うプロジェクトに関しましては、単一型とプログラム型という2つの方式がございますが、本件では、1つの設備ではJ-クレジット創出が難しい小規模な設備からでも取り組めるようにプログラム型を採用しております。本件のように銀行自身が太陽光発電設備の導入によるJ-クレジット運営管理業務を行うのは、本件が全国で初めての取組と認識しております。

左下の図表に取組イメージを記載させていただいております。お客様が導入された自家消費型の太陽光発電設備によるCO削減量を弊行が取りまとめ、J-クレジットを創出、さらに本クラブで創出したJ-クレジットの売却による収益を、お客様である太陽光発電設備導入者に還元するスキームを構築しております。

右上の図表、こちらを御覧ください。こちらは本プロジェクト計画書に記載の概要をお示ししております。COの排出削減計画に関しましては、プロジェクト期間中の総量で2万3,948トン-COの削減を目指す計画としております。

右下5ページを御覧ください。先ほどの資料で説明させていただきました、ちゅうぎんカーボンクレジットクラブの立ち上げに係る経緯及び目的について補足をさせていただきます。ポイントの1点目は、冒頭、弊行のサステナビリティ経営支援メニューの説明でも触れさせていただきましたが、気候変動関連情報の開示や炭素税導入といったような外部環境はどんどん変化していっているにもかかわらず、地域の環境意識がなかなか向上していかない。また、取組意識を持っている方が一部の方にとどまっている現状があるということ。2点目が、カーボンニュートラル達成には、個社のCO排出削減努力では実現しない。すなわち、カーボンオフセットの活用が必要になってくるということ。3点目が、地域の脱炭素を進めるに当たって、小規模な取組に対しても評価がなされ、その取組に対して何かしらのインセンティブが働くことで、新たな取組を誘発して、地域内で循環していくような仕組みが有効ではないかと考えられること。

以上の観点から、太陽光発電設備導入という、地域の多数の方が参加しやすい設備の導入に着目しまして、当該環境貢献活動に対し弊行が経済価値を付与することで、地域内の環境活動への参加者を増やし、環境活動の機運をより高めることを目指し、本クラブを立ち上げております。

右下6ページを御覧ください。ちゅうぎんカーボンクレジットクラブの活動状況を補足させていただきます。主な勧誘先といたしましては、法人に関しましては、自家消費型太陽光発電設備を設置する企業様や、当行グループ会社でPPA事業を手がけているちゅうぎんエナジーという会社がございますので、そちらでPPAの導入を御検討していただくようなお客様、個人の方におきましては、弊行住宅ローンの申込者のうち太陽光発電設備を設置される方を中心に現在勧誘活動を行っております。

現在の入会状況につきまして、左の真ん中に図表でお示しさせていただいております。現状、8月末現在で入会件数25件、排出削減量の概算で205トン-COという状況になっております。現状、活動に関しましてお客様の反応の状況ですが、環境活動に貢献しているということを外部の第三者から認めてもらっていることにつきまして、脱炭素経営に取り組む動機づけになったというような前向きな意見も頂戴している一方、先ほど収益還元をしますと申し上げましたが、実際イメージしているインセンティブがそこまで多くないと感じられている方や、入会に関しまして多くの確認書類の提出が必要な点、この点について改善の御要望等が出てきている状況でございまして、こういった点の課題については感じているところでございます。

右下7ページを御覧ください。ここからは、ちゅうぎんカーボンクレジットクラブ以外の取組について2点ほど簡単に御紹介をさせていただきます。1点目が、ビジネスマッチングによるJ-クレジットの創出販売支援業務でございます。現在、2社の外部事業者と提携いたしまして取組を進めております。取組事例の1つ目といたしましては、地域の森林組合様と森林由来のJ-クレジット創出に係る取組を開始しております。現在、2組合と手続を進めておりまして、創出されるCO吸収量の総量は約5万5,000トン-COを見込んでいる状況でございます。

取組事例の2つ目でございますが、J-クレジットの方法論の中にございます、農業分野の「水稲栽培における中干し期間の延長」を活用したプログラム型プロジェクトの紹介を地域の農業者に進めているところでございます。この取組を通じて、遅れております農業分野においての脱炭素の活動につながればということで、現在広く御案内をしているところでございます。

続いて、2点目の取組が、J-クレジットを活用した私募債の取組でございます。弊行では、SDGs私募債という商品におきまして、私募債発行企業から弊行が頂戴します手数料の一部を用いまして、SDGsに取り組む団体等へ寄附・寄贈を行う取組を行っております。本件におきましては、おかやまの森整備公社が創出した森林由来のJ-クレジット、こちらを私募債発行企業に寄贈するという商品をつくり上げております。この取組を通じて地域の経済活動と環境保全活動との積極的な循環を促す取組ができていると考えております。現状、この取組におきまして、239トン-COの販売支援を実現しております。

以上、中国銀行からの説明になります。ありがとうございました。

【根本座長】
河内様、どうもありがとうございました。続きまして、横浜銀行、松上様、お願いいたします。

【松上様】
横浜銀行の松上です。よろしくお願いいたします。

私ども横浜銀行は、山陰合同銀行や中国銀行に比べると、カーボン・クレジットの領域はあまり進んでないと認識しておりますが、横浜銀行のサステナビリティ戦略の中に、どのようにして組み込んでいるかという部分を踏まえ、全体の説明をさせていただきます。また、我々のお客様の反応なども含めて、こちらの部会の中で役に立つような話もできればと思っております。

それでは、右下1ページ目です。これは横浜銀行のこれまでのサステナビリティ分野の戦略についての時系列でございます。縦にファイナンス、ソリューション、本部体制とありまして、右が時系列で進んでいくところをお示ししております。

まず、この図の矢羽根の色がついているところを見ていただきたいのですが、我々は2019年からこのサステナビリティの領域をスタートしまして、最初2年間はSDGsの啓蒙・啓発、まずはここに注力し、次の2021年にファイナンスを強化して、翌年、ソリューションを構築し、2023年から現在において、脱炭素の取組を本格始動しております。

少し補足させていただくと、まずファイナンス部分に、「SDGsフレンズ・ローン」が一番左にあると思うのですが、これは、そもそもESGもSDGsもよく分からないお客様に対して、まずは認識をしてもらうところからスタートしました。

その後、2021年につきましては、上位層においてサステナビリティ・リンク・ローンやポジティブ・インパクト・ファイナンスなどが主流となり、我々も高度化を実施しました。ただ、その翌年に一度立ち止まり、中小企業のお客様がついて来ていないという局面に差し掛かかったため、当初からスタートしている「SDGsフレンズ・ローン」に目標設定をはめるような形で「SDGsフレンズローン・ネクスト」を開発しました。ほかにも色々とございますが、直近において、神奈川は日産のお膝元でございますので、中堅・中小企業の自動車サプライヤーに対して、中小版のトランジション・ファイナンスのスキームをリリースさせていただきました。

次に真ん中がソリューションでございまして、主にGHGの排出量の可視化になるところですが、ここもいきなり排出量測定の業界のトップランナーである「ゼロボード」や「アスエネ」と言った会社を紹介しても、お客様がびっくりしてしまうと思い、2021年度に実証実験を実施しました。そのうえでビジマも開始しましたが、お客様は「なぜ排出量を測るのか?」と、いう点まで理解が及ばないと考えまして、我々はこのエンゲージメントのベースに事業性評価を使う戦略を取りました。これは、通常の事業性評価に加えて、いわゆる脱炭素分野だけに特化したライトなものもあり、そちらを中心に実施し、足元においては我々のシンクタンクを使いながら、お客様にスコープ1・2を実際に測ってもらうという、まさに階段を一つ一つ登っていくような仕組みを構築しております。

あと、一番下にございます体制ですが、これまで1つのグループで全て担っておりましたが、やはりTCFD、これから、TNFDなど開示も高度化していくため、総合企画部に事務局全体のハブとして配置し、高度なファイナンスを組み立てるための営業店サポートについては、ソリューション営業部にサステナ推進室を作り、営業戦略部が営業企画全般すると言う形ですみ分けをする形を取っております。また、最後右にございますけれども、なかなか銀行単独で進めるには難しい領域ですので、様々な地銀と連携も進めながら、取組を進めているということでございます。

次のページをお願いいたします。横浜銀行は、取引先数が3万社弱ございまして、それに対して法人渉外が大体350人ぐらいです。この350人で3万社近くをどうエンゲージメントするにあたり、セクターごとにアプローチする人間を分け、優先順位を付けております。

主に、多排出企業向けが本部、自動車業界や金属鉱業、ここのセクターは営業店の行員がエンゲージメントをするという形ですみ分けておりまして、主には事業性評価を実施して、お客様の脱炭素経営のリテラシーを上げていく戦略を取っております。
下に脱炭素ステップとございますが、ここでやっとカーボンオフセットが出てくるのですが、お客様自身がオフセット自体を理解するには結構なステップがあると我々は考えております。左から啓発フェーズがあり、可視化フェーズがあって、途中で開示フェーズがあり、最後に減らすということで削減フェーズ、オフセットを使うという行動パターンで一定の仮説を考えております。

続いて、3ページでございます。第1回目の会でも広島銀行のスキーム説明があったと思うのですが、我々、横浜銀行が商品化しておりまして、この知見を広島銀行にも共有し、商品化された経緯になります。銀行ではよく、寄附型私募債と申しまして、私募債発行に関わる手数料の一部を森林管理する団体や、動物を守る団体などへ寄附するなど、CSRに関わる取り組みに活かす取り組みを実施しています。今回紹介するスキームにつきましては、寄附金相当の環境価値を購入しまして、それを神奈川県、横浜市に環境価値を寄付する、いわゆるオフセットを寄付するという取組でございます。2023年から1年間の実績でございますけれども、約40社に対して約70億の実績がございました。その発行額の0.1%分の環境価値を購入していますので、年間で700万、これを神奈川県と横浜市で350万ずつ購入し、神奈川県につきましてはJ-クレジット、横浜市につきましては非化石証書の寄贈をさせていただきました。

この私募債を考えたきっかけは、お客様自身に「よく新聞でカーボンオフセットって耳にするけど、何?」という意見を耳にしたので、まずは体感していただくため商品化しました。カーボンオフセットを認識してもらうという、まさに啓発するための取り組みです。

次のページをお願いいたします。右下4ページ目です。横浜銀行は、MEJARというシステムを複数行で共同運営をしております。システムだけつながっていても面白くないので、営業部門でのつながりを考え、サステナビリティ領域については皆で知見を共有し合って、高めていくことが必要であると言う認識のもと、立ち上げた連携でございます。

左にあるカーボンオフセット型私募債は、先程お伝えした通り、アライアンスの仲間と知見共有し、今商品化していただいています。ほかにも、その下に、セミナーや広域アンケートです。これは年に1回、脱炭素アンケートを実施しています。これが自分自身、私自身が考えていたイメージと地域ごとの結果が全然違う形で出たりもしています。これはホームページで公表しておりますので、ご興味ありましたら、ご確認ください。

また、右の今後の方向性の真ん中、ちょうどクレジットの話でいきますと、先ほど中国銀行からございましたけれども、J-クレジットのプログラム型のクレジットをつくりにいくということで、これから連携を進めていきたいと思っております。

次に右下5ページ目に進んでいただきまして、こちらが「横浜銀行ならでは」ということで、少しカーボン・クレジットからかけ離れますが、我々は自動車産業のお客様が多いので、自動車サプライヤーに対するサポートをしていかなければならないという認識がございました。左側が地銀の自動車の7行連携、右側が神奈川県のアライアンスでして、これはミカタプロジェクトをはじめとした協議会ですが、皆で知見を高めているというところでございます。

左にあるのが、広域でのM&Aや事業承継など、日本の自動車産業を守るためのアライアンスでして、地銀ならでのつながりでセミナーなども実施し、まさにEV化に関わるところでの移行リスクの部分を削減していく動きでございます。

右側にあるのが神奈川県の取組でありますが、先ほどのトランジション・ファイナンスの中小版というところにつきましては、神奈川産業振興センターと連携した取組でございます。

一つ興味深い話を紹介させていただくと、日本を代表するナンバーワン自動車会社のTier1会社に対して、GHG排出量を求めている事例でございます。これは、2年前は会社全体の排出量、昨年度は工場ごとの排出量、直近につきましてはラインごとの排出量の提出を求め、しかも削減計画まで求めるような形でOEM自身から依頼が来ているということです。
ここでやっと「オフセット」が出てくるのですが、いろいろと削減努力してきたが達成できない可能性があり、そこでカーボンオフセットを使って目標達成することを検討いただいたという事例があります。つまり、やっとここでニーズ把握できたため、ご紹介させていただきました。

最後、右下6ページになります。これは先ほどから、中小版のトランジションスキームを立ち上げたとご説明させていただいておりますが、横浜銀行には専門的な知識を持っている人間がおりませんので、下にあるかながわ産業振興センターに専門部隊がおり、そこにお客様をつなげ、顕在化していない、まさに潜在化、もやもやしている悩み、「これからEV化がどうなるんだ?」というお客様を誘致しまして、そこで一緒にトランジション計画書をつくりながら、我々がトランジションに関わる設備投資の融資をするというようなスキームを打ち出しております。

いろいろ話が飛んでしまいましたが、発表は以上になります。

【根本座長】
松上様、どうもありがとうございます。皆様、各地元でお客様の認知度を高めたり、実際どうやって動かしていくのかを伝えるなど、啓蒙活動その他に注力されていることがよく分かりました。

次に、議論に移りたいと思います。これまでの事務局の説明、また、金融機関のプレゼンテーションを踏まえて御意見をいただければ幸いです。御質問がある方は、どなたへの御質問か、あるいはコメントで回答不要である場合はその旨を言っていただけるとありがたいと思います。
では、御発言を希望される方は名札を立てていただくか、オンラインの方は挙手機能でお知らせをいただければと思います。よろしくお願いします。

【小山メンバー】
ありがとうございます。三菱商事の小山でございます。本日は貴重なプレゼンテーション、ありがとうございました。4点ほどコメントと御質問が入り交りなんですけれども、よろしくお願いいたします。

まず、コメントとしては、先日ある方から、資本市場の働きだけでは行き届かない環境を促進するという意味でやっぱりカーボン・クレジットが必要ですよねという話をされていて、まさにそうだなと実感したんですけれども、やっぱりそういったところで各地域の脱炭素の取組にカーボン・クレジット、サステナブルファイナンスの手法が使われるというのは貴重な取組かなというのを改めて今日の皆さんのプレゼンテーションを聞いて思いました。

あと、やはり今後市場がスケールしていくという意味では、各地域性を大事にするということも大事な一方で、最後に横浜銀行さんが取り組まれているように、各地域が連携しながらスケーラビリティーというか横連携して市場を一緒に大きくしていくということも極めて重要なのかなと思ったのが2点目でございます。

3点目は、具体的なアイデアをというのもここにあったので、よく最近ふるさと納税とかでもカーボン・クレジットみたいなものが出たりもしていますので、まさに次のKlimaDAOさんのプレゼンテーションの個人への普及みたいなところでブロックチェーンとか、ふるさと納税みたいに個人が手っ取り早くやりやすいところで地域にファイナンスしていくみたいなところも何か一つ面白い取組なのかなと感じたのが3点目でございます。

最後に1点だけ、横浜銀行さんに御質問させていただければと思います。最後、神奈川県の大企業さんとか大きい会社さんに納めていらっしゃるTier1の会社さんからのニーズもあるというところに関する御質問です。金融庁さんからのプレゼンでも、品質のところでの示唆というところもあったのでそれに絡めてなんですけれども、今日の皆さんからのプレゼンテーションで、やっぱりJ-クレジットというのが一番、政府が運営していますし、地域の皆さんからもニーズが強いのかなというのは我々も強く感じているところです。

一方で、グローバルな会社さんになると割とグローバルな基準に合わせようと思って、割と海外のボランタリークレジットを買われる方もいらっしゃったりもして、そうなってくると、Tier1さんとかが、地域というか日本のを優先されるのか、逆にグローバルに対応されていらっしゃるお客さんに対応するのか、若干そこで品質とかのところでミスマッチが起こってくると何か難しかったりもするなと思うので、なかなかそこら辺まで具体的な議論まで行ってないのかもしれないですけれども、そこら辺、ふだんお客様と接している中で、そんなようなことがもしあればお聞かせいただければと思います。

すみません、長くなりましたが、以上です。

【根本座長】
ありがとうございます。では、松上さん、お願いします。

【松上様】
横浜銀行、松上です。とある1社を例にとってみると、国際イニシアチブを踏まえた再エネ系が良いとか、森林系クレジットが良いなど、まだそんな議論まで進んでいないのが実態です。単純に減らさなければならない、OEMからそういうふうに言われたから選択肢の一つとして検討していると言う会話しかしていない様でした。つまり、今後これから議論していく中で、クレジットの中でも、国内、海外基準のものなのか、という議論は次のステップだと思っています。ここの議論は数か月前に聞いた話なのですが、改めてキャッチアップしながら議論していきたいと思います。現時点においては特にオーダーが来ていないというのが、本回答でございます。
以上です。

【小山メンバー】
ありがとうございます。

【根本座長】
では、吉戒様、お願いします。

【吉戒メンバー】
私は前回も自己紹介で申し上げましたけれども、皆さんと同じ地域金融機関のOBですね。私の周辺というか出身母体でいろいろ聞いてみると、今、実際に主要な販売先、取引先から要請を受けている企業は意外と少ないというか、ほとんどないと言ってもいいようなんですね。アンケート程度の問合せはあるけれども、まだまだお尻に火がついていないというのが足元の実態のようです。

ただ、これからサステナ情報の開示義務とかが出てきて、サプライチェーンの中でも今度は中小企業に恐らく排出量の測定だとか削減の圧力というのは確実に強まると思うんですけれども、これがいつからなのかがまだ分かりませんがプライム上場企業のほとんど全部を対象とするというようなことになれば景色が一遍するのかなという気はしています。いずれにしてもまだ足元、とくに地域の中小企業の経営者の大半がまだご自分のところの経営には影響がない、言ってしまえば、自分のところにはあまり関係ないと、そんな感じで自発的には動いてないというのが実情かなと感じています。

それはそれとして、3行の皆さんにご質問を少しさせてください。まず、山陰合同銀行さんに特にカーボン・クレジットの仲介のような形で力を入れておられると思うんですけれども、この中にご自身つまり自行の、ネットゼロを標榜されているとどこかで読みましたが、恐らく何か特別なことをやらないとなかなかネットゼロには手が届かないと思うんですね。これはカーボン・クレジットによるオフセットも視野に入れておられるのでしょうか。

それから中国銀行さんにご質問したいのは、カーボンクレジットクラブの運営もかなり先進的で、随分先まで見通してやっておられるようですが銀行にとってこれを新たな収益機会にしていこうという捉え方はあるのでしょうか。今の時点では具体的な収益にそれほど結びついてはいないのだろうと思いますが、将来への見通しといいますか、そのあたりはどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
やはり地域の中小企業に対して地元の地域金融機関がもっと啓発するというかアクションを起こす必要があるとは思いますが一方で銀行も収益機会と捉えられるか、捉えられないかで随分その取組みが変わってくるのではないかと思われます。
これはもちろん中国銀行さんだけじゃなくてほかの2行の皆さんにもお尋ねしたい点です。

あと、横浜銀行さんにはやはり、特に都市部といいますか、首都圏にすごく近いところで都市部の大企業、特に中堅企業とのお取引が非常に多いと思いますがそのような取引先は大企業に近いところにいらっしゃるので、脱炭素経営に無関心ではいられないのではないかとお察しするところです。おそらく地域性の問題は相当あると思うので、都市部の大企業、中堅企業、こういった先ではどういう関心を示しているのかという、これは印象で結構ですけれどもお聞きできればと思います。

【根本座長】
ありがとうございます。では、山陰合同銀行の方から。質問にあった、これは地域貢献なのか、将来あるいは現在なのか、収益機会になっていくのかというのもお答えいただくということでよろしいですか。

【井上様】
山陰合同銀行の井上でございます。まず、自社の取組、排出量ゼロに向けた取組で、2030年にスコープ1・2のネットゼロを掲げております。こちらについては、まず自行で取り組むべき省エネの取組とか再エネの取組、そのためにごうぎんエナジーという子会社もございますので、自社で発電できるものはそういった再エネの利用を導入していきます。ただ、100%これでゼロにできる、オフセットできるというものではございませんので、その選択肢の一つとしてカーボン・クレジット、J-クレジットの活用も検討しております。

それと、収益機会のことについてですけれども、私どももJ-クレジットの創出支援業務のほうに参入しておりますので、先ほどの非化石証書の取扱いもそうですけれども、こういったものを地域の中小企業の皆様に浸透を図っていく中で、我々としても、環境価値自体が経済価値に変わっていくんだよということをお客様にも知っていただきながら、我々もそこの部分で利益を享受できるような形に持っていきたいなと思っています。
以上でございます。

【根本座長】
ありがとうございます。では、河内さん、お願いします。

【河内様】
中国銀行の河内でございます。収益機会のお話でございますが、本日紹介しましたちゅうぎんカーボンクレジットクラブに関してだけをまず最初に申し上げます。一応このカーボンクレジットクラブにつきましては、収益を会員の方にお返しするというメッセージを出しておりますとおり、このカーボンクレジットクラブだけで収益を銀行が稼ごうという仕組みには正直しておりません。ある程度生み出したものはみんなでシェアしましょうという理念で行っていますので、カーボンクレジットクラブだけで会員がいっぱい入ればもうかるかというと、それはその分皆さんにある程度返して、銀行はそうはいっても損をしないような取組をさせていただこうとは思っています。

こういった取組を行うことで私どもがクレジット領域の知見とか、はたまた、私どもが創出したクレジットを違うほかの金融商品の中に組み込むことで違った収益の機会をつくれると認識をしております。今はそういう形でいろいろ知見を蓄えていくタイミングなのかなとは思っていまして、そういうものをある程度積み重ねた段階で、次の商品とか次の新しい銀行のいろいろな施策の中に織り込んで、収益的なものも考えていけたらとは考えております。
以上です。

【根本座長】
松上様、お願いします。

【松上様】
印象から申し上げますと、あまり進んでいないというのが正直なところです。都市部だとしても大して変わらないと思っています。一つ例に挙げますと、スタンダード上場クラスであっても、我々がエンゲージメントする中で、意外とサステナ領域の会話が通じないことや、「今やる必要あるか?プライムじゃないよ」と、返されるケースもあるので、中堅企業でも同様だと思っています。

ただ、特徴的なこととしては、先ほど自動車業界の話もさせてもらいましたけれども、例えば大手服飾メーカーの下請をやっているような中小企業は、フリースを一定回数もリサイクルしても、再利用できるような素材品質でないと納められないことや、併せて排出量の基準だったり、様々な要素がサプライチェーンに求められていることからも、業界トップの意識が大きく左右すると考えています。だから、一概に中堅企業だからといって意識が高いというわけではない認識です。

また、収益機会のところを少し補足させていただくと、収益機会にしたいのですが、正直できていないのが現状です。サステナビリティの取り組みイコール収益化と言う発想だと考えられているケースが多いと思いますが、どちらかというと、こういった脱炭素経営に関わる設備投資を、銀行のアセット収益機会として結びつけたいと思っております。
あと、最後は移行リスクです。ここを少しでも抑えられる動きは、収益機会の裏返しというか、そこにつながるものではないかと思っております。
以上です。

【根本座長】
ありがとうございます。では、江夏様、お願いします。

【江夏メンバー】
ありがとうございます。本日御発表いただいた地域金融機関の皆様の先進的なお取組に感銘を受けました。一方で、顧客の皆様の理解を促すお取組に加えて、横浜銀行様の御発表資料の4ページ目に、行員教育に向けたサステナリテラシー施策という言及がございましたとおり、行員の方々自身がカーボン・クレジットに関して理解、とりわけリスクのほうを深めるお取組はやっぱり不可欠だと思っております。各行でこの点に関しましてどういった工夫をされているのかということがございましたら、御教示いただければありがたいと思っております。

あとは、地域金融機関というその枠組みを超えた観点からですと、カーボン・クレジットについて、ボランタリークレジットをはじめとして取引種別が増加していく中で、政府や業界団体等が素人でも分かりやすく理解できるようなウェブサイトの設置や、政府や自治体等によるイベント、セミナー開催というのも検討の意義があるのではないかと考えています。例えば、現状でJ-クレジットのウェブページは結構分かりやすく説明が行われているものの、J-クレジットのみを取り上げているので、網羅的にカーボン・クレジットを紹介した上で、問合せ先とかも併せて明記しているようなウェブサイトがあると、多くのステークホルダーにとって有益ではないかと思います。

一方、カーボン・クレジットで顧客保護という観点から、今日御紹介いただいた3行の皆様の御発表の中であったスキームは、顧客の皆様に大きな損失が生じるようなことはないように見受けられます。ただ、海外とかを含めて関連する事案が発生していないか、事案のおそれみたいなものがないか、そして、それに対してどういった対策が講じられているか(具体的には、カーボン・クレジット固有の仕組みなのか、もしくはほかの制度でカバーするような形で対応するのか)、といった点を確認するのは意義があるのではないかと考えています。

以上です。

【根本座長】
3行の方にそれぞれ御質問ということですね。

【江夏メンバー】
よろしくお願い申し上げます。

【根本座長】
では、井上さんからお願いします。

【井上様】
教育のところでございますけれども、私どもは行員の階層ごとに勉強会をかなり頻度を高くしてやっているわけですが、おっしゃられるように、我々のメインの取引である中小企業の皆様にしっかりと脱炭素経営を理解していただくためには、まず現場の行職員の理解が欠かせないということで、ここもここ数年の中でやってきてはいたんですけれども、やり方を少し変えていっております。

ある程度小規模で各現場の中核となるような人材に対して、リアルで、我々だったり、我々が連携している事業者様から、生の話をしっかりそこで聞いていただいて、彼らが腹落ちするまで意見交換をしていただくということをこの半年でも20回近くやっている状況でございます。そうやって現場に落としていって、現場の中核となる行員がまたさらにその下に落としていくというような取組をしております。役員向けは役員に対して、階層ごとに部店長だったりということで勉強会をやっているような状況でございます。

【根本座長】
顧客保護に関しては、何か懸念されることはありますか。

【井上様】
現状私どもの取扱いをしているものについては、例えば必要以上にクレジットを買っていただくとかということになると、当然そこは顧客保護の観点から少し違った方向に行ってしまいますので、現状どの程度必要なのかということもしっかりコミュニケーションさせていただいた上で、その中で何を活用したらいいのかというところで御提案のほうをさせていただいております。
以上でございます。

【根本座長】
では、河内様、お願いします。

【河内様】
中国銀行の河内です。まず、行員の教育に関してです。こちら、御懸念といいますか御心配していただいているとおり、私どもこの1月に先ほどのカーボンクレジットクラブを立ち上げましたけれども、その時点において行員の理解が十分ある状況でスタートしたかというと、当然その領域までは至っておりませんでして、以降、支援いただいている事業者様に勉強会等を開催していただいたりとかという形で順次今進めていっております。

あと、環境省さんが脱炭素アドバイザーの資格制度をおつくりになられていると思うんですけれども、あそこに記載されている資格、弊行でいくと炭素会計アドバイザーとかを推奨資格という形で私どものほうからメッセージを出させていただいて、行員のほうに資格取得を促しているという状況でございます。あと、実際、J-クレジットの販売フェーズにまだ至っていないというところもございまして、実際そこに至るまでに体制をきちっとつくっていきたいなと考えています。

顧客保護の観点も、おっしゃられるとおり、非常に私どももナイーブにそこは考えていかなければいけないところだなと考えています。足元はといいますと、今申したとおり、まだ販売しているフェーズに実際たどり着いてないというところもございまして、どこまできちっと体系づけられているかということを今後いろいろな監督官庁さん等の御意見等を踏まえながらつくっていかなければいけないかなとは思っておりますが、おっしゃられるとおり、実際扱っているクレジットに関しましては、やっぱり一番説明をしやすいという観点でJ-クレジットを選んでいるというところもございます。そういった意味では、日本政府から認証を受けているクレジットというところのある意味信頼感といいますか、そういった点を活用もさせていただいて、あとは実際、行員の現場で説明していくスキル等をきちんとしていかなければいけないのかなとは考えております。
以上です。

【根本座長】
ありがとうございます。では、松上様、お願いします。

【松上様】
横浜銀行、松上です。行員のリテラシーのところでございますけれども、一定レベルの最低基準のところはしっかり学ばせなければいけないと思っています。我々としては、先ほどの説明資料にもございましたけれども、事業性評価の中に脱炭素事業性評価という、脱炭素に関わる今後の外部環境から得られる脅威、これをお客様と対話できるツールがございまして、そこで行員も取り組みながら、行員自身も学ぶような形で、まず一つ施策として打っております。

ただ、そもそもの知識もないとエンゲージメント出来ないと思っておりますので、リテラシーの向上のところにつきまして、脱炭素アドバイザーの資格を、法人渉外については取得すると言う施策を半年ほど前からスタートし、また研修も、新入行員、3年目、10年目など少しずつレベルを分けながら、サステナ領域の研修も実施しています。

ただ、それでもやっぱり一定の課題が残っているので、この下期からですが、「サステナアンバサダー制度」というものを、我々は導入予定です。これは毎月繰り返しになりますがホットなサステナ情報を本部から伝えていく、そしていろいろな好事例もみんなで共有し合う制度を作りましたので、横浜銀行全体としてベースアップを図りたいと考えています。

また、先ほどの顧客保護のところですが、やはり優越的地位の濫用のところは一つ課題だと思っています。銀行員はリレーションのあるお客様に対して、様々なソリューションを提案しますので、年間の排出量を超えてしまうところまで販売してしまうなど、そういったところは一つ顧客保護の議論の中に出てくると考えております。
以上です。

【根本座長】
ありがとうございます。では、松尾様、お願いします。

【松尾メンバー】
本日は御説明、プレゼンありがとうございます。実際にJ-クレジットの創出と販売を手がけていらっしゃる山陰合同銀行様と中国銀行様に御質問でございますが、2点ございます。両行様とも基本的なコンセプトはクレジットの創出と販売の地産地消ということかと思うのですけれども、それに関連して2つ質問がございます。

一つは販売の価格ですけれども、これは2つ考え方があって、一つは地域貢献、先ほど私募債のところで寄附の色彩があるという話が出ましたが、そういう色彩ですと、恐らくプレミアムというか値段が高くなるのかなということと思います。あと、もし需要の側からすると、カーボンオフセットに使うことを考えると、プレミアムというよりは炭素1トン当たりの値段、あるいは私どもの市場とかほかで取引されている価格を比較するということになるのかなと思います。地産地消という視点から、どういう価格で取引されているのかという質問が一つ。

あともう一つは、もしかするとそれとも絡むかもしれないけれども、域外との接続みたいな、例えば各行様の域内でもうクレジットがいっぱい出てくるということで、そのほかの地域、各行様の営業外のところに販売するとかということも考えられているのかという2点をお願いできればと。

【根本座長】
井上様、お願いします。

【井上様】
山陰合同銀行の井上です。販売価格、地産地消のことでございますけれども、現状は山陰両県でつくられる森林系が主に多いわけですけれども、それを極力可能な限り、地域の事業者の皆様に御購入をいただいています。当然森林系でございますので、価格がかなり再エネ系に比べて高いわけですけれども、一定の地域におけるストーリー性とか、地元に関わる経営者の方のつながりなどを感じていただきながら、利用いただいているというのが現状です。

域外への展開でございますけれども、私どもは関西や山陽方面にも広く広域に展開しているわけですけれども、そういったところの事業者様にも、私どもの地元のクレジットを購入いただくということもしております。ただ一方で、やはり森林系と再エネ系と実際実需に基づく利用の場合においては、再エネ系の比較的安価なものに流れていくということがございますので、そういったところの創出にもトライしながら、お客様のニーズに応じて販売できていくといいかなと思っております。その一つの出口として、カーボン・クレジット市場のほうにも登録させていただいておりますので、今後そういったところも活用しながら、お客様のニーズに応えていきたいなと思っております。
以上でございます。

【根本座長】
では、河内様、お願いします。

【河内様】
中国銀行の河内です。先ほどの販売価格の観点でございますが、ちゅうぎんカーボンクレジットクラブに関しましては、創出するサイドと販売するサイドを両方私どもが見ているという立ち位置で考えますと、極力中立なプライスをつけなければいけないだろうなと正直思っていますので、そういう意味では、東証さんの市場等、フェアな価格はどれなのというところを前提に考えさせていただくというのが基本なのかなとは考えています。

あと、域外との接続に関しましては、正直私どものこのカーボンクレジットクラブに関しましては、再エネ由来ということもありまして、リリース後、外部の方から買いたいとおっしゃっていただくお声は結構いただいております。そういう意味では、私どもは地産地消をメインに考えていますので、メインは私どもの営業エリアの中できっちり循環させたいという思いはありますけれども、それがなかなかあまりうまく地域で進まないよねというようなことが仮に出てくるようであれば、そういう形で域外の方に御販売していくということも検討していくのかなと考えております。

【松尾メンバー】
ありがとうございます。

【根本座長】
それでは、長島様、お願いいたします。

【長島メンバー】
ENEOSの長島でございます。私は多排出事業者の立場で参加させていただいています。まず3行の方、プレゼンいただきまして、ありがとうございました。その話を伺って感じたこと、コメントです。質問ではございません。

実は当社も、地方の森林組合さんとか自治体さんと組んで森林のJ-クレジット創出をしておりまして、今のところ累計で年間平均で3万トンぐらいまで一応積み上げたんですね。一方、当社の排出量は、スコープ1・2で3,000万トンなので、まだ比率的にいうと0.1%ぐらいですけれども、やはり排出事業者の立場でクレジット創出事業に取り組んでいるのは、当然、適格クレジットとして26年からGX-ETSが始まりますので、オフセット目的というのがまず一義的にはあります。

ただ、それだけではサステナブルではないので、我々としては、国内の林業の再生だったり、あとは地方創生、そういったところにやっぱり結びつけていきたいという思いがございます。そういった中で、先ほども意見がありましたけれども、地方の方と会話をしていると、これは実体験を踏まえてなんですけれども、やっぱり地産地消を求める声は非常に多くて、ENEOSさんいいんだけど、地元に工場ないよねという話もあったりもするので、やっぱりそこの部分というのは、改めて地銀さんの役割は非常に大きいんじゃないかなと排出事業者としても感じております。

具体的には、先ほどから御紹介があった地元の商品とかサービスのオフセット商品ということで使われることが今々大部分ですけれども、残念ながら、話を伺っていると、オフセットに必要な量ってやっぱり10トンとか100トンとかというレベル感になっています。こうなったときに、やっぱりクレジットの創出事業者の立場でいうと、やっぱり最大のリスクって多分売れ残りなんですね。

なので、一方でクレジットを購入する側の方にもいろいろ話を伺ってみると、クレジットで結構心配されているのが、その事業自体の継続性。例えば森林管理であれば、10年、16年って本当にちゃんと管理してくれるのという、そういう継続性、そういった心配の声がある中で、私が今日ちょっと感じたのは、例えばやっぱりこれからGX-ETSが始まる中で、当社のようないっぱいCOを出している多排出事業者と地銀さんとの連携でうまくクレジットの創出側だったり、購入者側の需要を喚起していければなと改めて思いました。
以上、コメントでございます。

【根本座長】
ありがとうございます。では、髙梨様、お願いします。

【髙梨メンバー】
全銀協、あと、三井住友銀行の髙梨でございます。本日はプレゼンテーションありがとうございました。

1点、まずは質問をさせていただければと思うのですが、中国銀行さんに質問させていただければと思います。農業分野が遅れていると書いていただいていて、我々も実は同じことを感じています。そもそも排出量を測ることすらしていないというような状況が中心だと思うのですが、その中でもクレジットのセミナーとかを開催されているというのは結構面白いなという印象を受けているのですが、どういった反応が、足元は何か変わってきているという印象を持ったりするのでしょうか、というところをもしよろしければ教えていただければと思います。

【根本座長】
では、お願いします。

【河内様】
中国銀行の河内です。今御質問いただきました農業分野の取組でございますが、正直、私どもも農業事業者との接点というのは、地方銀行としてそこまで接点が密であったかというと正直そうじゃないなというのが実感です。この領域につきまして、正直今まであまり接点がなかったような大きな圃場を持たれている方々を中心に御案内をしていきました。

正直、皆さんのリアクションは、そういう仕組みがあることは知りませんでした、JAさんとかからもそういうことは何もおっしゃっていただいていなかったという人がやっぱり多いです。あと、一部農機具メーカーさんからは、そんなことは言われたことはあるけれども、正直誰に聞いていいのか分からなかった、セカンドオピニオン的な意見を銀行さんから聞けるのは非常にありがたいというようなお声はいただいています。そういう意味では、皆さんやっぱりそこの部分って進んでないというイメージがあるとおり、そこの部分の知識もないですし、自ら何か情報をつかみにいっている形で動かれているかというとそんな風ではない。

ただ、今動いていて一つプラスだなと思っていますのは、世代交代が農業分野も起きておりますので、先代の70、80ぐらいの方と会話すると会話が成り立たないんですけれども、その下の40代、50代の代に代替わりされている経営者の方とかは、すごい新しいことに対して関心が高くて、興味を持っていただけているなというのが正直感想としてはございます。そういう方々とうまくコミュニケーションを取っていけば、地域で一つの大きな動きが出来るんじゃないかなとは感じております。
以上です。

【髙梨メンバー】
ありがとうございます。あと、今までの議論に併せてコメントを1点だけさせていただきますと、顧客保護みたいな話がございましたが、J-クレジットなのかボランタリーなのかによってもちょっとずつ違ってくるかなと思っております。J-クレジットを特に今、地銀さんのほうでは取り扱われている。一定やはりリスクを抑えているからという御説明ありましたが、そういうことかなと思っておりますけれども、これがボランタリーなっていくと、大きく3点ぐらい注意しておかなければいけないのかなと思っているところがございます。

一つは、まず、買う側の理解度、適合性みたいなものを多分確認する必要があると。その関連する話としてはグリーンウォッシュみたいな話もありますし、金融機関としてグリーンウォッシングに加担しているみたいなことを言われるリスクみたいなところも、どこまで我々として確認しなければいけないのかというのも一つ論点としてはあるかなと思っていたりはします。

一方で、創出あるいはプロジェクトのほうについていいますと、先ほども長島さんのほうからもありましたが、やはりプロジェクトそのものが本当にクレジットを創出しているのかのようなところも、ある意味、金融機関は与信判断をしておりますので、若干似ているところあるかもしれませんが、それだけに限らず、環境社会的な負荷を与えていないのかというところも、どこまで見る必要があるのかなというのは一つ論点かなというふうに思ったりはします。

あとはもう1点、クレジットの質みたいな話がありまして、J-クレジットだと、政府がある意味バックアップしてくれているので、あんまり関係ないというところもあるのかもしれませんが、ボランタリーになってくると、一部格付機関などが評価とかをしていますので、それに依拠するというところは最低限でもやっていかなければいけないのかなと思っておりますが、金融機関としてはそういう点も考えていかなければいけないのかなと、大きく3点、我々としては考えています。
以上です。

【根本座長】
ありがとうございました、では、吉高様、お願いします。

【吉高メンバー】
本日はプレゼンテーションありがとうございました。私自身、脱炭素先行地域の評価委員をしておりまして、山陰合同銀行さん、中国銀行さんは最初のほうから、積極的に関わっていただいているということはもう重々承知しております。またさらに今お聞かせていただきますと、J-クレ以外に非化石証書も山陰合同銀行さんと横浜銀行さんが関わっているということで、これはやはり最初はJ-クレだったと思うんですけれども、非化石まで増やされてきたというのは、これはやはり買手側のニーズというのが多様化している、例えば非化石証書でしたらRE100とか、J-クレだとこれだとかというのがあるので、もしかしてそういうことでサービスを拡大されてきたのかなという、一つ御質問をまずさせていただきたいと思っております。

そういった面では、脱炭素先行地域でも、基本的に地域のお金を地域で流すということで地銀さんのお役目ということでまずは一次的におありになるとは思うんですね。特に山陰合同銀行さんと中国銀行さんはエネルギー会社をお持ちで、中国地域はやっぱり中国電力さんが化石燃料を多く使っていらっしゃる、ほかの地域に比べるとどうしても化石燃料の比率が高いというところもあって、こういったニーズというのは地元のほうでは御認識はあるのかというのをお聞かせ願いたい。そういったインセンティブがあるからなのか、例えばエネルギーコストが下げられるということ、かつ一方でカーボン・クレジットの意義というのが比較的理解しやすいのかということはもしかしてあるのかなと思ったので、そこもお聞かせ願えればなと思います。

そういった面では、先ほど横浜銀行さんのお客様が自動車産業とおっしゃっていましたが、それは中国地方もそうだと思いますが、お客様の業態によってカーボン・クレジットのニーズというのが違うのかというのを、3行それぞれお聞かせ願えればなと思っております。

あともう一つは、プログラムクレジット、これは非常に管理するのは難しいと思っております。実際私はやったこともありますけれども、創出リスクのほうが大きいと思っています。先ほど買手リスクのほうとおっしゃったんですけれども、再構築リスク、つまり、バイヤーとしてこれは入るなということで思っていたんだけれども、例えばブログラムのクレジットの場合は創出リスクのほうが高いと思っているんですけれども、そういったリスク管理というのはどういうふうにされているかというのも、ぜひ教えていただきたいなと思います。

あと、いろいろな商品をお考えていただいているので、今後もしほかの新しい商品のアイデアがあるなら教えていただきたいです。それから、今のところ、金融庁では、カーボン・クレジットの取扱いについては、Q&Aで取りまとめたものぐらいしかないんですけれども、これ以上出したほうがいいのか、それともこれ以上出さないほうがいいか、もし御意見があればぜひお聞かせ願いたいというのがございます。

それを聞かせていただいた上で、地域のこういった取扱いに関しましては、やはり顧客保護の観点が重要かと思っていて、非化石証書とJ-クレというのは一番高い質のものですが、さっきおっしゃったボランタリーというのは、一見すると普通のカーボン・クレジットとの違いが分からないと思うんです。それで、例えば今、脱炭素先行地域ではブルーカーボンに取り組んでいる地域がありまして、ブルーカーボンに関してはオフセットもまだ使えない状態なんですけれども、それが地域の金融機関がもしそういった知識なしにお客様と話すということになると、それは投資家保護の関係ではかなり厳しいものなんだと思っています。環境省が出されているクレジットのいろいろなガイダンスと、さっき江夏さんがおっしゃった、金融庁として扱うものというのは、説明の仕方についてお考えになっていくかというのは重要なことかと思っておりまして、もしそれについても金融庁のほうでお考えがあればお聞かせ願います。
以上です。

【根本座長】
ありがとうございます。それで、時間があまりなくなってきまして、あと2つ御発表があるので、鶴野さんにも御質問いただいて、申し訳ないんですけれども、短くお答えをいただくということにさせていただきたいんですけれども、よろしいですか。では、鶴野さん、お願いします。

【鶴野メンバー】
では、私は簡単にコメントだけさせていただくことにします。よろしいでしょうか。私は地域のカーボン・クレジットの生成に直接関わっているわけではないので、そうした会社を外からサポートする側として今日お伺いした内容についてコメントをしたいと思います。

まず、カーボンオフセットの生成側ではなく購入側に関係することになりますが、横浜銀行様で、脱炭素ステップの削減フェーズの中で、各地域の企業に削減メニューとカーボンオフセットをアドバイスされているという点についてです。私も中小企業の方とお話しすると、排出量の削減については、カーボンオフセット買えばいいのですねということになりがちです。でも、そうではなくて、事業自体がまずはネットゼロになるように努力し、その次にカーボンオフセットの利用を検討するという両方が必要なので、今後地銀さんが企業の方とお話しする際の注意点として、横浜銀行様のように、カーボンオフセットがメインではなくて、事業で取り組むということも大事なのだということも併せてお話されるということが一つポイントなのかなと思いました。

あともう1点は、会計処理についてです。J-クレジットならまだしもボランタリークレジットとなると、会計処理がまだ明確でないところが多く、さらにプログラム型となると、どこで財産的価値が生じるのかというところがまた一つ論点になってくると思います。まだ金額が小さいので重要性がないということだと思うのですが、今後広がってくると検討する必要があると思いました。
以上になります。

【根本座長】
どうもありがとうございます。それでは、すみません、ごうぎんさん、短めでお願いしたいんですが。

【井上様】
まず、J-クレジットや非化石証書のような脱炭素支援メニューでございますけれども、やはり脱炭素を御理解いただくということは、なかなか中小企業の皆さんはインセンティブがないので進んでいかないわけですけれども、これをやっぱり推し進めていくために、しっかりラインナップを増やして、入り口のきっかけづくりとして使っていただけるものを少しずつ増やしていけるといいのかなと思って話をしています。

それと、地産地消の役割や再エネ子会社の話の中で、中国電力さんのお話もありましたが、結果として多少のインセンティブはあったのかもしれないです。そもそも私どもとしては、やはりこの脱炭素に向けた取組というのは、我々地方にいると、都会地の環境と当然違っていて、インフラ面などのハンディなども当然あるわけで、そういった差が生まれているわけですけれども、この脱炭素に向けた取組というのはスタートラインは同じでございますので、これをしっかり進めることで、我々が地方にいながらにしても、脱炭素のいわゆる先進的な地域になり得ることができれば、地方としての付加価値が上がっていくんじゃないかというところで取組をさせていただいております。

それと、顧客保護の規制の話もございましたけれども、こちらについては、現状定められたルールの中で当然やっていくわけですが、ある程度クリーンなものであれば、活用できるものや、認証が受けられるものは広がりを見せていくということはあってもいいのかなと思っております。

【根本座長】
ありがとうございます。河内様、お願いします。

【河内様】
中国銀行の河内です。先ほどの中国電力管内と、非化石の話をまとめて御回答させていただければと思います。ちゅうぎんエナジーを設立させていただいておりますのは、中国電力の何由来で電力を生み出しているかという議論よりも先に、これも同じく、地域内で作った電気を地域内で回したいという思想の下つくっている会社でございまして、結果として中国電力さんが実際化石由来の燃料が多いことから、エリア内の事業者様にとっては電気代に結構、跳ね返っているというのが実情だと認識しています。

私どもとすれば、ちゅうぎんエナジーを活用していただいて、そういったお客さんの事業リスクを低減していくような取組、かつ脱炭素につながる動きができるような仕掛けができるのかなとは感じておりますし、お客様が再エネプランとかを電力会社と契約した場合は非化石証書が裏で充てられているという状況ですので、そういう意味で私どもはまだ非化石証書の取扱いはスタートしておりませんが、そういった中で事業者に非化石証書を活用していくものをつくっていきたいなというのが正直今考えているところでございます。

あと、金融庁の方針等のところでございますが、こちらにつきましては、今現状、私どもはちゅうぎんカーボンクレジットクラブを立ち上げるときにも確認はいろいろさせていただいて、現状の出していただいているメッセージの中で運用はできているかなと思います。ですけれども、この後、いろいろな、商品、ボランタリークレジットも含めてクレジット商品が増えていったときにおいては、幾つかメッセージがあったほうが正直取り組みやすいのかなというのは感じているところではございます。
以上です。

【根本座長】
ありがとうございます。松上様、お願いします。

【松上様】
横浜銀行、松上です。私からは非化石証書の話とアイデアの話の2点だけ回答させていただきます。
なぜ非化石証書をスキームの中に入れているかですが、これは端的に横浜市からのニーズです。当初はJ-クレジットだけで考えておりましたが、様々なイベントにクレジットじゃなくて非化石証書を入れたいと、シンプルにニーズがあったため、調整した経緯です。

あともう一つ、新しいアイデアですが、現在このカーボンオフセット型私募債は地公体へのオフセットに活用しておりますが、足元で我々のシンクタンクを使い、中小企業の各社がスコープ1・2まで測ってきた実績があるので、実際に自社に環境価値を渡し、「オフセットしてみてください」という体験、体感をしてもらうような、そんなプロダクトを用いた手法も下期に商品化しようかなと思っております。寄附目線の決算対応などは主計と調整中ですが、自分で経験しないと、次のステップに行けないと思っていますので、それがアイデアの一つです。
以上です。

【根本座長】
それでは、すみません、御発表の方の時間も取らないといけないので、次に後半パートに移らせていただきたいんですが、KlimaDAO JAPANの濱田様と、カウンシルメンバーの小圷様に、テックの活用について御紹介いただきたいと考えております。それでは、濱田様、お願いいたします。

【濱田様】
本日は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。KlimaDAO JAPAN株式会社の濱田でございます。本日は、「カーボン・クレジット取引でのテック活用」と題しまして、カーボン・クレジット市場におけるブロックチェーン技術の可能性についてお話しさせていただきます。具体的には、ブロックチェーン技術を活用した取組の一例としましてKlimaDAOの事例紹介、そして、現在我々が日本市場で進めている取組、さらにはこの分野の今後の展望について触れていきたいと思います。

それでは、次のページをお願いします。まず初めに、ブロックチェーン技術とカーボン・クレジットの融合がなぜ注目されているかという点について御説明いたします。まず、現在のカーボン・クレジット市場が直面している課題について整理いたしました。主な課題として、市場の断片化と複雑性、取引の透明性の不足、信頼性と検証における課題、高い取引コスト、市場へのアクセシビリティーの低さ、そして、プロジェクト開発者への資金流入の不十分さが挙げられます。

これらの課題に対し、ブロックチェーン技術は様々な解決策を提供する可能性がございます。市場の統合と簡素化に関しましては、分散型台帳技術によるグローバルな価格と供給の調整が可能となります。透明性の向上については、改ざん不可能な公開台帳により、全ての取引と信用の記録が透明化されます。信頼性と検証の改善に関しましては、デジタル測定・報告・検証、いわゆるdMRV技術との統合により、炭素隔離効果のリアルタイム検証が可能となります。また、スマートコントラクトによりクレジットの一意性が保証され、二重計上のリスクが排除されます。取引コストの削減については、スマートコントラクトによる取引プロセスの自動化により中間業者の必要性が減少し、コストが低減されます。市場流動性の向上に関しては、トークン化されたクレジットにより小口取引が可能となり、より幅広い参加者の市場参入が促進されます。最後に、ブロックチェーン開発者への資金流入の改善については、中間コストの削減により、より多くの資金が直接プロジェクト開発者に流れる仕組みが構築されます。

これらの特性により、ブロックチェーン技術は、カーボン・クレジット市場の効率性・透明性・信頼性を大幅に向上させる可能性を有しております。これらは世界経済フォーラムが2023年4月に発行した気候変動対策とブロックチェーンに関するホワイトペーパーにも詳しくまとめられていますので、ぜひそちらも御参考ください。

それでは、次のページをお願いします。ここでは、カーボン・クレジットのトークン化プロセスについて御説明いたします。カーボン・クレジットをブロックチェーン上で運用するには、トークン化というプロセスが不可欠です。このプロセスは主にブリッジとプールという2段階で構成されております。ブリッジは従来のカーボン・クレジットをブロックチェーン上のデジタルトークンに変換する過程を指します。一方、プールは、これらのデジタルトークンに市場流動性を付与するプロセスです。

具体例としまして、KlimaDAOとToucanプロトコルが共同開発した基本的なカーボン・クレジットトークンBCTの仕組みを御紹介いたします。BCTの場合、まず、ブリッジプロセスにおいて、従来のカーボン・クレジットをブロックチェーン上に移行します。この際、レジストリー上でクレジットをリタイアさせた後、ブロックチェーン上に転記するという方法を採用しております。これにより、二重計上のリスクを排除しつつ、デジタル化を実現しております。

次に、プールプロセスでは、個別のプロジェクトのクレジットを1つの大きなプールに集約し、それを細分化して、BCTトークンという形でコモディティー化しております。この手法により取引の流動性と効率性が大幅に向上し、より多くの参加者がカーボン・クレジット市場にアクセスできるようになりました。
ここまでブロックチェーン技術がカーボン・クレジット市場にもたらす可能性と、カーボン・クレジットのトークン化プロセスについて概観してまいりました。これらの技術を実際に活用し、カーボン・クレジット市場に新たな価値を創造している組織の一例として、次のページでKlimaDAOについて御紹介いたします。

4ページから6ページにかけて、KlimaDAO並びにKlimaDAO JAPANについて御説明いたします。KlimaDAOは2021年10月に設立された分散型自立組織、いわゆるDAOでして、カーボン・クレジット市場の透明性・中立性・公共性の高いインフラ構築を目指しております。その主な成果としまして、世界最大手のボランタリークレジット認証機関であるVerraが発行した約2,500万トンのクレジットをトークン化し、ブロックチェーン上に移行させました。そして既に150以上の組織がKlimaDAOのインフラやツールを利用して脱炭素に貢献しております。

次のページをお願いします。こちらは、KlimaDAOの外部評価の一例で、科学ジャーナル『One Earth』に掲載された論文です。こちらの論文では、カーボン・クレジット市場のためのブロックチェーン・ソリューションとして、KlimaDAOは最高レベルの評価を得ております。これは、KlimaDAOのソリューションが理論だけでなく、実際のカーボン市場で実用的かつ効果的であることを示しております。

次のページをお願いします。そして、こちらのページにございますように、この技術と知見を日本市場に展開するために設立されたのがKlimaDAO JAPAN株式会社となります。私たちは、日本のクライアントに合わせたサービス、システム開発を行っており、現在は、ブロックチェーン上でカーボン・クレジット取引するマーケットプレイス、KlimaDAO JAPAN MARKETの開発に注力しております。このプラットフォームは、日本市場の特性を考慮しつつ、グローバルなカーボン・クレジット市場とのシームレスな連携を目指しております。これにより、日本企業にとってより透明で効率的なカーボン・クレジット取引の実現を目指しております。

それでは、次のページをお願いします。7ページから9ページにかけましては、KlimaDAO JAPANが日本で展開している3つの具体的な事例について御紹介いたします。これらの事例は、ブロックチェーン技術がカーボン・クレジット市場と気候変動対策にもたらす多様な可能性を示しております。1つ目の事例は、こちらのページにございます長崎県西海市とのカーボンニュートラル実現に向けたプロジェクトとなります。このプロジェクトでは、デジタルカーボン、NFT、そしてメタバースを組み合わせたアプローチを採用しております。これにより、市民参加型の気候変動対策が可能となり、環境意識の向上と具体的な行動変容を促進しております。

次のページをお願いします。2つ目は、こちらのページにありますとおり、ブロックチェーンを活用したデジタルカーボンマーケットプレイス、KlimaDAO JAPAN MARKETの開発です。このプラットフォームは、パーミッションレスブロックチェーン、プログマコイン基盤、オプテージ社が提供するブロックチェーンインフラ、そして日本円ステーブルコインのJPYCと連携し、高い透明性と効率性を担保したカーボン・クレジットの企業間取引を実現します。さらに、グローバルマーケットプレイスCarbonmarkとの連携により、クロスボーダーでの取引も可能となります。

次お願いします。3つ目の事例としましては、こちらのページに示しております、NFTを用いたカーボンオフセットプロジェクト立ち上げサービスtancreです。このサービスは、イベントのカーボンオフセットやカーボン・クレジットの創出プロジェクトを容易に作成・支援することが可能となります。
仕組みとしましては、小口化されたブロックチェーン上のカーボン・クレジットとNFT証明書を組み合わせて販売し、イベント等の参加者も気軽にオフセットが体験できるものとなります。さらに、そのNFT証明書が個人の環境貢献のあかしとしてブロックチェーン上に永遠に残るというところが非常にユニークで、かつ個人の環境貢献のモチベーションを上げる仕組みだと考えております。さらに、イベント事業者や企業、自治体がこれらの貢献に何かしらのインセンティブを付与する仕組みがあると、よりこのtancreは盛り上がるのではないかと考えており、その実装に向けて現在取り組んでおります。

tancreは既にIVS KYOTO2024とDAO TOKYO2024というイベントで実施されまして、それぞれ49トン、106トンのカーボンオフセットを達成しております。これらの事例が示しますように、ブロックチェーン技術は、企業間の取引だけでなく、個人の気候変動対策を加速させる大きな可能性を秘めています。市民参加型のプロジェクトや小規模なイベントでのカーボンオフセットの実現は、変動対策の裾野を広げ、社会全体の環境意識向上に寄与すると考えております。

最後に、次のまとめページを御覧ください。本日お話しした内容をまとめますと、ブロックチェーン技術を活用したカーボン・クレジット取引・利用が世界的に注目を集めており、日本市場においても着実な進展が見られております。
ブロックチェーンは、現状のカーボン・クレジットの課題を解決するだけでなく、個人のカーボンオフセット促進や、そのプログラマブルな性質により、様々なサービスとの連携も可能にします。
今後、ブロックチェーン活用をさらに推進するためには、カーボン・クレジット認証機関とのAPI連携が不可欠と考えております。グローバル市場では既にこうした連携が進行しており、日本市場でも同様の動きが期待されます。

最後に、弊社の期待にもなるのですが、既存のカーボン・クレジット制度へのブロックチェーン技術の導入や、新たなブロックチェーンベースのボランタリークレジット市場開設などの取組に大きな期待を持っております。これらの取組により、より透明で効率的、そして信頼性の高いカーボン・クレジット市場の実現が期待されます。
現在、KlimaDAO JAPANは、JBA、日本ブロックチェーン協会にも加入し、そこのサステナビリティ分科会のメンバーとして、業界としても脱炭素分野へのブロックチェーン活用に取り組んでおります。
以上となります。御清聴ありがとうございました。

【根本座長】
どうも御発表ありがとうございました。濱田様に続きまして、小圷様、お願いいたします。オンラインですね。

【小圷メンバー】
小圷です。よろしくお願いいたします。IGES、地球環境戦略研究機関の小圷と申します。私自身はこの研究機関でこの20年ほど、特に国際分野のカーボン・クレジット制度について、特に京都議定書とか、あと、今現在、日本政府が実施している2国間クレジット制度、あと、それ以外にも、パリ協定6条の交渉とかそういったことに携わってきております。

今回事務局のほうからも少し御依頼いただきまして、Climate Action Data Trustという、より透明性を高める公開制度、これについて御説明をさせていただければなと思っております。私自身、このClimate Action Data Trustの評議員のメンバーになっておりまして、一応これの設立のときから携わっていることもありますので、少し背景説明を含めて御説明できればなと思っております。

次のスライドお願いいたします。時間もないと思いますので、なるべくポイントを絞ってと思います。先ほど来、また今回のこの検討会の趣旨となっているように、特にネットゼロをパリ協定において目指していくと。多くの国が2050年ネットゼロという宣言もしております。また、パリ協定全体としても、ネットゼロに向けて多くの国が参加をして向かっているということで、これに向けてどう費用効率的に実施していくというところが重要となっております。

また、国としてネットゼロを進めていく際に加えて、やはり企業の多くのネットゼロ目標に対して国際クレジットを使っていくという動きも加速化しております。こちらも書かれているように、例えばSBTiにおいても、スコープ3の削減部分をクレジット活用することを一部認めるとか、あと、企業の国際的な活動においてのサプライチェーンの脱炭素化、こういったところに国際クレジットを使うという動きも加速化しておりまして、カーボン・クレジットを使うことが非常に重要な国際的なアジェンダとなっているということがございます。

次お願いいたします。こういった中で幾つかやっぱり大きな論点がございます。一つはいわゆるボランタリーカーボンマーケットというのもあるんですけれども、パリ協定6条、また、パリ協定を達成していく上で国がクレジット活用するという中で、今、パリ協定6条が国際ルールとして合意をされておりまして、いわゆるコンプライアンス市場への活用とボランタリークレジット、今こういったものの2つ大きな市場が動いてきている。そこの間の様々な取組が重要な点になっているかなと思います。

一方で、京都議定書のときは1つの単一的な国連が管理するクレジット市場のみであったわけですけれども、パリ協定においては、こういった様々な、国レベルでの制度とか、あとはこういったボランタリークレジットも、国もしくは企業が活用していくことに含まれていくということで、やはりより分散的なシステム、これをどういうふうに中央集権的なシステムと融合していくのかというのが重要な観点になってきています。

また、昨今、クレジットに対する懸念とか、また、クレジットの質、こういったことについても様々な意見がある、出てきているということで、こういったところをどう対処していくかというところが当然この検討会の大きな目的になっているわけですけれども、国際的にもこの点について対応が求められてきております。パリ協定6条でも議論をされていますし、また、パリ協定6条の外側における議論においても今、対応がされているということで、このCAD Trustもこれに対応するということがまずは大きな目的として背景にございます。

次のスライドお願いします。そういう意味ではより分散的な、今現時点ではボランタリースタンダードと呼ばれるものが大体50ほどいろいろな制度が国際的に出てきていると。いろいろな対応する様々なクレジットの種類とか制度があるわけですけれども、大体50ぐらいのスタンダードがあり、様々な方法論も存在しています。また、パリ協定6条においてもこれからより本格的に動いてくると思いますけれども、国連が管理するメカニズム、6条メカニズムがより本格的に動いていく。
こういった中でやはり様々な情報をどう統一的に扱っていくのか、また、ダブルカウンティングというのも6条の大きなトピックの一つなんですけれども、企業が目的に使っていく、また、これに対するダブルカウントの考え方とか、こういったことも同時に国連の枠組み以外においても対応することが必要になってきているということでやはり、これはもともとのあれですけれども、透明性をどう高めていくのか、それに対する情報へのアクセスを高めていくのか、こういったところが重要な課題として認識されております。

次お願いいたします。それを基に、このClimate Action Data Trustというのがそれに対する一つの解決案として設立の経緯としてはございます。基本的には公的な団体として、特に様々な登録簿の情報とか、クレジットに関する情報を統一的に示していく。それをなるべく同じような指標とか様々な表示の仕方を統一的にして、様々なプログラム、メカニズムがあるわけですけれども、そういったものを統一的に見せていける、そういったことをこのClimate Action Data Trustとしてやっていこうということが設立の背景としてございます。

次お願いいたします。ここの部分なんですけれども、ブロックチェーンも使っていくというところがあって、私自身は、すみません、あまり技術部分について深く理解しているわけではないんですけれども、基本的には様々な制度、これは例えばボランタリーマーケットですと、後ほどもあるんですけれども、Verraとか、あと、国連の登録簿でいうと、京都議定書の下でのCDM、これは今後パリ協定のメカニズムの登録簿に移っていくと思います。あとは、現在、幾つかの国の登録簿、こういったところとAPIでの接続をしまして、実際の情報をなるべく合わせていくというということをこのClimate Action Data Trustのウェブサイトで表示するということになっています。そこに、6条においてどういうステータスになっているのかとか、そのクレジットがキャンセルされているのかとか、そのクレジットは実際にどこが持っているのかとか、そういった情報が一覧でここで見られるようにするということをClimate Action Data Trustのほうでやっている。一部APIの接続を導入していたりして、情報の統一化を図っているということがございます。

次お願いいたします。先ほどパブリックなものということで、カウンシルメンバーというものが、私も一応入っているんですけれども、それ以外にも例えばイギリスとかシンガポールとか、あとは幾つかの国がこういったメンバーとして入っていて、基本的に助言をしていくわけですけれども、ここに、事務局となるところが実際の運営を行っていて、あとは、ブロックチェーンとかAPIとかいろいろより技術的な要項も入りますので、技術委員会、この分野にいろいろとたけている方々が入って運営していく。ただ、中心的な目的としては、透明性をなるべく高めていって、そこに公的な情報として示していくというところがございますので、どちらかというと基本的には各国政府を通じた拠出を通じてこれを運営しているというのがベースとなっています。

次お願いいたします。これももともとは世界銀行が中心的に議論して始めたもので、当時、パリ協定の後、分散型のシステムをどう国連の枠組みの中で統合していくのかということがありました。当時私も環境省にいてこの世銀との議論をしたことが経緯で私も参画をしてきているわけです。特にグラスゴー、2021年にCOP26でパリ協定6条を合意いたしまして、その後非常に大きな動きがやっぱり始まっています。その翌年2022年から、世界銀行と、あとは特にシンガポールが入る形で、世界銀行でいろいろとこういった分散的な情報をどう集めていくか、こういうふうなパイロットをした上で、これをシンガポールを拠点として、別途、別の組織をつくってそこで立ち上げるということで、2022年からノンプロフィットのオーガニゼーションとしてシンガポールにおいてこの組織が立ち上がったと。

ここのウェブサイトを見ていただけると非常に分かりやすいと思うんですけれども、国ごとにどういうプログラムが動いていて、そこでどういうクレジットがあって、今何トンぐらい発行されているかとか、それがどことどこのプロジェクトなのかなどということが非常に分かりやすく示されていて、必要に応じてそれぞれのクレジットの今の状況とか、あとは、プロジェクトの今の状況、そういったものが見られるようになっております。これがいわゆるデータダッシュボードという形でウェブサイトで示されております。

次お願いいたします。ここはまさに今回参加されている、いわゆるクレジットの透明性を高めるというところで、例えば民間の方々ですと、こういったウェブサイトを通じて様々な情報が取れたり、まさにクレジットの質とか、あとは、格付的なところとか、どう評価していくのか、こういったところで重要な情報がいろいろと横目で見られる。あとは、政府も具体的にどういうふうなプロジェクトが今どうなっているかとか、そういったことも見られるということで、やはり様々な関係者に対して重要な情報を一覧で見せることができる。これはボランタリーマーケットもそうですし、コンプライアンスマーケットもある意味含まれることになります。両方ともこのデータの中に含まれていて、ウェブサイトで公開されるということで、やっぱり市場の透明性を高める上で、まさにこういった情報を統一的に見せていく、そういう取組がこのCAD Trustとなります。

次お願いいたします。ちょっと小さい字で誠に申し訳ないけれども、今この6つの登録簿とつながっていまして、ボランタリーマーケットでいうと一番大きいVerra、あとは、一番右側ですと、これは国連のメカニズムとCDM、今後これがパリ協定のメカニズムの登録簿になっていく。それ以外にも様々な登録簿と今API接続ということでつながっていまして、情報が瞬時に反映されていくというところが重要なのかなと思います。ただ、重要な点は、いわゆるユニットが動くということではなくて、実際に登録簿の情報が反映されていくということになりますので、あくまでも情報を取りまとめて1つの一覧で示していくということがポイントになります。

次お願いいたします。ということで、基本的には公的なインフラとしてこれを示していくということで、特にシンガポールとか世界銀行、あとはそこに様々な国が支援する形で始まっているというのが大きな動きでして、こういったところを多くの、これは日本の企業、あとは自治体、関係の皆様も含めてだと思いますけれども、情報を取っていきながら、それぞれの目的に活用していくということができるのではないかなと思っております。

以上になります。手短で申し訳ございませんが、このClimate Action Data Trust自体については、ここにあります事務局のほうで何か詳細な質問があれば対応するということで、今回は私のほうから簡単に概況について説明させていただきました。
以上です。ありがとうございます。

【根本座長】
どうもありがとうございます。カーボン・クレジットのテックの活用について御発表いただきました。時間がなくなってきたので、コメントはまたゆっくりいただけるかと思うので、御質問を中心に簡潔に、皆さんに一通りいただいて、時間の範囲内でお答えが、もし時間が足りなければ、後から御回答いただくことも可能ではないかと思います。
それでは、松尾様、お願いします。短めに、申し訳ございませんが、お願いします。

【松尾メンバー】
ありがとうございます。KlimaDAO様とCAD Trust様に1問ずつ御質問です。

KlimaDAO様のところは、トークン化という点では通常の不動産とか海外のNFTと類似するところがあると思いますが、それらの2つと違うのは、クレジットが新しくどんどん生成されてどんどん償却されていくという、出入りがあるものという点かと思います。そうしますと、トークン化する段階で、ブリッジと呼ぶのか、プールと呼ぶのか、その際に、二重譲渡されていないかをどのように保証しているのか、信託なのかエスクローなのかというその裏打ち、トークン化されたトークンの裏打ちのクレジットがどういうふうに確保されているのかということと、あと、バーンと呼ぶのか償却と呼ぶのかありますが、償却のところも、抽象化されたトークンを償却するとした場合に、トークンの保有者が何を償却したのかが、いつどういうふうに分かるのか、ちゃんと償却されているのかという、最終的なレジストリーへの償却がトークンのところからどうつながって保証されているのかというところがお伺いできればと思います。

CAD Trust様は、こちらに接続すると、いろいろなレジストリーに振替指図の移転ができるとすごい便利なのかなと思ったんですけれども、将来そういう技術的な発展をする予定があるのかというところをお伺いできればと思います。

【根本座長】
ありがとうございます。ほかに御質問ございますでしょうか。

私からも1つ濱田様に伺いたいのが、このパーミッションレスのスキームなんですけれども、当然いろいろメリットがあると思うんですが、一方でコストの面とか電力消費とかあるいは例えばコンソーシアムとかそういったスキームに比べると、管理者がいろいろな方が入ってくるというようなこともあるのかなと思うんですけれども、その辺はどうお考えかということを伺えればと思います。

ほかに御質問はよろしいですかね。では、よろしくお願いいたします。

【濱田様】
御質問ありがとうございます。まず、松尾様からの御質問に対してですが、こちら、トークン化と一言で言いましても、今回BCTと言われるものの例を挙げて御説明させていただきましたが、様々なパターンがございまして、基本的に信託でもSTでもないような形のスキームで現在グローバルではトークン化されていることが多いと考えております。

それは何を裏づけしているかといいますと、このBCTの場合ですと、実はこのブリッジのところでオフチェーンのVerraのクレジットというものは1回リタイアという形でリタイアして、そのときのリタイアしたときのシリアル番号をNFTにくっつけて、それをもって、既にオフチェーンではリタイアされたものがオンチェーンに移りましたといった、そういった形を取りました。

しかし、そうしたことによって、オフチェーン上の帳簿とオンチェーン上の帳簿に少し齟齬が出てくる。つまり、オフチェーンではリタイアになっているが、オンチェーンでは生きているといった、そういった形になりますので、Verraもそこを懸念して、1回このブリッジというプロセスはVerra側がストップしたといった、そういった背景が実はございます。

現在、我々、J-クレジットのほうでこのブリッジというところを進めているのですが、これは、ある意味完全なブロックチェーンを利用しているというところにはならないのですが、我々KlimaDAO JAPANが1回まず、ある企業がJ-クレジットをトークン化したいというときに、そのJ-クレジットを1回我々が預かって、それを預託して、そこで我々が責任を持ってトークンとしてJ-クレジットトークンを発行するといった、そういったプロセスを踏もうと日本では考えております。
そうすることで、BCTの場合は、1回オンチェーンに移したものをまたオフチェーンに戻すということが技術的にできなかったところを、こういった一旦会社が仲介することでトークン化するというところで、オンチェーンからオフチェーンへの移動も可能となります。なので、トークン化の仕組みによっても、何を裏づけにしているかとかそういったのが変わってくると考えております。

あと、御質問でいただきました、どのような形でバーンだったり償却というところを一般の方が見ることができるのかというところで、我々、パーミッションレスブロックチェーンでいわゆるパブリックチェーンと言われるものを使っておりますので、そこは誰でも、そのトークンがどこのウォレットにあって、誰が持っていて、それでいつ誰がどのウォレットに送付したというところが見られますので、そこでいわゆる無効化処理、J-クレジットの口座移転と近いんですけれども、無効化口座にトークンが送られた時点でもうそこからは移動できないという形になりますので、トークンがそこで償却されたというところが誰でも分かるような形になります。

それで、今現状はまだ、J-クレジットシステムと何かしらのAPI連携などはしていないので、そのトークンの動きに合わせて我々が今は手作業で、J-クレジットの保管システムで、トークンホルダーが希望するような形で実際のJクレジットの無効化処理をしています。

【松尾メンバー】
今のお話に関して、すみません、追加質問してしまって大変恐縮です。プールする中身のクレジットが森林とウインドーとソーラーパワーと3つあると考えると、プールの範囲としてすごい広いなと思ったんですけれども、トークンを償却した場合に、後から出てきた償却の結果をみて、自分は実は森林のものを持っていて森林を償却していたとか、風力発電を償却していたと知って結構びっくりしたりしないのか。

あと、企業が自分が何を償却したかのかが世間様に分かるのが嫌とかというのがあるんじゃないかという点。つまり、プールの仕方によっては、トークンを持っている人が、えっ、こういうプールだったの? と驚いたりしないのか、取引などの履歴全部がよその一般の人に分かるというところに何か抵抗があったりしないのか、2点の追加質問です。

【濱田様】
ありがとうございます。このプールの仕組みにつきましては、1回このプールに入れて、それをコモディティー化されたトークンとしてのBCTトークンというものを対価として受領するんですが、実はこのBCTトークを持っていると、またこれを償却するとなったときに、このプールに入っている、いずれかのクレジットを選んでそれで選択して償却することが可能となります。なので、おっしゃるとおり、最初に入れたクレジットが既になくなっていれば、そのクレジットは償却できなかったりするんですが、そういった形でこのプールが大きくなればなるほど、種類に関しては豊富となり、バーンできる種類も多くなります。

また、いわゆる自然由来のクレジット集めたプールであったりだとか、または再エネ由来のクレジットを集めたプールだったり、バイオ炭のクレジット集めたプールとか、そういった形でプールが何種類かありまして、そういった形でも対応しているという形になります。

【根本座長】
ありがとうございます。すみません、ちょっと時間が延びてしまって、いろいろまだ御質問したい点、コメントがあると思うんですけれども、高岡さん、お願いします。

【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
すみません、お時間も押してしまいましたので、コメント・質問につきましては、後日事務局宛てに書面でいただきましたら、またこちらの方で取りまとめまして、皆様にフィードバックさせていただこうと思います。その点についてはまた改めて御案内さしあげたいと思います。

【根本座長】
どうも皆様、大変有意義な御発表と活発な御議論をありがとうございました。大変有意義な会だったと思います。
次回については、事務局のほうでまた別途日程を調整させていただければと思います。
以上をもちまして、会議を終了させていただきます。どうも本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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