「サステナブルファイナンス有識者会議」(第25回)議事録
1.日時:令和6年10月18日(金曜日)15時00分~17時00分
2.会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン
【水口座長】
それでは、定刻となりましたので、ただいまから、サステナブルファイナンス有識者会議(第25回)の会合を開催します。本日も御多忙の中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
議事に入ります前に、メンバーの中の一部変更がございましたので、御紹介いたします。まず、日本損害保険協会の鍋嶋様です。よろしくお願いいたします。
【鍋嶋メンバー】
よろしくお願いします。
【水口座長】
また、本日、オンラインで御参加ですが、生命保険協会の中村様です。中村様、よろしくお願いいたします。
【中村メンバー】
中村です。よろしくお願いいたします。
【水口座長】
それでは、議事に入りたいと思います。最初に事務局から、本事務年度に有識者会議で御議論いただきたいテーマ等について、御説明をいただきます。その後、意見交換ということにしたいと思います。
それでは、早速ですが、事務局からお願いいたします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
改めまして、本年7月付で、総合政策課のサステナブルファイナンス推進室長に着任いたしました高岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。また、当庁CSFOでおなじみの池田が、今回から担当課長である総合政策課長として参加させていただきますので、これから池田共々よろしくお願いいたします。
では、早速ですが、事務局から御説明させていただきたいと思います。お手元に配付させていただいております事務局説明資料に沿って御説明させていただきます。冒頭にちょっと申し上げますと、今事務年度の有識者会議は、例年とは運営の在り方を少し見直しまして、個別具体的な政策テーマについて有識者の皆様に議論を深めていただくという形で進めさせていただきます。例年、報告書という形で取りまとめております、足元1年間のサステナブルファイナンスをめぐる動向については、今事務年度の有識者会議の終盤で、事務局作成資料という形で御報告させていただくことを考えております。
今事務年度の議論のテーマといたしましては、有識者会議の第四次報告書に記載されておりますけれども、昨事務年度に実施しました「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」から得られた示唆を踏まえまして、幅広い投資家へのサステナビリティ投資の機会拡充に向けた議論とさせていただければと存じます。
それでは、資料の右下3ページを御覧いただければと思います。こちらは少しおさらい的な話になってしまいますけれども、今申し上げましたダイアログですが、このダイアログは、GXの実現など、経済・社会の成長・持続可能性の確保につながる投資を推進していくためには、幅広い投資家に魅力的なサステナビリティに関する投資商品を開発し、多様な投資家の市場参加を促していくことが重要という観点から実施されたものでありまして、このダイアログを通じて把握された、今後の課題や論点などに係る示唆を、「対話から得られた示唆」ということで公表しているところでございます。
この示唆の中においては、基本的意義に関しましては、幅広い投資家のサステナビリティ投資市場への参加が、経済社会の持続可能性の向上の観点から重要性が高く、また、投資家の長期的な投資収益の実現につながり得るということですとか、それから、サステナビリティ投資は、商品の名称などではなく、企業との対話を含む投資の戦略・実践手法であると考えられるが、実際にはその内容は見えづらいといったようなことが挙げられております。
また、真ん中辺りにある2と3の商品の特性と商品の提供方法というところに関しましては、投資効果を想像、実感しやすい商品への関心が高いことから、投資効果などが手触り感を持って理解できることが必要といったことですとか、自らの投資が資産形成と社会・環境課題への対応の双方に資することについて理解を得ていくには分かり易い説明に、特に留意が必要といったことが挙げられているところでございます。
こうした今後の対応の在り方に係る示唆として、投資家にとって投資の基本的意義・効果を実感できる機会・情報提供を図るための議論のポイントとして、一番下の4のところに書いてありますけれども、大きく3点挙げられております。今事務年度の有識者会議においては、赤枠で囲っている2点、1点目が、投資家の特性や意向等の実態把握、これを踏まえた具体的な投資機会の在り方等に係る議論ということと、もう1点が、サステナビリティ投資の基本的な意義や戦略など、中核的な概念・実務に係る議論に焦点を当てて議論を進めていただくことを考えてございます。
以下、議論を進める上での前提となるサステナブルファイナンスの意義と、国内外におけるサステナビリティ投資商品などに関する取組について、簡単に御説明させていただきます。
それでは、ページ飛びまして、資料右下5ページを御覧いただければと思います。幅広い投資家へのサステナビリティ投資の機会拡充に向けた議論を進める上で、これをなぜ議論するのか。もっと端的に言ってしまうと、なぜサステナビリティ投資の機会拡充が重要・必要なのかという目的を常に念頭に置いておくことが重要であると考えますので、いま一度、これまでの有識者会議報告書の内容から、改めてサステナブルファイナンスの意義について再確認させていただきたいという趣旨で、これまでの報告書から意義について触れているところをこのように抜き出しております。
基本的視点として基本的な意義を記載してあったりですとか、機関投資家、個人投資家という観点から見るとどうなのかというところをこれまで整理してきているところでございますけれども、こうした整理を踏まえますと、まとめて言ってしまうと、サステナブルファイナンスというのは、個人にとっても、機関投資家にとっても、それから、企業にとっても、ひいては、経済・社会全体にとっても、投資などを通じた環境・社会課題の解決を通じて、その中長期的な投資収益の拡大ですとか、成長性、持続可能性の向上に資するものであるという整理になるのかなと思われますけれども、これはまさに当庁がこれまで推進してきたインベストメントチェーンの好循環の実現という施策の中に、整合的に位置づけられるものではないかと考えております。
次に、これからサステナビリティ投資商品の中核的な概念などについて議論を進めていく上で、我が国ですとか、主要国におけるサステナビリティ投資商品の分類やラベリングなどに係る取組状況について、一定程度押さえておく必要があろうかと思われますので、以下、その概要について触れさせていただきます。
資料右下7ページを御覧ください。こちらはサステナブルファイナンスの動向をお示しする参考資料になりますけれども、欧米などで、定義ですとか範囲が順次見直されたりとかして、単純な横比較みたいなのは難しいところですけれども、日本について見ると、投資残高は一貫して増加傾向にあるということと、右側のグラフですけれども、運用資産クラス別で見ると、サステナビリティ投資における中心的なアセットクラスというのは、株式と債券ということになるのかなということがうかがわれるところでございます。
次のページ、右下8ページを御覧ください。我が国におけるサステナビリティ投資商品に関する主な取組としまして、皆さんはもう既に御承知のところかと思いますけれども、サステナブルファイナンスの意義と機関投資家が果たす役割を踏まえまして、スチュワードシップ・コードですとか、アセットオーナー・プリンシプルにおいて、サステナビリティへの考慮を盛り込んでおります。これはまさにアセットオーナーですとかアセットマネジャーの投資実践の在り方を示すものであると考えております。
また、サステナビリティ投資商品ということですと、監督指針の改正を行いまして、ESG投信の範囲ですとか情報開示項目などの具体的な検証項目について定めているほか、例えば、ICMAですとか、そういう国際原則などを踏まえたグリーンボンドやトランジションボンド、それから、ソーシャルボンドのガイドラインなどを整備するといった取組を進めてきたところになります。
次のページ、資料右下9ページを御覧ください。こうした様々な取組を我が国においても行っているところでございますけれども、先ほど来申し上げておりますダイアログなどにおいては、サステナブルファイナンスの基本的な意義に対する理解というのは必ずしも浸透していないという面があるということですとか、機関投資家の間での取組状況に差異があるということですとか、特に個人投資家にとっては、投資や商品の性質を手触り感をもって理解することが難しいということですとか、あと、投資家層の特性ですとか意向などについては、実態把握を踏まえて、投資の基本的な意義や戦略、説明や対話の在り方など、中核的な概念・実務を議論することが考えられるのではないかといったことが指摘されているところでございます。
なお、実態把握という点におきましては、この有識者会議の次回以降、まさに実務に携わっている方からのプレゼンですとか、あと、現在、当庁で検討しております個人投資家、アセットオーナー、それから、商品提供者を対象とした実態把握調査を通じて行っていきたいと考えております。
あと、資料9ページの一番下の注記の小さい字になるんですけれども、ここで記載させていただいていますが、対話から得られた示唆において、我が国の公募投信でESGを冠する商品は1%だが、投資に際してサステナビリティを考慮する戦略・商品はずっと多いことが想定され、持続可能性に着目する投資実践の全体動向を捉えていくことが重要という指摘がされておりますけれども、この有識者会議で今後議論を進めていただく際には、こうした指摘も踏まえて、監督指針ですとか各種ガイドラインに基づくラベルなどでは捉え切れていない、サステナビリティを考慮した投資商品の存在というものについても留意することが重要ではないかと考えているところでございます。
資料、次のページ、右下10ページを御覧ください。こちらは「主要国におけるサステナビリティ投資商品等に関する主な取組み」ということで、EU、英国、米国、また、シンガポール、香港といったところを取り上げさせていただいております。こちらも皆さん、よく御存じのところかと思いますけれども、主要国においても、EUのSFDRですとか、英国のSDR、それから、米国のNames Ruleですとか、あと、シンガポール、香港においても、これは日本の監督指針のESG投信に係る着眼点に近いものかなとは思いますけれども、ESGに関するガイドラインのようなものを出すといったような取組が行われておりまして、サステナビリティ投資商品の透明性向上ですとか、グリーンウォッシュの防止などの観点から様々な取組がなされているというところでございます。
次のページ、右下11ページを御覧ください。今申し上げたとおり、主要国でもこうした取組が様々進んでいるところですけれども、EU、英国について見ますと、引き続き、様々な議論、意見が見られているところでございます。例えば欧州委員会がSFDRの潜在的な課題に対応する改善策を検討するなどとして実施した市中協議においては、例えば、SFDRというのは透明性を向上させるという上で、その目的が重要であるということですとか、主要な概念については法的な明確性が欠けているですとか、トランジション投資を含むサステナビリティ投資への資金供給に寄与していないですとか、開示コストが開示に伴う便益になっていないといったような意見が挙げられているところでございます。下の英国についても、英国のSDRに関しましても、ラベルは、サステナビリティに係る目的別の分類で、投資方針・戦略にどう位置づけられているかを示していないなどといった意見も挙げられているところでございます。
次のページ、1ページ飛びまして、右下13ページを御覧ください。以上、駆け足で、これからご議論いただく前提として御説明申し上げましたが、以上を踏まえまして、以下、このページの下のほうで、今事務年度を通して「ご議論いただきたい事項」についてお示しさせていただいております。その上のほうで書いてあるのは、まず議論の前提ということで、今縷々申し上げましたサステナブルファイナンスの意義についての考え方ですとか、あとは特に個人投資家については、投資実践にまで結びついていない投資家が多いといった課題、幅広い投資家への投資機会の拡充についての指摘などをお示ししております。
これらについて繰り返しの説明になってしまうので、詳細は申し述べませんけれども、これらを踏まえまして、今事務年度において、下の青枠で囲っている部分について御議論いただければと存じます。
読み上げさせていただきますと、一つには、国内のサステナブルファイナンスの推進において、投資実践にまで結びついていない投資家が存在する要因をどのように考え、どのようなサステナビリティ投資商品の在り方を目指していくことが望ましいと考えるか。その際、サステナビリティ投資商品についてどのような方法で市場参加者の共通理解を醸成していくことが望ましいと考えるか。これらの検討に当たりまして、例えば、中心的なアセットクラス、株式、債券などを念頭に置きつつ、対話から得られた示唆ですとか、先ほど申し上げたような海外の議論動向、それから、投資戦略、エンゲージメント、商品開示などに関する実態などを踏まえながら議論を進めることが考えられますけれども、どうかと。
そこでは記載していないですけども、対話から得られた示唆では、その議論の切り口としては、サステナビリティ投資の意義、効果を具体的に実感できる機会、情報提供の在り方ですとか、投資プロセス、戦略やエンゲージメントの在り方、サステナビリティ課題が投資戦略にどう位置づけられ、意味を持つかなどを顧客に分かりやすく説明する商品説明や商品開示の在り方といったところに着目してはどうかといったところも示されているところになります。
今、「ご議論いただきたい事項」として申し上げましたことは、今事務年度を通しての議論事項という位置づけになりますけれども、本日は、今事務年度、初回ということもありますので、まずは有識者の皆様から幅広く御意見を賜れればと存じます。
なお、次回以降は、この議論事項を軸として、本日いただいた意見も踏まえまして、より具体的な議論事項をお示しさせていただければと考えているところでございます。
事務局からの説明は以上になります。
【水口座長】
ありがとうございました。というわけで、ここから先は自由討論会ということで、今日は大分時間を取れるんですけども、私の解釈をまず述べます。
これまで4年間、有識者会議を開催してきましたが、今までの有識者会議は、1年目は大分、サステナブルファイナンスはなぜ大事なのかという理念的な議論をしました。2年目以降は、比較的、個別のテーマを毎回扱うという形で、今日は生物多様性、この次は地域の脱炭素みたいな、いろいろなテーマを個別に1回ずつ扱うという形でしたけれども、今年度は少し共通のテーマで何回か議論していきましょうと、こういうことだと理解しました。
その共通のテーマとして、投資商品というテーマの切り口をいただきましたが、一見、単なる投資商品の在り方のような話に見えますけれども、むしろもう少しこれを本質的に考えて、もう一度、サステナブルファイナンスとは何かということに立ち返って議論する、そういうことだろうと理解しています。
今、御紹介ありましたように、第1回から、報告書の中では、サステナブルファイナンスの意義というのは毎回書いていて、サステナブルファイナンスがなぜ重要なのか、どういう意味があるのかというのは、私にとっては自明のことのように思えるのですけが、世の中的にはそれほど理解もされていないし、その理念的な部分が世の中でそんなに浸透しているとも思えない。それはどうしてなのか。では、サステナブルファイナンスという概念が本当に普通の人に身をもって理解されるためにはどうしたらいいのか。そういうところをきちんと解明していかないと、例えば脱炭素というのは、GXに150兆円必要で、うち20兆円は国債で出すけど、残りの130兆円は誰が出すんだというときに、誰が出すのかと。それはもちろんリスク・リターンで、合理的になれば出すでしょうけども、それで合理的になるんだったら話は簡単で、もちろんファイナンスだけではなくて、ほかの市場の設計など、いろいろなことがあるんでしょうけども、でも、なぜそこにサステナブルファイナンスをするのかという、そこをきちんと解明していかないと、いつまで口でサステナブルファイナンスと言っていても広がらないということになるのではないか。
投資商品に関しましても、これはこういうことを言うと失礼に当たる方がいらっしゃったらお許しいただきたいんですけども、ESG投資と名づけたファンドとか、投資商品は幾つもあるわけですけども、それに投資をしたら本当にサステナブルな社会になったのかということの実感が湧かないというのが、このダイアログの声なんだと思うんですよね。たしかにESG投資信託と名づけた商品の投資銘柄を見れば、大手企業が並んでいて、もちろんESGレーティングを経て選ばれているのですから、別におかしくないと思いますけれども、しかし、それで、世の中がサステナブルになっていると思えるのか、また、そういうことに自分が貢献していると思えるのか。いや、そういうふうに思って投資家は買おうとしているのか。そうではなくて、単に儲かる商品の一つとして買おうとしているのか。仮に、ESGは儲かるんですという売り方をしているとしたら、本当にいいのか。それでサステナブルファイナンスが広がったと言えるのか。それで本当に130兆円の資金が出てくるのかと考えると、もう少し本質的にいろいろ議論する必要があるだろうなと思うわけです。
これも御紹介ありましたように、EUはそう思っているから、タクソノミーを作り、SFDRを導入して、政策的に推進している。私は、それは本気でやろうとしているという強い意思を感じます。しかし、現実に見ると、なかなか金融機関がついてこられないとか、なかなか難しい問題があるらしいということも分かってきました。
タクソノミーを決めて、SFDRを決めて、枠組みをきちんと決めれば、それで人がついてくるかというと、必ずしもそうではないらしい。やはりこの社会はシステムですから外的な規制を幾らつくっても内面的な規範ができなければ、社会はうまく動かないのだと思います。では、その内面的な規範はどうやってつくっていくのか。そういうときに、特に個人向けやアセットオーナー向けの投資商品のつくり方というところに最後落とし込んでいくと思いながら、まずは、では、サステナブルファイナンスとはどういうことだったのか、それはなぜ必要で、どうやったら進むのか、ということに立ち返って議論したい。特に、ESG投資商品について批判的なことを言いましたけども、では、どういうものをつくったらいいのかと言われると、どんな投資商品だったら手触り感があるのか、なかなか難しいですよねという感じはするわけでして、そこの答えを探す旅に出ようということです。少し時間をかけて議論する価値のあるテーマなのかなと、こんなふうに思うわけであります。
というわけで、そういう少し結論のないテーマに踏み込んでいこうということですので、皆様からの忌憚のない御意見をいただきたいと思います。
今日は自由討論会をして、この後、では、個人投資家がどんなニーズを持っているのかというのも調査しようということにしていますので、そんな調査もしながら考えていきたいと。特に2,200兆円の個人金融資産があるということですから、こういう個人金融資産を動かしていくというのも社会のシステムを変える大きな一助になるのかなと思いますので、それが本当に動くのかどうか分かりませんけど、そういうことを少し議論できればと思います。
ということで、以上が私の解説でした。
それでは、早速、皆様から御意見をいただきたいところですが、足達さんが最初だけいらっしゃるということですので、足達さん、もし御意見いただければと思います。早速指名してすみませんけど、何か思うことがあれば。
【足達メンバー】
恐れ入ります。冒頭だけ今日は参加させていただくことで申し訳ありません。今、座長がおまとめいただいた問題意識というのは、私も非常に同感であり、私もESG投資信託に長年携わってきましたので、これで本当にサステナビリティに近づいたのかというところは内心じくじたるものがあり、無力感も感じることが多々あります。冒頭に一つ御提案を申し上げたいのは、やはり個人投資家の皆さんに対して特にですけれども、このままの世の中で行くと、移行リスクと、そして、物理リスク、これはクライメイトのテーマが中心になろうかと思うんですけども、そういうリスクを個人の投資家として、もしくは生活者として受けることになってしまうと。そのリスクをいかに低減するかということが、このサステナブルファイナンスの意義であるというところを思い切ってきちんとお伝えしていくというのがいいのではないかという点です。もちろん儲かる投資であるという説明の仕方もあるんですけれども、そこのところについては、なかなか20年、30年のトラックレコードの中で儲かる投資であると言いにくい。リスク・リターンの概念まで入れて、初めて意味のあるということの証明しかできていないところが正直あろうかと思います。なかなかハードルが高いと思いますけれども、アセットを守る、あるいは暮らしを守るという意味での物理リスク、移行リスクというものをきちんとお伝えしていくということを一つの柱に置いてはどうかということを提案させていただければと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございます。座長はあまり意見を言ってはいけないんですけど、私も全く同感でして。でも、そういうのはどうやったら個人の人に伝わるのかなと。金融庁が報告書を出せば、金融機関は読むと思うんですけど、一般の個人にこういうコンセプトを伝える方法は何か、足達さん、もう一歩、踏み込んで何かありますか。もう退出されたのですね。残念です。では、それは私たちに託された宿題だと思って。
では、鳥海さん、お願いします。
【鳥海メンバー】
ありがとうございます。今、水口先生がおっしゃっていた投資商品の在り方ではなくて、サステナブルファイナンスの意義とかいうところからお話ししていきましょうというのは非常に同感でございます。やはりサステナブル商品をつくったからどう売りますかとか浸透させますかということではなく、そもそもサステナブルファイナンスは手段なので、目的を明確にすることがまず重要かなと思っています。そのために、例えばこういう社会課題があって、この社会課題を解決するために金融というものがこういう役割を果たしていくんだという、その前提のところをお話しして、社会課題の共感、それをこう解決していくんだということの何かこう、特に個人の方ということで申し上げると、共感を得る何らかのアクションは必要なのではないかなと思っています。その共感をベースにして、では、それをサステナブル商品で表現するとしたらどうなるのかというのを業者が提供していくということかなと思います。
ただ、先ほどもリターンのお話がありましたけれども、やはり投資する人は、リターンを求めて投資しているので、これがどういうふうにリターンにつながっているのかということも重要なのですが、こういった社会課題の解決という場合には、解決するまでの時間軸が通常のリターンが顕在化するまでと時間軸が違うので、ここを理解してもらうことがすごく難しい。とすると、今までにも何回かお話あったかもしれませんが、そのパスウェイを示す一つの方法としては、それで納得されるかどうか分からないんですけれども、パスウェイをここに向かって、こういうことをやっていくんだ、こういうことが実現していくんだということをお示しすると少し共感を得やすいのではないかなと思います。
例えばイギリスですと、個人向けのグリーンボンドが結構シンプルに分かりやすいパスウェイを説明しているというふうにも聞きますので、例えばそういう形で共感を増やしていくということがあるかなと。先ほど、では、どうやって浸透させていくんだというお話ありましたけど、ここはクリアな解はないんですが、それは我々業者のほうもエデュケートされていないと、その先の投資家の皆さんに直接発信するというのは結構ハードルが高いと思いますので、そこは従前から我々自身の研修とかということもお話に出ていましたけれども、やはり金融業者についてもそこの理解度を高めていくということも必要かなと思っております。
【水口座長】
日本証券業協会とも上手く連携してということですね。おっしゃるとおりです。あと、個人向けグリーンボンドというのも、そういうものだと実感が得やすいかもしれませんね。
【鳥海メンバー】
具体的に何かがないと、なかなか理解がされにくいんじゃないかなと。
【水口座長】
そうですよね。環境省のほうでもグリーンボンドの個人向けの議論はこれからできるかなと思っています。
それでは、お手が挙がった順ということで、岸上さん、井口さん、林さんの順番でいきたいと思います。岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
今年度もどうぞよろしくお願いいたします。水口先生をはじめ、皆様の、商品の前にまずサステナブルファイナンスの意義を整理するというところに賛同します。この資料だけを見ていますと、どちらが先なのかというのがやや、この会議に参加していないと把握できないかなというのが最初気になった点でしたが、もしサステナブルファイナンスの在り方から見ていくのであれば、投資だけではなく、金融業、融資も含まれるのであれば、融資関係に関する関連指針の整理も必要なのではないかと思ったのが1点目です。
サステナブルファイナンスの意義を5ページのところを基に整理したとして、いきなり投資商品に行くというよりも、資料の中に、例えばスチュワードシップ・コードやアセットオーナー・プリンシプルという、投資の面で言いますと、そこの段階で投資方針や経営戦略の中にサステナブルファイナンスの意義がどの程度浸透しているかどうかという、そこの実態調査がまず必要ではないかと思いました。
例えば、スチュワードシップ・コードの署名機関がどのように実際にサステナブルファイナンスの意義を捉えているかという実態把握をした上で、それを進めるためにどういった商品を明確にしていくかというツーステップになるのではないかと思いました。サステナビリティ投資商品に関するダイアログに参加していたからこそですけれども、スタートラインとしては、5ページのほうが整理しやすいのではないかというのが最初の意見となります。
その上で、サステナビリティ投資商品の議論が次のステップになってくると思います。この資料の中で各国の事例も御紹介いただいていると思いますが、欧州を中心に、こういった個別の商品の大前提として、ホール・オブ・エコノミーのアプローチといったところで、個別商品ではなく、経済全体としての移行をしなければいけないという傾向が出てきています。ある意味、日本のこれまでのトランジション・ファイナンスに関する発信を基に、お互いに逆方向から学び合っているといったところもあると思いますが、ホール・オブ・エコノミーとしてサステナブルファイナンスをどのように捉えるか考えた上で、商品のところに再び目を向けたほうがよいのではないかと思いました。
あと、個人投資家と機関投資家における整理ですけれども、例えば大手の機関が提供する商品においては個人・機関投資家向け双方の類似性もかなり多いと思います。しかし、特に個人投資家向けの手触り感のある商品ということで、ダイアログの中でも非常に人気があったものというのは、規模の拡大に限界があるものだったりすると思うので、そういったところはやはり個人投資家と機関投資家におけるある程度の整理をした上で議論したほうがいいのではないかなと思いました。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。融資もという話はあって、サステナブルファイナンスの意義自体は恐らく、ここに書いてある「経済活動が全体として拠って立つ基盤を」という、こういう議論は、地域金融における地域社会の議論とも共通なので、基本的な考え方は多分共通なんだろうなと思っています。一方で、具体の議論をしていくときに、拡散しないという意味では、融資なのか、投資商品なのかというのは少し切り分けて議論していってもいいのかなと。
それと、スチュワードシップ・コードについては重要な御指摘だと思っていまして、もっと言えば、スチュワードシップ・コードがどのぐらい浸透しているかという以前に、日本のスチュワードシップ・コードはこれで十分なのかという議論もあるんだろうと思うんですよね。これは(PRIの理事である)木村さんの受け売りなのですけども、イギリスのスチュワードシップ・コードではシステムレベルのリスクまで取り込んでいるけれども、日本のスチュワードシップ・コードはまだシステムレベルのリスクの部分が足りないのではないかと、こういう議論もありまして、アセットオーナー・プリンシプルも、せっかく作っていただいたので、そんなすぐすぐどうこうということではないかもしれませんけども、やはりそれも少し見直しが必要なのかどうかとか、そういうこともあるのかなと思いながら聞いておりました。
それでは、井口さん、林さんの順番でいきたいと思います。井口さん、お願いします。
【井口メンバー】
ありがとうございます。午前中、ちょうどスチュワードシップ・コードの有識者会議があって、議論をしてきたところなのですけど、これも調べていただいければと思いますが、英国でも、先生がおっしゃったスチュワードシップ・コードの見直しが行われていまして、システムレベルのエンゲージメントのところは、投資家からかなり批判が強くて、投資家がそこまでやる必要があるのかというので、暫定的に見直しの方向で検討されているというように理解しています。
あと、今回のテーマのところですけど、岸上さんが入られていたワーキンググループの資料もいろいろ拝見しましたが、ここは先生がおっしゃったようにどこまで対象を広げるかという議論はあると思うんですけど、一般投資家の理解度というのはかなり温度差が、温度差というか、理解度に差があるということは思っています。ですので、理解度が進んでいないという言い方は悪いかもしれないんですけど、そのような方々にも、どう浸透させていくのかという論点があるのかなと思っています。
ただ、岸上さんがおっしゃったように、プロの世界ですね。そちらのほうでは、アセットオーナーと運用会社の対話というのは成立しているところがあって、一般投資家の議論に引っ張られ過ぎると、今度、プロの世界といいますか、こちらの世界も上手くいかなくなる可能性もあるので、切り分けてやったほうがいいんじゃないかなと思います。
そうすると、より多くの一般投資家の方にも商品を分かるようにしていくという議論に絞れると思います。これには先生もおっしゃったように、2つの方法があると思っていまして、1つは、先生がおっしゃったSFDR的な、企業も全部ラベルを貼って、グリーンの企業、グリーンでない企業にして、事務局資料には、環境省さんがグリーンボンドプロジェクト、グリーンか否かをやると書かれていましたが、そのように企業を色分けして、そこに投資しているファンドは、グリーンなファンドになるという、一般投資家の方も分かりやすいやり方があるのではないかと思います。
もう一つのやり方は、商品自体を分かりやすくするということで、事務局資料の16ページのアメリカでやられていることなんかもそれに近いかもしれないんですけど、また、日本の現状のESG投信の規定もこちらに近いのかなと思っていますが、そのようなやり方があるのではないか、と思います。
私個人は、日本の現状とか、あるいはこれまでの有識者会議の議論からすると、後者のほう、商品を分かりやすくするということがいいのではないかというように、現状では思っています。ちょうど、事務局資料16ページに載せていただいているのですが、アメリカのようなインテグレーションファンドと、一般投資家の方にとっても手触り感のあるESGフォーカス・ファンド、つまり、インパクト的なファンドにわけると、フォーカス・ファンドでは、今までの議論や、先生もおっしゃったように、将来、環境への影響とか、そういうのもみんな分かるようになるので、ある意味分かりやすい商品になってくるのかなと思っています。
現状、ESG投信の規定では、この両方が、ESGを投資対象選定の主要な要素とするファンドに含まれ、その中でインパクトファンドも入れていただいているという形ですが、この二つを分けるという形もあるのかと思います。そうすると、幅広い、一般投資家の方も、よく分かってという言い方も語弊あるかもしれないんですが、比較的いろいろな応用ができ、理解できる方は、ESGインテグレーション型の商品と、インパクト型の商品の両方を買う、あるいは組合せるというやり方もできると思いますし、手触り感が本当に欲しいという方は、インパクト型の商品だけ買うというような、そういうふうな切り分けというのもできるんじゃないかなと思います。
そうすると、インパクト投資を購入された一般投資家の方は、先ほどのグリーンボンドと同じような形で、どのように社会に貢献しているかがすぐ分かるようになることになると思います。また、2つ選択肢を置いておくと、現状、成立しているプロの投資家のマーケットには、そんなに影響しないということで、いろいろな投資家が共存できるような形になると思っています。
あとは、最後、3つ目で挙げていらっしゃる海外の動向は非常に重要だと思います。私自身もあまりよく分かっていないところがあって、先生がおっしゃったように、欧州がラベルを貼って、それで投資して、分かりやすいんですけど、うまくいっていないので、私の欧州の友人とかもかなりいろいろ文句をいつも言っていますけど、そういうところでも、何がうまくいっていないかとか、あるいは、IOSCOもレポートとか出していらっしゃいますけど、どういう動向があるかといったことになります。海外の動向を見ていくというのは非常に重要ではないかと思っています。
【水口座長】
たしかに欧州の人はいろいろ文句を言っていますよね。じゃあ、ファンドネームズルール的なもので、少し細かく切り分けていくのがいいのではないかということなんですか。
【井口メンバー】
はい。今のESG投信の規定自体は悪いものではないと私は思っています。ただ、インパクトも一緒に入っているので、それを分けて、ネーミングを変えて、一般投資家の方にも、手触り感が出て、わかるようにするということかと思っております。
【水口座長】
ありがとうございます。では、林さん、安地さん、高村先生、長谷川さん、手塚さんという順番で。では、林さん、お願いします。
【林メンバー】
先ほどの、足達さんがおっしゃったり、水口先生がおっしゃっている、社会課題の共感がそもそもないと、投資が進まないと考えます、まず第一に、個人投資家と機関投資家に議論を分けたほうがよいと思います。
日本の社会課題を、個人投資家に共感してもらうとなると、もう少し踏み込んで議論することが大事だと思っています。資産運用立国、脱炭素化、経済の発展、人口減少などの社会課題。脱炭素化と言っても、原子力、リニューアブルをやると言っても、引き続き様々な資源・材料を海外から輸入する必要があり、そんなに簡単ではないということを、どこまで政府として共有するのかということが問われていると考えます。
【水口座長】
おっしゃるとおりで、簡単じゃないことだからなかなか解決しないんですよね。でも、だからといって、それを説明しないのかと言われると、それは国民にもちゃんとそういうことは説明すべきでしょうから、全てのことをきちっと説明するべきなんだろうと思いますので、それは解があろうと、なかろうと、私たちだけでこっそり情報を隠すのは最もいけないことだと思いますから、伝えていくしかないですよね。
【林メンバー】
そういう中で何に投資しますかという議論になりますね。
【水口座長】
やはり伝えることが大事ですよね。
では、安地さん、そして、高村先生。安地さん、お願いします。
【安地メンバー】
安地でございます。まず年間の議論の進め方について、皆さん、ご指摘のとおり、サステナブルファイナンスの目的とか、林委員がご指摘のハイレベルな議論から行く演繹的なアプローチは、非常に大事だなと思います。一方で、せっかく個人の方々の実態把握調査も行うと伺ったので、帰納法的なアプローチも併せて議論することがよいと考えます。個人の投資家がサステナブルファイナンスについてどのように理解しているのか。サステナブルファイナンスの定義を読むと、第一印象で難しいと思います。個人の方々がお持ちのリテラシーはそれぞれ違うことから、理解もさまざまであると思います。あるべき論のハイレベルな議論と実務的な個人の実態を踏まえた議論の双方が出会うところを見つけていきたいと思いました。
実務的なアプローチで今申しあげたことを整理しますと、水口先生が最初ご指摘されたように、資産運用や投資をするとき、個人の話をすると、大きくリターンを重視するか、社会貢献を重視するかの2つの選択肢があります。もちろん、もっと選択肢があるかもしれませんが、リターンを重視する方はテーマ型の投信を買って、コアサテと言います、コア・アンド・サテライトの、コアポート、サテライトポートで我々は提案するんですが、サテライトポートの1個で、サステナビリティ投資商品を1個組み入れておこうかぐらいのイメージだと思います。
コアポートには別の何か、ボンドや何かの投信などの金融商品を買っていただくようなポートフォリオになりますが、このポートフォリオを前提にすると、サステナブルファイナンスの推進の観点からすると、恐らくあまり目的とはリンクしていないと思います。ただ、これを若干、見方を変えてみて、サステナブルファイナンスの定義が中長期的な社会基盤への投資であるとすると、中長期的なリターン、すごく長い目で見たリターンを得るための投資と理解し直すと、もしかしたら、本当はコアポートにサステナビリティ投資商品を組み入れておいたほうがいいのかもしれません。こうした個人の方々の資産形成の実務的な観点からサステナビリティの実現という目的のほうに昇華させていくようなアプローチで、分かりやすい定義を予め示してあげるような、そうしたアプローチもいいと思います。
一方で、社会貢献を重視する方も多くいらっしゃると思います。このような方々に関していうと、推し活みたいな人が結構いらっしゃって、どちらかというと、クラウドファンディングや個別のグリーンボンドなども近いと思いますが、要は、社会貢献している実感を期待されていると思います。ただ、このような金融商品のスケール化は難しいのが実情です。スケールしないので、もしかしたら割り切ると、リターン向けのポートと社会貢献向けのポートを分けてもいいと思います。このように社会貢献できるオポチュニティも提供しつつ、リターンもあるというのは、別の金融商品になるかもしれませんが、両方のニーズを満たしていくという、我々金融業者側の努力が必要だと思います。
推し活というのは、日本のオタク文化らしく、我が国特有のこうした市場とかを形成していこうと思うと、グローバルなものも参考になるのですが、我が国特有のカルチャーもあると思うので、この推しの文化などもうまく取り入れていって、定義づけができるとよいと思いました。あまり全銀協とは関係がないと思いますが、個人的な意見として、そんなことができたらいいなと思いながら聞いていました。
以上でございます。
【水口座長】
いやいや、とても全銀協に親しみを感じますね。
【安地メンバー】
誰とも相談していませんので。
【水口座長】
でも、アニメだって意外に海外に受けているみたいですから、日本の推し活文化が海外にヒットするかもしれませんね。おっしゃるのはごもっともで、確かに頭でっかちで考えるから、この定義、分かりにくいと。そう言われてみるとそのとおりでありまして、もうちょっと分かりやすい言い方はないのかと。おっしゃるとおりですよねと思いながらうかがいました。
それでは、高村先生、お願いします。
【高村メンバー】
ありがとうございます。私はこの会議は初めて対面で出席させていただいて、この雰囲気を大変楽しんでいますけれども。林さんと安地さんの後に話すのはすごい難しいなと思っておりました。頭でっかちかもしれませんが、このテーマはすごくやはりいいテーマだと思っていまして、7月にオンラインで参加させていただいたときに、地銀さんの例で、やはり商品をどうやって作っていくかということが個人、あるいは、これは投資家という言葉をあえて使わなかったですけども、サステナブルファイナンス、お金の流れをつくっていくという意味では大事かなと。それで取り上げていただいたか分かりませんけど、いいテーマだと思うのは、サステナブルファイナンスの意義ですとか、投資家の開示の話ですとか、様々な問題に広がるテーマだなと思っておりました。
3つぐらいあるんですけど、一つ、岸上さんがおっしゃったローンでして、多分、私は皆さんの中で一番プロフェッショナルではなくて、オーディナリーピープルだと思うんですが、投資家の立場をよく分かっていない人間ですけれども、住民あるいは中小企業などのローンというのは、実はその中にサステナビリティに対する内容を盛り込むことで、実際にそこへのお金を動かしていくと同時に、その人たちにとって、やってよかった、自分たちのお金、資産を使っているわけですけど、それを金融機関が支援することで、そういう製品、金融商品、サービスを提供されることで、自分のお金も自分で負担しながら、しかし、サステナビリティを向上させる。やってよかったなと思える実感が持てる一つの切り口ではないかなと思っておりました。
この前、申し上げたのは、滋賀銀行さんの住宅ローンの例ですとか、イオン銀行さんのところが同じようなのをやっていらしたと思うんですけれども、ZEHのリフォームとかEVをパッケージにしてローンにするとか、恐らく金融機関で多くやられていると思うんですけれども、個人が自分のお金、資産を活用して、サステナビリティに貢献すると。それで結果的にサステナブルファイナンスにつながっていくという、こうした、ローン問題はぜひ取り扱ってほしいなというのが一つ。ローン問題といいますか、ローンの分野についてぜひ取り扱っていただけるといいのではないかと思っています。
2つ目が、サステナビリティ投資方針のところのやはり、あまり頭でっかちなので、定義とかクライテリアの問題というのを最近気にしていまして、それは今日、高岡さんから事務局資料で、7ページのデータのところで感じているところでして、北米の定義を変えると規模が変わる。欧州が3年前、2年前ですかね。ああやって変えたのを反映して、ファイナンシャルフローの規模が変わる。それは逆に、言い方を変えると、日本のサステナブルファイナンスって一体どういう考え方で把握しているんですかという問いでもあります。これは同時に、裏返すと投資家の保護でもあり、投資商品の質の確保なんだというふうにも思っていまして、これはぜひプロフェッショナルの皆さんに議論していただけるといいなと思っていた2つ目です。
最後ですが、これは進め方です。このテーマはすごく面白いので、ぜひ議論を深めたい、集中して議論したいと思うんですけど、私は、このサステナブルファイナンス有識者会議のもう一つ面白いところは、全体感を持ったときに、今、サステナブルファイナンスで何をやらなきゃいけないのかという、それぞれの立場からの課題を出していただいて、課題設定してきた。これはぜひ、このテーマが一旦区切ったところでもいいですし、一度引いて、何を議論しなきゃいけないか、何を議論したいかというのをぜひやっていただけるとありがたいなと。多分言わなくても先生はやってくださると思うんですけど、この3つです。
【水口座長】
ありがとうございます。確かに、サステナブルファイナンスの意義をきちんと議論した上で、個人投資家向け商品と機関投資家向け商品を切り分けて議論したいと思いますし、融資も大事ですね。融資も一つ切り分けて議論するというやり方がありますよね。ですから、大きな土台の上にいろいろな商品の議論が乗っかっているという見方でいいのかなという気もしました。
それと融資の議論は、特定の融資商品というだけではなくて、特に地域金融にとってはシステムレベルのリスクなので、融資の在り方全体というか、銀行業務全体の在り方に関わるんだろうなという感じもしました。
あと、ちなみにですけど、日本のサステナブルファイナンスの残高、どうやって計算しているかというと、岸上さんのところですが。
【岸上メンバー】
そうですね。
【水口座長】
JSIFというところで決めてやっているので。JSIFの定義で集計されているんですよね。
【岸上メンバー】
はい。JSIFの定義というよりも、GSIAの定義に則ってになると思いますが、そこも、ここにも書かれているとおり、非常に各地域によって、それを今後、統一した形でやれるかどうかという議論は難しいところもあって。だからこそ、投資商品に集中し過ぎる前に、そもそもサステナブルファイナンスの意義を、もっとハイレベルで一旦整理した上でないと、毎年変わっていく定義に踊らされてしまうというリスクがあると思います。
【水口座長】
逆に言うと、定義が変わると残高が変わるということは、今でも実は定義を変えれば残高は大きいかもしれないということでもあるんですよね。なかなか難しいですね。
それでは、長谷川さん、手塚さん、小野塚さんの順番でいきたいと思います。お待たせしました。長谷川さん、お願いします。
【長谷川メンバー】
サステナビリティ投資商品について投資効果が実感できないという点については、やはり社会課題の解決とともに高収益をもたらす、両方可能であるということを定量的に示すことが必要ではないかと思っております。そのための一つの方策としては、今まさにインパクトコンソーシアムで、水口座長ほか、皆様が取り組んでいらっしゃるインパクト評価をもっと精緻なものにしていくことが必要なのではないかと思います。
先日、GPIFの方から説明を聞いたのですが、GPIFではエンゲージメントによって、ESG指標の項目や企業価値がどの程度上がったかという効果検証や、ESG要素を考慮することで、事業価値、投資収益の向上にどの程度寄与しているかを分析しているということで、そうした活動も重要だと思います、また現在、経団連でもインパクト投融資ワーキンググループを設置して、どちらかというと事業会社に主眼を置いていますが、各事業会社が各社のマテリアリティーに沿って取り組んでいる事業やサービス、商品について、どういうロジックで、どのパスウェイを使って、社会課題解決及び事業収益に効果をもたらすか、また、それをどう説明したら良いかについて、いろいろ議論しております。そうした議論を積み重ねていって、何か共通事項として共有できるものがないかを分析していくような作業も必要ではないかと思います。
それから、二番目のスチュワードシップ・コードに関してですが、これも先日、経団連でGPIFとアセットオーナーラウンドテーブルを開催したのですが、その中の議論では、今のスチュワードシップ・コードの内容が十分かどうかというよりは、今のコードが実践されていない、効果が上がっていないことが課題という意見が出ました。要は、機関投資家が、短期的な指標を求めてくるとか、中長期的に取り組んでいることについて、あまりエクスプレインを聞いてくれず、短期的な結果だけのKPIに基づいていろいろな評価をされてしまうという発言が事業会社側からは結構出たので、そういう意味では、サステナビリティが中長期的な事業の価値向上に資するということについて、アセットオーナー側でも、もう一度、確認していただきたいというところはあります。
3番目のところで、これは単なる御参考ですが、先日、WBCSDの会合に参加したのですが、日本側から、日本ではサステナビリティ商品・サービスに高いコストをかけても、それが売れないから、消費者のマインドを変える必要があるが、それをどうしたら良いかという質問があったときに、WBCSD側からはサステナビリティ・脱炭素商品を市場のメインストリーム化する必要があるので、サステナブルでない商品に対して、サステナブル商品との差額については課税するとか、もしくは政府が補助金を払うという政策が必要だという意見が出て、やはりそういう発想の違いがそもそもあるということを感じました。
日本ではどう進めていくかを、この会議の中で皆さんと議論していきたいと思います。
【水口座長】
炭素賦課金もかけるということになっているので、少しは行くんだと思うんですけど。ありがとうございます。
では、手塚さん、お願いします。
【手塚メンバー】
どうもありがとうございます。カーボンプライスというのはそういうことを言ってるんだなというのは、もうそのとおりだと思います。私はこの会議の中で唯一金融と関係のない素人の立場なので、なかなかこういうところで発言するのはいつも考えちゃうんですけども、ナイーブな議論だと思って聞いていただければいいと思うんですが、個人の世界でサステナブルファイナンス商品をどう広めるかということを考えるときには、それが何とコンピートしているかということを考えたほうがいいのかなと思うんですね。
というのは、個人は別に投資家以前に個人ですから、投資以外にもお金を使っているわけですよね。そうすると、サステナブルなものにお金を回すという方法は、今の日本の個人は、投資だけではなくて、寄附、それから、現物投資があると思います。要するに、リターンがなくてもいいから何かに貢献したいという場合、例えば震災の復興のためにお金で貢献したいとか、あるいは、私もこの前やりましたけども、出身校の校舎建て替えのために、向こう何十年の教育の場のために使ってくださいという人は寄附するわけですよね。若干のおいしいリターンは税額控除がついているということぐらいで、残りはもう全部それに使って結構ですというわけです。ただし、これはおっしゃるように、手触り感は満載なわけですね。もうそのことだけのためにお金を出すわけです。ちゃんとそこには寄附した人の名前も出るみたいな、そういうやり方です。
それともう一つは、ふるさと納税もそれに近いかもしれません。返礼品の比率が大分高いから、儲かるからやっているという面もあるかもしれませんけど。もう一つは、もっとお金のある人は多分、再エネ投資のファンドにお金を入れるぐらいだったら、自分の家の屋根に太陽光パネルを載っける、あるいはEVを買うという行動でもって、自らのサステナブルへの貢献欲求を満たしているのではないかなと。
ということは、サステナブル投資商品というのは、個人に関してはそういうものの選択肢の中で選ばれなければ、そのお金が使われない類いのものなんじゃないのかなというわけです。ということは、私の想像ですけども、あくまでサステナブル金融商品にお金を投資という名目で出す人というのは、インパクトとかサステナビリティのリターンよりは、金銭的なリターンがまず先にあった上で、どうせお金を使うならよりいいことに使おうというぐらいの位置づけで回す人たちが対象になっているんじゃないのかと思うわけです。
そうすると、そういうふうに設計しないと、この商品というのは魅力的だと思わないのではないかという、そういう気がいたします。そこから後は、実は林さんの話に戻ってくるんですけども、そうなると、金銭的なリターンがちゃんとあるものに回さなきゃいけないというときに、果たして現状でESG投信とか、本当にリターンが出ているんですかという疑問が出てきます。要するにマーケットの平均的なところに投資したものに対してアウトパフォームをしているのかということの成績評価がやはりまだ見えていないと。実際にサステナビリティ投資商品に入れることによって、通常の何でもない投資信託に入れていたのに比べて、幾ばくかでも高いリターンが出る。なぜならそれは世の中にたくさん、これから受け入れられていくような将来の商品に投資しているからだという部分の明確な指標が出てこないと、なかなかそこに本当にお金は行かないのではないのかなと思います。
一方で、アメリカでもいろいろ問題になっているみたいですけども、今までそうは言いながらもEUみたいに、それは全て追い風の中でやっているんだから、短期的にはともかく、中長期的には絶対そうなるんだという理屈でやっていたのが、必ずしもそうではないのではないのかということが、今の世界のグリーン投資に対して最近出てきているいろいろな向かい風ですよね。例えば、戦争、紛争が起きて、サプライチェーンが分断され始めると、安いと思っていた再エネがそうでもなかったりとか、それより前に、まず天然ガスとか石油がちゃんと来るようにしてもらわなかったらエネルギー転換はその先だみたいな議論が出てくる。そうすると、投資テーマのトレードオフが出てきている中で、エネルギー供給のサステナビリティとグリーン化のサステナビリティは実はぶつかっていたりするわけですよね。
だって、どちらがサステナブル投資なのだみたいな議論がなかなか明確に言えないわけです。あるいは政府もだんだんお金がなくなってくると、補助金が切られる。EUで起きているみたいに、補助金が切られるとEVが売れなくなる。ということは、EVに投資していたパッケージは、実はリターンが低くなる。こういうことも起きてくるという中で、そういうリターンの部分がどういうふうに確実に見えるのかという部分のストーリーが、すごく今あやふやになってきている中で、この商品を世の中に、特によく分からない個人に売っていこうというのは、とても大変なのではないのかなという気がいたします。
そういう意味で、何かパッケージをつくる際のストーリーづくりをもう少し、一旦冷静になって見直したほうが、少なくとも金融商品としてサステナブルファイナンス投資を扱う際には大きな課題になるのではないかと思います。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。こういう視点を変えていただけるお話は大変面白いなと思って伺っていたんですけど、ESG投資商品やサステナブルファイナンスが何とコンピートしているのかというときに、サステナビリティ的な商品を買うとか、そういう消費行動とコンピートしていると思うのか、むしろ通常の貯金、預金、私たちは普通に、何しろ個人金融資産の半分は預金にただ預けているわけでして、この預金とコンピートしているのかと思うのか。私は後者だと思っていたんですよね。預金で預かっているお金は個人金融資産の約半分、1,000兆円ぐらいあって、ほとんど金利はつかないわけでして、それと比べてサステナブルファイナンスは、いや、元本は保証されないんですよという話かもしれませんけど、そういうものとコンピートしているのではないのかと。そこにサステナブルな社会になるかもしれないという付加価値がつくということかなと思っているんですけど、ただ、そんな説明したって、個人の人が買ってくれなきゃしようがないので、そこは個人の選好をちゃんと把握しなければいけないというのはそのとおりだと思います。ありがとうございます。
それでは、小野塚さん、藤井さん、二木さんと、こういう順番で行きたいと思います。小野塚さん、お願いします。
【小野塚メンバー】
ありがとうございます。今年、サステナブルファイナンスの本質に立ち返るということを掲げられたというのは大変意義のあることだと思って、心から賛同します。
というのは、私も自分のキャリアが過去10年、やはりESGに絡んで構築されたというところで、特に2015、2016年ぐらいからはスチュワードシップ・コードに関連する投資家側の責任の追及の仕事をして、そこで、なかなか世の中、変わらないなと思ったので、アクティビスト・ファンドに行き、でも、それもやはりエンゲージメントのなかでESGのバランスを欠いているところもあるのかなと思って、独立して、まさにサステナブルファイナンスを体現できる、ある意味自由な身で、政府のお仕事をしたり、自分で活動したりというところで活動してきました。ずっとこのESGも、あるいはサステナブルファイナンスもやはり揺れているというところが第一次報告書にもありましたけれども、それはあるんだろうとリアリティーを感じて生活しています。
そんな中で、その方針に立ち返るということがすごく、今、この時点でやる、特に日本でやるということに意義があると思っていて、引き続き日本のESG業界では、日本は遅れている、開示をグローバルなスタンダードに近づけなきゃいけないので、キャッチアップしなきゃいけない、足りないんだという、遅れている感みたいなのが一つの枕言葉になっているようなところがあると思います。ただ、一方、ヨーロッパのほうで先んじて進んだことが多少揺り戻しが起こっているということも事実であって、今、我々が認識している、認識しようとしていると皆さんがおっしゃっているということは、日本のコンテクストが諸外国と違うんだということを認めようじゃないかという、そういう呼びかけなのかなと私は感じました。なので、恐らく、きれいな水が出て、気候変動の影響は受けましたけど、バスや電車がオンタイムに来てという社会インフラがきちっとしている中で、社会課題を感じにくい。一方、放っておくと、社会課題は深刻であって、解決しないという、そこも事実だと思います。なので、今年考えたいなと思うのは、商品の設計とか個人に対するメッセージとか、もう少し日本らしさみたいなものをあえて意識してはどうかなと。グローバルを意識して、ここまで来て、それももちろん並行してやっていくんだけれども、今、日本がどういう状況なのかなということを立ち戻れたらなというのが一つの希望です。
その中で、サステナブルファイナンスの定義ですけれども、我々の報告書の中では、持続可能な社会のインフラになるという、そういった金融であると定義しているので、サステナブルファイナンスか、ファイナンスかというのはほぼ同じものになっていくというのが目指すところなのかなと思っています。一方、欧州では、少なくとも当初は持続可能な社会をつくっていくために資金を誘導する、それを支えるファイナンスだと定義づけていたと思います。最終的には同じものになっていくんだと思うんですけど、その出発点が違うということを考えた上で、多分、欧州は恐らく、モラール的な、意義的なところのアプローチから、規制とかいう観点、グリーンウォッシュを防ぎたいという観点から、規制とか、供給側にフォーカスした施策が多かったと思うんですね。なので、ここから考える視点として、皆さんおっしゃられているように、やはり個人投資家、機関投資家を分けるというところもそうですし、一方で、時間軸という意味では、時間がない、資金量がいっぱい必要というスケールでいつでも考えるというところが必要だと認識しています。
もう少しプラクティカルな話をすると、まず機関投資家については、やはりこの10年ぐらい取り組んできたスチュワードシップ責任とかコーポレートガバナンス改革の高度化ということももちろん重要だと思いますし、あとは、機関投資家なので、SFDR的な、ある意味、供給側の分かりやすいカテゴリーというのをつくるというのも、これはアセットマネジャーとして、アセットオーナーの間での分かりやすさみたいなところは一つアイデアとしてあるかなと思いますし、また、国として、この辺り、資金量をある程度振り向けるということを考えるのであれば、アセットオーナー・プリンシプルで、一歩前に進んだように、ある程度大きなアセットオーナー、機関投資家に関しては、こういったことについて、逆に言うとなぜ投資をしないのかという説明をさせるような枠組みをつくるという、資金を振り向ける、そちら側の方向、後押しというのも必要かなと思います。
一方で、個人のほうは、先ほどから出ているように、やはり手触り感がなかったり、この資料にも、日本の投資家も、それから、英国の投資家もそうですけども、やはりリターンと、それから、社会貢献と両方欲しいんですというのが真実だと思うんですね。なので、提案としては、個人投資家の側というのは、供給側からのことではなくて、インセンティブを与えるというような、先ほどの手塚さんのお話にあったようなふるさと納税とか、ポイ活とか、推し活とか、そういうのもそうだと思うんですけど、何とか個人投資家が、例えば、ESGインテグレーションのものを買ったら、例えばポイント制にして、ESGインテグレーションの投資商品を買ったら星が1個ついて、より特化型のものを買ったら星が3つついて、じゃあ、その星をいっぱい集めると何かポイントがもらえるとか、次の投資信託の手数料が安くなるとか、そういったインセンティブ、供給側ではなくて需要側の何かを働きかける仕組みみたいなのを考えたらどうかなと思います。
そこはやはり日本らしく、アニメなのか、推し活なのか、何かに絡ませてもいいと思いますし、すごく話題性もあると思いますし、あとはやはり体験型ということで、理念を説いても、説明しても、セミナーをしても、なかなかそこに来る方というのは意識の高い方ということであれば、ある程度そういったインセンティブの中に何か体験型の学び的なもの、要素を組み込んで、まさに新NISAとか、今まで投資したことない人が、税金が免除になるからやってみようという体験型の学びをまさにしている、この流れをうまくレバレッジできないかなと思ったところです。
【水口座長】
ありがとうございます。それでは、藤井さん。
【藤井メンバー】
ありがとうございます。まず個人と機関投資家については、私も分けるべきだと思います。事務局資料の9ページの欄外の注に、「公募投信で『ESG』を冠する商品は1%程度だが、投資に際してサステナビリティを考慮する戦略・商品はずっと多い」という記述がありますが、機関投資家や金融機関は、脱炭素取り組みやESG対応に対しては、例えばスチュワードシップ・コードであったり、あるいは様々な外部ステークホルダーに監督、監視されていますので、サステナビリティを考慮するという動きで、すでにかなり一貫していると思います。放っておけばいいという話ではないですし、フロントランナーと後でついてくる人の違いはありますけれども、そうした監視機能のようなものが既に具備されていますので、個人の議論と一緒にしてしまうと、恐らくフォーカスを見誤るのかなと思います。
では個人投資家について、今回の論点の、「結びついていない投資家が存在する要因」をどのように考えるかという点ですが、個人的な仮説ですけども、ひとつにはフォーカスするテーマが変化しているということではないかと思います。例えばこの4年間のこの会議においても、最初は金融機関のリスクやタクソノミーというような議論から、ファイナンスド・エミッションから、さらにはトランジション・ファイナンスだと議論してきたテーマが変化しています。それは欧米においてもそうですし、これにアジアが加わればさらにそうだということの中で、この4年間であってもこれだけ時のテーマが動いていて、かつ、テーマが動くスピードが他のテーマに比べて速いと、個人投資家にとっては何がサステナブル投資商品なのかが分かりにくいのではないかと思います。4年前にEVメーカー銘柄が入っているからといってESG投信を買った方は、後で、いやいや、EVをつくればいいESGメーカーというわけではないんだとなったときに、何がサステナブルファイナンス投資商品なのかということが分からなくなってしまうのではないかと思います。そこが恐らく「結びついていない投資家が存在する要因」の一つの要因ではないかと思います。ただ、そこから先は結論がなくて、じゃあ、5年後も引き続きサステナブルであるといえる軸が何かというのを持っているわけではないので、そこは難しさだとは思います。
あと、手触り感については、皆さんがおっしゃるところと全く同感ですが、手触り感を突き詰めていこうとすると、寄附であったり、あるいは何でしょう、この保険に入るとマングローブを1本植えますといったように、どなたかも御指摘されたように、なかなかサイズにならないということがあるのではないかと思います。150兆円、130兆円を目指す中で個人ベースの手触り感を議論するとサイズ感が合わないというところはあると思いますので、ここは分けて議論しないといけないのかなと思います。
最後に、では何を基準に商品を紹介していくかということについてですが、一方で、例えば先ほどのコメントの中で、個人向けグリーン債というと、そこは共通用語になっているわけですよね。あるいはICMAのトランジションボンドというのも共通用語になっていて、テーマが動いていても共通用語として生き残っているものというのがグリーンボンドであったり、サステナビリティ・リンク・ローンであったり、あるいはトランジションボンドになっていると思いますので、共通認識を持っていただけている商品については、それは使えるのではないかと思いました。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。では、二木さん、お願いします。
【二木メンバー】
これは議論するのが難しい議題だと思っていまして、投資家は同じことを考えている人ばかりではなくて、多様な考え方をしているということが前提になるんだと思うんです。東証に今上場しているETFは340銘柄ほどあって、そのうちESG関連として東証のホームページに出しているものが20銘柄ぐらいあります。その売買状況などを調べてみたんですけど、一日平均で数枚しかできないものもあるし、2万枚超えているようなものもあったりして、銘柄によって全然違う状況にあるということですが、何でこんなに違うのか、これは分かりません。分かりませんが、結局大ざっぱに見てみると、株価のグラフが上に向いているときの売買はやはりよくできているというような傾向にあります。それが全てではないかもしれませんが、基本的には投資なので、ESGの要素を考慮すると言っても、結局儲かっているものが買われているという状況にはあるのかなとは思います。
なので、サステナビリティの要素が考慮されることは当然あるとは思うんですけど、それが果たしてメインディッシュになるのかというところは疑問です。ETFを構成する銘柄が一定の基準でサステナブルな対応をしているかどうかということで、TOPIX構成銘柄の中から選んで指数が構成されていますが、そうはいってもサステナブルな投資をしようとしている資金と、その投資先の企業がやっているサステナブルな活動との距離は遠いんだと思うんですね。債券の方は、グリーンボンドのような直接的にお金を投資してこういう事業をやれるというような距離の近さというのがあると思うので、資料に「アセットクラス(株式・債券)」と書いてありますが、この両者は決定的に違うのかなというふうには思いました。
結局、やはり株式というのは本体の事業があって、そこで儲かっているかどうかというのが一つ大きな投資の要件、要素になっていると思います。今の時代ですから、どの企業さんもサステナブルな開示というのは当然やっているわけですから、それが付加されて、より資金を投入するきっかけにはなるんだろうと思うんですが、サステナビリティの要素がメインになることが本当にあるのかという疑問はやはり感じざるを得ないなとは思います。
【水口座長】
本質的な議論だと思いますし、そのとおりだと思います。鍋嶋さん、お願いします。
【鍋嶋メンバー】
「投資実践に結びついていない投資家が存在する」ということで、今皆さんおっしゃっていたように、やはり投資家をどう捉えるかが非常に重要なのかなと思います。個人と機関投資家はやはり分けて考えるべきだと思いますし、個人も非常に幅が広いというところで、資産がある高齢者で割と余裕があって投資経験も豊富な方たちと、いわゆるZ世代でサステナブルファイナンスに対しての共感はもしかすると得やすい人たち。でも、そこまで資金的に投資に回す余裕があるかどうか。でも、彼らが資産形成をしていくことは非常に大事なことであり、日本にとっても一つの社会課題だと思うので、やはり投資と考えたときには基本的には資産形成と結びついていると思います。社会貢献と考えて投資される方もいるのかもしれないですけれども、資産形成に結びつく投資にフォーカスしたほうがいいのではないかとも感じています。
では、資産形成をどう考えるかというと本当に世代、あるいは投資に対するリスクテイクをする、しないというところなので、若い世代は、特に投資そのものに対する教育も恐らく必要だろうと。サステナブルファイナンスということだけでなく、その基本的なところもまだまだ課題があるのかなとも感じています。
それから、機関投資家に関しても非常に多様だと思いますので、日本の機関投資家あるいは海外の機関投資家によっても違うと思いますし、彼らが大事だと思うこともそれぞれなのだと思いますけれども、サステナブルファイナンス自体の認知度はまだまだ低いのかなと思います。低いことに対して、機関投資家側もそれを理解するための人員とか、体制が不十分なところも実はあるのかなとも思います。
個人も多様ですし、機関投資家も結構多様だろうと思うので、個人と機関投資家を分けるというコンセンサスは今ほぼあると思いますが、この中でも比較的一つの答えではないのかなと感じています。
【水口座長】
そうですね。少し解像度を上げていかないと、ということですよね。
では、吉高さんにまずお話しいただいて、その後、岸上さん、林さんにいきたいと思います。吉高さん、お願いします。吉高さん、どうぞ。
【吉高メンバー】
すみません。どうもありがとうございます。まずは今回、このように立ち返って、かつ、意義についてはベースがあるので、要は大分、日本でサステナブルファイナンスのインフラが整ってきていて、日本ならではのとおっしゃいましたけども、今後日本でのサステナブルファイナンスがどうあるべきなのかということなのかと思います。私もこういうのをやり出したのは90年代からですけど、欧米は当時からサステナブルな投資、その当時はサステナブルファイナンスと言っていませんでしたけど、先ほど足達さんが言ったような、社会的責任投資の部分とそうではない部分というのがあって、リーマンショック以降、またここ最近の気候変動のリスクによって、急速に発展してきたというところがあります。一旦、日本においてインフラが整ってきたので、その上で、日本における投資の在り方とサステナビリティを考えるということで、私も今回の進め方は大変意義があると思っております。
したがいまして、日本のサステナブルファイナンスというのは何なのかと。日本経済や日本の将来全体を考えるというと大仰にはなりますけれども、そこに紐づいて考える必要があるのかなと思っています。欧米の社会的責任投資という考え方が源流にある投資の世界とそうでない日本の世界とでは、今後、市場担当者のベースをアップさせて働かせるには、日本なりの工夫が相当要るというふうに、私自身も足達さんと一緒で長年この世界にいる人間としては感じているところでございます。
皆さんがおっしゃったように、私もまず機関投資家と個人投資家は分けるべきですし、あとローンもです。地域金融が考えるのは地域のサステナビリティであり、例えばメガバンクおもなれば日本の産業全体との関係もあるでしょう。それから投資家であれば投資先の企業という話にはなると思うので、サステナブルの対象がそれぞれ違いますので、それぞれの目的、対象に合った形で考えていくことが必要かと思います。先ほど水口先生が解像度を上げると言ったところに大変同感するところであります。
私自身も幾つか投信をやっているんですけど、米国の投信の中では普通にESGの要素を説明しているところもあります。一方、インパクト投資でもパーフォマンスがよくなかったりもするので、ESGというラベリングをされている日本の公募投信が1%という数字についての確からしさは少し踏み込んでいただくのがいいのかなとは思っています。
投資の実態をもっと調査するというのはぜひ期待したいところですけども、先ほど鍋嶋さんがおっしゃったように、個人投資家には様々なレイヤーがあります。例えば証券会社でもウェルスマネジメントといって富裕層に対しての営業と、個人投資家の営業は全然違いますし、営業別に考えるのが重要ですね。個人投資家も単に一括りせずに、どんなチャネルで投資しているのかとか、対面なのか、銀行を通してもやる場合もありますし、証券会社もありますし、ネット証券もありますので、こういったアクセスをどこに持っているかということで、そのチャネルごとに少し解像度を上げてみてもいい。例えば販売をしている方々がサステナブルファイナンスについてどうアプローチしているのかとか、そういったところを見てみないと、一概に認識度が低いということだけにもならないような気もしています。特にセールス担当者の場合は、サステナブル商品販売そのものについて実際にきちっと対応されているかという実態調査を証券業界のほうでされているかどうか分からないんですけども、やはりこういったチャネルの部分にもフォーカスするというのもあるのかなと思っております。
以上です。よろしくお願いします。
【水口座長】
ありがとうございました。それでは、岸上さん、林さんの順番で。岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。先ほどのコメントに付け足しですけれども、先ほど事務局の説明で、今年度の最終的なところでこれまで行ってきた、例えばESG評価機関の行動規範の実態の報告が想定されるのかと思います。先ほどの鳥海さんの御発言のように、機関投資家の当事者だけではなく、銀行だけでもなく、周りの全ての生態系の役割がこのサステナブルファイナンスにおいて重要だと思うので、各プレーヤーに対してサステナブルファイナンスの意義を整理した上で、それに対して、各プレーヤーがどういった役割を実際行っているかということで、例えば評価機関も含めてですけれども、それと今年度全体のテーマに紐づける形で現状を報告いただけるとよいかなと思いました。リソース上、最終回といった形にもなる気もしますが、最終回で報告いただいてとなると、何も連携させる機会がないかなというのを感じたので、可能な範囲で、例えばサステナブルファイナンスの意義がある程度まとまった時点で、それらのプレーヤーと共有した上で、最終報告につなげるなどの工夫があってもよいかなと思いました。
あともう1点ですけれども、個人と機関投資家を分けると私も最初に申し上げましたが、一方で、例えば年金を通じて間接的に投資をしているという意識の上で、個人投資家、受給者に対して、機関投資家の役割と立場でサステナブルファイナンスに対する個人投資家の理解を促進することを促すような仕組みづくりといったところは、こちらで議論してもよいのかなと思いました。
以上です。
【水口座長】
そうですね。個人の調査というときに、自分自身で投資信託を買うという意味での個人と、年金とか保険会社の最終受益者としての立場としての調査というのはありますよね。それは結構やられているみたいでして、そういう調査も必要かなと思っています。
では、林さん、お願いします。
【林メンバー】
株の購入に際してESGの要素は、投資家はあまり考慮していないというのが現状だと聞いております。よくよく考えてみれば、エネルギー価格が今後どうなるかとか、カーボンプライシングが導入されたらどうなるかと考えると、現在の四半期ごとの決算では見えてこないものが多くあるはずで、それがTCFDレポートだったり、ISSBで非財務情報も含めて、いろいろな開示を一生懸命やっていても経済価値に反映されないというのが根本的な課題であると思っています。将来の日本の事業会社なり、経済界の重厚長大産業の潜在的な課題が十分に理解されているのかというのが私が考えているところです。
株価そのものに今の課題や機会がどうやったら反映されるのか、本来はそのために開示を一生懸命やりましょうということになっていると思いますので、少なくとも機関投資家については理解を深めていただくことが望まれると思っています。
以上です。
【水口座長】
おっしゃるとおりですよね。ISSBでああいう開示を始めるということは、本来はそこに投資家の情報ニーズがあるからということですけども、実は読む側もそのリテラシーがないと情報をきちんと理解できないということだろうと思いますし、そういう意味で言うと、まずは今おっしゃられたようなエネルギー価格の問題ですとか、カーボンプライシングですとか、そういうものが今後、中長期的に影響するんですよという、そこをきちんと理解してもらうというか、伝えていくことが必要なのかもしれませんね。投資家教育ですからね。
【林メンバー】
リターンと一応リスクが開示されているはずなので。
【水口座長】
そうなんですよね。では、井口さん。
【井口メンバー】
今、企業サイドの意見が一方的に言われていますので、一応言わせていただきますと、そのためには、やはり、より充実した開示が必要ということになると思います。今後、SSBJ基準が出てくるので、さらに株価にも反映される部分もあるかなとは思っておりますが、すでに、PBRなどを見ると反映されている部分もあると思います。もっと反映するには、TCFDと言っても基本的には任意なので、十分に開示されていない部分もあるというのが投資家の認識ですので、これをもっと開示していただくということが重要になると思います。ただ、投資家サイドも、林さん御指摘のようにいかに読み解くかということが、今後、求められると思います。
午前中のスチュワードシップ・コードの会議でも、企業が開示するサステナビリティ関連財務情報をいかに読み解いていくかは非常に重要なことですということを申し上げました。実際、皆さんもぜひ無料なので見ていただきたいんですけど、日本証券アナリスト業界では、ISSBの小森理事にも手伝っていただいて、6・7回ぐらいやっているんですけど、セクターアナリストが読み解く能力のお手伝いができるようなセミナーをやっています。林さんがおっしゃったように、業績モデルをつくっているアナリストが読み解くことによって初めてそれを株価に入れ込むということができますので、そういうことを今アナリスト協会でもISSB基準セミナーシリーズでやっているということになります。
【水口座長】
投資家といっても、井口さんみたいな投資家はもちろん読んでいるのは当たり前ですけど、逆に、二木さんがおっしゃった個人投資家が、要するに上がるものは売れるという世界の個人投資家がどういう評価をするのかなというところがポイントなのかなと思っていました。セクターアナリストがきちっと分析すると、個人投資家に反映するのかもしれませんけど。
【井口メンバー】
そうですね。しかし、今、皆さんがおっしゃっているようにそれぞれ課題があるのですが、一般投資家と機関投資家では、議論のポイントが結構違うと思っています。ワーキングの資料などを見させていただくと一般投資家の方の理解がより進んでいないと思いましたので、まずは、そこについてどういう課題があってということを分けて考える必要があると思いました。
【水口座長】
せっかく開示していくときに、やはり個人投資家がそこをきちんと評価できるような、そういうものが必要じゃないかなと。
【井口メンバー】
個人投資家でも私の理解では幅があって、皆さんおっしゃるように、すごく分かっていらっしゃる方もいると思います。一方、あまりまだ理解が進んでいない方にそこまで求めるのかなというのは思っています。そういう方には、企業の分析というよりも、手触り感のある商品を御提供するといった考え方をするほうが現実的じゃないかなと思っております。
【水口座長】
なるほど。ありがとうございます。他にいかがでしょうか。まだあと10分ぐらい残っているかな。お願いします。
【二木メンバー】
補足ですが、先ほど東証に上場しているESG関連のETFは20銘柄と申し上げましたが、これは何も東証がESG関連のETFはこれですと定義しているわけではなくて、金融庁さんがお出しになっているさっきの監督指針を踏まえて、ESG関連に当てはまるのではないかとアセットマネジャー側が判断したものをESG関連として載せましょうというぐらいの話なんですね。なので、本当にこれがESG関連のETFなのか、あるいはこれしかないのかというのは、必ずしも正解がないということになるんだと思うんですね。
この監督指針には、ESGと書いてあるんですが、ESGの定義が見受けられないので、投資家サイドにもESGって何だろうなと思う部分があるのではないかなと思います。
【水口座長】
定義次第ということはありますし、でも、藤井さんがおっしゃったように、このテーマ自体がすごくムービングしていく中で定義を作ろうとすると、抽象度の高い定義しかつくれないので、抽象度の高い定義だとおっしゃるように何が入って何が入らないのかは実はよく分からないという、そういうジレンマはありますよね。そして、特定のESG投資商品が広がるということが大事なのか、そうではなくて、金融市場全体にサステナビリティの要素がきちんと組み込まれていくと、そういうことが大事なのかというふうにも考えるわけですが、そういう理想論ばかり言っていても、それはなかなか形にならないので難しいですよねということかなと思っております。
生保協の中村さん、何かコメントいただけますか。
【中村メンバー】
発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。少し今のお話を聞いていて、一般論になるかもしれないんですけど、やはりこういった投資商品の在り方が浸透していく上で必要なのは、やはりサステナブルファイナンスを通じて社会的インパクトと長期的な経済的価値が両立するということがコンセンサスに至っていないというのが総論的にはやはり根本的な原因かなと思っています。
私ども生命保険業界は時間軸が比較的長くて、長期の投資家という特性があるからかもしれないんですけど、このサステナブルファイナンスを通じて、ESGの課題を解決することで社会的なインパクトが生まれて、それが投融資先のプレゼンス向上、業績の改善に結びつくという好循環というのをある程度認識できている業界だと思うんですけど、こういったものをさらに広げていくことが重要なのかなと思っています。
世の中全体も、ここ数年でやっていて感じるんですけど、投資の実行から実際にその投資がどういうインパクトを与えたかを評価する時代になっているというのは、御高承のとおりでございますので、我々機関投資家としても、そういったインパクトみたいなものを積極的に開示していくということの重要性を特に昨今感じている次第でございます。
そういう意味では、投資商品ごとにどのような課題解決に貢献する商品であるかということを説明するとともに、その結果、実際にどういうインパクトがあったかということを具体的に示していくということを世の中全体でやっていくことが、地道ですけど、非常に重要なのかなと、今感じている次第でございます。
次回以降、機会があれば、私どもの業界がどういったインパクトの開示をしているかということも皆さんに見ていただく機会を設けられればと思っていますので、またそういった中で御議論をいただければと思います。
ありがとうございました。以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。やはり具体的にインパクトを見せていくというのは大事ですよね。また機会があればぜひ御報告もいただければと思います。
だんだん時間も迫ってきましたが、私が今回この議論を、こういう論点で議論するんですよというお話をいただきながら考えたことは、この種の議論は、このメンバーの中ではいろいろ議論ができるし、私たちの中では大分コンセンサスもできているけれども、これをこの中で幾ら議論していてもしようがなくて、じゃあ、これを世の中の人に伝えていかないことには広がらない。実はそれが広がっていないから、サステナブルファイナンスはいつまでたっても広がりませんと、こういう話ですけども、どうやったら世の中に伝わるのか。そのために一体何をすべきなのか。何回か有識者会議として、年に1回の報告書だけではない、何らかのメッセージを出すとか、何かしたほうがいいんじゃないですかという議論は時々出ては消えていたりしているんですけども。
やはりこの議論を外に開いていく必要があるのだろうなと思っているんですけども。そういうことを言うと、また結局、いろいろ考えるのは事務局の人が大変ですけど、でも、この外側ですよね。虎ノ門のビルの外側にいる人たちに伝える方法を考える。今、生保協さんにいただいたように、あるいは、全銀協さんもされているように、いろいろな業界団体でも、日本証券業協会でもいろいろやっていただいているし、そういうこともあるんだろうなと思いつつ、CFA協会でもいろいろやっていただいていますし、そういう各業界が動いていただければそれでよいのか。私たちとして何かするほうがいいのか。何かそういうこともアイデアをいただけたらと思います。岸上さん。
【岸上メンバー】
この会でやることかどうかは一旦置いておいてですが、サステナブル投資に関するジャーナリストの教育ということを、例えば英国では行ったりしています。各協会や業界団体の情報にアクセスする方は、特定の方々になると思うので、個人投資家となるとなかなかそこへのアクセスがないと考えると、例えば個人投資家でプロに近い方ですと、金融系のジャーナルですとか確認されると思いますし、そうでない、もっと、初めての投資家となると、普通のマスメディアにもなると思うんですけれども、そういったジャーナリズムの世界でサステナブル投資、短期的な投資の目線ではない長期目線でのファイナンスへの理解を高めていただいて、その声を拡散していただくというのは非常に大きな役割ではないかなと思いました。
【水口座長】
ジャーナリズムの教育ですね。
【岸上メンバー】
はい。
【水口座長】
『〇〇マネー』のような雑誌はよく送られてくるんですけど、開いてみると、井口さんが出ているみたいなことはよくあって、意外に専門的な雑誌では時々取り上げられているという感じはするんですけど、確かに、本当にプロっぽい人が読むものからもうちょっと広げてもいいですよね。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょう。藤井さん、お願いします。
【藤井メンバー】
外部の方も含めた勉強会を毎月やっているんですけども、ある回でサステナビリティの、かつ、それこそトランジション・ファイナンスをテーマにしたときに、この分野に関わっている方々は「そうそう」といった反応だった一方で、それ以外の分野の方からすると、「えっ、脱炭素って何%削減じゃなかったの?」というところから、「そもそもトランジションって何?」といった感じになりました。先ほどテーマが動いていると申し上げましたけども、関わっている方は変化するテーマをフォローして、それに対応しているんですが、その外側の方々からすると、何%削減といった議論から、なぜ今このトピックに議論が移っているのか、なぜこれが重要になっているのかが分からないという状況で、そのときの勉強会の総括も、関わっている方とそうではない方のギャップが広がっていますね、ということになりました。そう考えると例えば今、こういう動きになっていますというような情宣が要るのではないかと思います。例えば雑誌とかへの投稿とかで、今どういう議論が流れてきていて、こうなっていますと。そうした発信、必ずしも深くではなく、流れを追えるような簡単なレポートだったり、投稿だったりというのが要るのかなと思いました。
【水口座長】
ありがとうございます。そうですね。生物多様性とかネイチャーポジティブとか言い出すと、ますますよく分からないみたいな感じになりますけども。ありがとうございました。そうですよね。いろいろな人たちがいろいろな動きをしていて、藤井さんに御尽力いただいて、GFANZのジャパンチャプターも大変活発で、そこでもいろいろ議論していただいていますし、環境省では今度、ESG金融ハイレベルパネルというのをまたやります。そこでもいろいろ議論しているんですけど、こうやっていろいろな人たちが議論しているようでいながら、外側になかなか広がっていかないのはなぜだろうかと思いますね。
しかし、こういう議論を、今日、大分御議論いただきましたので、事務局の皆様にこれを少し消化していただいて、次回の議論につなげていければと思うんですけども、最後に、ここで池田さんにまとめの言葉をいただくのがいいのかなと思って。満を持して池田さんにお願いできればと思います。
【池田総合政策課長】
ありがとうございます。まとめる能力はないというか、ちょっと時間が要るなという感じはしているので、まとめることは諦めようと思うんですけども。いろいろ御指摘いただいた話と絡めて、何となく私が考えていることを申し上げると、一つは、今週の初めのほうに、経産省さんがやったGGXファイナンスサミットというのがあって、そのときに、いろいろ差し障るので英語で話したんですけど、そのときに私が申し上げたのは、サステナブルファイナンスというのは、ある意味、これまではマーケット・フォー・フールズだったよねみたいな話をさせていただいて、要するに、グリーンとかすごく定義で、それはすごく分かりやすいんですけれども。
今いろいろな皆さんからお話をいただいた中での話なのですけど、結局、普通の金融って、そもそもグリーンを追求していたらリスク対応がうまくいくということでもないし、一定のグリーンを誰かが定義したもので、それを信じてやるということ自体、本当に金融として正しいのかみたいな話もあるし、実は普通の金融にサステナブルファイナンスが戻っていくというか、それはまさに、今、テーマがいろいろ動いているという話とか、あるいは、そのテーマに沿って追求していったときに、本当に当初想定していたようなリターンが生まれるのかとか、何かそういう曲がり角というか、ある種、ユーフォリア的にサステナブルファイナンスをバーッとやった後で、改めて普通の金融にもう1回立ち返って整理し直さなきゃいけないみたいな、そんなフェーズなのかなという気はしているということと、もう一つは、これは金融庁が資産運用立国とかそういう流れの中で推進している、そのサステナブルファイナンス、サステナブル投資ではなくて、一般的に投資というものを考えてみましょうとかですね。
その流れの中で、長期、積立、分散というストーリーでやって、それをすることによって、ある種、物すごく高いリスクを取るわけでもなく、長い期間やっていくと、一定の投資リターンというのが得られる可能性が高いという話をしているわけですけれども、一方で、いろいろ突き詰めて考えると、では、過去30年とか、50年とか、なぜそういう投資リターンが生まれてきたかということも、実は根本的には考えなきゃいけない課題だなと思って。あるいは根本的には経済が成長してきたからだということなので。それは根っこは。
【水口座長】
そうですよね。
【池田総合政策課長】
今後の30年だったり、50年を考えて、同じように成長するか問題は、実はあまり金融庁の職員がそういうことを言っちゃいけないんですが、本当はあるので。
【水口座長】
そうですね。
【池田総合政策課長】
その成長を確実にするために、投資として何ができるかという問題が多分あるんだと思うんですよね。それってもしかしたらサステナブル投資なのかもしれないという解は、一つは、それは仮説があって、本当に正しいかどうか分からないんですけれども、あるのかなということを最近たまに考えていますということで、一応まとめということです。
【水口座長】
まさにここから議論が始まるというようなお話ですね。ありがとうございます。時間なので今日はここまでと思っていますけども、今、池田さんがおっしゃったとおりで、長期、分散、積立でリターンが上がるのは経済が成長するからで、それに対するリスクを逆側から言っているのがシステムレベルのリスクという話だと思います。システムレベルのリスクを抑えるために、サステナブルファイナンスだと言っていいますが、今のお話は、それを逆側から言うと、多分そういう言い方になるということなんだろうなと思いながらうかがっていました。でも、その理解は、ここではみんなが理解できるけども、それを一般の人たちが本当に理解して、そこに投資するようになるかどうか。でも、そこに投資するようにならないと、結局、おっしゃるような意味では、経済はそもそも成長しなくなっちゃうわけですよね。それはもしかしたら金融業界全員が、これからうまくいかないということにもなるわけですから、皆さんの共通の利益のためにも、何とかそこに投資を向けるということかなと思いました。
というわけで、今日は時間ですので、ここから議論したいところですが、一旦ここで終わらせていただきまして、次回に持ち越したいと思います。
というわけで、本日は以上にしたいと思います。最後に事務局からお願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
次回の日程ですけども、もう皆さんの御日程をいただいておりまして、次回は12月12日木曜日の10時からとなりますので、またよろしくお願いいたします。
【水口座長】
では、本日は以上にしたいと思います。お疲れさまでした。ありがとうございました。
―― 了 ――
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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2918、2770、2893)