わが国の非伝統的金融政策と為替レート変動
English
2024年12月20日
一方井宏汰*1
川本卓司*2
桜健一*3
要旨
本稿では、過去25年間に日本銀行が実施してきた各種の非伝統的金融緩和政策を中心に、名目為替レート(ドル/円レート)が金融政策にどのように反応してきたか実証的に考察する。具体的には、Inoue and Rossi (2019) の提案した手法を参考に、政策変更前後におけるイールドカーブ全体と為替レートの変化から、わが国の「金融政策ショック」を識別し、それらに対する為替レートの動学的な反応を推計する。結果をみると、(1)金融緩和ショックを受けて為替レートは円安方向に反応する場面が多くみられたものの、その際のチャネルとしては、将来の為替レートに関する予想の変化など、内外金利差以外の要因の方が定量的に重要であったこと、(2)非伝統的政策に対する為替レートの反応は、その時々の国際金融市場の動向や投資家の群集行動によって大きく変化し得るという意味で、状態依存的(state dependent)であったこと、が示唆される。
- JEL 分類番号
- C32, E52, F31
- キーワード
- 非伝統的金融政策、為替レート、Functional Local Projection
本稿の執筆に当たっては、中島上智氏(一橋大学)より推計手法の面で有益なアドバイスを頂いたほか、有賀涼氏、大西芙蓉子氏、國兼圭氏から支援を得た。ここに記して感謝したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行金融市場局 E-mail : kouta.ikkatai@boj.or.jp
- *2日本銀行金融市場局(現・国際局) E-mail : takuji.kawamoto@boj.or.jp
- *3日本銀行金融市場局 E-mail : kenichi.sakura@boj.or.jp
日本銀行から
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