法務大臣閣議後記者会見の概要
令和6年12月20日(金)
今朝の閣議において、法務省請議案件として、施策が1件、主意書に対する答弁書が3件、政令が1件閣議決定されました。
続いて、私から5件、御報告があります。
まず、本日閣議決定されました令和6年奥能登豪雨についての総合法律支援法の規定による指定等に関する政令は、令和6年能登半島地震により激甚な被害を受けた奥能登地域において、更に豪雨災害が発生したことに鑑み、制定したものです。
これにより、日本司法支援センターでは、災害が発生した本年9月20日に、災害救助法の適用区域である奥能登地域に住所等を有していた方を対象に、令和7年9月19日までの間、資力を問わない無料法律相談を実施します。
様々な法的問題を抱えておられる被災者の方々の生活再建の一助となることを願っています。
2件目ですが、先ほど、全閣僚を構成員とする「防災立国推進閣僚会議」に出席してまいりました。
私からは、法務省における令和7年度の防災対策強化の取組として、矯正施設・官署施設等の耐震化及び老朽化対策、長期間相続登記等がされていない土地の解消事業や法務局地図作成事業等について、御報告しました。
引き続き、関係機関と連携しながら、防災対策強化のための取組を着実に実施してまいります。
3件目は、再犯防止推進白書と犯罪白書についてです。
本日、「令和6年版再犯防止推進白書」を閣議決定し、「令和6年版犯罪白書」を閣議において配布しました。
まず、令和6年版再犯防止推進白書は、令和5年に策定した「第二次再犯防止推進計画」に掲げた施策に関し、政府が講じた取組や、それらの成果に関する指標の最新データ等を掲載しています。
刑務所出所者が、出所後2年以内に再び刑務所に入る割合は着実に低下しており、最新の令和4年出所者では13パーセントにまで低下しました。
今回の特集では、犯罪を繰り返した末に地域における支援を受け、社会復帰を果たした3名の当事者とその支援者にインタビューを行い、その結果を基に、犯罪からの離脱・立ち直りの要因の分析を試みています。
次に、犯罪白書ですが、最近の犯罪情勢を見ると、令和5年は、刑法犯の認知件数が前年に引き続き増加し、新型コロナウイルス感染拡大前の令和元年の水準に迫るものとなりました。
個別の犯罪類型で見ても、児童虐待やサイバー犯罪、特殊詐欺などの検挙件数が依然として増加傾向にある上、若年層を中心に大麻取締法違反の検挙人数が増加しているなど、特に留意が必要な犯罪もあります。
今回の特集では、「女性犯罪者の実態と処遇」を取り上げています。
ここでは、受刑者を対象とした特別調査の結果等を分析し、女性の犯罪者の傾向・特徴や、その抱える困難を明らかにし、再犯防止及び円滑な社会復帰のための処遇・支援の在り方について検討しています。
法務省としては、犯罪に対し、厳正・的確に対処するとともに、これまでの取組の成果や課題を踏まえ、「第二次再犯防止推進計画」に掲げる施策を着実に実施してまいります。
国民の皆様方におかれましては、近時の犯罪情勢や再犯防止施策の現状についての理解を深める資料として、白書を活用いただければ幸いです。
4件目ですが、明日12月21日土曜日、法務省地下大会議室において、「これからの矯正行政のビジョンを描くワークショップ」を開催します。
これは、本年9月に府中刑務所で開催しました国民の皆様と矯正施設の職員が意見交換を行ったワークショップに引き続いて実施するものです。
矯正局では、拘禁刑にふさわしい処遇の実現に向けて、受刑者の特性に応じた作業や指導の充実などに取り組んでおり、こうした取組に、是非とも国民の皆様にお力を頂きたいと考えています。
明日のワークショップでは、国民の皆様と矯正施設の職員が、これからの矯正行政について共に考え、来年1月頃に矯正局で策定予定の「矯正行政のミッション・ビジョン・バリュー」に反映したいと考えています。
国民の皆様と自由闊達な意見交換が行われ、多様な声の中から「これからの矯正のビジョン」が描かれることを期待しています。
5件目は、矯正施設における被害者等の心情等の聴取・伝達制度の運用状況等に関する公表についてです。
本制度は、昨年(令和5年)12月1日の運用開始から1年が経過し、本日、その運用状況等について公表することとしました。
この1年間における、全国の矯正施設での本制度の利用件数は、受理が136件、聴取が122件、伝達が113件です。
被害者の方々は、様々な思いを抱きながら本制度を御利用いただいたものと承知しており、1件1件に重みを感じているところです。
本制度を利用する被害者の方々の思いを生かせるよう、各施設において様々な努力を続けていく必要があると考えています。
また、被害者の方が、制度を知らなかったために利用できなかったという事態が生じないよう、適切な広報にも努めてまいります。
これまでに積み重ねられた事例の内容や、そこから得られた知見等を生かしながら、引き続き適正な運用に努めてまいります。
令和6年版犯罪白書に関する質疑について
【記者】
冒頭でも御説明いただいた犯罪白書について伺います。
女性による犯罪を取り上げた特集では、心身の健康回復や加齢に伴う不安に対応した支援の必要性を強調する内容となりました。女性受刑者は男性に比べて刑期が短く、早期に社会復帰する傾向があることを踏まえ、とりわけ社会内での処遇の充実について、どのように取り組もうとお考えなのかお聞かせください。
【大臣】
今御指摘がありました、社会内での処遇・支援については、保護観察所において、薬物依存を含む精神疾患や被害経験等による生きづらさなどの個々に抱える困難に応じ、保護観察、更生緊急保護等を行い、刑事手続終了後を含め、「息の長い」社会復帰支援を行っています。
具体的には、女性受刑者が刑事施設から釈放された後、地域において必要な支援が受けられるようにすることが大事であり、保護観察所においては、「更生保護に関する地域援助」等の取組として、地域支援ネットワークの構築を図っています。
また、刑務所出所者等が生活上の不安や悩みなどについて相談し、必要な支援を受けられるよう、保護観察所では、犯罪・非行の地域相談窓口、これは「りすたぽ」という通称ですけれども、これを設けるなどして、地域で生活する出所者やその関係者からの相談に応じ、関係機関・団体と連携した支援の確保に取り組んでいるところです。
引き続き、女性犯罪者を含む犯罪者の再犯防止に向けて、女性の抱える様々な困難に応じた支援も地域において受けられるよう、保護観察所によるこうした取組を推進してまいりたいと思っています。
再審制度に関する質疑について
【記者】
本日一部報道でですね、再審制度の在り方について、来春にも法制審議会に諮問し、見直しを検討する方針を法務省が固めたとの報道がされています。
この事実関係と、法改正に対するお考えなどを教えてください。
【大臣】
今御指摘の報道については承知しています。
再審制度の在り方については、現在法務省で開催している「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」において、まさに協議が行われているところです。
御指摘の報道のような方針を決めた事実はありません。
私としては、まずはこの協議会において、充実した議論を行っていただくことが大事であろうと考えています。
【記者】
法制審に諮問することも選択肢として今検討されているとか、なんかそういった状況としては、いかがでしょうか。
【大臣】
もちろん、いろいろな議論を踏まえて、そうしたことも当然排除はされませんけれども、現時点で方針を決めたということではありません。
(以上)