関税・外国為替等審議会 第59回外国為替等分科会議事録
関税・外国為替等審議会
第59回外国為替等分科会議事録
令和6年11月8日(金)
財務省 国際局
於 財務省第3特別会議室
(本庁舎4階)
1.開会
2.最近の国際金融情勢について
3.閉会
出席者 |
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委員 |
五十嵐チカ
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財務省 |
土谷国際局次長
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伊藤恵子
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渡部国際局次長
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植田健一
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緒方国際局審議官
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片山銘人
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藤井副財務官
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亀坂安紀子
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渡邉副財務官
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河野真理子
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陣田国際局総務課長
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神作裕之
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西方国際局調査課長
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木村旬
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池田国際機構課長
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杉山晶子
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鳥羽地域協力調整室長
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根本直子
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石田国際調整室長
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原田喜美枝
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木原開発政策課長
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渡井理佳子
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鳩間大臣官房参事官
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臨時委員 |
佐藤清隆
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津田開発機関課長
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左三川郁子
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土生外国為替室長
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澤田康幸
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恵﨑投資企画審査室長
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清水順子
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奥資金移転対策室長
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専門委員 |
伊藤亜聖
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玉木林太郎
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林信光
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午前10時00分開会
○神作分科会長おはようございます。ただいまより第59回外国為替等分科会を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多用のところ御出席あるいはオンラインで御参加いただき、大変ありがとうございます。本日、オンラインでの御参加を含め大勢の委員の皆様に御参加いただいております。
冒頭、新体制になって初めての分科会ということでございますので、土谷局長から事務局の参加者について御紹介いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○土谷局長分科会長、ありがとうございます。
7月31日に国際局長に就任いたしました土谷と申します。委員の皆様におかれましては、この外為審議会の場で真摯な御審議をいただいていると思っておりまして、引き続きお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
今日の開催に至ったわけですが、私自身の着任が7月末と例年のタイミングで言うと少し遅くなったこともございます。あと、我々、国際金融の世界におきましては、IMF・世銀総会が秋にございますけれども、これが最大のイベントでございます。これが例年と比べて10月下旬と少し遅かったということで、この時期の開催になってしまったこと、この点、御理解いただければと思います。
本日は、加藤新財務大臣にも御出席いただいた一連の会合について御報告させていただきますが、実は今週、その後の大きな、国際金融にも影響を及ぼす動きとしましてアメリカの大統領選挙、様々なことが国際情勢に起きておりますので、今後どうなるのかということに委員の御関心もあろうかと思いますが、まず、先々週の時点でこういう議論をしているということについて御報告させていただければと思います。
冒頭、会長からお話がございましたとおり、こちら側に座っておるメンバーで今事務年度の執務を行ってまいりたいと思いますので、簡単にそれぞれの担当とともに私のほうから御紹介させていただきたいと思います。
まず、私の左側におりますのが渡部次長でございまして、アジアと途上国のバイの支援を担当してもらっております。
さらに左側、緒方審議官になります。彼のほうにはG20、G7、IMFを担当してもらっておりまして、そういう意味では今日の報告の主な内容は彼が担当している部分ということになります。
藤井副財務官がさらに左側にいますが、彼は世銀等のMDBsと開発政策全般に携わってもらっておりまして、彼もこの一連の会合の主たるメンバーになります。
渡邉副財務官が一番左でございますけれども、彼は環境、気候変動あるいは外為の運用、この辺りを担当していただいております。
本日は欠席しておりますが、梶川審議官、彼にはFATFですとか対内直接投資の分野を担当してもらっているところです。
最後に、局内の総取りまとめとして、左側にいます陣田総務課長でございます。
右側に課長陣が座っておりますが、この後の報告で彼らのほうから話すことになりますので紹介は割愛させていただきまして、この体制で今事務年度は臨んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○神作分科会長どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、具体的な留意点などにつきまして事務局より御説明をお願いいたします。
○西方調査課長調査課長の西方でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今日の会議の事務的な点を私のほうから簡単に御説明いたします。
御覧のとおり、ハイブリッド形式ということで、オンラインと対面で御参加いただいております。ありがとうございます。会議室で対面で御参加の皆様におかれましては、オンラインで御参加の皆様にも音声が明瞭に伝わりますよう、できるだけマイクに近づけて御発言いただきますようお願いします。それから、オンラインで御参加の皆様におかれましては、事前にお伝えしておりますとおり、御発言時以外はミュートにしていただき、万が一、Webexがつながらないという問題が生じましたら電話会議システムのほうでお願いいたします。
以上、委員の皆様には御不便をおかけしますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
○神作分科会長御説明、どうもありがとうございました。
それでは、本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は最近の国際金融情勢についてでございます。まず、事務局より御説明を頂いた後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。それでは、池田国際機構課長、御説明をどうぞよろしくお願いいたします。
○池田国際機構課長ありがとうございます。国際機構課長の池田と申します。G7、IMF、G20などを担当しております。
私からは、お手元にある資料の2ページから、IMFの世界経済見通し及びG20、G7での議論の概要について御紹介いたします。
まず、IMFの世界経済見通し、こちらは総会に先立ち公表されたものでございます。一言でメッセージを申し上げますと、様々なショックがあったけれども、世界経済は全体として安定している。しかし、さえない、ばらつきが多い、それからリスクは下方に傾いているということかと思います。具体的な数字を見ていきますと、今年、来年とそれぞれ3.2%ということで、3か月前の見通しからほとんど変更なし。他方でばらつきというところを見ていきますと、米国は調子がいい。他方で欧州の大国、特にドイツでございますけれども、成長鈍化があって、これらがプラス・マイナス相殺をしている状況でございます。新興国について見ても、アジアは好調で、こちらはグローバルな成長の6割ぐらいに貢献しているということでございます。一方で、輸送の混乱ですとか社会不安、紛争、異常気象などによって、中東、中央アジア、サブサハラで非常に成長が鈍っていることが挙げられています。
各国の見通しとその理由は、こちらの下に書かせていただいたとおりでございますけれども、1つ、中国につきましては、今年4.8%、来年4.5%ということでございまして、7月段階では5%を今年見込んでいたところ、0.2%ポイントほど見通しを引き下げている状況であります。中身としては、軟調な不動産部門、それに伴う低水準の消費者態度は継続する一方で、個人消費は比較的予想よりも強かったということでございます。そして、今、全人代が行われていて、今日何か発表されるような期待もあるようですけれども、そういったことはこのWEOには織り込まれておりません。今後に織り込まれていく要素だと思います。
続きまして、3ページに移っていただきます。こちらについてはリスク、上方、下方のリスク、それぞれ書かれていますけれども、一見して下方リスクのほうが多いということです。7月の段階では、リスクは上方、下方にバランスしているということだったのですけれども、今回は下方に傾いている。そして、何といっても不確実性が極めて高いということで、こちらが公表された10月20日前後からこの10日間で見ても様々な動きがありましたので、引き続き政策面、それから様々な地政学的な情勢といった部分での不確実性が高いということだと思います。
具体的に下方リスクとしてIMFから挙げられている7点を見ていきますと、これまで金融引締めをやってきたものが、今多くの主要国で緩和の局面に入っているわけですけれども、これまでの引締めがこれから効いてくるかもしれないという要素が1つ。それが消費・投資を減速させるのではないか。もう1つは予想以上に長引くインフレ。これによって、金融政策、今は緩和局面ですけれども、これが少し足踏みあるいは逆方向に行く可能性もある。それに伴って様々な市場リスクの評価の変化が生まれ得るわけですけれども、例えば新興国の資金調達の悪化といったものがリスクである。
それから、中国の不動産部門の予想以上の悪化ももちろんリスクとして挙げられています。これによって、いわゆるデフレの輸出みたいな形で新興国、先進国双方に負のスピルオーバーをもたらし得る。そして、もちろん地政学的な緊張あるいは大災害による一次産品価格の上昇、それから保護主義的な政策の強まり、そして暴動・デモと。例えば、バングラデシュで8月上旬に政変がありましたけれども、これに伴ってバングラデシュの2025年の成長見通しは2%ポイントも引き下げられているということで、ほかの国でももしこういうことがあればまた成長見通しに大きな修正があり得るだろう。他方で上方リスクに関しては、しっかりとした公共投資、あるいは民間投資を呼び込むような公共投資がなされる、あるいは構造改革が実行される、こういったことが挙げられています。必要な政策対応というのはこちらに書かせていただいたとおりでございます。
以上でIMFの経済見通しの概要を御紹介いたしました。
4ページは、それぞれの国について、2023、24、25年の見通しと今年4月、7月段階からの差についてマトリックス形式でまとめたものでございますので、割愛させていただきます。
6ページに移ります。G20財務大臣・中央銀行総裁会議でございます。加藤新大臣の下で我々は臨みました。こちらに関しましてはブラジル議長下で最後となる今年4回目の会合でございます。12月から南アフリカに引き継がれます。主立った改革は、後ほど詳細に御説明いたしますMDBsの改革、金融セクター、そして今年はG20の財務トラックが発足して25周年です。これはアジア通貨危機を契機に1999年にベルリンで第1回があったわけですけれども、それから数えると25周年ということで、これを振り返りながら、G20財務トラックの意義はどんなところにあるのだろうか。世界経済はこれからどんなふうになっていくのだろうかということについて幅広い議論が行われたということでございます。会議の成果としては共同声明の採択に至りました。もちろん地政学的な文言に関してはなかなか合意が難しゅうございますので、こちらについては、これまで同様、別紙の議長声明と、コンセンサスは反映しない議長声明ということで、シェルパ、すなわち首脳の代理ですね。外務省のほうで議論を続けましょうという形になっています。
共同声明のポイントにつきましては、世界経済の見通しは先ほど御紹介したIMFの見通しとほぼアラインするものでございます。
MDBsの改革については、後ほど詳しく御紹介させていただきます。
債務については、1つランドマークになるような成果物を出すことができました。それがポツの2つ目の「共通枠組下の事例から得られた教訓に関するG20ノート」というものでございます。G20で、コロナ下で様々な債務問題に苦しんでいる低所得国に対して、先進国、それから新興国の債権国が足並みをそろえて取り組む枠組みをつくって、これまでチャド、ザンビア、エチオピア、ガーナ、こういった国々に対する債務問題の解決に取り組んでまいりましたけれども、ここから得られた教訓ですとか、プロセスを迅速化したりするにはどうしたらいいのだろうかということについてG20で議論したものがまとめられて公表に至ったということでございます。スリランカは中所得国でございましたのでこの枠組みの外にはありますけれども、これも日本、フランス、インドが中心になって合意に至ったことを歓迎する旨が盛り込まれております。
債務に関してもう1つ、まだ債務の持続可能性はあるのだけれども、特に外生的な理由で流動性課題に直面している国に対して、どうやって国際社会で足並みをそろえて支援していこうかということについてもこれからさらに議論を深めていこうということが盛り込まれております。
保健に関しましては、パンデミック基金の増資についての期待が盛り込まれました。こちらは、御案内のとおり、2022年9月に世銀に設けられたパンデミックの予防・備え・対応に特化したグラントを提供する基金でございますけれども、グラントでございますので、しばらくするとお金が枯渇してまいります。こちらについては、10月31日にG20財務大臣・保健大臣合同会議がございましたけれども、そこでのプレッジを促していくような文言が盛り込まれております。
金融セクターについては、これまでの改革の合意ですね。例えばバーゼルⅢをしっかり実施していくことにコミットすること。それから、ノンバンク金融仲介セクター、これはいわゆる投資ファンドとかプライベートエクイティとかヘッジファンドでございますけれども、こういったものの脆弱性への対応。クロスボーダー送金をより早く安全にアクセスがある形で改善していくことについての取組も支持。そして、もちろん暗号資産についてのFATFの作業も支持ということでございます。
それから、ずっと議論が続いております国際課税の2本の柱については、なかなか結論に至りませんけれども、第1の柱については妥結に向けた動きを奨励するということが盛り込まれております。
以上がG20でございまして、次にG7について御説明をいたします。こちらは現在イタリアが議長でございまして、5回目の開催で、恐らく今回が対面では最後になるのではないかと思われます。議題としては、ウクライナ支援、それからイタリア議長下で議論が深まっているAI、国際課税ということで、共同声明が採択されました。本体の共同声明と併せて、ウクライナ向けの新しいローン提供の枠組み、ERAローンの枠組みについて記した別紙の共同声明と、その詳細について記したタームシートという3点セットが公表されております。ウクライナ支援については、毎回同様、マルチェンコ大臣に対面で一部参加いただきました。揺るぎない支援を再確認することと併せて、後ほど具体的に御紹介いたします特別収益前倒し融資(ERAローン)について一致したことを別紙の大臣声明として採択・公表しております。
世界経済については、先ほどのIMFの見通しと同様のことが盛り込まれています。ウクライナだけでなくて、中東情勢についての深刻な懸念も盛り込まれました。
AIにつきましては、イタリア議長下で専門家のパネルを設置して、AIが特にマクロ経済ですとか金融システム、金融監督、財政についてどんな影響を与えるのか、政策金融担当者としてどんなことに気をつけなければいけないのかということについて今議論が進められている状況で、その進捗状況の報告があったということで、年末までに何らか報告書が出されることを期待と。
国際課税については、引き続き、2本の柱のうち特に第1の柱の実施が最優先事項なので、早期署名に向けて一生懸命頑張っていこうということが盛り込まれております。
G7については以上で、最後に私からは8ページの上半分にございますIMFCについて御紹介させていただきます。今年がブレトンウッズでIMFの設立を定めたIMF協定が調印されてから80周年という節目の年でありまして、それをとらえて、これまでIMFが果たしてきた役割や今後の在り方について議論するということがなされました。加藤大臣からは、今までIMFというのは、短期的なBOPの失調是正をメインに仕事をしてきたけれども、足元、特に近年、低所得国支援ですとか構造問題解決に関する支援、あるいは能力開発がかなりメインになってきているので、これをしっかりコア業務として位置づけようではないか、そして、そのための財源はしっかり確保できるように工夫をすべきではないか、その中で特にIMFの純益を直接活用するような方策も、協定改正も含めて検討するべきではないかというようなことを呼びかけました。これによって、日本がこれまで長年呼びかけている、IMF加盟国からのIMFへの財政貢献はクォータの算定要素とすべきではないかということについても改めて主張したということでございます。
最後、成果物が出されましたけれども、こちらはコミュニケではなくて議長声明になりました。IMFCですとメンバーにウクライナあるいはイスラエル、こういった国々も入っていますので、どうしても共同声明を出すことは困難であったわけですけれども、議長声明の中で、地政学以外の部分についてはしっかり合意に至りましたということが明記される形で世の中に発出することができた次第です。
私からは以上です。ありがとうございました。
○津田開発機関課長続きまして、世銀・IMF合同開発委員会について御説明申し上げます。
開発機関課長の津田と申します。昨年度から大変お世話になっております。今後とも御指導をよろしくお願いいたします。
世銀・IMF合同開発委員会につきましては、IMF・世銀年次総会及び4月の春総会のたびに開かれます開発に関する大臣級の会合でございまして、今回は加藤新大臣に御出席を賜りました。従来はコミュニケを発している委員会でございましたけれども、先ほど池田課長から説明がありましたのと同じ事情によって、今回も議長声明の公表になっております。大臣からは、ここに書かれております事項について御主張いただきました。
1点目は世銀改革。次のページで少し御説明しますけれども、特に自己資本を活用するCAF(キャフ)レビューの継続、それから民間資金動員が重要であること、それから、個別事案としてウクライナ支援として、私の説明の後に鳩間参事官から説明があると思いますけれども、ERAローン実施の一環として世銀に新しく基金を設立したことを歓迎していただきました。
保健につきましては、パンデミック基金の話が池田課長からございましたけれども、正式なプレッジに先立ちまして、大臣のほうから5,000万ドルの拠出意向をパンデミック基金に対して表明するということで、来年、東京に設立するナレッジのハブとして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関するナレッジハブの準備を世銀とWHOが進めていることを御説明いただきました。
債務につきましては、やはり債務持続可能性の一番重要な条件としては透明性の向上ということを再度強調いただきました。
最後に、3年に1回増資交渉を行っております世銀の低所得国向け部門であるIDAの第21次交渉が現在行われておりまして、年末に妥結見込みでございますけれども、こちらについても相応の貢献を行っていくことを大臣から言っていただきました。
次のページを御覧ください。9ページ目でございます。今回のG20、ブラジル議長国下の一つの成果としてMDBロードマップというものが作成されました。1つ目の丸ですけれども、各MDBにおいて、それぞれの途上国の課題だけでなくて、地球規模課題にしっかり対応すべきということで、MDB Evolutionという、各MDBでの業務や財務モデルの改革が進んでいるところでしたけれども、G20においても議論が進んでおります。昨年、インドは外部の専門家の方にレポートをつくってもらったというものですけれども、ブラジル議長国は自分たちでレポートをつくろうということでつくられたものが今次財務大臣・中銀総裁会合におきましてエンドースされました。
中身でございますけれども、3つの柱がございます。1つ目は、より良いMDB。これはbetterと呼んでいますけれども、こちらは業務面での改善につきまして、ここに書いてございますようなプロジェクトの組成の支援、民間資金や国内資金の動員、それから無償資金や低利の融資。これはconcessional financeと言いますけれども、これにつきましても地球規模の課題に対して優先的に配分していくフレームワークをつくるべきではないか。
2つ目、より大きなMDB。biggerということですけれども、こちらも、先ほど申し上げたような自己資本を最大限活用する。これは増資に頼らないで行う融資規模の拡大、格付機関との対話、それから、既存資本が十分かどうかを定期的にきちんとレビューしましょうということが合意されました。
最後ですけれども、より効果的なMDB。これはmore effectiveという言葉になりますけれども、開発効果の測定ツールをMDB全体で強化していこう、それから、マネジメントやスタッフにおきましてしっかり地理的多様性のバランスを取りましょう。それから、ジェンダーバランスをしっかり取っていきましょうということが合意されたところでございます。
私からは以上です。
○鳩間大臣官房参事官続きまして、ウクライナ向け特別収益前倒し融資について御説明申し上げます。
この7月よりバイラテラルな支援を担当することになりました大臣官房参事官の鳩間と申します。御指導、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、資料の10ページ目を上から順番に御説明させていただきます。ERAローン、Extraordinary Revenue Accelerationという名前がついておりますが、前回6月の第58回分科会において当時の野村調査課長より御説明いただいた内容の続きになります。
上は、若干重複いたしますが、改めて御説明申し上げますと、まずG7につきましては、2023年の日本のG7議長下からロシア国家資産の活用について検討を進めてまいりました。考え方としては、こちらに書いてあります、「ロシアは、自らがウクライナにもたらしている損害を賠償しなければならない」という考え方の下に議論を進めておりました。本年6月でございますが、プーリアG7サミットにおきまして、ウクライナへの資金移転を前倒しするため、ロシアの凍結資産から生じる特別収益によって返済される500億ドル規模の融資の枠組みを本年末までに立ち上げることで合意に至っております。
こちらからが新しい動きでございますけれども、まず、本年10月で、凍結資産がありますEUにおきまして、特別収益を返済財源とするための法案が成立いたしました。そうしたことを踏まえまして、今回のG7財務大臣会合におきまして、融資に関する原則と技術的な事項において合意をしております。その技術的事項というのが、先ほど池田課長より御紹介がありました、10月28日に公表されましたタームシートの内容になっております。こうした合意に従いまして、今後G7各国がウクライナと融資契約を締結する仕組みになっております。各国の貢献規模は、下に米印を打っておりますが、日本は4,719億円の融資を予定しております。どういうふうに融資をするかといいますと、具体的には、世界銀行に新たに設立された基金、非軍事向けの使途に限定されておりますが、こちらに資金を供与するということでございます。
下のほうにスキームを簡単な図で示させていただいておりますが、少し枠組みを御説明申し上げますと、まずウクライナと融資契約を締結する。こちらの締結は2025年、来年6月までに締結することを考えておるところでございます。
2番目に、どうやってお金をウクライナに届けるかというところでございますが、世界銀行の基金、先ほど津田課長から御紹介がありましたが、10月に設立承認されましたこの基金に資金を拠出する。お金自体は世界銀行において管理されるということでございます。それをどうやってウクライナに供与されていくかにつきましては、ウクライナの資金ニーズなどを見ながら、本年12月から2027年12月末までに資金供与を実施していくところでございます。
実際の事業の実施が③でございますが、基金の資金を用いまして実施機関の関与の下でウクライナ政府が事業を実施することになっております。返済につきましては、特別収益を返済資金といたしますので、年2回の配分ということで、返済資金として各国に配分されていく。こういう流れで融資契約の締結に向けた準備を考えておるところでございます。
私からは以上でございます。
○鳥羽地域協力調整室長地域協力課で室長をしております鳥羽と申します。当課は、アジア太平洋のASEAN+3等のマルチと、各国とのバイ関係の強化、地域金融協力の担当をしております。よろしくお願いいたします。
私からはアジア太平洋地域における金融協力について御説明を差し上げます。12ページを御覧くだい。このスライドですけれども、本年実施した主要な二国間の政策対話を取り上げております。
1つ目、日韓財務対話でございます。昨年7年ぶりに開催いたしました、財務大臣が参加した日韓財務対話を本年6月にも開催しております。同対話におきましては、為替に関する議論が行われましたほか、昨年の対話で様々合意いたしました協力事項について、この1年間の具体的な進捗を確認いたしました。あわせて、日韓の共通課題であります少子化対策ですとか金融投資促進について双方の経験の共有が行われました。来年、日韓国交正常化60周年に当たりますが、第10回対話については日本で開催を予定しております。
2つ目でございますが、日印財務協議でございます。こちらについては次官級の対話の枠組みとなっておりまして、2022年にニューデリーで1回目の協議を行いました。本年9月に東京で2回目の協議を実施した次第でございます。対話におきましては、マクロ経済情勢、第三国協力、二国間協力とか、G20等の国際的課題について議論を行いました。また、金融セクターの課題ですとか、対印投資の拡大に向けた金融規制に関する論点についても行っております。次回はニューデリーでの開催を追求する予定でございます。
13ページにお進みください。太平洋島嶼国で財務省が関与する課題の1つとしてコルレス銀行撤退の問題を御紹介させていただきます。太平洋島嶼国は、従来、米国や豪州の銀行がコルレス銀行の国際送金を中継する業務を担っておりましたが、過去10年間で多くの銀行がこのコルレス業務から撤退しております。その要因として2つ書かせていただいております。1点目でございますが、やはり島嶼国で地理的に狭小であることに加えて人口も少ないことで、なかなか規模の経済が利きにくいということで、どうしても収益性が低くなってしまうことが挙げられております。もう1点ですけれども、太平洋島嶼国は、人的なキャパの制約等もありましてマネロン等の対策が不十分だと。これを国際的な金融機関が忌避する、いわゆるデリスキングのトレンドがございます。ここ数年で申し上げますと、書かせていただいたように、パプアニューギニア、ナウルから豪州の銀行がそれぞれ撤退の意思を表明する等、動きがございます。
このコルレス銀行の撤退はどういった具体的な影響があるかと申し上げると、2つ書かせていただいております。コルレス銀行ですけれども、国際送金の中継機能を担いますので、これが撤退いたしますと、それぞれの国の地場銀行がグローバルな資金ネットワークへのアクセスを失ってしまいまして、貿易の決済ですとか海外の投融資等の決済に支障が出るという形で経済発展に影響が出る可能性があります。また、トンガやサモアといった国々では、多くの労働者が豪州とかニュージーランド等の海外で働いて母国へ仕送りすることで経済が成り立っている面がございまして、送金コストが上昇しますと家計にも直接的に影響を及ぼすことが懸念されております。
本年7月に首脳級の太平洋・島サミット(PALM10)を日本で開催いたしました。また、5月にはジョージア・トビリシで日・太平洋島嶼国財務大臣会議を開催したのですけれども、どちらの会議におきましても、島嶼国の首脳ですとか閣僚から本問題について問題提起がなされておりました。
14ページにお進みください。本問題への対応の事例として1つ、Pacific Banking Forumという取組を御紹介させていただきます。1ポツ目でございますけれども、本フォーラムは、もともと豪州のアルバニージー首相と米国のバイデン大統領が開催を表明いたしまして、それを受け、本年7月と10月に豪州・米国政府の共催で開催されたものになります。フォーラムにおきましては、同問題の解決に向けて、日・米・豪といったパートナー国ですとか、太平洋島嶼国の財務省、中銀、規制当局、例えば米国のOFAC等の規制当局も参加しておりました。IMFやADB等の国際機関、また、コルレス銀行を実際に提供している民間金融機関も一緒に集まりまして、それぞれの視点を共有し合った次第でございます。日本財務省からは1回目会合、2回目会合とも参加しておりまして、日本からは、本問題に向けまして、1つ目は、FATF型地域体のAPGという組織があるのですけれども、こちらの共同議長に9月から日本が就任しております。共同議長として、太平洋島嶼国に対するマネロン等の対応の支援を優先課題の1つとすることをそこで表明いたしております。
2点目、世界銀行が、こちらは8月末に理事会承認されたものですけれども、太平洋島嶼国向けにコルレス銀行関係を強化するプロジェクトを進めておりますので、これをドナーとして支援することを表明いたしました。
3点目、コルレス銀行撤退問題の解決に向けた取組をまとめたロードマップがあるのですけれども、これの進捗管理を行うPacific De-Risking Groupに太平洋島嶼国や世銀等の国際機関が集まっております。こちらにオブザーバー参加することを表明しております。
これらの取組に対して、太平洋島嶼国からは、貢献に対して謝意が示されている次第でございます。
私からは以上でございます。
○神作分科会長御説明、どうもありがとうございました。
それでは、意見交換に移りたいと思います。委員の皆様方におかれましては、御発言の際は、この会場に御臨席の委員の方は、従来どおり、名札を立てていただき、また、オンラインで御参加の皆様には、事前に事務局より御案内していただきましたとおり、御発言の意思をシステム上の挙手の機能を用いて事務局までお知らせいただければと思います。御臨席の委員の方から順に御発言いただき、その後オンラインで御参加の委員の方々に御発言いただきたいと考えております。順番が、名札を立てたり挙手機能を使った意思表示の順番と前後してしまうことがあり得るかと思いますけれども、その場合には御容赦願います。
それでは、どなたからでも結構です。まずこの会場で御参加の方に御発言をお願いいたします。植田委員、どうぞ。
○植田委員いつも大変丁寧な御説明をありがとうございます。すみません。ばらばらと幾つかあるので、あまり大したことではないのかもしれませんが、気づいたことを言います。
まず、3ページ目の上方リスクの2番目に、「重要な構造改革実行の機運の高まり」というのがありまして、これがやはりうまく経済成長を上に乗せていくということだと思います。今回の世界経済白書をちらっとしか見ていないのですけども、そのうちの1つの重要なことと挙げていたのが、いかに国民の皆様にこういうことを御理解いただくか、コミュニケーションをどうやって取るべきかということが述べられています。結局のところ、上に書いてある下方リスクの保護主義的な政策の逆側に立つわけなので、国民の皆様が「もっと保護主義的なことをしてくれ」と言ってしまうと政治家もそうやって動かざるを得ないので、そこをどううまく説明して、いや、構造改革のようなものが大事なのだということをどうコミュニケーションを取っていくかというのは、私もずっと考えていましたし、これが民主主義国では非常に大きな課題だと思っておるわけです。特にここで解決策があるわけでもないんですが、コミュニケーションの大事さというのはやはり気をつけておきたいなと思うというコメントです。
6ページ目です。これはG7も同じだと思いますが、G20のほう、金融セクターのところで、ノンバンク金融仲介セクターの脆弱性とか、新たなデジタル技術のFATFの作業などありますけれども、ノンバンク及びITセクターの部分の金融に占めるシェアが非常に大きくなってきている中で、今までの規制監督対象という伝統的な銀行とか証券会社から外れたものの動きがどうしても見えない中で、これもまた大きな問題です。これも私は解決策があるわけではないんですけれども、そういう現実を基に、国際的にどうすべきかというのをやはり我が国も一生懸命やっていかないといけないと思います。
そのすぐ下にある国際課税のところです。これは前々からも言っているんですけれども、課税のところは、前のたしか浅川元財務官の御尽力でいろいろ課税の枠組みが国際的にうまくできていることは分かっているのですけども、補助金を減らす枠組みも当然取り組んでいっていただきたいとずっと思っています。WTOとかIMFとかを中心に動きがあることは分かっているのですけれども、なかなかそういう動きが強く出ていない。そういう中で、EUの中の域内ルールを今、中国に域外適用するということで問題になっていることからも分かりますとおり、国際的な枠組み、補助金競争をいかに収めるかというのがますます今重要ではないかと思っておりますので、この辺の取組はどうお考えになっているのか教えていただければと思います。
いろいろあって申し訳ないですが、8ページ目のブレトンウッズ会議80周年というところ、これは本当に大事だと思っています。IMFの設立の経緯は、いろいろあると思うんですが、一番大事なのは、国際通貨システムをどうつくるかというのが80年前に話し合われました。そのときにつくったドル基軸通貨体制が、例のロシアの問題とかいろいろあって、SWIFTを中心とした体制が、だんだんと若干弱くなっていっています。CBDCのクロスボーダー取引の実験などがどんどん進んできて、ドル基軸通貨体制から離れたり、SWIFT中心のG7中心、どちらかというとG10ですかね、から離れてくるような中でどう考えるか。この一環でさっきのコルレス問題もあると思うんですね。コルレス銀行の問題もSWIFTの問題なのですけども、片や小さなアジア諸国で私も聞いているのは、パプアニューギニアとかでは今カンボジアで活躍されているソラミツさんが進出しようとしていると聞いていますし、パラオではアメリカのリップル社が話をしているというCBDCのことを聞いています。そういう形でいえば、そもそもコルレスが駄目なら、逆に言うと、デジタル化の進展によって何とかできる。より積極的な意味での使い方もあるわけで、そういうデジタル通貨的なところにも日本は当然いろいろと協力ができるのではないかと思っていまして、そういうことをどう考えられるのかなという気がいたしております。
この辺りでやめておきます。ありがとうございます。
○神作分科会長どうもありがとうございました。時間との関係もございますので、まとめて質問をしていただき、その後適宜まとめてお答えいただきたいと考えております。
続きまして、木村委員、御発言ください。
○木村委員御説明、ありがとうございました。
今回の御説明の中で私が大事だなと思ったのは、太平洋島嶼国のコルレス銀行撤退問題への対応だと思います。これは民間ビジネスの問題にとどまらず、島嶼国の海外労働者の国際送金に大きく影響する問題ですから、いわゆる公共性の観点、あるいは暮らしに関わる観点からも早急に対応しなければならない課題だと思います。
そこで、御紹介があったように、日本もAPGの共同議長国として重要な役割を果たされていると伺って非常に心強く感じました。アメリカの国力が低下する中で、このアジア太平洋地域で日本が果たすべき役割は大きくなっていると思いますので、こうした地道な行動でしょうけれども、そういうのを一つ一つ積み重ねていくことが太平洋島嶼国の信頼を得る重要なステップになると思います。ここは引き続き御努力をお願いしたいと思います。
その上でのコメントですけれども、先ほど局長からも御言及がありましたが、アメリカ大統領選でトランプ前大統領の勝利が決まったということについてです。これは私の感想なのですが、今年は世界で選挙イヤーと言われて、そのキーワードというのは、語弊を恐れずに言えば、ポピュリズムだったと思いますが、各国、多くの国で内向きの政治姿勢が強まって、ここは先ほど植田先生も御言及された保護主義と国内の構造改革の兼ね合いの問題でもあると思いますけれども、結局は保護主義というか、ポピュリズム政党の勢いが伸びてしまった。その締めくくりとなったのが今回のアメリカ大統領選で、そうした流れを象徴するものになってしまったのではないかという気がします。
あと、問われるのは、これから発足するトランプ政権への対応だと思います。1期目に比べてより心配なことが2つあります。1つは、トランプさんが打ち出している関税率ですね。実際にやるのかどうか分かりませんけど、例えば中国60%とか、1期目と比べて全体的に高くて、保護主義が一段とエスカレート、強硬になっていくおそれがあるということですね。もう1つはウクライナ。トランプ政権1期目の後にウクライナとか中東で戦争が起こって、国際社会の分断が一段と進む中で、協調を軽視してきたトランプ政権が復活することでさらに分断が深まるのではないかというおそれを感じています。
本来、世界経済を建て直してソフトランディングさせるにはやはり多国間の協力が欠かせないと思います。10月のG20財務大臣・中央銀行総裁会合でもあったように、低所得国向けの債務措置の共通枠組みに関するノートが策定されるとか、多国間連携で様々な成果を上げてきました。ところが、多国間の連携・協力がアメリカ第一主義の復活によってまた厳しくなるおそれが高まっています。もちろん、多国間連携の重要性は変わらないので、仮に米国が距離を置くことになっても、日本とか欧州あるいはオーストラリアのミドルパワーと言われる国々が多国間連携の要になる必要があると思います。
御紹介があったように、今年はブレトンウッズ会議から80年という節目の年でもありますし、その中で、これから戦後の国際経済秩序が大きく揺れ動く中で、お伺いしたいのは、ここで日本として、多国間協調の維持を図るためにどのような役割を担っていくべきなのか。御方針とかお考えがあれば、ぜひお聞かせ願えればと思います。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
続きまして、佐藤委員、御発言ください。お願いします。
○佐藤(清)委員最近の情勢につきまして詳しく御説明いただきまして、ありがとうございます。
私からは大きく2点ございます。その2点に入る前に、やはりアメリカの大統領選挙の影響が非常に大きくて、様々な切り口で今回の御説明に対してもコメントができるような状況かと思います。例えば、これ以上円安が進むのかどうか。そうした観点からも御質問やコメントができるかと思いますが、私からは、直接為替レートから離れまして、一番最初に御説明いただいた世界経済見通し、この中の重要な点について御質問といいますか、コメントしたいと思います。
詳しく御説明いただきまして、下方リスクと上方リスクと御説明いただきました。そして、どうも下方リスクが高まっていると。この御説明の中に列挙されているのですけれども、地政学的な緊張から来る一次産品価格上昇、とりわけ資源エネルギー価格の高騰が懸念されます。ただ、高騰といいますか、もう少し詳しく御説明しますと、中東で紛争などが起こると資源エネルギー価格が高騰するのではないかというおそれを私たちは抱くわけですが、実際にはここのところ1バレル70ドル前後で安定しています。1つには、中国経済が少し低調であることなど、様々なところからそうした動きになっているかもしれませんが、今後の中東情勢が予断を許さないところ。なおかつ、新しく出るトランプ政権が自国でもどんどんエネルギーを、米国産の例えば原油などを出すんだ、これからどんどん採掘していくんだということで、もしかしたら原油価格が下がっていくかもしれない。今後どうなるかはなかなか見通せないところですけれども、なぜこのことを御指摘するかといいますと、日本経済にとっては極めて重要で、2022年以降、貿易赤字が急激に拡大したのはやはり輸入が急増したからですし、その最も大きな理由というのは資源エネルギー価格の高騰で輸入額そのものが増えたからですが、これも、もしも非常にうまくいけば、原油価格などが下がって、資源エネルギー価格全般も落ち着いて、日本にとっては貿易赤字がこれからもっと改善していく可能性もございます。ですので、今後この点をもう少し注目して議論していく必要があるのではないかと感じました。これが1点目のコメントでございます。
そして、2点目ですが、既にお二人の委員の先生方からも御指摘がありましたけれども、私も実は今回の御説明の中で一番注目したのが太平洋島嶼国のコルレス銀行撤退問題に関する日本の貢献であります。日本がしっかりと貢献したことを御説明いただきまして非常に心強く思いました。アジア太平洋諸国ですけれども、やはり安全保障上の問題が非常に重要であるということは皆様よく御存じのとおりで、ここに他の国よりも先に日本が入ってきた。そして支援をしているということは、安全保障上非常に重要だと思いますので、そうした御努力を非常にうれしく思います。
その上で、またお二人の委員からも既に御指摘がありましたとおり、あとはどのように協力していくかで、既存のコルレス銀行のこうしたネットワークだけではもう済まない状況になっているかもしれません。そのときに、どのような形で日本がイニシアチブを取って新しい枠組みで支援していくかということをぜひお考えいただきたい。そのような感想を持ちました。これは感想でございます。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
続きまして、片山委員、御発言ください。
○片山委員いろいろ丁寧な御説明を頂き、ありがとうございます。
私のほうからコメントと意見と、できれば質問させていただければと思うんです。
1つ目はやはりアメリカの大統領選挙で、トランプ大統領が来年1月から就任することになると大きくアメリカの外交方針も変わってくると思いますので、今回ありましたウクライナ支援でERAローンという枠組みができたということですけれども、ここからアメリカがいなくなることのないように、アメリカも200億ドル、大きな拠出になりますので、ぜひともこの枠組みの中に押しとどめていただいて、ウクライナ支援を今後も引き続き継続するようにお願いしたいというふうに思います。
2点目は、できれば教えていただければと思うんですが、国際課税です。日本では、昨年の税制改正で所得税合算ルールの法制化に向けて法人税の仕組みが創設されたということで、日本の法制度はもう整っているということだと思いますが、まだ国際条約の発効に至っていないということですので、この辺の進捗状況が分かれば教えていただきたいのと、今後の対応について教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○神作分科会長どうもありがとうございます。
それでは、玉木委員、どうぞ。
○玉木委員ありがとうございます。私も感想を2点。
1つは、今月、アゼルバイジャンのCOP29があるわけですが、今日の御紹介の中でも気候変動ファイナンスの話の影が少し小さくなっているような気がするのだけれども、実際にそれをお感じになったかどうか。どうも、ファイナンスプロセスとクライメイトの議論とはちょっと距離が出てきたのかなという気がしないでもないのですが、年間1,000億ドルの資金移転が曲がりなりにも完了した今、次の議論をしているところにどうしてファイナンスの人間が入ってこないのかというのがよく分からない点なので、その感想を聞かせていただければ。
もう1点、最後のコルレス契約云々の話は、私の記憶では、もう10年以上前に主としてアフリカをテーマにFSBなども大々的に議論していた記憶があるんですが、結局、アフリカなどではどういうことが起こったのか、もし御存じならば。結局コルレス契約が切られてしまい、その結果、何か対応策が講じられたのかどうか。もし御存じならば教えてください。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
伊藤委員、御発言ください。
○伊藤(亜)委員2点ほどお伺いさせていただきたいと思います。
1点目、トランプ政権が再発足するということで、今年3月だったと思うんですけれども、ライトハイザーさんがマサチューセッツで講演したときに私も聞かせていただいて、1時間、通商政策に関する御講演をされました。彼の御著作に基づいて語られていたのですけれども、1時間の講演で一度もWTOに言及しないという通商政策に関する講演でした。関連の研究者と一緒に聞いたのですが、何が言及されないのかという点から聞くと非常にショッキングな内容でありました。
それを念頭に置くと、様々なトライラテラル、例えば日・米・韓のトライラテラルの動きもありましたけれども、制度化をしていかないと今まであったものが途切れていくことになろうかと思うわけです。ですので、もし足元で、今までの慣例というよりは、より一歩進んだ制度化された対話の枠組みという動きがあり得るのかということをお伺いしたいと思います。
関連して、ちょっと別のチャネルになるわけですけども、日韓、日印の財務協議に関する言及の御紹介がありました。ここで冒頭のマクロ経済の観点でも、中国経済の負のスピルオーバーの懸念、不動産市場に関する論点がありましたので、日中のチャネルというのは今後どういう動きがあり得るのかという点も関連してお伺いしたいと思います。
別の点では、G7でAIに関する論点がイタリア議長国主導で議論が進んだという点に大変関心を持っております。ただ、この数年、より一層、生成AIを含めて新興国、途上国にもこういったソリューションが大きく広がっている中で、あるレポートによれば、例えばchatGPTのアクセス数で見ると、インド、ブラジル、フィリピン、インドネシア等と非常にアクセス数が多いそうです。いわゆるG20の枠組みでこういう議論が拡大、拡張する余地はあるのだろうかというのを少しお伺いしてみたいと思います。よろしくお願いいたします。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、澤田委員、御発言をお願いいたします。
○澤田委員どうもありがとうございます。
私のほうからは、日印財務協議の話でどういうことが議論されているのか知りたいということで、IMFの世界見通しでも、あれだけの大国で8.2%の最速の成長を遂げている。これは驚くべきことですし、よくメディア等でも報道されますけれども、ユニコーン企業のような数で見れば、米、中、インドということで、非常にハイエンドの研究開発もどんどんやっている。さはさりながら、国内の財政・金融はある程度安定しているようなことで、国内投資・製造業堅調ということは、いろいろな問題があるとはいえ、全体としてそういうような状況かなと思うんですけれども、インド経済の一つの特徴は、東南アジアとか東アジアと違って、バリューチェーンでGVCに組み込まれていない。かなり国内フルセットと言っていいのか、そういうような内向き的なところがあって、それは輸入代替工業化政策を80年代まで長らくやったこともあると思うんです。
そういうような状況で、ただ、日本との関係は非常にいいと思うんですよね。JICA事業ですけれども、円借款事業で、ムンバイというのが半島でものすごい渋滞がひどいわけです。そのムンバイの湾の反対側のナビ・ムンバイという地域があります。新ムンバイという意味ですけれども、そちらになるたけ住居とかビジネスを拡散させて、渋滞等の過密を削減しようというのが国の方針、州の方針としてもあるということです。その半島の先とナビ・ムンバイをつなぐハーバーリンクという非常に大きな橋を円借款事業で造られて、1年前ですか、開業しました。ムンバイはさらなる横の発展に貢献することが期待されているところです。私も微力ながらJICA研究所で、いろいろな衛星画像とか、最近は携帯のビッグデータを使って、巨大インフラが建設された場合にどういう経済インパクトがあるか、人流がどう変わるか、そういうことを使いながら精緻なインパクト評価をすることができますので、やらせていただいているんです。あと、アーメダバード~ムンバイの高速鉄道等、非常に大きなインフラで二国間協力は進んでいると承知しています。
今の動向ということで、財務協議でどういうような二国間協力、第三国協力、国際的課題、どういうところがフォーカスになっているかということを少し教えていただければと思います。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
ほかにいかがですか。後ほど会場の皆様にも御発言の機会を設けさせていただきたいと思います。
ここで、オンラインで御発言を希望されておられます根本委員、杉山委員、五十嵐委員の順番で御発言をお願いできますでしょうか。まず根本委員からお願いします。
○根本委員どうもありがとうございます。2点ほど質問がございます。
冒頭、IMFの見通しを御説明いただいたんですけれど、国際局としてこのシナリオはかなりlikely scenarioなのか、昨今の大統領選も含めてそう思われるのか、もう少しリスクのほうに傾斜していらっしゃるのかということです。例えば国際収支の見通しなどは、このレポートを見ると、割と中期的に安定していくとあって、アメリカの赤字もそう増えず、中国の黒字も増えないみたいにあるんですけど、実際は、例えばアメリカの財政赤字がさらに拡大するとか、あるいは逆のほうに、佐藤先生がおっしゃったようなエネルギー問題もあるかと思います。また、中国も、内需が不振であるとより輸出ドライブを新興国とかにかけることもあるのかなと思いまして、その辺りのお考えを伺えればと思いました。
もう1つ、ウクライナ支援の話があって、これ自体は特に異論はないですけど、制裁の効果ということで、ちょっとマイナーなことですが、日本へのロシアの入国者が最近増えているという統計を見ました。ヨーロッパではあまり増えていないということらしいですけれども、その辺り、影響はどうなんだろう。また、そういう方々がどういう決済をしていらっしゃるのか分からないですけれども、今の経済制裁の資金面からストップをするということが十分に有効に働いているのか。もし御存じであれば伺いたいと思いました。
質問は以上でして、コメントとしては、他の委員の先生がもうおっしゃっていたことですが、やはり今までのマルチナショナルの協調体制とか、アメリカの世界全体への支援みたいなものが大きく変わる中で、日本の立ち位置をどうお考えなのか。是非、日本が透明性のあるルールを示して、理念とかそういったもので国際協調を進めるような、さっき1つよい例でコルレス先の問題があったのですけど、このほか気候変動もそうですが、その他の面でもリーダーシップを取っていただきたいというふうに思いました。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
続きまして、杉山委員、御発言をお願いいたします。
○杉山委員ありがとうございます。私からは質問が1点と、それから意見が1点ございます。
まず質問ですが、10ページにウクライナ向け特別収益前倒し融資(ERAローン)についての御説明がございました。この特別収益の原資はロシアの凍結資産というふうに理解しておりますが、ロシアの資産が凍結されている間の対応なのかどうかということでございます。ウクライナの復興にはかなり長期間にわたり莫大な資金が必要かなと想定されますので、こちらのERAローンの期間がロシアの資産が凍結されている間の対応なのかどうかという質問が1点でございます。
それから、意見でございますが、8ページにUHCのナレッジハブということでパンデミック基金のお話が載っておりました。パンデミック基金は国際的な経済安定にもつながっていくものですので、日本がここにおいて重要な役割を果たしているのは大変すばらしいことだと思います。まだこれから始まるところでございますが、この基金の持続可能性を含めて軌道に乗せていただけたらよろしいかなと考えております。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
続きまして、五十嵐委員、お願いいたします。
○五十嵐委員ありがとうございます。事務局からは大変丁寧に直近の動向を御報告いただきまして、感謝申し上げます。
私からは、金融セクターに関する規制及び監督の在り方という切り口で、主に資料の6ページ、FSBの取組を支持でありますとか、その辺りについて幾つか申し上げたいと思います。その後、10ページのウクライナ向けのERAローンにつきましては一言だけコメントを差し上げたいと思っております。
6ページのG20の共同声明のポイントの中の金融セクターというところで3点挙げていただいており、太平洋島嶼国におけるコルレス銀行撤退の問題とも深くつながる問題点と理解しておりますが、送金あるいは資金移動、決済に関わるプレーヤーも、それに用いられる技術も格段に変化を遂げている中で、グローバルな枠組みでどのような規制、どのような監督の在り方を定めていくのかについて、各国の共同歩調は不可欠と理解しております。同じ活動、同じリスクについては同じ規制を課すということで、same activity, same risk, same regulationという発想の下で、FSBも今年7月にクロスボーダーの支払いに関する銀行及びノンバンクに対する規制の在り方等について具体的な勧告を示しております。このような動きの中で、日本においても、ちょうど昨日、金融審議会の資金決済制度等に関するワーキング・グループで非常に有益な議論が展開されておりました。例えばクロスボーダー収納代行の規制の在り方が議論されており、日本法の発想としては最高裁の判断がございますので、隔地者間、場所の離れたところで現金の授受がなく資金が移れば「為替取引」というカテゴリーに当たるというテーゼがある中で、どのような形で規制をしていくのか。クロスボーダー収納代行の概念を広く捉えていくのかどうかといったところも含めて、今後の議論に注目していきたい、期待していきたいと思っております。資金移動業規制をかけるのか、あるいはマネーロンダリングの観点から、少なくとも収納代行については、犯罪収益移転防止法上の特定事業者として指定して取引時確認の義務を少なくとも課すであるとか、いろいろなパターンがあろうかと思っております。
太平洋島嶼国のコルレス銀行撤退のところでは、日本はマネロンのFATFの下部組織に当たるAPGの議長国としてイニシアチブをとり、リーダーシップを発揮して議論を進めているということで、大変喜ばしいことと思っております。日本自身も、FATFの総合審査の結果を受けて、速やかに6つの法律を改正して対応を進めておりますが、さらにこういった形でリーダーシップを発揮していくことは非常に重要と考えております。
この金融規制の在り方という観点では、資料の7ページ、AIに関して、「金融システムと経済に対するリスクを最小限に抑えながら」という辺りですね。ここにつきましても、国際的には2023年6月から、EUが初めてAI規制ということで法制度としていく中で、日本は当面はソフトローのガイドラインとして歩み出したわけですけれども、こうしたスタンスやリスクベース・アプローチの取り方についても、引き続き国際的にも国内的にも進めていく必要があろうかと思っております。
次に、10ページのウクライナ向けのERAローンでございますが、これは直近2回分の本分科会の中でも議論がされたと記憶しておりまして、私からも、国際法的ないろいろな争点、課題があるので、その辺りも見合いで検討しながら進めていただきたいと申し上げたところでございます。
10ページで10月以降の直近のアップデートも頂いておりますが、日本としては非軍事向けの使途に限定という形での参画ということで、このように着地するまでに大変御苦労なさったかと思いますので、お礼を申し上げたいと思います。
私はマネーロンダリング対策や経済制裁対応に関する御相談を弁護士として頂くことが多くありますが、アメリカの大統領選の結果を受けて思い出しますのが、米国OFACが発動していたイラン向け制裁の関連で、イランの包括核合意を受けて、各国が協調し、包括核合意についてのイランによる約束が履行されることを条件としつつ一定程度制裁を緩やかにするという共同歩調が取られた後に、やはりトランプ大統領がそこから撤退するような動きがありました。非常に悩ましい状況とは思いますが、引き続き日本政府の働きにも期待したいと思います。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。会場の方も、まだ御発言されていない方は御遠慮なく名札を立てていただければと思います。澤田委員、どうぞ。
○澤田委員もう1つ、ちょっと適切でない意見かもしれませんけれども、8ページでUHCナレッジハブの話を前の委員の方が触れられたので、質問というか、コメントです。UHCは、もちろん日本の経験を生かすということで非常にすばらしいことだと思います。あと、東京防災ハブという、日本の防災経験を生かすというハブもかなり長く設置されているということで、大変すばらしい取組でいいと思うんですが、そういうふうに考えますと、ほかに何か日本が貢献できることはないかということで、高齢化の下で財政を何とかマネージしてきたという日本の経験はあると思います。これからアジア、ヨーロッパ、北米は既にそうなっているかもしれませんけれども、南米も高齢化していく。最近アメリカのトップの経済学者がageing in Africaという論文を出したりして、アフリカでもかなり、ガーナ辺りでも急速に高齢化が進むような予測をされているので、高齢化のフロントランナーである日本がいかに財政をマネージしてきたかというところは非常に日本の知見が生かせるのではないかということです。パリクラブは東京ではないわけですけれども、債務再編でスリランカは日本がリードしていることもありますし、何か公的財政マネジメントハブとか、そういったものを日本主導でつくることもあるのかなとちょっと思った次第です。これは個人的な意見ということで、シェアさせていただきます。
○神作分科会長御意見をどうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
たくさんの御質問、御意見を頂き、大変ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から頂戴した御質問につきまして、事務局より御回答をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○池田国際機構課長ありがとうございます。それでは、私のほうからは、IMFの世界経済見通しですとか、G20、G7で議論されている事柄について頂いたコメントないし質問についてお答えさせていただきます。
まず、植田先生、どうもありがとうございます。コミュニケーションの重要性は、まさに指摘されていますし、構造改革を進めていく上で極めて重要でございます。目的はしっかりとコミュニケーションしなければいけない。また、格差是正もセットでやっていかなければいけないというのはそのとおりでございます。国際課税と補助金競争、これをどうしていくんだという問題意識は我々ももちろん強く持っております。また、G7等で議論が進んでいる状況でありますけれども、委員の皆様から御指摘のあったとおり、WTOがなかなか所期の機能を果たしていない状況の中で何ができるのか。恐らくまず2つのことがあるんだと思います。
1つは、一言で補助金と申し上げてもいろいろな形がある。特に中国に関しましては、政府からのアウトライトのストレートな補助金だけではなくて、もちろん低利融資ですとか、土地の無償での提供、あるいは減税ですとか、いろいろな形があって、WTOルールの定義に入らないものも恐らくいっぱいある。こういったものをどうやってしっかり把握できるのか。それから、補助金そのものはいろいろな国がもちろんやっておりますので、どういったものが、外国に対してスピルオーバーをどういう形で及ぼすのか。こういった点は、イデオロギーは横に置いて、まずはファクトベースで洗い出そうということができるのではないかと考えます。
2つ目に、中国に関しましては、これはよく指摘されていて、先生も御案内のことでございますけれども、裏にあるマクロの不均衡でございますね。投資・製造業主導の成長モデル、そしてそれを後押ししてきた政策をどう転換していくのか。消費を促すセーフティネットを整えていく。そういう意味で、今日出されていくかもしれないパッケージにも注目しなければならないわけですけれども、その辺りについても、これもIMFの4条協議ですとかマクロのサーベイランスでしっかり見ていかなければならないと。
3つ目ですけれども、この話は先進国対中国ということではもはやなくなってございますよね。インドネシアとかブラジルとかメキシコですとか、そういう新興国からも対抗措置とかいうことが出てくることになっていますので、いたずらに先進国対中国ではなくて、もう少しグローバルな課題だというふうにフレームしながら議論していくことが必要であろうと考えているところです。
続きまして、WEOの関連では、根本委員から、この見通しについてどのように国際局としてシェアするのか、どの程度かというような御質問を頂きました。非常に強く賛同するところは、やはりuncertainty、不確実性が強いところだと思います。すなわち、まずポリシーのuncertaintyがあると思います。今申し上げた中国の経済政策もそうですし、米国の経済政策、社会政策がどういうふうになっていくのか。それから、各国の政治基盤はどうなっていくのか。今日はアメリカの大統領選の話がたくさん出ましたけれども、一方で、ドイツにおいて、リントナー大臣が罷免されてFDPが連立から出ていってしまう。カナダも今少数与党の状況になっている。ちなみに、カナダは来年G7の議長国なわけです。そういう意味で、各国の政治状況自体がかなり不確実な状況になっているので、基盤も不確実。さらに、エクスターナルな環境という意味では、地政学問題が出ましたけれども、玉木委員からもあった気候変動に伴う災害が、例えば食糧の価格あるいは国際運輸にどういう影響を与えていくのか。本当に様々な不確実性があるのだと思います。なので、ここを最もシェアするということだと思います。そういう意味で、先ほどのリスクの順番がどうなのかということに関しては、それもこういった不確実な外部要因に左右されるのだろうと考えております。したがって、しっかりウオッチして、そしてアジャストしていくことだと考えております。
関連で、佐藤(清)委員から、ありがとうございます。資源価格の事柄について、石油の動向は、ジオポリティクスによる高騰一辺倒ではない可能性もあることについて、確かにそのとおりであろうと思います。よくテークノートさせていただきました。その上で、資源ということで申し上げますと、石油だけではなくて、当然のことながら食糧ですとか、さらには鉱物の問題もございます。物量的には、輸出額的には小さいかもしれませんけれども、サプライチェーンに甚大な影響を与えるようなものがございます。昨今でも中国がガリウム、ゲルマニウムとか黒鉛とかに対する輸出の規制と言っていいと思いますけれども、措置を導入している。その背景として、EVとか蓄電池あるいは風力発電ですとか、エネルギー移行を進めていく過程で重要になってくる様々な鉱物の、特に中流、精錬・加工の部分についてニッケル、コバルト、グラファイト、いずれも一部の国、特に中国に集中しているような状況がある。こういったものが地政学的な動向によって影響を受けるので、やはり多様化を進めていかなければいけないです。また、食糧とかに関しましても、スエズ運河ですとかパナマ運河が地政学あるいは気候の影響によって詰まるようなことがまた起こってくれば、これは迂回経路を取らなければならないということで輸送コストの増、あるいはそれがインフレにどういう影響を与えていくのか、こういったこともよく注視していかないといけないと考えております。
あと、ブレトンウッズ80周年というIMFのことにつきまして植田先生から御指摘いただき、ありがとうございます。我々も非常に重要な問題だと思っております。通貨の決済の仕組みですとかやり方自体が大きく変わっていく。我々としては、特にIMFに関しましては、御案内のとおり、例えばCBDCを新興・途上国を含めかなり多くの国々が今導入に向けた検討とか実証実験の段階にあることを踏まえて、これを導入していくに当たってどんなことに注意していかなければいけないのか。プライバシーやサイバーセキュリティやAnti-Money Launderingのリスクももちろんありますけれども、通貨代替のリスク、あるいは金融政策の伝播への影響もよく考えていかなければならないということで、恐らく今月中にsecond wave of chaptersというものが出されていくことになると思いますけれども、日本として、こういった新しい国際通貨金融システムの動きに対して、IMFがしっかりキャッチアップしていって、そして国際金融システムのインテグリティーを確保できるようにしていかなくてはいけないことは今回のステートメントでもしっかり申し上げ、また信託基金などを通じてサポートしているということでございます。
それから、G20、G7をはじめとする多国間協調についてこれから日本はどういう役割を果たしていくのか、非常に重要な御質問を頂きました。もちろん、G7、G20のメンバーとして合意形成や新しいイニシアチブに向けて力を注いでいくことに加えて、様々な枠組みをつくり、大事にしていくことが恐らく肝心なのだろうと思っております。その関係で、例えば、今回G7のマージンといいますか、後にアフリカラウンドテーブルを開催しております。これは、一昨年のドイツ議長国のときに始め、日本でもマラケシュで去年10月にやったときに行い、そして今年に引き継がれたわけですけれども、様々なアフリカの国々をお呼びして、彼らの抱えている問題に対してどういうふうに貢献できるのだろうかということを議論してまいりました。また、日本が新潟でG7をやったときには、アウトリーチセッションということで、AUの議長、ブラジル、インドネシア、インド、つまりG20のトロイカを招いて、どうやってG7、G20のブリッジをかけていくのかということをやっております。このような形で、国際金融機関の力も借りつつ、多層的な枠組みを主体的につくっていくことにおいてこれまで以上に力を注がなければならないと考えているところです。
続きまして、伊藤(亜)委員から、G20においてAIも議論の余地があるのではないかということで、これは御指摘のとおりだと思います。足元、AIについてハイライトする形で議論がまだなされていませんけれども、デジタルの技術革新については既にコミュニケで様々盛り込まれているところです。具体的には送金の文脈が多いわけですけれども、特に規制の中身ですとか執行体制が十分でない新興・途上国がしっかりとベネフィットを享受して、そしてリスクをできるだけ緩和していく。特にマネーロンダリング、それから金融の健全性の観点から、デジタルイノベーションの果実をしっかり取っていくことについては既に議論がなされているところでございます。
続きまして、片山委員から国際課税の御質問を頂きました。これは非常に難しい状況になっています。御案内のことかと思いますけれども、2本の柱でやっておりまして、2つ目の柱ですね。15%の国際ミニマム税率に関しましては各国がそれぞれ国内上の措置を取っていくということで、日本もそれを一部導入している。これは、やらないところは取られてしまうので、それぞれがやるインセンティブがあるということでこれは進んでいくと理解していますけれども、第1の柱、すなわち、年収が200億ユーロ以上、利益率10%以上の企業がグローバルで100社ぐらいありますけれども、これの10%を超える利益の25%分を市場国に配分する。これに関しましては、この話と併せて、移転価格税制の執行の合理化・簡素化という利益Bとセットで議論していかなければならない。アメリカの強い主張もあってそういう議論の設定になっている中で、今なかなか合意形成が得られていない状況であります。もともとの最初の利益Aの部分については議論が収束した状況にはあるわけですけれども、利益B、これがなかなか合意形成が得られないままアメリカの政権交代の方向性が明確になったということで、これから正直、どうなって、どうしていけばいいのだろうかと。もちろん水面下でいろいろな外交努力はしているわけですけれども、そのような状況であるということでございます。
もしお答えし損なっている事柄があれば御指摘いただければと思います。とりあえず私のほうから、御質問を明示的にいただいたものに関して以上とさせていただきます。ありがとうございます。
○鳥羽地域協力調整室長地域協力課の鳥羽でございます。御質問いただきまして、ありがとうございます。
まず、木村委員と佐藤(清)委員をはじめ多くの先生方に太平洋島嶼国におけるコルレス銀行撤退問題における日本の取組に応援いただきまして、誠にありがとうございます。政府といたしましても、7月の太平洋・島サミット(PALM10)の共同行動計画という成果文書があるのですけれども、その中で、日本を含むPALMパートナーズ、これは太平洋島嶼国、豪州、ニュージーランド、その参加者全員を含むのですが、この問題に取り組むことをコミット、明記しておりますので、引き続き同志国とも連携しながら問題解決していく所存でございます。
植田委員と佐藤(清)委員から、このコルレス問題をはじめ、通貨とか決済部分に関してのデジタルツールも活用した方針について御質問を頂きました。植田委員から御指摘いただいたように、まさに我々もソラミツが経産省のグローバルサウス補助金を活用しながらPNGで実証実験を行っていると承知しております。この太平洋島嶼国地域ですけれども、やはり離島が多く、また高湿度ですので、紙幣の管理コストが非常に高いといったいろいろな特有の問題があるため、デジタルツールに対するニーズは非常に高いと認識しております。また、政府としましても、金融デジタルインフラの輸出というのは一つの柱としておりますので、財務省としても、財務省で閉じず、政府一体として取り組んでいくのかなと思っています。
一方で、先ほど池田課長からも説明がありましたように、同時にIMFとも活用しながら金融のインテグリティーを確保しながらこうしたデジタルツールを導入していくことは重要だと思いますので、そういった点も留意しながら島嶼国の開発課題に取り組んでまいりたいと思っております。
伊藤(亜)委員から、日中のチャネル、特にマクロ経済等を把握していく上でどういったチャネルを通じていくのかと御質問いただきました。日中ですけれども、ASEAN+3という場をここ二十何年かずっと回しておりまして、そうした場に加えて、大臣、次官、課長級、様々なレベルでオンサイト、オフサイト合わせまして直接的にやり取りする機会というのは財務省に多くあります。そうしたチャネルを活用しながら、引き続き中国の経済情勢をよく把握してまいりたいと思っております。
澤田委員からは、日印財務協議についてどういった議論があったのかと御質問いただきました。少し差し支えない範囲で御紹介させていただきますと、例えば第三国支援で申し上げますと、アフリカとか太平洋島嶼国が一つ、両国の潜在的な協力の場になるのではないかといった議論を行っておりました。また、例えば二国間協力につきましては、ODA、御紹介いただいた橋のような従来型のプロジェクトの重要性を踏まえた上で、それ以外の半導体ですとかグリーンエネルギー等の新しい分野の支援に対する関心というものがインド側から示されたことを御紹介させていただきます。
私に関しては以上になります。ありがとうございます。
○鳩間大臣官房参事官続きまして、ウクライナ支援について御意見、御質問いただきましたので、お答えさせていただきます。
まず、御意見として、片山委員、五十嵐委員から応援というか、お話を頂きましてありがとうございました。G7として合意しておりますので、引き続き日本として準備を進めてまいるということでございます。あと、非軍事というところについても確保した上での仕組みとなっております。改めて御確認、ありがとうございました。
その上で、杉山委員から御質問いただきました凍結資産と、復興に時間がかかるのではないかと。費用のお話を頂きましたので、こちらのほうから改めて整理してお伝えいたしますと、特別収益につきましては、おっしゃるように、ロシアの凍結資産から生じるものを活用して返済をするということでございます。復興については、時間がかかるとか、資金ニーズがあるところにつきましては、ウクライナへの資金供与で資金ニーズを見ながら拠出していくところでございますし、ウクライナの実施する事業について実施期間を見ながらフォローしていくところになっております。
その上で、資産凍結の話につきましても、G7だけではなくて、融資を行う欧州においても、ロシアが侵略をやめ、ウクライナへ与えた損害に対して支払いを行うまで凍結を続けていくことを確認しておりますので、こういう方針の下に融資の調整をさせていただくことになっております。
御説明は以上になります。
○石田国際調整室長国際調整室長の石田でございます。
今回、米国大統領選について多数の御質問、また御指摘を頂戴しました。大変感謝いたします。全般的に多面的な御指摘、御質問を頂戴し、大変感謝をしております。
まず、木村委員からは、今年は世界の選挙イヤーだったというふうな話を頂戴したところでして、多国間の協力の御指摘、御質問を頂戴したところでございます。佐藤(清)委員からは、米国大統領選が原油価格に与える影響についての御指摘を頂戴したところでございます。片山委員からは、大統領選と外交方針についての御指摘を頂戴し、伊藤(亜)委員からは、大統領選からトライラテラルの話、御指摘を頂戴したところでございます。根本委員からは、大統領選が経済の見通しに与える影響、フィスカルのところに絡めて御指摘を頂戴し、五十嵐委員からは、大統領選が核合意に与える影響について御指摘を頂戴したところでございます。
無論、大統領選はついこの前あったところでございますけれども、非常に世界のuncertaintyが高まっている。それはIMFでも指摘があったところでして、この前の大統領選がこうだからこうなるとか、そういうふうなことを、現在予断をもって申し上げることはさすがにできませんけれども、しっかりウオッチしていかなければいけないところは認識しているところでございます。
その上で、順々にお答えいたしますと、まず選挙イヤーだったというところはまさにそのとおりで、今週の話なので米国大統領選が非常に印象に残っていますが、しかし、よく考えてみますと、イギリスでも、フランスでもございました。ついこの前でもありますが、ドイツでもございました。非常に主要な先進国で多数、いろいろと大きな動きがあったことは記憶に新しいところでございます。何か起こったから、AだからBだというふうなことが端的に言えないのがこのuncertaintyの高い世界だと考えておりますので、どういうふうなことが起こるのか、しっかりウオッチしてアジャストしていかなければいけないと認識しているところでございます。
例えば、具体的にこの価格が上がるのか下がるのか、そういうことは今すぐにどうこうということは全然分からないところでございます。ただ、多国間協調の話がございましたけれども、池田国際機構課長からも指摘がありましたが、我々、様々な枠組みを大事にしているところで、それが変わることはないだろうと考えております。
その上で、例えば経済のフォーキャストがどうなるのか。そういうのもまだすぐにどうこうというのは正直分からないところではございますけれども、そこもしっかりと今後の行く末をウオッチしていかなければいけないだろうと考えております。
多数の御指摘を頂戴して、ただ、まだ1週間もたっていないところでして、どうこうというふうなことが今すぐに申し上げられる状況ではございませんけれども、このuncertaintyの高い中、世の中の動きが日本に与える影響について引き続き注視してまいりたいと考えております。
ありがとうございます。
○木原開発政策課長開発政策課長の木原でございます。今事務年度はバイの二国間のODAですとか、いろいろな形の支援の政策・立案をやらせていただいております。昨年度からお世話になっております。引き続きよろしくお願いいたします。
私のほうから3点、保健の話と気候ファイナンスの話、あとは、御質問という形ではありませんでしたけれども、インドの関係で澤田先生からお話がありましたので、JBICが何をやっているかということを御紹介させていただければと思います。
1点目の保健ですけれども、澤田先生、杉山先生に、UHCハブですとかパンデミックファンドに御言及いただきました。ありがとうございます。澤田先生から、公的財政マネジメントハブという形での御発言がありましたけれども、来年つくろうとしているUHCナレッジハブもかなりそれに近いコンセプトでやっているというふうには思っております。もともとは、2019年にG20の議長国が日本だったときに、財務プロセスと保健大臣のプロセスをうまく統合して、より複合的に財政の観点を含めながら議論していこうという枠組みを立ち上げたということがあります。その後、こういう枠組みは、G20、その後G7でも定例化しておりまして、それぞれワーキング・グループがあったり、年に1度大臣会合があったり、そういう取組が引き続いています。そういう中でナレッジハブにつきましても、世銀と日本の財務省、それに加えてWHOと厚労省、この4者でうまく連携しながらハブを立ち上げようということで今中身を議論させていただいています。来年夏ぐらいには具体的に立ち上げたいと思って準備を進めております。その中でいろいろな知見を集約したり、あるいは実際に途上国の方々を呼んで研修したりトレーニングをしたり、そういうことをやりたいと思っているわけです。なぜ日本に置くのですかという話が当然WHOなり世銀からあるわけです。その中で、我々も1つ、いろいろな形でアピールしたいと思っているのは、まさに高齢化の話、あるいは国民皆保険制度であるとか、日本ならではのものをうまく今後の研修プログラムにいかに盛り込んでいくか。そういう形で今後検討していきたいというふうに思っています。
パンデミックファンドにつきましては、持続可能性というお話がありましたけれども、もともと2022年に立ち上げられまして、今の時点で各国のプレッジが17億ドルぐらいあります。ただ、かなり一生懸命支援は進めてきておりまして、来年の前半にはこの資金がなくなる状況で、今後2年間、2025年以降2年間のファンディングの目標として、今パンデミックファンド事務局が20億ドルの目標を立てています。そういう中で、今回、日本としては、資料の中でありましたとおり、5,000万ドルの支援を追加でプレッジする意向を表明したことになっております。足元ではエムポックスの対応ですとか、パンデミックファンドが非常に積極的にやっておりますので、日本としてもできる支援を続けていきたいと思っているところでございます。
2点目の玉木委員から御指摘のありました気候ファイナンスの部分ですけれども、御指摘のように、今回資料の中にはなかったかもしれませんけれども、G20でブラジルが議長国になって、新しく外務省のシェルパプロセスと財務大臣のdeputyのプロセス合同の枠組みとして立ち上げたタスクフォースが2つあります。1つは飢餓と貧困。これは、大統領の下で、ボルサ・ファミリアの時代からいろいろな形で進めてきたものをブラジルとしてグローバルな課題としてきちんと解決したいということ。2つ目がクライメイトの関係です。こちらもシェルパ、外務省のプロセスと財務省のプロセス合同で議論して、一つの成果物としてdeclarationが今回の秋総会の前に出ております。他方、中身としてどこまでハイライトされているのかというのが玉木委員の御指摘だと思います。確かに2022年に1,000億ドルの目標は達成された中で次の目標をどう設定するのかというのを特に先進国側がよく注視している状況であります。この後、COPがありますし、まさにブラジルがなぜこのトピックを取り上げたかというと、来年のCOP議長国はブラジルですので、そういうところを見据えながらまた議論が続いていくのかなと思っているところでございます。
あとは、財務トラックでできることとしては、9ページに少し詳しめに書いてありますけれども、今一生懸命やっているMDBsの改革。これは既存資本の活用というのがファイナンス面でありますけれども、何に使っていくのかというときに、グローバルチャレンジにきちんと使っていくんだ、その中でみんなが一番念頭に置いているのは気候変動への対策だと思いますので、特にMDBsの文脈では引き続き気候変動対策は何をやっていくのかというのが一丁目一番地でファイナンストラックでも議論されているのかなと思っております。
最後、3点目にインドの関係ですけれども、澤田先生からJICAの関係で御指摘いただきましたけれども、やはりマーケットが非常に大きくて、幾つか御指摘もありましたけれども、これから非常に大きな国になっていくということで、民間ベースでの協力もこれから大事になってくると思います。例えば、直近でも、JBICで申し上げますと、物流のモーダルシフトの関係で、貨物鉄道の敷設をして、要するにトラックの物流から鉄道に動かしていく。それによって物流も効率化し、特に気候変動の問題でも意味がある。そういうような支援をやったり、あとはNTTさんがデータセンター分野でインドで非常に頑張っておられまして、そういうものを引き続き日本としてもサポートしていく。これはデータセンターですので、経済安保的な関係も当然含めてこれからやっていく課題だと思います。あとは日印ファンドをJBICは設けておりまして、これはもう少し規模の小さい、新しく今後出てくるような技術を見据えた上で、いろいろな形で日印間のビジネス協力を進めていくような取組もさせていただいております。こういった形で民間ベースでのインドの取組はこれから大事になってくると思っているところでございます。
○西方調査課長調査課長の西方でございますけれども、私からは、根本先生から頂いた御質問のうち、ロシアに対する制裁が今ある中で、ロシアから来日する方等々の支払いの状況について御質問を頂いたと存じます。私たちも来日する方の全ての決済を見ているわけではないのですけれども、まず、VISAとかマスターの欧米系が発行したクレジットカードについては、ロシアではサービスできない形での制裁が効いて資金決済はストップしているところでございます。片や来日旅行者の支払い決済額みたいなものを観光庁等々がデータとして発表していますが、そこにはロシアから来られる方の日本国内での支払いが一応あるというデータが出てきております。これはどういう形で決済が生じているかというのは私たちではなかなか分析できていないのですけれども、ただ、資金決済サービスそのものは、欧米系が発行しているクレジットカードについて、あるいは日本が関係するクレジットカードサービスに関しては制裁でストップしているところでございます。
それから、私は夏まで主税局で国際課税を担当していたもので、さっき国際機構課長からも説明がありましたとおりですけれども、補足しますと、確かに補助金と減税というのは、本来、財政効果は同じなのですが、今のグローバル・ミニマム課税だと基本的に所得額に占める支払い税額の割合で計算してしまいますので、補助金は分母の所得を足すもの、減税ですと分子の税負担額を減らすということで、同じ額を減税あるいは補助金を出しても、実効税率を計算すると補助金のほうが有利になってしまうということです。今のルールの原則を追求してしまうと、減税から補助金にどんどん政策シフトしてしまうというバイアスがあるので、その問題意識はございます。それから、国際機構課長が申したとおり、今refundable tax credit、要するに払い戻し可能なtax credit、これは減税なのか補助金なのかよく分からないということで、今のルール上は補助金と同等に扱うことになっていたりします。ですので、ハイブリッドな形の財政ツールをグローバル・ミニマム課税の中のルールでどうやって扱うかというのはなかなか結論が出ない議論でして、まさにオンゴーイングでいろいろな見直しをしているところです。
それから、片山委員からマルチ条約のということで、先ほど国際機構課長が申しましたとおり、ほぼ条約そのものは完成に近いのですけれども、先ほど申し上げた移転価格税制の交渉がパッケージで交渉されている関係があって、最終的な条約の確定、adoptionと言っていますけれども、なかなかそこにまで至っていないということですが、今回のG20のコミュニケ等々では、引き続き早期の署名を目指すと書かれております。
補足まででございます。
○神作分科会長活発な御議論を頂き、大変ありがとうございました。
本日まだ若干時間があるようでございますけれども、ほかにもし御発言の希望がございましたら御発言いただければと思います。いかがでしょうか。オンラインで御参加の方もよろしゅうございますか。
亀坂委員、御発言ください。
○亀坂委員ありがとうございます。本日頂いた資料の6枚目、7枚目のことに少し関心がありまして、お時間があるようでしたら感想に近いことを述べさせていただければと思います。
事務局からいろいろ御説明いただいて、喫緊の課題への対応だけでも本当に大変なお仕事をされているのだなと感じて拝聴させていただいておりました。6枚目、7枚目の国際課税の内容とか、あと私が一番興味を持っているのは7枚目のウェルビーイングのことですけれども、あまり触れられなかったので1ラウンド目では発言を控えさせていただいたんです。私は2012年から内閣府の客員主任研究官として5年間ぐらい日本のウェルビーイングデータの分析に携わっておりまして、現在も内閣府の生活満足度調査に関する研究会のメンバーでありますために、少しだけ発言させていただければと思います。
今、どうしても米国の大統領選の結果を受けて、国際課税とかウェルビーイングとか、ひょっとしたら後退するのじゃないかということで、なかなか話題として進めにくくなるのかもしれないですけれども、ウェルビーイングも、私は2012年ぐらいから財務省の方々にも、OECDでこういったウェルビーイングを大分重視していろいろな会合が開かれているので、財務省の方々もウェルビーイングに関する政策に関わったりされたらいかがでしょうかと申し上げてきました。最近では、G7諸国のなかにもウェルビーイングに関する調査研究結果を国の予算編成などに活用されたりしている国があり……(音声中断)
○神作分科会長亀坂委員、音声が届かなくなっておりますけれども。途中で発言が途切れてしまいましたので、少し前に戻って御発言ください。
○亀坂委員そうですか。すみません。
興味を持っているのがスライドの6枚目、7枚目で、特に国際課税とかウェルビーイングとかですが、大統領選の結果を受けて少しこういった関心が薄れてしまうかもしれないですが、私は、日本では2012年から内閣府の客員主任研究官として5年ぐらいウェルビーイングの生活満足度のデータの分析とかに従事してきたんです。今も内閣府の生活満足度に関する研究会のメンバーをさせていただいているのですが、中長期的な課題もぜひ忘れずに取り組んでいただければということだけほぼほぼ申し上げたくて、先ほど事務局から、いろいろな不確実性が高まる中で、合意できるところ、多面的にいろいろなことを検討されて多角的な枠組みを考えているということでしたが、国際課税とかウェルビーイングとか、あるいはAIも少し関心があるんですけれども、合意できるところは合意できるという形で、中長期的な課題にも引き続き取り組んでいただければと思います。
あと、AIは、G7首脳陣も規制とかに非常に関心を持っていると思うのですけれども、日本だと経産省が管轄だったりして、もうちょっと日本政府内の風通しとかもよくしていただいて、いろいろなことを進めていただければと思った次第です。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
ほかに御発言の御希望はございませんでしょうか。
それでは、御説明の追加がございます。よろしくお願いいたします。
○池田国際機構課長亀坂先生、御指摘、御質問いただき、ありがとうございました。このウェルビーイングについて、極めて重要な課題であるにもかかわらず私が説明の中ではしょってしまったことを反省しております。
こちらは、今回のG7のコミュニケにも明記されましたとおり、日本議長下でG7で本格的に議論を始めたテーマでございます。また、コミュニケにもありますが、つい今週11月4日から6日まで、ローマで第7回OECDウェルビーイング世界フォーラムが開催されまして、三村財務官が参加して貢献をしております。御案内の先生方もいらっしゃるかと思いますけれども、G7日本議長下の最後の成果物として昨年12月にウェルフェアを追求する経済政策に関するPresidency Noteを公表しています。この中で、多様な価値を反映したウェルフェアを測定するための5つのアプローチということで、例えばGDPの限界への対応、これはよく指摘されることですけれども、無給の家事労働とか無料のデジタルサービスはGDPには反映されない一方で、薬物売買などといったものは反映されることについてどうするのか、では、GDPを捕捉するような指標はどういったことがあり得るのか、将来世代への配慮をどういうふうに定量化して把握するのか、また、どのぐらいウエートづけをするのか、あるいはどんな指標を取り入れるかということに関しては、当然、幅広い主体とのエンゲージメントが必要であろうとか、こういった取組を継続してやって少しずつブラッシュアップしていこう、そういう中で政策立案、予算、それから政策評価の枠組みにも入れていこうというようなことをまとめた形で世の中にお示しすることができました。これは日本議長下で旗を立てたことであります。また、内閣府ですとか様々な学会の皆さん、あるいは市民社会の皆さんが取り組んでおられることも吸収しながら貢献していけるようにしたいと思っております。
長期的な視点も忘れずに頑張ります。ありがとうございます。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
それでは、植田委員、御発言ください。
○植田委員すみません。時間があるので最後に1つだけ。8ページの先ほどのブレトンウッズ会議80周年記念のところに少々戻らせていただきまして、この一番下に、「会議の後」という非常に変な言葉がついていまして気になったんです。米印1で「地政学に関し……「戦争及び紛争が世界的なマクロ経済・金融に与える影響について議論」し、「IMFCが、地政学的及び安全保障問題を解決するフォーラムではないことを認識」」と書いて、その次に米印2で「「進行中の戦争及び紛争は世界経済の大きな負担」との文言を明記」と書いてあります。これは、ある意味では、例えば気候変動も同じですが、気候変動に関し、その影響がマクロ経済や金融に与える影響は議論するけれども、経済とか金融が気候変動に与える影響は議論しないというのと同じようで、それは変なんですね。
ここも同じに変でして、本来であれば、そもそも大昔から戦争の大きな原因というのは、植民地をいかに取り合いするか、ブロック経済化がいかに戦争に導いたか、まさにブレトンウッズ会議のときの記録を読むと、なぜIMFができて、なぜWTOみたいなGATT体制ができたかという大きな理由の1つが、ブロック経済を止めることによって、世界経済だけでなくて、世界の平和のためにも資するから我々はIMFをつくり、WTOみたいなものをつくり、世銀をつくるんだというのがブレトンウッズで特に議論されているわけなんです。それにもかかわらず、ここのところで、もちろん簡単には解決できないとは思いますけれども、少なくとも経済とか金融の側面から見ても、世界の地政学的な安全保障問題に何らか多少なりとも解決の方向でくみすることを目的とするぐらいのことは本来は書くべきではないかと思います。それを駄目だと言うのはおかしい話だと非常に思います。あまりにも外務省系の仕事とのデマケをし過ぎているという気がここはいたしまして、そこのところをぜひ次回以降何とかしていただければと思います。
○池田国際機構課長植田先生、ありがとうございます。この文言については、繰り返しになりますけれども、サウジアラビアが議長国として、何とか共同声明に盛り込めないかどうかということも視野に入れつつ妥協の中で書き上げた文言ではあるわけです。かつ、そういう意味でコンセンサスの得られた文言ではないということではあるのですけれども、我々も、IMF・世銀の設立に、戦間期の様々なブロック経済ですとかthy neighbor policyみたいなものが背景にあったことはよく認識していまして、まさにそういう視点を今回のIMF・世銀の総務演説の中に盛り込んでおります。
ここで恐らく言っているのは、解決するという意味でリゾルブする。目の前でやっていることをどうするんだという、まさに外交交渉みたいなことは少し範疇から外れるのであろうということを書いていると我々は理解しております。
他方で、全く影響がないかというと、決してそういうことはないというふうに思っております。したがって、我々としては進行中の戦争や紛争が世界経済のまさに大きな負担であり、リスクであろうという認識自体はしっかりと合意できた文書の中に盛り込まなくてはいけないということは強く主張しております。それが結果として、今回の議長ステートメントの中でも、文言に合意した以下のところに入っているということで、資料にある米印2の部分で明記させていただいたということでございます。
ありがとうございます。
○神作分科会長どうもありがとうございました。
ほかに御発言はございますでしょうか。よろしゅうございますか。
大変活発な御議論を頂き、ありがとうございます。
最後に、局長から御発言ください。
○土谷局長委員の皆様、貴重な御意見、御質問をいろいろ賜りまして、ありがとうございました。私のほうから少し、やり取りを聞いて思いましたことを最後に話させていただきたいと思います。
1つ目としましては、ちょっと印象に残りましたことを中心に申し上げますと、冒頭、植田先生が改めて構造改革の重要性を強調していただきましたが、確かにここ数年、結局、インフレという金融的事象に我々は影響を受けて、そちらの対応を中心にどうしてもやらざるを得なかったわけですけれども、結局のところ、国民の生活の向上に資するのは生産性の向上であって、それをもたらすのは構造改革の実施でございます。その点をどう国民に理解していただくか。コミュニケーションの重要性とともに、改めてそういうことが国民の役に立つんだということをどう伝えていくのか、重要性を改めて認識させていただきました。
あと、底流に流れておりましたのは、様々な選挙におきまして、今後、国際情勢がどう動いていくか。かなり不透明感が高まった中で、日本はどう対応していくのか。もちろん、日本としまして、多国間主義でございますとか、自由貿易に立脚する、そこの基礎は変わらないわけですけれども、当然、情勢は変わっておりますので、それにどううまく対応していくのか。既にこの2年間を振り返りますと、ウクライナでの戦争あるいはガザでの紛争も踏まえまして、率直に申し上げまして、私がずっと国際金融で長年携わってきていたパラダイムは相当揺さぶられてきたというのが実情でございます。そういう中で、マルチ、G20という枠組みを基本としつつ、伊藤(亜)先生のお話にもございましたようなプルリの枠組みですとか、バイの枠組み、そういうものを新たに立ち上げたり、今までの取組を強化したり、例えば太平洋島嶼国に注目したり、こんな取組をここ2年間同時並行でやってきたところでございます。また、来年以降どうなるか分かりませんけれども、いろいろ構えを広くして様々な取組に柔軟に臨んでいく必要があるのだろうと思っております。
国際通貨体制をどう編成していくかについて、これも国際局にとっては基幹的な業務でございます。ドルがどうなっていくのか。いろいろBRICs等々の動きもございますし、CBDCについてもIMFと協力しながらいろいろ目配りして柔軟に対応していく必要もございます。あるいは、この延長線上で細かな話を申し上げますと、太平洋島嶼国の話につきまして、玉木委員から、コルレスなど昔からあった話ではないかという御指摘もございました。それはそのとおりでございまして、私自身、4年前にFATFの日本代表をやっておりましたが、そのときも常にFATFはマネロンを何とかしなくてはいけないということで強化の立場ですが、また同時並行でデリスキング、実際コルレスを閉じられてしまうと弊害が同時発生しますので、それも常に議論している対象になっておりました。
私自身、アフリカで今どうなのかというのは詳しくフォローしておりませんけれども、恐らく太平洋島嶼国あるいはカリブ諸国のような島国についてはデリスキングの弊害が顕著に出ているということで、足元、太平洋島嶼国の場合は、特に気候変動の問題と並んで、彼ら自身が相当強く国際的な場裏でも声を上げている。それについてどう対応していくのかが喫緊の課題になってきている形ではないかと思ってございます。
特に今、米・豪・日あるいはニュージーランド、この辺りで太平洋島嶼国のコルレス問題に取り組んでいこうとやっておりますが、その背景には、こうした切実なこれらの国のニーズに加えまして、ある種の地政学的な話もまた、実際問題としてはあるということでございます。
あと、我々からすると、そういう意味では大切な二国間関係の対象としましてインドと中国についてでございます。
インドについては、いろいろバイの枠組みを強化してやり取りをしているということですが、もともと次官級の対話を始めましたのはG20でインドが議長国になったということで、それが契機です。この間の財務協議のときに先方からいろいろお話を伺って、先ほどの澤田委員のお話などとの関連で面白いと思いましたのは、インドは、高成長を続けているのだけれども、引き続き課題は工業化というんですか、要するに、よい製造業をどう持ってくるか、あるいは都市化をどううまく進めるか。2つとも関連しているかもしれませんけれども。あと、若者にいい就職先をどうやって見つけていくか、これが非常に切実な課題なんだと強調していたのが印象に残っています。想像してみるに、中国はかなり高度成長に成功したわけですけれども、インドは、そういう意味では中国的な成長パスにはまだ必ずしも乗れていないのかもしれない、そういう印象を持ちました。
中国との関係につきましては、ASEAN+3等の話もございましたが、財務省・中央銀行レベルの関係では、これまでもそうでしたが、今の環境下でも緊密に話をして連携は取れていると思っています。
ざっとした感想になってしまいましたが、皆様の御意見、ありがとうございました。とともに、引き続き今後もよろしくお願いいたします。
○神作分科会長土谷局長、大変ありがとうございました。
オンラインで御参加の五十嵐委員、手を挙げていらっしゃるかと思いますけれども、何か御発言がございますか。
○五十嵐委員申し訳ございません。もう時間が過ぎていることは承知しておりますが、今の御説明の中で1点だけ御参考までということで。アフリカで例えばどのような形でコルレス銀行撤退問題のような状況をハンドルされているのかという問題提起がございましたが、私は勤務先の法律事務所のアフリカ・プラクティスにも関わっており、その中で驚いたこととしまして、モバイルペイメントの発達がございます。そもそもケニアの辺りですと銀行口座自体をお持ちでない方がかなりいらっしゃるということで、早くから携帯電話を使った送金システムM-PESAというものが利用されております。現地の通信事業者Safaricomが2007年にローンチしたサービスで、送金もできますし、ローンも組めるといったサービスが利用されているようでございます。
御参考までですが、以上です。
○神作分科会長貴重な情報提供、ありがとうございました。
それでは、時間も過ぎておりますので、本日の議事はこれにて終了させていただきたいと思います。
今回の議事録の作成につきましては、僣越ではございますけれども、私に御一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、会議の終了後にその旨を事務局に御連絡いただきますと幸いです。御連絡いただきました委員の方には、議事録を案の段階で事務局より送付してお目通しいただくこととさせていただきます。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解いただいたものと取り扱わせていただきます。
次回の分科会につきましては、事務局と御相談の上、御連絡をさせていただきます。
本日は、長時間にわたり御出席、御参加いただき、熱心に御討議いただき、誠にありがとうございました。
午後0時06分閉会