産総研:ニュース
2025/01/01
2025年 年頭ごあいさつ
新年、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ちょうど一年前の今日、令和6年能登半島地震が発生しました。この地震により亡くなられた方々へ哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。産総研は迅速に石川県へ調査団を派遣し、国の地震対策に協力するとともに、持続可能な社会インフラの整備に向けた取り組みを進めています。今後も防災や減災に寄与する技術の開発に力を入れ、災害に強い社会づくりを目指します。
さて、昨年は、AI技術の飛躍とともに、その社会への影響が注目を集めた一年でした。機械学習や深層学習の基礎を築いた研究にノーベル物理学賞が贈られると同時に、化学賞がAIを利用したタンパク質の設計と立体構造予測の研究に授与されたことは、AIの重要性が基礎と実用の双方で高く評価されたことの証左です。同時に、AI技術の急速な進展がもたらすリスクや規制の必要性についても議論が活発化しました。こうした科学技術の進化と社会的責任のバランスが、今後ますます重要になります。
産総研でも、AI研究を重点分野の一つと位置付け、国産の大規模言語モデルの開発に加えて、画像や音声も組み合わせたマルチモーダルAIの開発などを強力に推進しています。AI処理に特化した計算インフラストラクチャについては、これまでの性能を7倍以上高めた「ABCI 3.0」の一般提供を1月20日にスタートさせます。一方、生成AIの安全で責任ある活用を目指し、国内外の企業や研究機関と連携して、安全性に関するガイドラインの策定や標準化にも取り組み、AIの適切な社会実装を進めています。
さらに、今後社会課題の解決や産業競争力の強化につながるような重要な研究分野とAI技術との融合を通じて、新たな可能性を切り拓いています。
産総研は、2023年7月に「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」を設立しました。ここでは、量子・AI融合計算基盤を活用してハードウェア開発からサービス提供まで幅広く産業界と連携し、サプライチェーンとエコシステムの形成を目指しています。また、本年設立予定のバイオものづくり拠点では、バイオ技術とAIを含むデジタル技術を融合することで新素材の開発を推進し、バイオテクノロジー分野でのブレークスルーを目指します。両拠点の今後の成果にぜひご期待ください。
産総研は、2023年4月に外部法人として株式会社AIST Solutions(AISol)を設立しました。AISolは産総研の豊富な技術資産を活用し、企業との協業により社会課題解決と産業競争力強化を目指します。具体的には、マテリアルDX、デジタルプラットフォーム、AI・半導体など7つのソリューション領域を設定し、企業ニーズに基づいた事業共創やスタートアップの創出支援などを行っています。
例えば、AI・半導体事業では一般社団法人OpenSUSIを設立しました。半導体試作用設備の整備を通じて国内半導体産業の発展に貢献します。また、「AISol スタートアップ」に5社を認定し、ユニコーン企業への成長に向けて支援しています。
AISolは本年もより一層マーケティング力を強化し、他の公的機関との連携も強化しながらナショナルエージェントとして活動してまいります。
間もなく産総研にとって2020年4月から始まった第5期中長期目標期間の締めくくりとなります。これまでに実施してきた改革を成果に結びつけ、目標達成への総仕上げを行います。それを踏まえて、本年4月からの第6期においても世界最高水準の研究成果の創出とその社会実装に取り組んでまいります。
私たちはこれからも、社会に高い価値を提供し、信頼される組織として社会課題の解決と産業競争力の強化に貢献するとともに、日本全体の「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の中核としての役割を果たせるよう、さらなる飛躍に挑戦してまいります。
最後に、皆様方のご健康とご多幸をお祈りするとともに、本年も産総研への変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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