各地域からみた景気の現状(2025年1月支店長会議における報告)
2025年1月9日
日本銀行
今回の支店長会議における報告を総括すると、一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。前回の支店長会議開催時点(2024年10月)と比較すると、全9地域中2地域で総括判断を引き上げている(参考参照)。
主な需要項目等別にみると(注) 、設備投資 について、建設コスト高による先送り・縮小や、発注先の人手不足による工事・納入の遅れなどが一部でみられるものの、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資や、IT関連需要の中長期的な拡大期待に基づく能力増強投資など、幅広い分野で積極的な投資姿勢が維持されているとの報告が多かった。個人消費(インバウンド需要を含む) については、賃上げが消費の押し上げに寄与しているとみられるもと、旺盛なインバウンド需要もあって、サービス消費で、観光・宿泊や外食などの需要が引き続き堅調であり、財消費でも、都市部の百貨店等における高額品の好調な販売が続いているほか、気温の低下による冬物衣料品の販売が増加したなどの報告が多かった。また、「推し活」などのこだわり消費の好調さを指摘する報告もあった。ただし、スーパー等を中心に、物価高を受けた消費者の節約志向の影響が引き続きみられており、今後の動きを注意してみていく必要があるとの報告もあった。生産 については、一部の素材などにおける生産調整の動きが報告されたものの、IT関連財で、AI関連需要の増加等を受けた増産の動きがみられるほか、自動車関連では、高水準な生産が続いているとの報告があった。
雇用・賃金面 では、2025年度の賃金設定について、現時点では競合他社の動向を見極めており、賃上げ率を固めていないとの企業の声や、中小企業を中心に、収益面の厳しさから慎重な姿勢を示す声も引き続き報告された一方、すでに、賃上げ率の具体的な検討を進めているとの企業の声も報告された。全体としては、構造的な人手不足のもと、最低賃金の引き上げもあって、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透してきているとの報告が多かった。
企業の価格設定面 では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは緩やかながらも続いているとの報告が多かった。また、人件費の価格転嫁については、なお難しいとする企業の声はあるものの、賃上げ原資確保のための転嫁を実施・検討する動きが引き続き広がっているとの報告が多かった。ただし、消費者の節約志向の影響がみられるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格商品の品揃え強化などの動きも引き続きみられているとの報告があった。
(参考)
各地域の景気の総括判断と前回との比較 | 2024年10月判断 | 前回との比較 | 2025年1月判断 |
北海道 | 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している | 不変 | 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している |
東北 | 緩やかに持ち直している | 右上がり | 持ち直している |
北陸 | 一部に能登半島地震の影響がみられるものの、緩やかに回復しつつある。なお、奥能登豪雨の影響については、被災地に甚大な被害を及ぼしているが、今後、マインド面を含めてどの程度、経済を下押ししていくか注視していく必要がある | 右上がり | 一部に能登半島地震の影響がみられるものの、緩やかに回復している |
関東 甲信越 | 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している | 不変 | 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している |
東海 | 緩やかに回復している | 不変 | 緩やかに回復している |
近畿 | 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している | 不変 | 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している |
中国 | 緩やかな回復基調にある | 不変 | 緩やかな回復基調にある |
四国 | 緩やかに持ち直している | 不変 | 緩やかに持ち直している |
九州・沖縄 | 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している | 不変 | 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している |
- (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。