農林水産省 大臣等記者会見 2025年05月09日 - ● (大臣から)花き業界による「母の日」の取組 ●米の価格高騰と政府備蓄米の流通状況 ●政府備蓄米の買戻し条件の見直し ●米国との2回目の関税交渉 ●米の価格高騰への対策に関する総理指示 ●中山間地域等直接支払制度の今後の方向性 ●米英間の関税交渉の合意

2025/05/09  農林水産省  

江藤農林水産大臣記者会見概要

日時 令和7年5月9日(金曜日)8時59分~9時23分 於: 本省会見室
主な質疑事項
  • (大臣から)花き業界による「母の日」の取組について
  • 米の価格高騰と政府備蓄米の流通状況について
  • 政府備蓄米の買戻し条件の見直しについて
  • 米国との2回目の関税交渉について
  • 米の価格高騰への対策に関する総理指示について
  • 中山間地域等直接支払制度の今後の方向性について
  • 米英間の関税交渉の合意について

冒頭発言

大臣

私から冒頭発言がございます。(パネルを指さして)そこを見ていただきたいと思いますが、もうすぐ母の日でございます。私も母は亡くしましたが、毎年欠かさず、地元のスイートピーとか、バラとか、そういったものを母の日に送ってまいりました。ぜひ、この機会にお母様に対してお花を送っていただきたいと思います。母の日の贈り物にかける予算は、毎年増加しているという調査結果があります。
そして、母の日にお花をプレゼントしようと考えている方が、大体7割ぐらいになっているという調査結果もあります。お母さんも、6割以上の方がお花をもらうと嬉しいという調査結果もありますので、ぜひ皆さん方もお花を送っていただきたいと思います。(花瓶を持って)これは宮崎の花ですが「ブルーフレグランス(スイートピー)」と「サンフレッシュレモン(ヒマワリ)(※正式名称は「サンリッチフレッシュレモン」)です。私からは以上です。

質疑応答

記者

一昨日発表されたスーパーでの米の販売価格は17週連続で値上がりし、4月前半までの備蓄米の販売状況調査では、こうした小売業者への流通が進んでいない実態が浮き彫りになっています。こうした状況に対する大臣の受け止めと農水省としての今後の対応方針をお聞かせください。

大臣

備蓄米は、足りないというご指摘があったので、31万トン放出いたしました。しかし、備蓄米自体もしっかり流通ができていないということは、やはり改善すべき余地が多分にあるというふうに思っています。備蓄米がスーパーの店頭に並び始めておりますが、安いものでは、昨日、ホクレンの会長さんとお話をする機会もありましたが、2,980円だとおっしゃっていました。パールライスですが。税抜きでも、大体安いもので3,000円前半、大体東京周辺では3,500円ぐらいで流通し始めておりますが、ないところにはない。あるところにはある。量的にも足りないというのは全くの事実だと思います。
このため、先週2日(金曜日)、事務次官と農産局長から全農の理事長に、農林水産省に来ていただいて、政府備蓄米が流通している量が一定程度に留まってしまっていると。そして、消費者の皆様方にもっと早く備蓄米が供給されるように、それを最優先にして速やかに取引先との調整を進め、そして、前倒しで供給の拡大を行うことを要請させました。そして、夏までに、毎月、備蓄米の売り渡しを行う予定ですから、政府備蓄米を必要とする全国の小売、中食・外食の業者に対して、一層の安定供給に努めるように要請をしたところであります。
全農さんからは、取引先である米穀卸売業者等と協議をして、備蓄米の取引時期(引き取り時期)の前倒しを推進すると。それから、備蓄米の取引時期(引き取り時期)の前倒しが可能となるように、運送業者、倉庫業者としっかり協議をすると。そして、取引先からの出荷依頼の増加に対応できるように、出荷体制、輸送体制の強化にも努めると。グループ会社と連携をして、備蓄米からの精米製品の製造及び販売の早期化を図って、取引先の速やかな精米製品の販売などをするようにいたします、という回答をいただいているところです。
自分としましては、私もできるだけ週2回はスーパーに足を運んで備蓄米の調達状況を見るようにしておりますし、テレビも当然見ております。様々なメディアにも接するようにしています。テレビを見ておりますと、お年寄りの、年金生活のご夫婦が、米売り場の前で「この値段では買えない」と言っている姿。お母さん、主婦の方が「子供はお米が大好きだけれども、この値段ではちょっとためらってしまう」と言っている姿。備蓄米を求めて様々な販売所を車で訪ね歩いている姿。そういうのに触れると、やはり何とかしたいという気持ちは、本当に強く持っています。この間も申し上げましたが、そういう方々に対して、政府の財産である備蓄米は国民の財産であります。それを放出するという決断をしたにもかかわらず、最終的に今の段階では、当初の期待された結果が出ていないということについては、やはり申し訳ないという気持ちは持っております。その気持ちを胸に、これからさらに放出は続くわけですから、昨日も夕方までずっと担当局、事務次官にも参加してもらって議論を進めて参りました。なにぶんやったことがない備蓄米放出をやっております。1回目、2回目、3回目と、それぞれ工夫はしてきました。卸からの調達のやり方にも工夫をしてきましたが、さらなる方策はないか、日々検討しております。とにかく、1日も早く備蓄米放出の効果を国民の皆様方が実感していただけるように、さらに努力をしようと思っております。

記者

備蓄米について、本日、備蓄米の買戻し要件の緩和について検討されている旨の一部報道があったのですが、事実関係と見解をお願いします。もう1つが、米国による関税について、先日、赤澤大臣が2回目の対米交渉を終えられましたが、農水大臣として何か報告や指示を受けられていたら教えてください。

大臣

備蓄米の買戻し時期については、国会答弁や議事録を見ていただければわかりますが、私は1年にこだわらないということは、何度も何度も申し上げております。米価が高い水準で維持されている段階で、市場から米を吸い上げるということはありえないということです。公明党、自民党の幹事長の間で、これ(買戻し時期)を伸ばしたらいかがかというお話があったということは承知しております。これも報道等で見たわけです。しかし備蓄米は、今、もう30万トン出して、60万トンという水準にまで落ち込んでいます。国民の安全・安心、備えということを考えると、備蓄米は一定水準を維持するということは本来的な使命としてありますので、これはしっかり守っていかなければなりません。これについては、ご意見をしっかり承りましたので、私もご意見をしっかり受け止めた上で考えます。しかし、当初から、1年にはこだわらないと、担当大臣である私が申し上げているのですから、それについては、一定のお答えはもう既にできているのかもしれません。ただ、森山幹事長や公明党幹事長は、私の尊敬する大先輩ですから、そのご意見は重く受け止めております。
日米のことに関しましては、赤澤担当大臣と私は同級生で、年に3回か4回ぐらいは楽しく酒も飲み交わす中なので、かなり砕けた雰囲気で常に話は聞かせてもらっています。しかし、どのような報告を彼から受けたかということについては、まさに外交の機微に触れることですので、申し訳ないが、お答えすることはできません。ただ彼が、非常に多勢に無勢の中でアメリカに乗り込んでいくわけです。そんな中で言うべきこと、主張すべきことを堂々と述べてきたことについては、友人として立派な態度だと思っております。

記者

先日、石破総理も米の価格が下がらない、(価格を)抑制するための対策を、ということで自民党に対策を考えるように指示を出されたところだと思います。米(価格)が下がらないというのが政府的にも非常に大きな問題になっているということだと思うのですが、農水省としても備蓄米の放出にこだわらない、放出以外の対策を、先ほど質問のあった運用の改善も含めて、どのような対応が今後考えられるのか考えをお聞かせいただきます。

大臣

役所の中では、昨日も夕方まで次官以下、幹部職員全員が大臣室に集まって、ああでもないこうでもないと議論しています。私も毎日、家に帰って、こういうアイデアがあるがどうかと。政策には実現可能性というものが常に問われるのです。アイデアは山のように出ています。役所の中で。こうしたらどうか、ああしたらどうか、私自身も随分たくさんの政策提言を役所に対して出しました。しかし、事務手続的に可能なのか、財政的に可能なのか、法律との整合性はどうなのか、そういうことを検討すると結構大変なのです。私は、国民の財産である、非常時に備えるための備蓄米を放出するということを決断したのですから、この効果を最大限に発揮させるための手立てを考えることが、まずは第一だと思っています。備蓄米以外のところに解決策を今求めるということは、備蓄米を放出しても、あまり意味がないのだということをある意味認めることにもなりかねません。そのことをおそれているわけではありませんが、当初から言われていたのは、量的に足りないから高いのだということに応えて放出を決めました。
色々な報道ベースでは、自民党では「お米券」とか。私が前の大臣ときには「お肉券」というのが出てきて、私はあんなこと言ったことは全くなかったのですが、予算委員会で答弁をするような場面もありました。こういう事態になると、党内からも省内からも色々なアイデアが出てきますけれども、それは出ては消え、出ては消えとするものです。今のところは他に、具体的にこのような方策によって消費者の皆様方のご期待に応えようということは、まだあるとも申しませんし、ないとも申しません。発表できる段階にあるものは何もないということが正確な答弁だと思います。



記者

そうすると、対策を何か別で打つとしても、備蓄米に関するものになるということでしょうか。

大臣

答えられることは今の段階ではありません。



記者

備蓄米の買戻し条件の1年以内という原則について、見直すかどうかということに追加でお伺いします。大臣は「農水省としても1年以内にはこだわっていない。協議次第で延長する」ということは、度々説明していますが、条件上、買戻し期限については、原則として1年以内にするとペーパーとして出しているものがあります。それを見ると、やはり原則は1年以内だろうなということがまずあると受け止められるかと思いますが、そういう原則上というか、ペーパー上でも見直すということをお考えではないのか、お伺いしたいです。一方、現状では入札(分は)すべて落札されているわけで、この条件を緩和したからといって流通量が増えるわけでもないように思いますし、例えば、原則1年以内に買い戻すという条件をなくしたとして、どう効果が発揮されるとお考えでしょうか。

大臣

備蓄米については、そもそも放出することについて、私自身もためらいがありました。何といっても91万トンという、マーケットの方から見れば、玉込めできる玉はこれだけしかないということがわかっているわけです。マーケットをコントロールする人たちというのはプロですから、相手の懐具合を見ながらやるでしょう。既に30万トン出して、残りは60万トンだということも考えるでしょう。今回私がぜひこの機会に申し上げたいのは、もちろん商取引ですから、利益を求めることを追求してはいけないというつもりはありません。ただ、国民の財産である備蓄米を放出したということは、非常事態に対応したことでありますので、このことは、卸の方々についても、商売っけ抜きでご協力いただきたいというのが正直な気持ちです。難しいかもしれませんが。
公文書上、原則1年というものが残っている。それを取っ払ったらいかがかと今おっしゃったが、その次の質問では取っ払っても意味がないのではないかとおっしゃった。まさにそこです。これ(原則1年)を取り払えば、買い戻しはもしかしたらずっと先かもしれないから大変だ、という話になって、持っている在庫を出そうという話になるのか。でも、ならないのではないかと、今、言われましたよね。価格にしても、流通量にしても、我々は局長通達を出し、然るべき人に役所まで来ていただいて(、次官から)要請し、できるだけの努力はしています。とにかく(米を)流してと。国が出したのだから。その分については早く消費者の方々のお手元に届くように協力してとお願いはしております。しかし、法律的な縛りがないので、お願いベースなのです。法的な発表の部分について、1年原則を外すことが、どれほどの政策効果があるのかについては、とても効果があるかもしれないし、もしかしたら意味がないのかもしれない。日々役所も、もちろん大臣である私も、何がベストなポリシーメイキングなのか、相手がマーケットである以上、非常に難しいです。マーケットはコントロールできません。コントロールする気もないです。その答えについては、もう少し先になるかと思っています。そういうご指摘があるということは重々承知しています。

記者

中山間地域(等)直接支払についてお伺いします。まず、年度末の3月末までにまとめるとしていた第5期の最終評価が、今回取りまとまらなかったということで、それに対する受け止めと、大臣は国会答弁等で、度々、中山間(地域等)直接支払の見直しについて言及されていますが、改めて今後どのような見直しを、どのようなポイントを重視してやっていきたいのか、この2点をお願いします。

大臣

一部の委員の方から、まだ議論をするべきではないかと、率直に言うと、反対意見があったという報告は受けております。これまでの集落機能強化加算についての評価が非常に高い。これまでの制度は非常に評判が良いので、これを継続したほうがいいのではないかというご意見だったと承っています。私も大臣になってすぐ、地元の日之影(ひのかげ)町の町長から、彼は責任ある立場にありますので「これについては守って欲しい」という要請を受けて役所に相談をしました。そういうご意見もありましたので、新しい制度に移行するにあたって、急に移行するということであれば、やはり抵抗もあるということですから、差し当たり向こう5年間はちゃんと説明する期間を設けたほうがいいだろうということで、今、緩和措置のようなものをしています。このご意見は、緩和措置に加えて、機能加算のこれまでの制度に対して、新しく加入したいという人たちがいるのではないかというご指摘があったということだろうと思います。新しい方に加入したいのか、見直そうとしている前の方がいいと思っている人がいるのか、それはちゃんと現場の意見を聞いてみないとわかりません。私は、本当にニュートラルな、中山間地域の選出の国会議員ですから、中山間地域のために何がベストか常に考えています。局長からしっかり説明を受けた上で、広域で連携して、人が減っていくわけですから、ちゃんとやれば加算も増えるということであれば、決して悪い見直しではなかったのではないかという評価を私自身はしています。ただ、受け止める側がそう受け止めないということであれば、それはそれで問題なので、これらのご意見も踏まえながらしっかり議論していきます。
中山間地域(等の直接支払)の見直しについて、例えば、山の頂上に平らな土地があるとします。そこで、高原野菜とか、花とか、果物を作っています。これは中山間地域です。ただ、傾斜がないから、中山間地域直払の対象にならないのです。すごい山奥なのに。もっと言うと、例えば私の地元の五ヶ瀬の鞍岡(くらおか)というところは、非常に雪も降るところで、周りは全部山です。その間に平らな土地があって、水田が広がっているのですが、そこも傾斜がないのです。中山間の急傾斜要件に当てはまらないので、支援の対象にならないということです。それはちょっと違うだろうと思います。やはり中山間というところは輸送コストもかかるし、生活インフラについても、非常にハンディがあるところですので、これまでの傾斜要件、条件不利にこだわり過ぎた中山間地域の直払については、見直すべきだというふうに思っております。具体的な内容は、農林水産省でしっかりまとめた上で、熟議の国会ですから、農林水産委員会を通じて、各政党の皆様方のご意見も聞きながら、まとめていかないといけませんので、こういうことだ、単価はいくらだ、というようなことは申し上げません。ただ、特に中山間地域において人口減少の比率が高いということであれば、その地域を地方創生ということで守っていこうということであれば、支援は手厚くするということが基本であろうと思っています。

記者

米国の関税交渉について、昨日、アメリカとイギリスが交渉の合意を発表しました。牛肉などの農産物は両国が関税を引き下げるような内容が盛り込まれているようですが、これについての受け止めや、今後の日米の交渉へ与える影響について、お尋ねいたします。

大臣

米国は米国、英国は英国です。それぞれセンシティビティも違いますし、これまでの両国の、経済連携協定に係る協議の歴史も全く違います。一部メディアの方々はこれが一つのフォーマットになるのではないかというような報道をされる方がおられますが、私はそう思っておりません。日本には日本のセンシティビティがあり、これまで米国と約束してきたことがあります。何度も申し上げますが、日米貿易交渉において約束したことは、農産物についても、日本は誠実に実行しております。牛肉についても、関税は21%台まで落ちてしまいました。38.5%だったのが21.6%まで落ちています。それは約束したからです。我々は約束を守っている誠実な国です。イギリスが不誠実と言っているわけではないです。イギリスがそのような合意に到達したから、我々もイギリスに右にならえという話には、全くならないと思っております。



報道官

それでは、大臣会見を終わります。

以上