2025 年8月 25 日
テルモ株式会社
臓器保存デバイスのイノベーターOrganOx 社を買収し、臓器移植関連分野に参入
待機患者への移植機会をグローバルで拡大し、移植医療の発展に貢献
テルモ株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:鮫島 光)は、臓器提供者(ドナー)から摘出した移植用臓器を保存する「臓器保存デバイス」のイノベーターである OrganOx 社(本社:英国 オックスフォード、CEO:Craig Marshall)の株式を総額約 15 億米ドル*1で取得し、同社を完全子会社化(以下「本買収」)することについて、2025 年 8 月 23 日付で同社及び同社の株主と最終契約を締結しましたので、お知らせします。
本買収を通じて当社は、未充足ニーズが大きく存在し、今後も高い成長が期待できる臓器移植関連分野に参入します。当社が医療機器開発において長年培ってきた技術力と専門性に、OrganOx 社が有する常温機械灌流(NMP:Normothermic Machine Perfusion)の知見やノウハウを融合することで、革新的な臓器保存デバイスをグローバルに提供してまいります。これにより、移植用臓器の使用率向上、マージナルドナー*2の臓器の活用促進、移植後成績の改善、夜間や緊急の移植手術の回避による医療従事者の負担軽減など、臓器移植に関する様々な課題を解決し、待機患者への移植機会の拡大及び移植医療の発展に貢献します。
1.本買収の目的
臓器移植においては、需要に対して提供される臓器の数が不足していることが大きな課題となっており、移植件数が世界最多の米国でも、年間約 6,000 人*3の待機患者が移植を受けられずに亡くなっています。臓器不足の一因として、ドナーから提供された臓器の未使用率の高さが挙げられます。ドナーから摘出された臓器は速やかに処置を行った後、臓器保存デバイスに収められ移植を受ける患者のもとへ輸送されますが、長距離・長期間の輸送等により臓器が損傷してしまうと、安全性の観点から移植が見送られる場合があります。こうした移植機会の損失を減らすため、臓器を長期間かつ安定的に保存できる新たな手法の確立が強く求められています。
OrganOx 社は、2008 年にオックスフォード大学からのスピンオフで設立された医療テクノロジー企業で、NMP に対応した先進的な臓器保存デバイスを提供しています。臓器を冷却して損傷を抑える従来の手法とは異なり、NMP などの体外機械灌流では酸素や栄養を含んだ保存液を体温に近い温度で臓器に循環させることで、従来よりも長期間の保存が可能となります。また、保存中や輸送中も臓器の状態をリアルタイムに評価することができ、機能が低下した臓器の移植を回避して移植の成功率を高めることや、マージナルドナーの臓器の有効活用に貢献することなども期待されています。
OrganOx 社が開発した肝臓用の NMP デバイス「metra」は、2021 年に米国 FDA の承認を取得し、2022 年に米国で上市されているほか、EU、英国、オーストラリア、カナダでも薬事承認を取得し事業を展開しており、これまで延べ 6,000 例以上の肝臓移植での利用実績があります。OrganOx 社は、肝臓用 NMP デバイスにおけるリーディング・プレイヤーの地位を確立しており、今後も市場成長を大きく上回る売上成長を計画しています。さらに OrganOx 社は、2030 年頃の実用化を目指して腎臓用の NMP デバイスを開発中です。
当社は、2025 年 3 月にコーポレートベンチャーキャピタルの Terumo Ventures を通じて OrganOx 社に出資を行い、同社と良好な関係を築いてきました。本買収は、臓器移植関連分野への参入を通じて、当社の中・長期的な成長を牽引する新たな事業を確立し、事業ポートフォリオを高度化することを目的としたものです。今後、両社の強みをいかしたシナジーの創出に積極的に取り組み、テルモグループ全社のアセットを活用することで、より付加価値の高い NMP デバイスの実現を目指します。これにより、臓器移植の待機患者と医療現場の双方が抱える課題に対する革新的なソリューションを提案してまいります。
本買収について、テルモ代表取締役社長 CEO の鮫島 光は次のように述べています。
「臓器保存デバイスのイノベーターである OrganOx 社をグループに迎え入れ、臓器移植関連分野へ参入できることを、大変嬉しく思います。臓器移植は、治療の選択肢が限られる患者さんにとって希望の光となる医療であり、その未充足ニーズに応えることは社会的に大変意義のあることです。ドナーから提供される臓器は、極めて貴重な医療資源であり、移植用臓器をより良い状態に保って患者さんに届けるOrganOx 社の事業は、当社が掲げる患者さんへの揺るぎない約束「Our Promise」とも深く共鳴するものです。今後、臓器移植に関わる多様な課題の解決に向けて、OrganOx 社と共に革新的なソリューションの提供を目指してまいります。」
OrganOx の Executive Chairman である Oern R. Stuge 氏は次のように述べています。
「OrganOx は、臓器移植技術の分野において先駆的な役割を果たし、これまで業界をリードしてきました。今後、テルモのグローバルなインフラを活用し当社の移植用デバイスのさらなる普及を進めることで、世界中のより多くの患者さんに貢献していきたいと考えています。」
*1 現時点の概算であり、本買収完了時の OrganOx 社の現預金、有利子負債及び運転資本等に係る調整を行い、最終的な買収金額を確定する予定。
*2 高齢であること、基礎疾患を有していること、あるいは心停止後の臓器提供であることなど、臓器移植における標準的なドナー条件を満たさない提供者を指す。マージナルドナーから提供される臓器を活用して移植可能な臓器数を増やすことで、臓器移植の待機患者数の減少につながることが期待されている。
*3 米国 Organ Procurement and Transplantation Network、米国 United Network for Organ Sharing の統計データを基に当社で推定。
2.異動する子会社(OrganOx 社)の概要
(1) 名称
OrganOx Limited
(2) 所在地
Oxford, United Kingdom(英国 オックスフォード)
(3) 代表者の役職・氏名
Craig Marshall, Chief Executive Officer
(4) 事業内容
臓器保存デバイスの製造・販売
(5) 資本金
18 千ポンド(2024 年 12 月 31 日時点)
(6) 設立年
2008 年
(7) 大株主及び持株比率
BGF(持株比率は守秘義務により非開示)
Lauxera Capital Partners(持株比率は守秘義務により非開示)
(8) 当 社 と 当 該 会 社 と の 間 の 関 係
資 本 関 係
当社は 100%子会社のテルモアメリカスホールディング社を通じて OrganOx 社の株式を 8,896 株(議決権所有割合 0.5%)保有しています。
人 的 関 係
当社と OrganOx 社の間には、記載すべき人的関係はありません。
取 引 関 係
当社は OrganOx 社の製品のコンポーネントの 1 つである CDI システムを OrganOx 社に販売しています。
(9) 当該会社の最近3年間の連結経営成績及び連結財政状態
決算期
2023 年 4 月期
2023 年 12 月期
(決算期変更に より、8 ヵ月決算)
2024 年 12 月期
連結純資産
10,797 千ポンド
44,805 千ポンド
57,160 千ポンド
連結総資産
15,779 千ポンド
54,082 千ポンド
77,400 千ポンド
連結売上高
12,436 千ポンド
19,785 千ポンド
55,226 千ポンド
連結営業利益
(2,668)千ポンド
2,925 千ポンド
7,193 千ポンド
親 会 社 株 主 に 帰 属 す る
当期純利益
(2,118)千ポンド
8,601 千ポンド
7,531 千ポンド
公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.terumo.co.jp/system/files/document/2025-08/PressRelease_20250825_J.pdf