IIJグループ、「サーキット向けローカル5Gソリューション」を提供開始

2025/11/10　株式会社　インターネットイニシアティブ　

IIJグループ、「サーキット向けローカル5Gソリューション」を提供開始

レース車両の映像・データ伝送に最適な通信環境を、サーキット特性にあわせコストを抑えて構築

2025年11月10日
株式会社インターネットイニシアティブ
株式会社IIJエンジニアリング

株式会社インターネットイニシアティブ（IIJ）および株式会社IIJエンジニアリング（IIJ-EG）は、サーキットを高速走行するレーシングカーのオンボード映像やマシン情報などの伝送にあたり、ローカル5Gネットワークを活用して安定した通信を可能にする「サーキット向けローカル5Gソリューション」を開発し、本日よりIIJ-EGが提供を開始いたします。今後、国内外の主要サーキットへの展開を視野に、本ソリューション導入に向けた提案活動を進めてまいります。
本ソリューションは、2025年9月にハイテクインター株式会社、株式会社M-TEC、株式会社日本サーキット、株式会社日本レースプロモーション（JRP）の協力のもと富士スピードウェイで実施した実証実験において、時速290kmで走行するフォーミュラカー（開発車両）から、オンボード映像（車載カメラ映像）およびテレメトリー情報（マシン情報）が、ローカル5Gネットワークを活用して低遅延・高品質に伝送されたことを踏まえて開発したもので、サーキット特有の通信課題を解決するネットワークを、コストを抑えて導入できるサービスとして、モータースポーツ業界向けに提供します。

ソリューション開発の背景

サーキットの多くは居住人口の少ない郊外に位置し、レース開催時には数万人規模の観客が訪れるため、特定のモバイルキャリア基地局にアクセスが集中し、一時的にネットワークの輻輳が発生することがあります。さらに、広大な敷地内にはモバイルキャリアの電波が届きにくいエリアも存在し、レース開催中にレーシングカーとの安定した通信を確保するには、モバイルキャリアに依存しない独自ネットワークの構築が不可欠です。
IIJグループは、サーキットの独自ネットワークの有効な選択肢としてローカル5Gに注目し、2022年より各社と連携して実証実験を重ね、導入コストの低廉化や最適な電波エリア設計、レーシングカー特有の過酷な環境に耐える伝送端末の開発などを進めてまいりました。そして2025年9月の富士スピードウェイでの検証において、高速走行中の車両との安定通信の実現やローカル5Gネットワーク構築における知見の確立などの成果が得られたことを受け、今回、サーキット向けローカル5Gソリューションを提供開始することにいたしました。

ソリューションの概要

本ソリューションは、サーキットごとのコースや地形特性に応じて、ローカル5Gによる伝送システムをフルカスタマイズで構築・提供します。主な提供内容は以下の通りです。

サーキットごとのコースや地形に応じた最適な電波エリア設計
ローカル5G利用に必要な免許取得の支援、代行
ローカル5G基地局やアンテナ等の設置工事および伝送システム構築
レーシングカー側の通信端末の提供、同端末までの伝送経路の疎通監視
Wi-Fi等、補完的な通信技術の提案・導入支援

ソリューションの特徴

導入コストの削減

IIJグループがこれまで複数のサーキットで実施してきた実証実験の知見を活かし、無駄のないエリア設計を行うことで、初期投資を抑えた導入が可能です。機材のレンタル提供も可能で、伝送システムの整備にかかる導入負担をさらに軽減することができます。
（参考価格）レース1回あたりの導入費用は、約500万円からの見込みです。

レーシングカー特有の環境に対応

レーシングカーは、高振動・高温といった過酷な環境下で長時間走行するため、通信機器にも高度な耐久性と安定性が求められます。本ソリューションでは、これらの要件に対応した小型専用端末を提供します。また、オンボードカメラの映像やテレメトリー情報をサーキット内外にリアルタイムで配信するシステムもオプションで提供可能であり、観客への映像提供や運営側のモニタリング用途にも活用いただけます。

富士スピードウェイにおける実証の成果

2025年9月、JRPおよび開発ドライバー（山本尚貴選手、国本雄資選手）の協力のもと、JRPが実施したカーボンニュートラル開発テストにおいてフォーミュラカー「SF23開発車両（赤寅・白寅）」に通信端末を搭載し、ローカル5Gの通信検証を実施しました。安定した通信の実現にあたって課題となるロードコース特有の高低差や複合コーナーなどを含む区間において、以下の成果を確認しました。

最高時速290kmで走行する車両からのオンボード映像やテレメトリー情報の低遅延伝送
時速270kmで走行する車両からのオンボード映像やテレメトリー情報が基地局ハンドオーバー（※）中にも途切れることなく伝送できること
サーキット特有の地形に対応したローカル5G基地局配置・ネットワーク構築ノウハウの確立
通信品質を向上させる車載アンテナ設置位置および調整方法の確立

（※）ハンドオーバー：走行時における接続するローカル5G基地局の切替え

実証の様子

開発テスト車両通称「赤寅」走行中の様子（運転席すぐ前にアンテナとカメラを設置）

開発テスト車両通称「白寅」に搭載されたローカル5Gのアンテナ（左）と伝送端末（右）

実証に関わった組織一覧と役割

株式会社インターネットイニシアティブ	ローカル5Gネットワークに関する技術協力
株式会社IIJエンジニアリング	プロジェクトマネージメント、ネットワーク設計・構築、ローカル5G基地局工事、オンボード映像伝送
ハイテクインター株式会社	ローカル5G機材一式の提供、電波エリアの設計・チューニング
無限（株式会社M-TEC）	伝送端末の開発実装
株式会社日本サーキット	伝送端末の開発実装サポート
モータースポーツ無線協会	ローカル5Gネットワークの無線免許取得及び技術協力
株式会社日本レースプロモーション	カーボンニュートラル開発テストにおける通信実証の協力