2026 年3月期第2四半期決算 決算発表記者会見
日時:2025年11月13日(木)16:05~17:00
発表者:代表取締役 松岡典之、取締役 渡邉篤史、取締役 田村保治、取締役 金子浩幸、 執行役員 松岡哲博
【主な質疑応答】
Q1:第2四半期業績の総括、好調・堅調な部分あるいは苦戦した部分について教えてほしい。
A1:国内景気は引き続き安定した需要が見られ、特にインバウンド需要の回復を背景に、アパレル製品の動きは概ね順調でした。一方で、米国の関税措置の影響を受けた中国国内の景況感悪化がさらに顕著となり、個人消費の低迷やコスト競争の激化が続きました。
縫製事業におきましては、好調な市況を背景に、受注が堅調に推移しました。生産キャパシティの拡大を進め、受注拡大に対応できる体制を強化したことで、生産量の増加につながりました。ただし、消費者の動きや市場環境に応じて、発注や引き取りのタイミングを慎重に見極める傾向が続いており、生産時期を平準化したことによる引き取り時期のずれなどの影響で、第2四半期の売上高は想定内の伸びにとどまりました。
ラミネーションフィルム事業におきましては、前期はヒット商品の影響で一時的に大きく売上が伸びましたが、今期は通常水準に戻っています。さらに、中国経済の低迷による需要の鈍化が進み、一部のお客様では在庫調整が行われ、発注のタイミングや数量に変動がありました。加えて、価格競争がより激化しており、厳しい市況となりました。
Q2:売上高、経常利益、純利益について増減は第2四半期で何年連続、何年ぶりか。またその要因について教えてほしい。
A2:2026 年3月期第2四半期の売上高は、前年同期比4億8百万円減の348億28百万円で、減収は4年ぶりです。1.2%減と僅かに減収となりましたが、前年同期との為替レート差も一因です。事業の実態としましては、引き続き堅調な受注にけん引され、工場の生産は順調に進んでいます。
経常利益は5億89百万円増の25億44百万円、当期純利益は1億72百万円増の12億20百万円で、ともに2年ぶりの増益となりました。
当社本業の実力値を表示するために当社独自指標として開示している「為替差損益調整後営業利益」についても、3億52百万円増の26億3百万円となりました。前年同期比では15.7%の増加です。
Q3:減収となった一方で増益を達成した背景には、どのような要因がありますか。減収は為替影響、増益はベトナム・バングラデシュでの生産拡大が主因と考えてよいでしょうか?
A3:概ねご理解のとおりです。売上高はラミネーションフィルム事業の伸び悩みや円高傾向(前期比約4%)の影響で減収となりました。為替が昨年同期並みであれば、生産量から見ても増収の可能性はあったと考えています。一方、利益面では縫製事業を中心に、堅調な受注を背景とした生産量の増加や生産効率の向上が寄与しました。特にベトナム・バングラデシュでの生産拡大が増益の主要因と認識しています。
Q4:2025 年秋冬ものの生産状況と追加含めたオーダーの状況、また2026年春夏ものの受注状況。また例年との違いについて教えてほしい。
A4:縫製事業では、2025年秋冬ものの受注は、生産体制の拡充を背景に、堅調に推移しました。既存アイテムに加え追加オーダーもいただけたことで、受注の波を押さえ、安定した稼働率を維持できたことが大きな成果です。また、2026年春夏ものについても、現時点では好調な受注状況が続いており、例年並みかそれ以上の水準を見込んでいます。
一方で、ラミネーションフィルム事業においては、主要顧客の販売先である中国の景況感悪化が顕著になっています。顧客の在庫調整や競合の激化などの影響もあり、受注・生産面では引き続き慎重な見通しを立てています。
Q5:第1四半期はワーキングウェアが好調でした。今期後半や来期に向けた受注や生産の見通しについて教えてほしい。
A5:第1四半期に続き、第2四半期も厳しい暑さの影響で、既存アイテムへの追加オーダーや、2026年春夏向けの新規品番追加企画など、好調を維持しました。堅調な受注動向を踏まえ、ミャンマーおよびバングラデシュの既存工場で生産能力を最大限活用し、受注対応力の強化に努めたことが業績に寄与しています。今後も、生産拠点網の特徴を活かしながら、生産ラインの拡大を進め、来期に向けても安定した生産体制の構築に努めてまいります。
Q6:各国の生産、稼働状況、特にバングラデシュ工場の稼働状況について教えてほしい。
A6:順調な受注状況に支えられ、すべての生産拠点で生産能力を最大限に活用した稼働が続いています。バングラデシュ工場でも高い稼働率を維持し、受注に対して十分な対応力を発揮しています。新設工場においても、引き続き生産ラインの拡充を進めており、今後もさらなる受注獲得を目指してまいります。
Q7:投資した工場での生産状況や、新たな設備投資、増産計画について教えてほしい。
A7:投資した工場では、計画に沿って着実に生産体制の拡充を進めています。各拠点でキャパシティの拡張が進行しており、今後の受注動向に応じて、さらなる増産体制の構築も視野に入れています。また、生産効率や品質向上を目的とした機械設備の導入については、各工場の状況や課題に応じて柔軟に対応し、最適なタイミングと内容で設備投資を進めてまいります。
Q8:生産地別売上で、中国、ベトナム、インドネシアが減少した要因について教えてほしい。
A8:中国については、中国経済の低迷による需要の鈍化等により、ラミネーションフィルム事業が低迷したことが大きな要因ととらえています。ベトナムについては生産時期を平準化したことによる引き取り時期のずれなどの影響、インドネシアに関しては、生産品目の変更によるものと認識しています。
Q9:スマートファクトリー化の進捗について教えてほしい。
A9:工場のスマートファクトリー化は、生産キャパシティの拡大と並ぶ、新中期経営計画の重要な柱と位置づけています。事業環境の変化や多様化する顧客ニーズに対応するため、『選ばれる工場』を目指し、中長期的な課題としてグループ一丸で取り組んでいます。
足元では、今期内をめどに一部工場でMES(※)を導入できるよう準備を進めています。選定したパイロット工場(ベトナム・タンチュオン工場、バングラデシュ・IMBD工場)では、工程ごとに順次デジタル化を進めており、2026年3~4月の本格稼働を目標に、現在70%強まで進捗しています。
また、本社システムについても、見やすさや使いやすさを追求し、精度や処理スピードの改善に着手しており、年内をめどに第一弾のシステム設計書を確認する予定です。
※:Manufacturing Execution System(生産ラインの各製造工程と連携し、在庫状況や工程の進捗をリアルタイムで把握するシステム)
Q10:下期の重点施策について教えてほしい。
A10:縫製事業では、堅調な受注環境を背景に、ベトナム・バングラデシュの新工場を中心とした生産キャパシティの拡充を計画通り進めてまいります。引き続き受注状況に合わせて柔軟に対応できる体制を整え、来期からスタートする新中期経営計画の基盤となる生産体制づくりを推進します。
また、生産拠点網を活かし、小ロット・短納期対応や地政学的リスクを踏まえた生産地の見直しなど、顧客ニーズの多様化に迅速かつ柔軟に対応することで、さらなる受注拡大と生産量の増加を目指します。
ラミネーションフィルム事業では、中国市場の停滞と価格競争の激化が続いており、ベトナムでもその影響が見え始めています。こうした状況下、当社は高付加価値商品の開発と販路拡大に注力しており、環境対応型新素材の研究開発をさらに推進するため、人材の採用や技術者育成を進め、開発体制の充実を図っています。
また、ベトナムでは素材メーカーとの連携を深め、製品開発の幅を広げることで、欧米向け素材開発を強化してまいります。
Q11:先日(2025年10月18日)発生したバングラデシュの空港火災について、御社に影響はありましたでしょうか。
A11:工場向けに輸入した資材について、火災による類焼や消火活動の影響で、商品が水損し使用不能となったものがありました。これにより予定していた資材が供給できず生産スケジュールに影響が生じました。
ただし、バングラデシュは遠隔地での生産であり、納期調整や納期が逼迫していた製品については航空便での納品を実施するなどの対応により顧客への影響を最小化するよう努めました。
【新中期経営計画に対する質問】
※2025 年11 月13日に開催した2026年3月期第2四半期決算発表記者会見では、同日公表した『新中期経営計画 BEYOND2028~Stitch the Future~』の概要についても併せて説明しました。以下では、新中期経営計画に関していただいたご質問とその回答をまとめて記載しています。
Q12:新中期経営計画では、売上高を740億円から900億円へ拡大する方針を掲げています。この成長を実現するために、どのような戦略や具体的な施策を考えていますか。
A12:生産規模の拡大はもとより、既存工場含めた各工場の生産キャパシティの最大化を重要課題として掲げています。生産アイテムを限定せず、すべてのアイテムについて生産量を伸ばし、2026年3月期比で1,384万枚の増産、153億円の売上増を目標とし、サプライチェーンの強化・拡充を図ってまいります。
Q13:インドネシア第2期工場の新設はいつごろの予定でしょうか。
A13:来期(2027年3月度)に新工場建設をスタートし、テスト生産まで着手したいと考えています。生産の進捗状況を見極めつつ、本格的な稼働開始はその翌期、2028年3月期になる見込みです。生産アイテムとしてはカジュアルウェア(ボトムス)を生産する予定で、新中期経営計画の最終年度である2029年3月期中には、年間300万枚程度の生産能力を達成できるように計画を進めてまいります。インドネシアの新工場は既存のインドネシア工場とは別の場所への建設を予定しており、現在候補地を選定しているところです。
Q14:新中期経営計画の戦略の一つである「新工場建設」について、インドネシアを建設地として選定した理由を教えてください。
A14:私たちは工場建設地を選定する際に、オペレーターの確保が容易であることを重要な要素の1つとして考えています。インドネシアは人口増加と若年層の多さに加え、縫製業が主要産業として位置づけられているため、必要なオペレーターを確保しやすい環境にあります。当社は2018年からインドネシアに進出しており、採用面で優位性を実感しています。
Q15:中国では「衣類」工場から「衣類その他」工場への転換とあるが、具体的にはどういうものを指すのでしょうか。
A15:「衣類その他」とはまくらカバーや布団シーツといった「寝具」を指しています。中国においては、縫製に従事するオペレーター確保が難しくなっており、労働集約型から装置産業へのシフトを推進したいと考えています。長きにわたり当社が中国で展開してきた縫製事業とそこで培った縫製技術や品質に対して、現地でも高い評価を得ており、すでに受注をいただき生産を開始しています。今後も受注状況を見ながら適時、設備投資を行い「衣類その他」という新しい生産領域での成長も目指したいと考えています。
Q16:ASEAN諸国等比率は、2026年3月期の72%(見込み)に対して、新中期経営計画最終年度の 2029 年3月期は 74%の計画。御社としては、この水準がバランスの取れた比率とお考えでしょうか。
A16:計画にある通り、中国で「衣類その他」工場への転換を図ることにより、中国での生産拡大を見込んでいることから、相対的に ASEAN 諸国等比率の伸びは低い水準にとどまっています。これまでと同じ生産構成であれば、ASEAN諸国等の比率がもう少し高くなると認識しています。
Q17:従業員数は2026年3月期の20,746人から、2029年3月期には約24,000人規模まで拡大する計画です。増員の中心となる国はどこでしょうか。
A17:想定では、インドネシアとバングラデシュでの人員増加を織り込んでいます。国や地域によっては人材確保が難しいところもありますが、当社の生産拠点では、現状、人員拡大が見込める状況にあり、工場の稼働状況によっては、さらに人員を増やしたいと考えています。
Q18:インドネシアでは新工場建設により300万枚の増産を計画されていますが、バングラデシュでは既存工場のみで 1,000 万枚の増産を見込んでいます。既存工場でこれほどの増産が可能となる要因は何でしょうか。
A18:バングラデシュにあるTMBD工場では、インナーウェアを中心とした生産キャパシティの拡充を図ります。主にワーキングウェアを生産している同じくバングラデシュのIMBD工場では、建屋内の余力スペースを活用し、生産ラインの増設とともに生産量の拡大を計画しています。これら2工場での生産最大化に取り組むことで、約1,000 万枚の増産を目指す考えです。
Q19:ラミネーションフィルム事業において、新中期経営計画の最終生産目標が 1,500 万ヤードと、2026年3月期の見込みと同程度にとどまっているのは、中国市況の停滞が引き続き事業に影響すると想定しているからでしょうか。
A19:ご理解の通りです。
Q20:3年間の設備投資総額は、どのくらいを見込んでいますか。
A20:成長投資(システム投資・工場の拡大投資)と維持投資(既存工場の維持投資)を合わせて概ね100 億円を想定しています。新中期経営計画の投資には、インドネシアの新工場建設も含め、バングラデシュでの生産キャパシティの拡大を目的とした内装・修繕工事や、ミシン等の設備購入等も含まれています。
以上
注)本内容は実際の発言、質疑応答の内容をベースに、当社にて編集(内容によって説明加筆)したものとなります。ご了解ください。