令和7年12月19日付大臣会見概要

2025/12/19  厚生労働省  

上野大臣会見概要

(令和7年12月19日(金)10:58~11:11 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
私から冒頭発言させていただきたいと思います。地方版政労使会議についてですが、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回るという経済の実現に向けて、賃上げの水準を持続的なものとして、その流れが地方や中小企業にも波及するよう、都道府県と労使代表者らが集まって協議する地方版政労使会議を、本日、12月19日からスタートさせます。最初の開催は徳島県です。この会議では、後藤田正純知事が参加されるなど、政労使の徳島県内のトップの皆さんが集まり、賃上げや価格転嫁等の取引適正化に向けた機運の醸成について話し合われる予定です。厚生労働省としては、これを皮切りに、全国の都道府県において、来年の1月から2月を中心に順次開催して、各地域における賃上げの機運醸成に取り組んでまいりたいと考えています。

質疑

記者:
大阪市の3つの就労継続支援A型事業所が、障害者就労支援の加算金を20億円以上過大に受け取っていたことが判明し、今月16日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームでは、就労移行支援体制加算の内容を来年4月には見直し、加算の上限を設けるなどの方向性が示されました。過大受給事案に対する所見と、加算の上限を設ける改正のねらいをお聞かせ願います。
大臣:
個別の事案についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げると、同一の利用者が就労継続支援A型事業所と一般企業の間で複数回離転職を繰り返して、その都度、就労移行支援体制加算を取得するということは、本来の制度趣旨と異なる形で過大に受給しているということになろうかと思いますので、適切ではないと考えています。このため、障害福祉サービスの質を確保する観点から、一事業所で算定可能となる就職者数に上限を設定するなどの見直し案を、有識者からなる検討チームにおいてお示しし、ご議論いただいているところですので、引き続き、検討を進めていきたいと考えています。
記者:
OTC類似薬の患者負担をめぐる協議について伺います。自民党と日本維新の会の協議が、今後政調会長の方で協議されるということになっていますが、予算編成に向けて時間がないような状況になっています。厚生労働省として、現状進捗状況についてもし把握していることがあれば教えていただきたいのと、もし与党でまとまらなかった場合、厚生労働省としてどう対応されるのか伺います。
大臣:
今私が承知していることにおいては、与党内での協議は継続していると承知しています。したがって、公党間で議論が進められているので、政府としてのコメントは、恐縮ですが、差し控えたいと考えています。
記者:
2026年の診療報酬改定についてお伺いします。改定率決定に向けて財務省との折衝が続いており、本日にも最終局面かと報じられています。未曾有の物価高騰の下で、病院、診療所を問わず厳しい状況にあり、医療関係団体や医療労働者の団体などから10%以上の大幅な引上げをとの要望が出されていることは大臣もご承知のことと思います。当会にも地域の医療機関から、「物価が上がっており、さらに収入減で、職員の給与を支払うため借り入れした。このままだとつぶれてしまう」、「近隣の診療所が閉院した。地域医療が崩壊しつつある」など切実な声が届いています。地域の医療提供を維持するためには、全ての医療機関の経営を支える大幅な引上げが不可欠と思いますが、多くの医療機関関係者が固唾を呑む中で、大臣のお考えと折衝に当たっての決意をお聞かせください。
大臣:
今お話のあったとおり、診療報酬改定については、来年度の予算編成を見据えて、今最終的な調整局面を迎えています。私自身も、先週から 、片山大臣と非公式に2回折衝させていただき、やはり保険料負担を抑制することも大事ですし、それと同時に、今お話のあったように、賃上げや物価高といったものに適切に対応していくということも必要ですので、まさに最終局面ですが、しっかり私自身も覚悟を持って、調整に当たらせていただきたいと考えています。
記者:
原爆犠牲者の遺骨の身元が、先日、広島市の取り組んだ遺髪のDNA鑑定で判明しました。こうした戦争被害の実態を明らかにしようとする地方自治体の取組への評価や受け止めを伺います。また、今回、戦後80年経っても、遺骨の返還が可能だということを改めて示した形になりますが、原爆や空襲の犠牲者たち民間人の遺骨返還に向けて、国として取り組む必要性についてどのように考えるか伺います。
大臣:
広島市の今ご指摘のあったケースについては、私も承知しています。広島市と長崎市においては、原爆犠牲者の遺骨を返還する取組を行っていただいています。広島市によると、今回のケースは、遺髪が残っており、また鑑定可能な遺族が健在で遺族の申出があったということから、DNA鑑定による身元特定を行ったものと聞いています。それぞれの自治体で対応をしっかり進めていただいていると考えています。民間人の遺骨の取扱いについては、各地域の実情の下で自治体等により慰霊や保管、返還に関する取組が行われていると承知しています。厚生労働省としては、引き続き、被爆者援護法の考え方を踏まえて、被爆者に対する援護や原子爆弾による死没者の追悼に取り組んでいきたいと考えています。
記者:
広島市の取組について、しっかりと進めているというご認識でしたが、そういった取組をすることの評価を少しお伺いできますでしょうか。
大臣:
評価といいますか、それぞれの実情に応じた形で、ご遺族のご要請も踏まえて対応されていると考えています。
記者:
厚生労働省が新型コロナワクチンの入院予防効果の根拠にしている、長崎大学の研究について伺います。この研究は簡単にいうと、コロナにかかって入院したグループと、コロナ以外で入院したグループを比べて、ワクチンの効果を計算しています。この仕組みを大臣から国民の皆さんに分かりやすく教えていただけますでしょうか。特に、コロナ以外で入院したグループにおいて、ワクチン接種者の割合が高くなった場合、算出されるワクチンの効果はどのように変化するのかというところもお願いできればと思います。
大臣:
ご指摘の長崎大学の研究においては、60歳以上かつ呼吸器感染症が疑われる症状または肺炎があって医療機関に入院した患者を対象者として研究されているものと伺っています。新型コロナウイルス感染症の検査結果が陽性であった群と陰性であった群に分けた上で、それぞれの群の、入院前までのコロナワクチン接種歴を比較して、ワクチンの有効性を算出していると承知しています。新型コロナ検査が陰性であった群で、過去にワクチンを接種した者の割合が高い場合には、ワクチンの有効性は高く算出されることになると伺っていますが、技術的な中身ですので、私として説明できるのは以上です。
記者:
確認ですが、コロナ以外で入院したグループにおいて、コロナ陰性グループですね、ワクチン接種者の割合が高くなればなるほど、ワクチンの入院予防効果が高いというデザインだという理解でよろしいでしょうか。
大臣:
過去にですね。過去にワクチンを接種した者の割合が高い場合には、ワクチンの有効性は高く算出されることになると承知しています。計算式等は確認してもらっていいですか。
記者:
医療大麻を必要とする患者に届けるための情報提供の在り方についてお聞きします。欧米を中心とした多くの先進国では、大麻草由来の医薬品や厳格な規制下での医療用大麻が、特定のてんかんや多発性硬化症などの難治性疾患の症状緩和を目的として利用されています。日本も医療ニーズに応えるため、大麻草由来の医薬品の導入に向けた法整備を進めています。一方で、政府の大麻草に関する広報は、現状、大麻の乱用による健康被害防止に重点を置いており、ネガティブな印象が強く、その結果、医療面での有用性に関する情報が不足していると考えます。これにより、国民の間で医療用大麻に対する正確な理解が進まず、真に必要な患者が治療をためらうという懸念があります。国民の健康を守ることは最優先事項であり、本当に必要としている患者が速やかに医療利用できるような、有用性についての情報提供が求められると考えていますが、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
大臣:
先般の大麻取締法等の改正によって、大麻草から製造された医薬品の使用等を禁止した規定を大麻取締法から削除し、大麻草から製造された医薬品の使用などを可能としているところです。ご案内のとおりだと思います。一方、我が国が批准している麻薬単一条約においても、大麻は依然として「習慣性があり、重大な乱用の危険がある物質」だと指定されているので、適正な管理や取締りが必要な麻薬であることには変わりないと考えています。現在、医薬品医療機器等法に基づいて薬事承認された大麻草由来医薬品はない状況ですが、今後、そうしたものが薬事承認された場合には、医療関係の皆さんや国民の皆さんに安心してお使いいただくことができるように、その有効性や安全性を正確に情報発信していきたいと考えています。

(了)

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