金融市場調節方針の変更について

2025/12/19  日本銀行 

2025年12月19日
日本銀行

金融市場調節方針の変更について

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推移するよう促す1。

2.上記の金融市場調節方針の変更に伴い、以下のとおり、各種制度の適用利率の変更を決定した2(全員一致)。

(1)補完当座預金制度の適用利率
補完当座預金制度の適用利率(日本銀行当座預金<所要準備額相当部分を除く>への付利金利)については、0.75%とする3。

(2)基準貸付利率4
補完貸付制度については、その適用金利である基準貸付利率を1.0%とする。

3.わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している(別紙)。賃金を巡る環境を整理すると、労働需給は引き締まった状況が続いているほか、企業収益は、関税政策の影響を加味しても、全体として高い水準を維持することが見込まれる。こうしたもとで、春季労使交渉に向けた労使の対応方針や日本銀行の本支店を通じたヒアリング情報等を踏まえると、来年は、今年に続き、しっかりとした賃上げが実施される可能性が高く、企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低いと考えられる。この間、米国経済や各国の通商政策の影響を巡る不確実性は引き続き残っているものの、低下している。物価面をみると、賃金上昇の販売価

1 新たな金融市場調節方針は、翌営業日(12 月 22 日)から適用する。
2 補完当座預金制度の適用利率および基準貸付利率は、翌営業日(12 月 22 日)から適用する。
3 被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペの貸付利率は、引き続き、補完当座預金制度の適用利率となる。
4 日本銀行法第 15 条第1項第2号に規定する「基準となるべき貸付利率」。なお、同第1号の「基準となるべき割引率」も1.0%とする(手形割引の取り扱いは現在停止中)。

格への転嫁の動きが続くもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、緩やかな上昇が続いている。

このように、最近のデータやヒアリング情報からは、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高いと考えられ、先行き、「展望レポート」の見通し期間後半には、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するという、中心的な見通しが実現する確度は高まっている。

こうした経済・物価情勢を踏まえ、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した。政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。

4.今後の金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、「展望レポート」で示している経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。

以 上

(別 紙)

経済・物価の現状と見通し

1.わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、米国の関税引き上げの影響を受けつつも、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持しており、業況感も良好な水準で推移している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。一方、住宅投資は減少している。この間、公共投資は横ばい圏内の動きを続けている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。

2.先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が幾分減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後については、海外経済が成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米などの食料品価格上昇の影響が減衰していくもとで、政府の物価高対策の効果もあり、来年度前半にかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えられる。その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率と消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率はともに徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる(注)。

3.リスク要因としては、各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向、企業の賃金・価格設定行動、金融・為替市場の動向などがあり、それらのわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。

以 上

(注)高田委員は、物価の見通しについて、基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は既に概ね「物価安定の目標」に達する水準にあるとして、田村委員は、基調的な物価上昇率の見通しについて、見通し期間の半ば以降、「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとして、反対した。

(参考)

・開催時間――12 月 18 日(木) 14:00~15:55
12 月 19 日(金) 9:00~12:12

・出席委員――議長 植田 和男 (総裁)
氷見野 良三 (副総裁)
内田 眞一 ( 〃 )(注)
野口 旭 (審議委員)
中川 順子 ( 〃 )
高田 創 ( 〃 )
田村 直樹 ( 〃 )
小枝 淳子 ( 〃 )
増 一行 ( 〃 )
(注)内田委員は、本店執務室から電話会議により出席。

上記のほか、
12 月 18 日
財務省 前田 努 大臣官房総括審議官(14:00~15:55)
内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(14:00~15:55)

12 月 19 日
財務省 中谷 真一 財務副大臣(9:00~11:50、12:01~12:12)
内閣府 水田 豊 大臣官房審議官(経済財政運営担当)(9:00~10:57)
城内 実 経済財政政策担当大臣(10:58~11:50、12:01~12:12)
が出席。

・公表日時
金融市場調節方針の変更について――12 月 19 日(金)12:19
主な意見――12 月 29 日(月)8:50 予定
議事要旨――2026 年 1 月 28 日(水)8:50 予定

以 上

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