世界初、対話型AI搭載で船長を導く「SeaNavigator for Master」を提供開始

2025/12/25  株式会社 ウェザーニューズ 

2025.12.25

“すべてが新しい”船長向け次世代型運航支援サービスが誕生

世界初、対話型AI搭載で船長を導く「SeaNavigator for Master」を提供開始

進化した高グラフィックの波・風予測や、最適ルートの高性能なリアルタイム検索を船上で

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株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:石橋知博)は、近年の海上における通信環境の改善を機に、世界で初めてAIが対話形式で船長の運航判断を支援する次世代型運航支援プラットフォーム「SeaNavigator for Master」の提供を開始しました。

本サービスは商用サービスとして世界初となる船長向けの対話型「AI Agent」を搭載しており、船長はウェザーニューズの専門家と会話するように、航路上や港湾の気象リスク、燃費やスピードの予測など、運航計画に直結する情報をAIに尋ねることができます。また、船長からのニーズが最も高い、波・風予測や台風の進路予測などの運航に必要な最新の予報を高い解像度でリアルタイムに確認できます。さらに、「航海ルートシミュレーション」では、波高や過去のルーティング実績に基づいた最適な航海ルートを船上から瞬時に検索できます。加えて、従来の連絡手段はメールや衛星電話に限られていましたが、本サービスでは海上の船長と陸上の運航管理者間(船陸間)の航海計画の承認もチャットでスムーズに行うことができます。

このように運航判断に役立つ気象・海象や運航データをオンボード(船上)システムを通してタイムリーに共有することで、長年の課題であった船陸間の情報格差は解消され、船長は最新かつ膨大なデータに基づいてより最適なルートを自ら選定することが可能になります。今後は、累計100万航海のサポート実績を活かして「AI Agent」や「航海ルートシミュレーション」の機能拡張および精度の向上に取り組んでまいります。

本サービスに関するお問い合わせはこちらから
https://biz.weathernews.com/sn20241009/
「航海ルートシミュレーション」のルート検索結果(画面左側)と
「AI Agent」による航海ルート上の波・風予測の回答(画面右側)

海上通信の高速化で実現、船長を第一に考えた次世代型運航支援サービスを開発

当社は約40年にわたり、船舶の安全性・経済性・環境性を支援する航海気象サービスを提供してきました。1994年には世界初のオフライン型のオンボードシステムを開発し、船長による気象判断を実現してきた歴史があります。しかし、これまでは海上の通信環境やセキュリティの制約により、大容量データをリアルタイムに提供することは困難でした。陸上の運航管理者が詳細な最新データをリアルタイムで確認できる一方で、船上の船長は1日数回のメールなどによる情報取得に限られ、船陸間には情報の鮮度と量に大きな差がありました。

ところが近年、ネットワーク環境の大きな改善により、陸上と同等のデータを安全に扱う技術的な基盤が整ってきました。この発展を受けて、2012年ぶりにオンボードシステムを刷新し、船長を第一に考えた「SeaNavigator for Master」を開発しました。

「SeaNavigator for Master」は、洋上における船長の運航判断をAIが支援する航海気象サービスです。船上から最新の波・風予測や座礁リスク、航海ルートのシミュレーションなどにアクセス可能で、船長が自らの経験や膨大なデータ、AIの助言をもとに、安全性・経済性・定時性に配慮した最適な運航判断を支援する次世代の運航支援プラットフォームです。

ポイント

1. 船上における運航判断を対話形式で支援する世界初のAIサービスを実用化

2. 最新かつ高解像度の波・風予測を船上でタイムリーに把握

3. 常に最適ルートを検索できる「航海ルートシミュレーション」で航海計画をアップデート

4. メールによるコミュニケーションからの脱却、船陸間のチャットで航海計画を承認

1. 船上における運航判断を対話形式で支援する世界初のAIサービスを実用化

本サービスの最大の特長は、海上における船長の運航判断支援に特化した「AI Agent」を搭載したことです。2025年10月より「SeaNavigator」(※1)で提供している「AI Agent」(※2)を、船長特有のニーズに対応できる形にアップデートしました。船長は当社航海気象事業部の専門家と対話するように、いつでも最新の気象のほか、過去のルーティングサービスの利用実績に基づいた航路上の波・風リスクや燃費、スピードの傾向や予測などについて尋ねることができます。

例えば、「計画されている航路上の気象リスクをまとめて」、「48時間後の大阪港の風速と波高の予報を教えて」のような質問に対して、AIがウェザーニューズの海象や運航データを参照してチャット形式で回答します。これにより船長はAIに尋ねるだけで、航海判断に必要な最新情報を瞬時に取得できます。

航路上の気象リスクの分析結果とアドバイス(画面右側)
「ルート上に危険はない?」の質問に対するAIの回答

今後は、船長がこれまで当社航海気象事業部の専門家に確認しているような複雑なやり取りについても、24時間365日即時応答が可能な「AI Agent」で対応できるようにアップデートする予定です。例えば、現在は船長からの「このようなルートを考えているが、他にも良さそうなルートはありますか?」というような問い合わせに対して、当社専門家が「航海後半の予測が変化しやすいため、明日まで様子をみていただき、もし悪化したら緯度を少し下げるプランに変更してはいかがでしょう」のように回答しています。このように他の推奨ルートや推奨する根拠などについて確認した上で船長が最終的にルートを修正していますが、今後は「AI Agent」が当社の専門家と同等の情報提供や助言を行うことで、船長の判断を支援し、より迅速かつ的確な意思決定をサポートできるよう改良していきます。

2. 最新かつ高解像度の波・風予測を船上からもタイムリーに把握

従来のオンボードシステムでは通信量の制約のため、海象データを取得できるエリアに制限があったほか、陸上の運航管理者が取得できるデータと比べて解像度が低く、更新頻度も1日1回の船がほとんどでした。

「SeaNavigator for Master」を利用する船舶では、海図様式の情報と重ね合わせて、風向・風速、波高・波周期、海流、台風の進路予測など、全海域の海象データを船上から高解像度で確認できるようになりました。これにより、船長は最新かつ豊富な情報を根拠に判断することができます。

3. 常に最適ルートを検索できる「航海ルートシミュレーション」で航海計画をアップデート

当社は、情報収集から運航の最終判断まで全てを船長が担う海外の海運市場からのニーズに応えるため、船長自身が運航ルートを検索し、結果を詳細に検証できる「航海ルートシミュレーション」を今回新たに開発しました。

「航海ルートシミュレーション」では、発着港や時間、基準となる波高を入力するだけで航海ルートを自動で計算し、台風や低気圧などの荒天リスクや本船レポートなどを加味して絞り込んだ、複数の気象リスクの影響度別のルートを提案します。船長はそれらのルート毎の航海時間、距離、燃料を確認し、「安全性」「経済性」「定時性」などの優先順位に応じて、最適なルートを決めることができます。

出航後に現在地から最新データを用いてシミュレーションすることも可能なので、航海計画のアップデートにお役立ていただけます。

燃料・距離・到着時刻・最大波高を表示、各ルートの波・風予測もマップで確認できる

4. メールによるコミュニケーションからの脱却、船陸間のチャットで航海計画を承認

「SeaNavigator for Master」では、船陸間での航路選定から承認までのワークフローをチャット形式でやり取りできます。これまでメールで行われてきた承認までの流れを、船陸間で同じ画面を見ながら議論できるため、意思決定のスピードが飛躍的に向上します。

また、これまで陸上の運航管理者のみに提供していた、船舶が浅瀬や漁船混雑エリアなどの座礁の危険性の高い区域への接近を計画した場合にリスクを伝える座礁対策支援サービス「NAR(Navigation Assessment & Routeing)」(※3)の機能も搭載し、気象以外の要素も考慮した航海計画の承認や座礁リスクの確認を、船陸間で同じ情報を用いて実施可能になりました。

船陸間はいつでもチャットで連絡し合える

先行導入いただいた欧州や日本を含むアジアの海運事業者様からは、「これまで航海計画の承認を得るために重いファイルをメールでやりとりしていたが、ほぼリアルタイムで協議ができるため、本船ネットワーク環境を整備した大きな効果を得られた」と、現場の業務変革(DX)を後押しするツールとして高い評価をいただいています。

▼本サービスに関するお問い合わせはこちらから
https://biz.weathernews.com/sn20241009/

当社は、船長の経験や知見を最大化するための強力なパートナーとして、AIというテクノロジーをサービスの中心に位置付けています。当社の「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という想いを実現するため、AIを最大限に活用しながら環境DXの推進に取り組んでまいります。

※1:2024年10月10日発表 統合型の航海気象サービス「Sea Navigator」を提供開始
/news/49134/

※2:2025年10月2日発表 航海気象サービス「SeaNavigator」にAIエンジン搭載で迅速な運航判断を実現
/news/53465/

※3:2021年4月5日発表 「NAR(Navigation Assessment & Routeing)」を5月に提供開始
/news/35429/

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