【記者会見】浅田審議委員(4月1日分)

2026/04/02  日本銀行 

2026年4月2日
日本銀行

浅田審議委員就任記者会見
――2026年4月1日(水)午後5時から約30分

(問)

植田総裁は、経済・物価情勢が見通し通りなら利上げを進める方針を示しています。この日銀の方針について、総裁の方針について同じ立場なのか別の考えをお持ちなのかご意見お聞かせください。

もう一点は、浅田審議委員は高市政権が指名した最初の審議委員となります。首相が浅田審議委員を指名したことについて、首相からどのような期待があってのこととご自身では受け止められていらっしゃいますでしょうか。

(答)

本日付けで日本銀行の審議委員を拝命しました浅田統一郎と申します。よろしくお願いします。まず第一の質問についてなんですが、私自身の政策スタンスに関するご質問につきましては、ちょっと具体的なかたちでコメントすることは差し控えさせて頂きます。今日、審議委員に就任したばかりでありまして、今月の終わり頃、私としては初参加の金融政策決定会合がありますけれども、その会合に向けてスタッフの皆さんから説明を伺い、それから各種データや情報を精査したうえで、私なりの政策に関する判断をしたいと思っていますけれども、今の段階で具体的にどういう判断をするとかしないとかいうことはちょっと差し控えさせて頂きます。

二つ目の質問ですけれども、日本銀行法によれば日本銀行の審議委員は衆参両院の同意を得て、内閣が任命するということになっておりますが、私自身、二番目のご質問の点について、やはり具体的にコメントする立場にはないと思っております。私としては、審議委員に任命されたからには、誠心誠意職務に邁進するつもりでおります。

(問)

二問お願い致します。一問目については現下、中東情勢の緊迫化によって原油価格が高騰して、日本でもインフレの圧力を懸念する声が出ています。一方で原油価格の高騰は景気の下振れにもつながるので、このバランスをどう考えるかというのが非常に重要だと思います。金融政策について今日は具体的にはまだちょっとコメントできないとのことですが、このインフレのリスクと景気の下振れリスク、どちらを重視すべきなのか、このバランスを景気の先行きをみるうえでどう考えるのかについて教えてください。

二点目を合わせて伺いますが、こちらも一般論で構わないんですが、財政政策と金融政策のポリシーミックスをうまく組み合わせることによって、今回のようなエネルギーショックに対応すべきという考え方があると思います。このあるべきポリシーミックスについて、どのようにお考えでしょうか。

(答)

それでは第一の質問についてですが、現在、中東における戦争その他の影響で原油価格が高騰しております。それが物価への上押しですね、インフレ率を高める作用をしていることは間違いないと思います。このようなかたちのインフレーションっていうのは、ディマンドプル型というよりはコストプッシュ型でありまして、マクロ経済学の教科書的な議論によると、総供給曲線が上にシフトしてコストプッシュインフレになるというわけですが、その場合は物価は上がるけれども、生産や雇用には悪影響といういわゆるスタグフレーションでしょうかね、という傾向があるということが分かっております。その場合は、金融政策でそれに対処する場合はなかなか難しいものがありますね。つまり、インフレ抑制を重視すると雇用や生産に悪影響が生じる可能性がある。雇用や生産を重視するとインフレ率が更に高まると。そのバランスを考えて政策を行わなければいけないので、なかなか難しい問題。具体的にどうしたらいいかということは、ちょっとここではお答えを控えます。

日本銀行にとって財政政策は管轄外で政府の管轄でありますけれども、これもマクロ経済学の教科書に書いてある一般論でお答えしますと、金融政策だけで経済のコントロールがうまくできない場合、財政政策と金融政策を適切に組み合わせれば、いわゆる財政・金融ポリシーミックスで困難を乗り切ることができる可能性があると、そういう理論は教科書であります。ただ、日銀は財政政策は管轄しておりませんので、適切な政策を政府が行ってくれると思いますので、政府と、日銀の金融政策が協力して困難に対処することができるのではないかと思っております。これは、あくまで一般論でお答えしております。

(問)

浅田さん、これまで大学の教授などを務めていらっしゃいましたけども、これまでのどのような知見であるとか、知識というのをもってこれからの審議委員に務められるのかというところが一点目です。

二点目は、日銀のこれまでの金融政策の評価についてですけども、直近でいえば、去年 12 月に利上げを行って、今0.75[%]という水準一つ到達しておりますけれども、ここまでの日銀の金融政策についてどう評価されているのか、この二点よろしくお願いします。

(答)

私、大学で 40 年ぐらい教職に就いておりました。それで担当科目はマクロ経済学とミクロ経済学の 2 科目を教えておりましたが、研究テーマとしては主にマクロ経済学です。マクロ経済動学と言いまして、時間とともにですね、経済がどう動いていくかというのを数学とシミュレーションを使って研究したりしておりました。これはあくまで一般論ですけども、そのときもし経済がうまくいかなかった場合、財政金融政策を使ってどう適切にコントロールするかというようなことを理論として研究してきました。もちろん現場の政策と理論の話はストレートには結びつかないとは思っておりますけれども、しかし全く無関係だとも思っておりませんので、私がこれまで研究してきたことを政策の現場に若干なりとも反映させて貢献できればと思っております。

それから、日銀の過去の政策の評価ですけども、アベノミクスという名前で黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁が新しい政策を、もう今から考えると 10 年以上前ですが、実行しまして、日本が長年続いたデフレ不況から脱却させるということを始めたわけですけれども、それに対してはかなりの成果があったと思って私はポジティブな評価をしております。直近については、当時はデフレ脱却ということでしたから緩和一辺倒でよかったわけですが、最近ではインフレに転換しまして、緩和一辺倒というわけではいけなくなりましたが、より政策の舵取りが難しくなったと思っています。直近の政策についての具体的な評価は差し控えたいと思います。

(問)

二点伺います。一点目が、日本の中立金利やターミナルレートに関して、現時点でどの程度のレンジ感でとらえているのか、自然利子率に対する考え方も含めて伺えればと思います。あともう一点が、国債買入れ減額について、市場の金利形成機能の回復と国債市場の安定のバランスをどう考えていらっしゃるのか。この二点について伺えればと思います。

(答)

その点については、政策に関する微妙な論点を含んでおりますので、この場ではちょっとお答えを控えさせて頂きます。

(問)

政策についてちょっと具体的なコメントを控えるというお話だったんですけども、ポリシーミックスの先ほどの質問の考え方について、ちょっと具体的な政策というよりも、スタグフレーションのときにですね、財政が吹かされているときに、景気支援が必要なときに、金融政策として物価が上がったときに積極的に利上げで対応すべきなのか、それとも景気を支援に回るべきなのか、その辺についてのお考えを伺いたい。

あと円安が足元で進行してまして物価上昇圧力にはなってるわけですが、企業収益を増加させるという面もあると思います。浅田委員の円安に対するですね、経済・物価への影響についてご評価をお願い致します。

(答)

スタグフレーションの場合はですね、金融政策で対処した場合には引き締めた方がいいのか、逆に緩和した方がいいのかっていうのは、一概には言えないわけですね。他方、物価と雇用と言ってもいいでしょうかね、日銀法では物価の安定だけが出てきますが、ただ事実上アベノミクス以来、物価と雇用の双方を視野に入れる政策というのが実際に行われてきたと思いますが、物価を重視するのか雇用を重視するのかということで、異なった対処の仕方が出てきますけれども、そのどちらを重視するかっていうことについてはケース・バイ・ケースでありまして、この場では具体的に述べることは差し控えさせて頂きます。

それから、円安の話ですけれども、確かに金融政策、財政政策もそうですけども、財政政策・金融政策を行ったときに、為替レートが影響を受けて変動します、変動相場制ですから。ただし、日本銀行の場合はインフレ目標という、2%インフレを目指すということは明確に書かれておりまして、あと雇用にも配慮するということをやっておりますが、為替レートターゲットはやってないわけですね。ですから、為替レートは、政策の結果、結果的に市場で決まるものと考えておりまして、円安が望ましいとかあるいは逆に円高が望ましいとかいう立場にはないと思っております。

(問)

浅田さん、先ほどスタグフレーション時の金融政策の運営の難しさというところを言及されましたけれども、足元のこの中東情勢厳しくなる中での経済・物価情勢をみて、そういう状況に陥る可能性があるというふうにご覧になっているんでしょうか。また、そういうお考えだった場合、どういった断面をとらえてそうお考えなのかっていうことも含めて伺わせてください。

(答)

今の段階では私はまだ詳しいデータの分析も行ってませんし、自分の考えが固まってるわけではありませんので、これから金融政策に携わるに当たって様々なデータを検証しながら、どのような政策を提案することが必要であるかということをこれから考えるつもりであります。

(問)

これまでの日銀の金融政策の評価は差し控えるということだったんですけども、ちょっとお答えできる範囲でお願いできればと思うんですが、金融緩和を見直してですね、これまで 3 回利上げをして今 0.75%というところで、最初の利上げに踏み切ってからだいぶ時間も経ってきてると思うんですけれども、この利上げが日本経済ですとか、為替に与えている影響の度合いについて、どの程度かというところお考えなのかをちょっと伺えればと思います。

(答)

やはり、今の時点でその点について確固たる分析をしておるわけではありませんので、ちょっとこの場ではお答えを控えさせて頂きます。

(問)

政策に対する考えというよりは現在の浅田委員の認識を伺いたいんですけど、今の現下の金融環境は緩和的というふうにお考えかどうかっていう委員の認識をお伺いできないでしょうか。

(答)

緩和的かどうかとはどういう意味でしょうか。

(問)

先ほど中立金利や自然利子率に関してのコメントはというお答えだったんですけど、金融のその現下の日銀の政策金利の状況ですね、これが緩和的かどうかっていうお考えがもし聞かせて頂ける範囲でお願いできないでしょうか。

(答)

どういう場合に緩和とおっしゃってるんですか。通常、利下げすると緩和で利上げすると緩和でないというこれは同義反復的な扱いですけれども。ですから、最近はごくわずかではありますが、利上げを何回かやってきたわけですので、一般的な定義であれば、利上げをするのを緩和とは言わないと思いますけれども。それがいいとか悪いとかいう価値判断は抜きにしております。

(問)

二点お伺いさせて頂きます。日銀では 2024 年の 3 月に異次元の金融緩和を終了しまして、その後段階的にバランスシートの縮小を進めていますが、ただその縮小のペースは緩やかでして、現時点でも 678 兆円の規模があるということなんですけども、この大きなバランスシートが日本の経済・物価にどういう影響をもたらしていると浅田委員はみてらっしゃいますでしょうかというのが一点目です。もう一点目ですけれども、今の日銀は基調的な物価上昇率をみながら段階的な利上げに取り組んでいますけれども、浅田委員は基調的な物価上昇率、今どのぐらいの水準にあるというふうにお考えでしょうか。

(答)

只今のご質問についてもですね、まだ私の考えが固まってるわけではありませんので、具体的なお答えは差し控えさせて頂きます。

(問)

浅田委員に関して、周囲はですね、いわゆるリフレ派というふうにみているわけですけれども、こういった評価について浅田委員自身どういうふうに考えてらっしゃいますでしょうか。

(答)

私本人は、自分を何とか派とはっきり定義してるわけではありませんけれども、リフレ派という言い方が最近NHKのニュースにも出てきまして、定着してしまったようですけれども、本来の意味のリフレ派というのは、世界大恐慌の頃アービング・フィッシャーが提唱したリフレーションという言葉から来ておりまして、デフレ不況が長く続いた場合に、例えば 2%インフレ目標などのようなごくわずかではありますがプラスのインフレを目指すということによって、結果的に不景気から脱出するという政策で、黒田総裁の時代に日銀が実行したことだと思ってます。その政策を従来から支持して評価しておりましたので、そういう意味でのリフレ派というふうにいわれることについては別に違和感はありません。

(問)

浅田委員、これから政策委員メンバーの 1 人として金融政策について議論していくことになると思います。どういったところでその議論に貢献できるのか、抱負みたいなことも含めて教えてください。

(答)

結局 40 年間、主に理論研究ですけれども、マクロ経済学を研究して政策についても研究してまいりました。そういう理論研究っていうのは具体的な政策に直結するものではありませんけれども、しかし理論研究を通じて得られた知見もあると思いますので、そういうものをなるべく役に立つものがあれば反映させて、政策形成に貢献したいと思っております。

(問)

これまで日銀は利上げ判断について、緩和度合いの調整だと説明してきました。先ほど浅田委員、利上げは引き締めだとおっしゃったと聞こえました。これまでの日銀の説明と異なる認識なのかというこの辺りを教えてください。

(答)

異なる認識というわけではありません。つまり、緩和という言葉の単なる定義の問題ですね。

(問)

オイルショック、日本が経験して、それ 1970 年代前半です。相当昔のことなので今の経済環境とは随分違うことは承知のうえで、そのときに例えば研究していてお考えになった点、あと今後の政策運営にあるいは生かせる知見があるのかどうか、あるとしたらどういった点なのか、もしあればお願いします。

(答)

オイルショックの頃、やはり中東の原油[価格]が飛躍的に上がって、その結果いわゆるスタグフレーションになったわけですね。あの頃、1 年間で物価が 20%ぐらい上がりましたかね。戦後初めて、経済成長率、実質成長率がマイナスになったわけですけれども、ただ、第二次オイルショックの頃はかなり影響を小さくすることができたわけですね。ですから、あの頃と今は全く同じというわけではありませんけれども、何らかのかたちで過去の歴史を研究すれば、現在の政策に生かせるものもあるかとは思います。

(問)

先ほど日本の今の金融環境は緩和的かどうかという質問ありましたけれども、確認ですが、浅田さんがおっしゃるその緩和の定義に基づけば、日銀はここ最近利上げをしている中、日本の金融環境は緩和的ではないという理解でよろしいんでしょうか。

(答)

金利引き下げが緩和で引き上げは緩和でないといった定義を採用すればそうなるというだけのことでありますので、別の定義で緩和とか引き締めを定義すればまた意味は変わってくると思いますけれども。

以上

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