緩和ケア病棟”いまここ”が、このたび 2021 年度グッドデザイン賞 (主催:公益財団法人日本 デザイン振興会)において「グッドデザイン 賞ベスト 100 に選ばれました

2021/10/22  医療法人 秀峰会 川村病院 

日常を感じることができるコモン型ホスピスが静岡県富士市に誕生

「いまここ」は日常と地続きとなる終の住処、緩和ケア病棟です。「もし末期癌になった ら病院か家のどちらを選ぶか?」と問えば、多くの人は「自分の家」と答えるでしょう。 しかし、自宅で死を迎えようとしたとき、家族の精神的・肉体的負担は大きくなります。 一方、病院では家族との距離が生まれ、病院の持つ独特の雰囲気は、患者から家族を遠ざ けてしまいます。 人間の最期にふさわしい場所には、在宅と病院の対立する 2 つの場所だけでなく、選択肢 が必要だと考えました。そして、末期がん患者の孤立の軽減と病院施設にはない日常を感 じることができるコモン型ホスピスが誕生しました。


患者を訪ねてきた家族や友人が一日ゆったりと過ごせる光と風、庭を感じられる開放的な 空間。既存の樹木を残した「雑木の庭」をめぐるように、廊下を膨らませた回廊空間は、 さまざまな居場所を創出しています。「雑木の庭」は地域ボランティアによって手入れさ れ、多年草は季節を問わず風に揺れています。そこに生まれた中庭のせせらぎは子供たち の遊び場となります。
テラスと一体化した「リビングダイニング」で家族と食後のひと時も楽しめます。 開院してから一年たち、個室の扉を開けば、誰かが弾いているピアノの音色や人々のだん らん風景、庭のお手入れをしているボランティアの姿など、遠ざかってしまった日常に出会うことができます。





設計者 株式会社山崎健太郎デザインワークショップ 山崎健太郎より
敷地内には、もともと高さ 10m を超える雑木林のような庭がありました。 新しい建物が唐突に立ち上がるのではなく、昔からそこにあるような「雑木の庭にあるホ スピス」にしようと考えました。計画は基本的には平屋で既存樹木を残したまま配置し、 天井の高い部屋やハイサイドライトから樹木の枝葉の見える部屋、庭に手が届く部屋など それぞれの病室に異なる性格を与えました。 「雑木の庭」に植えた多年草は地面を覆い、水辺にはカエルやトンボなど生物が生息して います。テラスでハーブを積んで、病室に飾り、香りを楽しむこともできます。 外壁と内壁は地場の砂を使い、左官職人たちが丁寧に仕上げ、樹木と調和した人の手の圧 を感じる柔らかな印象を持たせました。ここを訪れた子供たちは、テラスで遊ぶこともゆ るされているため、元気な声が響き、病院にない日常の風景があります。同時に医療従事 者にとっても「雑木の庭」は癒しとなっています。
末期癌の方とその家族の方達のためホスピス。 庭と一体となった群による配置が、病院 特有の緊張感のある雰囲気を消し、まるで少し大きな家のような雰囲気を作り上げてい る。患者だけでなく、家族に対しても優しい眼差しが感じられる作品。

今回はベスト 100 の他、審査員が選ぶ「私の選んだ一品」にも選ばれました:
猪熊 純委員
末期癌の方とその家族の方達のためホスピス。 庭と一体となった群による配置が、病院 特有の緊張感のある雰囲気を消し、まるで少し大きな家のような雰囲気を作り上げてい る。患者だけでなく、家族に対しても優しい眼差しが感じられる作品。

名 称:緩和ケア病棟 いまここ 静岡県富士市中島327 https://imacoco.kawamura-jp.jp/
事業主体名:医療法人社団秀峰会 川村病院 事業代表者:医療法人社団秀峰会 川村病院理事長 川村統勇
デザイン:株式会社山崎健太郎デザインワークショップ 山崎健太郎https://ykdw.org/ 稲田ランドスケープデザイン事務所 稲田多喜夫 ぼんぼり光環境計画株式会社 角舘まさひで https://bonbori.com/


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