夜型生活者の身体活動量減少には、遺伝的・社会的要因が寄与することを示した世界初の研究!

2022/02/16  国立大学法人 島根大学 

遺伝的夜型タイプの人にとっては週末ダラダラするのもプログラムされたことかも!?

 ヒトには「朝型タイプ」「夜型タイプ」があり、その違いの約半分は、遺伝的(先天的)に規定されています。その規定遺伝子が、2017年のノーベル医学生理学賞の対象となった「時計遺伝子」であり、その個人差である時計遺伝子多型であることが知られています。  本研究は、大学生81名の遺伝子多型を採取するとともに、被験者の日常における客観的な身体活動量を1時間刻みで詳細に分析し、身体活動量と、時計遺伝子多型タイプ(朝型/夜型)との関係を分析したものです。  本研究の結果、時計遺伝子多型が夜型タイプの者と朝型タイプの者とで、平日の活動量は変わりませんでした。しかし、土曜日だけは、夜型タイプの者の活動量が朝型タイプのそれと比べて、1日中有意に低値を示しました。  この結果は、身体活動に関する遺伝的影響は、平日には学校などの社会的制約にあるためマスクされて発現しにくく、時間が自由になる週末(特に、もっとも自由時間のある土曜日)において現れやすくなることを示唆しています。  本件は、夜型生活者の身体活動量の減少には、遺伝的な要因と社会的な要因の両者が大きく寄与することを示した世界初の研究成果です。


◆本件のポイント!
・身体活動量に関する遺伝子型の影響は、社会活動によりマスクされている

◆本件の概要
 島根大学学術研究院人間科学系・宮崎亮准教授は、京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室の坂根直樹室長、金沢大学医薬保健研究域医学系の安藤仁教授、岡山県立大学情報工学部の綾部誠也教授、大下和茂准教授、九州女子大学家政学部の濱嵜朋子教授、九州共立大学スポーツ学部の樋口行人教授との共同研究として、遺伝子で決まる朝型と夜型の人間それぞれの身体活動量を活動量計により1週間連続的に測定し、先行研究では相対的に活動量が低いとされてきた夜型も、実は平日の活動量には差がないことを明らかにしました。
 
 本研究は、夜型生活者において身体活動量が少ない事実が、単に嗜好だけではなく、遺伝的にも一部説明できることを示した世界で最初の研究です。

夜型20人と朝型61人の学生それぞれの活動量平均値をプロット。土曜日と日曜日午前は、夜型の活動量が朝型よりも低下する。 しかしこれ以外の時間帯は、活動量に差はなかった(平日は金曜日と月曜日だけを図示したが、火曜日から木曜日も同様に差がない)。

 上のグラフのように、土曜から日曜昼の間だけ、夜型の活動量が朝型より低下しています。平日は学業や仕事などに従事しなければならないといった社会的な影響下にあり、遺伝的要因は抑圧されマスクされていると考えられます。

 
夜型の活動量は朝型より低いとする先行研究はありましたが、24時間程度の観測にとどまっていたためこうした社会的な影響は明らかになっていませんでした。日曜昼には、月曜からの社会的な生活に戻る準備を始め、身体活動量は朝型の人間と差のない状態に戻り始めているように見えます。
 
「あなたのベストタイム」は人によって違います。

 
今回の結果だけで決めつけるわけにはいきませんが、例えば、夜型遺伝子を持つ子どもが土日に朝寝坊しているのに対して、親が叱ることはその子に無理を強いている可能性があります。子どもの個性を把握して、個性に応じた接し方ができるといいかもしれません。

 また今回は、被検者に普段の起床時刻/就寝時刻や、主観的に自認するのは朝型か夜型かといった質問に答えてもらいましたが、こうした主観的自認や生活パターンと遺伝子的なタイプとは相関がないことが明らかになりました。

 勉学・スポーツ・ビジネスに取り組む場合、主観的自認だけでなく生まれつき持っている朝型か夜型の個性も考慮して、「あなたのベストタイム」に取り組むと最善のパフォーマンスを発揮できることにつながるでしょう。

 英文論文誌Physiology & Behaviorにオンライン版が掲載されました。この研究は、文部科学省科学研究費(26750351、16K01845)および第13回花王健康科学研究会助成金(2015年)の支援を受けて実施しました。

<掲載論文>
The CLOCK 3111T/C polymorphism is associated with hour-by-hour physical activity levels only on weekends among Japanese male and female university students
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35032497/

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