<緊急調査>定額減税に関する企業の影響アンケート
コロナ禍での緊急経済対策として全国民を対象として一律10万円が支給された「特別定額給付金」に続き、物価高への対策として、2024年分の所得税および個人住民税について定額による特別控除「定額減税」が始まった。所得税に関しては、6月の給与や夏季賞与から反映される。実質賃金のマイナスが過去最高の25カ月連続となるなか、個人消費の押し上げ効果が期待されている。しかし、その一方で、政府は所得税の減税額を給与明細に明記することを企業に義務づけるなど、一定の事務作業の増加が生じることが見込まれている。
そこで帝国データバンクは、「定額減税」の開始による事務処理にともなう自社の負担感の有無について緊急アンケートを行った。
<調査結果(要旨)>
企業の約7割、定額減税で『事務負担増』
※アンケート期間は2024年6月7日~11日、有効回答企業数は998社(インターネット調査)
※調査機関:株式会社帝国データバンク
※本調査における詳細データは景気動向オンライン(
https://www.tdb-di.com)に掲載している
自社における定額減税の事務負担について、「負担感がある」とした企業(66.8%)は約7割にのぼった。
他方、「負担感はない」企業は9.7%とおよそ1割にとどまり、「どちらとも言えない/分からない」は23.4%だった。
企業からは事務手続きを理解する時間や作業の増加による負担を訴える声は多い。加えて、年末調整や一括給付による対応で負担軽減を求める声も多数あがった。
また、「負担感がある」企業を規模別にみると、「大企業」は68.3%、「中小企業」は66.6%、「小規模企業」は62.6%とそれぞれ6割台となった。
企業規模の差は大きくないが、家族経営の企業や給与処理などを外部に委託しやすい比較的小さな企業ほど定額減税に対する負担感は少なく捉えていた。
本アンケートの結果、約7割の企業で定額減税による事務作業に負担感を感じていた。
企業にとっては、通常業務にプラスして新たな事務作業が増えたことに加えて、給与などの支給後に従業員から問い合わせを受けるなどの事後処理も想定される。時間が余計にかかることをコスト増と捉える企業も少なくない。
政府は、定額減税の特設サイトや給与支払者向けのコールセンターを設置するなど、周知・啓蒙を進めているが、どこまで企業の負担軽減につながっているかは不透明である。とはいえ、定額減税の効果が、この夏以降に消費の拡大として表れれば、企業の負担感も和らぐかもしれない。
企業からのコメント
定額減税で事務社員の負担が増えた。給与ソフトが対応していると言っても、最終的には人の目でチェックしなければならない(金融、中小企業)
l 社会保険料の算定基礎届提出や労働保険料の年度更新等とタイミングが重なっているため、現時点で担当者に大きな負担となっている。また、給与支給後にも従業員からの問い合わせ対応が予想され、定額減税ではなく年末調整での一括対応や4万円の定額給付など、別の方法がなかったのか疑問に思う(出版・印刷、中小企業)
定額減税は、会計ソフトの改修費用が発生かつ業務負担が増加している。一方で、社員側はうれしいと思う(飲食料品・飼料製造、中小企業)
定額減税は、給与ソフトメーカーや市町村役場、企業の事務担当者に多くの負担をかけてまでやることではないと思う(建材・家具、窯業・土石製品卸売、中小企業)
給与、賞与処理を行うために手続きを理解しなくてはいけないため、勉強に時間がとられた。また、疑問点を調べるのにも時間がかかり、事務負担が大きすぎる(旅館・ホテル、中小企業)
給与計算部署の勉強時間、事務負担、従業員への説明など手間が発生。国が想定している定額減税相当額分の所得税率を下げた方が民間企業の事務面では助かる(娯楽サービス、中小企業)
定額減税による事業への効果・影響が期待できない一方で、対応のための経費が増加した(情報サービス、小規模企業)
定額減税は給与システムが対応してくれるため事務負担はない(建設、大企業)
家族経営であり、定額減税における事務負担はほとんどない(不動産、小規模企業)
給与事務は外部委託しているので定額減税の負荷は感じない(化学品製造、中小企業)