埼玉工業大学、「深谷ねぎ」の葉の資源化技術を開発

2024/10/18  埼玉工業大学 

出荷時に廃棄されるネギの葉から植物由来のプラスチック製品を試作


<写真1:深谷ねぎをモチーフした箸置き>

 埼玉工業大学(本部:埼玉県深谷市、学長:内山俊一、略称:埼工大、https://www.sit.ac.jp/)は工学部生命環境化学科(環境物質化学研究室)兼クリーンエネルギー技術開発センター長の本郷照久教授の研究チームと工学部機械工学科(成形技術研究室)福島祥夫教授の研究チームが連携して、
出荷時に破棄されているネギの葉を資源化し、生成したバイオプラスチック材料を成形加工する技術を開発しました
その試作品として、「深谷ねぎ」をモチーフにした箸置きを作製しました。


 この技術により、大量に破棄されているネギの葉を資源として有効に活用することが可能になります。また、石油由来のプラスチック製品のゴミによる海の汚染や海洋生態系への悪影響が問題化する中、この技術が地球環境問題の改善に貢献することが期待できます。

 今回、ネギの葉の資源化プロジェクトにおいて、本郷教授の研究チームは、環境化学および物質化学の専門化として、ネギの葉からセルロースを抽出する技術を確立しました。


写真2:ネギの葉、セルロース、樹脂ペレット 


 ネギの葉から抽出したセルロースは、パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社(本社:大阪府門真市、社長:柳本 努)の技術協力により、kinari技術を活用して、複合樹脂ペレット化(ネギ由来セルロース:55%、ポリプロピレン:45%)されました。 


写真3:金型と成形加工機

 

 福島教授の研究チームは、成形技術の専門家として、ネギ由来セルロースの複合樹脂を石油由来樹脂と同様に成形する技術を開発しました。そして、本郷研究室の学生のアイデアを活かし、ネギ由来セルロースの複合樹脂から、「深谷ねぎ」をモチーフにした箸置きを作製しました。

 深谷市は「深谷ねぎ」の産地として全国的に有名で、年間約3万トンを出荷する日本一の生産地です。「深谷ねぎ」は収穫後、専用の段ボールに梱包して出荷され、販売店の店頭に並びます。その際、ねぎの長さを規格(55cm、または60cm)に合わせるため、先端の葉が切り落とされます。深谷市で切り落とされるネギの葉は、年間約6,300トンと概算され、その大部分が畑に破棄されています。破棄されたネギの葉は腐敗すると悪臭が発生するため、農家の悩みとなっています。

 その対策として、大量に破棄される作物残渣である、ネギの葉を有効利用するための技術開発が望まれていました。今回の技術開発により。これまで利用されていなかった切断されたネギの葉が、再生可能資源として活用されていくことが期待されます。
 
 埼工大では、工業大学として、化学系と機械系の専門技術を組み合わせて、民間企業の協力により地元の農業の環境問題に産学連携プロジェクトで対応しました。ゴミの発生量を抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)を推進する循環型社会の推進に貢献していきます。

<参考情報>
●「深谷ねぎ」について
本学の地元・深谷市は、新一万札の顔となった「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一翁の生誕地です。深谷市は、ねぎ、きゅうり、ブロッコリー、ほうれんそう、ゆり、チューリップの生産量が全国で上位を占める農産物の一大生産地で、ネギの収穫量は国内トップとなります。
(関東農政局の調べ)
https://www.maff.go.jp/kanto/nouson/sekkei/kokuei/arakawa/tokusanbutu.html

●環境物質化学研究室
物質化学の知恵や技術を使って、SDGsの達成を目指した研究を行っています。持続可能な社会を実現するためには、解決しなければならない様々な問題を抱えているが、その中でも地球温暖化問題、環境汚染問題、廃棄物・再生資源問題、エネルギー問題の解決に取り組んでいます。
https://hongolab.wordpress.com/

●成形技術研究室
これからのものづくりには機械設計技術だけでなく、効率の良い生産工程・加工技術が必要になります。それには、工作機械、ネットワーク、PC・スマホを連結したIoTの観点からの技術が必要となるため、本研究室ではプラスチック成形加工技術を基軸とし、“CAE技術での事前検討”、“機械設計技術での金型製作”、“IoT技術による監視・判断技術”について研究を行っています。これにより、企業が求めているスマートものづくりを理解した人材を育成していくことを目指しています。
https://www.sit.ac.jp/laboguide/kougaku/kikaikougaku/#fukushima

埼玉工業大学工学部生命環境化学科について
生命環境化学科では、生物学および化学を基盤とし、生命科学・環境科学・物質化学を教育研究の3本柱に据え、各専門分野の教育・研究を進めています。さらには食品・薬品・生活分野への展開や社会人・職業人への育成も、本学科の特色のひとつです。科学・技術だけではなく、総合的な思考力、実践力が身につくよう判断力や感性を磨き、現代社会の規範となる優れた技術者の育成と多彩な職業人の養成を目指しています。
・学科オリジナルHP https://www.sit.ac.jp/user/fuku-shio/

埼玉工業大学工学部機械工学科について
情報・制御、生産・設計システム、ロボットなど、技術立国・日本の産業界を牽引する「ものづくり」に必要な基礎知識を学んだうえで実習や研究を重ね、その知識を幅広い分野に応用できるエンジニアや研究者を育成します。
・学科オリジナルHP https://www.sit.ac.jp/gakkahp/kikai/

埼玉工業大学クリーンエネルギー技術開発センターについて
クリーンエネルギー技術開発センターでは、地域特性を活かした脱炭素社会のモデルを構築し、地
域おこしと脱炭素社会の同時実現を目指す「脱炭素ドミノ」を牽引する社会実装研究に取り組んで
います。
https://www.sit.ac.jp/clean_energy/

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