CALMANTHOLOGY PAGE.12 POP UP STORE
10月24日(木)より、トゥモローランド 下記店舗にて〈CALMANTHOLOGY PAGE.12 POP UP STORE〉を開催いたします。
是非この機会に店頭でご覧ください。
ABOUT|CALMANTHOLOGY
「伝統と進化」をコンセプトに、先人から学んだ事と物にエッセンスを加え、日本人ならではのバランス感覚をまとったスタンダードを提案する。あなたの為の靴を信念に、品を併せ持つ大人の男性に向けた、現代のプレタポルテシューズブランドです。
[開催期間・店舗]
・10月24日(木)~11月4日(月)
トゥモローランド 渋谷本店
・11月7日(木)~11月17日(日)
ランド オブ トゥモロー 心斎橋パルコ店
・11月21日(木)~12月1日(日)
トゥモローランド 神戸店
トゥモローランド 札幌ステラプレイス店
・1月9日(木)~1月19日(日)
ザ ストア トゥモローランド 阪急メンズ大阪店
トゥモローランド 京都BAL店
・1月16日(木)~1月26日(日)
トゥモローランド 名古屋ラシック店
※掲載内容は予告なく変更する場合がございます。
※掲載内容は展開商品の一部です。
※イベントの詳細につきましては直接店舗へご連絡下さい。
今回のイベントに合わせ、インタビュー記事をご紹介いたします。
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静かに語り、残っていくもの
〈CALMANTHOLOGY〉にとって、永く愛用していただく為の過度になりすぎないバランスはとても重要なポイント。やりすぎない、そしてやらなすぎないデザインバランスこそがブランドの理念であり、私の実現していきたい靴のスタイルです。
大事なのは、大前提として妥協を排除したものづくりがありながらも、それを主語として喧伝しないこと。ファッションとして存在し続ける説得力があること。
起点となるのは、デザイン画です。
B5の紙を選び書き始めるのですが、なぜか最近は絵の全体感が小さくなってきました。この段階では機能面などを勘案せず、美しいかどうかが最優先。線が作り出す空間と余白のバランスを意識するため、様々な角度から紙を回して確認しながら足し引きしていきます。
その後、職人との対話は双方の完成イメージを擦り合わせる作業。平面のデザイン画を立体的にしていくため、ある種の差異が生じます。サンプルを重ねて修正をしていく中で、より良いものに向かうべく意見を出し合うことが大切。現状維持ではなく、常にイノベーティブなトライをしていける信頼関係がここにはあります。
日本人の歩行の仕方を計算し尽した木型は独特な捻じれがあり、履き込むごとに所有者の足型に合わせて馴染むように設計。自然な足の着地と跳ね返りをサポートし、地面を感じながら指で歩く大切さを体現しています。本来身体に備わっているとされるその要素を、木型作りにおける理念の柱に置いているのです。
工場での作業に入ると、より緻密な積み上げを要するようになります。
アッパーは一寸17~19針という既成靴では規格外のピッチで縫い上げます。ミシンが進みすぎないよう手元に引きながら目視と手先の感覚で行うため、繊細な感覚と集中力を要する工程です。美しさと強度を両立させるためには熟練の技術が必要となり、素材への理解と共に美意識の高さも大事なファクターとなっています。
そして、靴の良し悪しを決める重要な工程が釣り込みです。基本的に職人の経験則と目視をもってすべてを手作業で行い、捻れのある独特の木型にフィットさせていくのです。革の伸び率が異なるため、表と裏もセパレートで一針毎に。この工程は数値化できない部分であるがゆえに人の温もりを通して凄味が加わり、特別なものとしての根幹を成していきます。
木型をより足型に近い形で表現する為、底面ヒールポイントからインステップガースまでの距離を緩やかなアーチ型で削っています。それは履く人の自重によって初めて安定し、時間をかけてその人の形になっていってほしいという想いから。中底とソールの間に1.5mmの隙間が出来るように設計し、徐々に体重がかかり沈むことで安定していくという仕組みになっています。
仕上げは各々の素材やモデルに合わせて、最適な手法でフィニッシング。
ワックスやロウを用いて必要な回数分を塗り込みます。また、すべての靴は納品されたタイミングで私が磨き上げます。検品工程としてはもちろん、心血を注いだ我が子をしっかりと見届けるという儀式めいたものなのかも知れません。
世界の老舗ブランドは長い間、数多の失敗と成功を繰り返し今の形に至っています。
故きを温ねて、新しきを知る。そこで生じた疑問に対して持論と仮説を伴ったトライを続けることが、ものづくりに対するリアルな知見を蓄える財産になると私は信じています。
手に取っていただければ、大量生産では実現できない本物だけが放つ存在感を理解してもらえる自負があります。
私が〈CALMANTHOLOGY〉で表現したい事は、「この先に残る物と事」です。
いきなり1000人に解ってもらう事をするつもりはありません。これからも10人・100人にと少しずつ理解を深め、大切に想っていただくことを問いかけ続けていくつもりです。
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普通の先にある、特別へ
“言葉なき詩集”というブランド名の由来そのままに、見開き(=1年)2ページ(=シーズン)ごとに変化していく形を取ってきた〈CALMANTHOLOGY〉。この度、当初の予定通りPAGE.12をもって1つの区切りを迎えることができました。
まず思い返されるのは、起点となったブランドローンチであるPAGE.01をトゥモローランドさんと共に作り上げられたこと。かねてから一人のファンとして渋谷店には足を運ばせてもらっており、〈CALMANTHOLOGY〉を世に送り出す際には絶対にここからスタートしたいと考えていました。純粋に服や靴を売るお店というものは数多く存在していますが、トゥモローランドの旗艦店でもあるこの場所は他とは異なる空間であると捉えています。
そこにある商品がみんな生きている、と感じました。
ファッションが好きな人間が集まって、1つのプロダクトをどのように演出するのがベストなのかを緻密に考えているのでしょう。ウィンドウディスプレイやエントランスから高揚感が刺激され、店内の世界観とスタッフの心配りによって結実された丁寧な諸々が、すべてお客さまに向いているように思います。ここでは「普通」や「当たり前」の基準がとてつもなく高いのです。
ものづくりには多くの人が介在します。
私は、「普通」の繰り返しと研鑽の上に「特別」があると考えています。大切なのは、関わる各々が積み上げてきた「普通」の基準を揃え、アウトプットされた際に大きな差異が生まれないようにすること。
その反面、生産を担う職人には1から10まで伝えきらないように留意もしています。ゴールのイメージを合致させてしまえば、その過程に関しては、適宜の創意工夫をしてくれると信じているからです。
私の靴は真摯に向き合いながら作らないといけないほどに繊細な工程を必要としており、「当たり前」を完遂するのにも一筋縄ではいかないものがあります。
その求めるものに向かい、職人たちが連綿と培ってきた技術と知見を持って導き出される最適解。
信頼関係を下敷きに、敢えて余白を残すことで多くの驚きと革新がありました。
脳内にあるイメージがデザイン画となり、木型になり、靴になります。
それを手に取ってもらえる場所があり、接客を通してストーリーを正しく紡いでもらう。
足を入れたお客さまが愛用してくれることで、それぞれに寄り添った「特別」なものへと昇華していく。
そのように関わるすべての方々によって、命と温もりが吹き込まれていきます。
PAGE.01のローンチイベントでは、職人たちや家族も招かせていただきました。
追い求めた最初の一歩が結実する瞬間を、多くの方と共有できた素晴らしい機会だったことを覚えています。
ありがたいことに、PAGE.12までに至る道程を通して、さらに関係性を深めていくことができました。
共に過ごした時間が育てた価値観の吻合は、他には代えがたいもの。
トゥモローランドさんには優しさと同時に、強い誇りを感じさせてもらいました。
私の作る靴に言葉はなく、そこには語るに足りた静かな説得力があると思います。
妥協をせず愚直に向き合い、自問自答を繰り返すことで辿り着く本物の価値。
ものづくりを大事にするトゥモローランドさんだからこそシンクロできた、ファッションであることの意味。
〈CALMANTHOLOGY〉の第一章は、この幸福な邂逅があったからだこそといえるでしょう。
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伝統を深く理解し、進化を必要な着眼点で取り入れていく
PAGE.が終わった今は、次の展開に向けて非常に気持が高まっています。コントロールできないほどに創作意欲やトライしてみたいことが溢れている感じです。ぼんやりと手を動かしながら、作りたいものと作るべきものを二軸で捉えつつ、それをどう咀嚼し具現化していくかを練り込んでいる段階だと自認しています。
私はフランスの写真家であるアジェの作品や思想に、自分の作る靴を重ね合わせてきました。変わりゆくパリの姿を、誰かの為に資料として残した彼の写真は純粋かつ静寂。近代写真の父と呼ばれた彼の世界に自分の靴が入り込んだら…と想像することがインスピレーションの始まり。これは感覚やビジョンとしては非常に明瞭なリンクをしているのですが、決して言語化することは叶いません。脳内で定まったアウトラインの筆圧を強くしていくように、徐々にプロダクトへと落とし込まれていくものだからです。
新しい基軸になり得るベーシックを今まさに進めているといえます。テーラーだった祖父によって日常的に存在していた糸やハサミなどの道具たち。前述したアジェをはじめとした、これまで見聞してきた素晴らしき世界中のカルチャーや潮流。この生業を通して経験し、出会ってきた方々。蓄積してきた知識や感覚を取捨選択しながら、いま必要な引き出しを精査している状態です。
次は「TITLE」をキーワードに、言葉を通して意味を作り出していきたいと考えています。1つの連載が終わり、次の構想を練りながらアイディアを煮詰める。ものづくりに携わる者としての醍醐味を、久しぶりにワクワクしながら取り組んでいるところです。
大事なのはディテールや作りだけに偏重するのではなく、ファッションとして捉えた時にどう存在すべきなのか。エレガンスなのか、無骨なのか、第三者が見た時にどのように捉えられるのかの視点は欠かせません。デザイン画を書き始める時、私は底面のラインから必ず筆を走らせます。着用者の視点では俯瞰でアッパーを見る形になりますが、他者から見えるサイド面が流れるようなラインを描けているかを意識しているからです。自己満足だけに帰結せず、スタイリッシュに見られることを美意識として捉えています。
新たにレディースの展開を始めるのも、その一環といえます。職人たちと二人三脚で理想を追求することに終わりはありません。靴はお客さまが実際に長い年月を共にすることで完成形へと近づいていくものですが、意図的に設けた余白は可能性という伸び代を内包したもの。バトンを渡していくように、長く愛してもらえる価値観を浸透させていきたいと考えています。
PAGE.01での高ぶる感情やインパクトを再び。
例えば、今はそう見えてしまうという目の錯覚をフォルムに投影したらどうなるのかを試しています。線と空間によって作られる造形に、従来とは異なるアプローチをしてみる。既成の概念に囚われずに思案し、時を忘れて没頭してしまうこともしばしば。
先人から学んできた事象に過不足のないエッセンスを加えることこそが「伝統と進化」であるといえるでしょう。
100年後にも残る靴の形とは何かを模索する中で、〈CALMANTHOLOGY〉はクリエイティビティとクラフツマンシップを同居させたバランス感覚を今後も大切にしていこうと思います。
作りたいものは見えています。
あとはどのようにして顕在化させていくのかを、丁寧に思考していきます。これからもぜひ、ご期待ください。