「シリアの子どもに平和を」人道支援を必要とする子ども750万人 【プレスリリース】

2024/12/19  公益財団法人 日本ユニセフ協会 

~教育の再開、人道支援の増強、子どもの保護などが重要~ ユニセフ地域事務所代表


厳しい寒さの中、アレッポの戦闘から逃れて、家族とともにラッカ市の一時避難施設に到着したばかりの女の子(シリア、2024年12月4日撮影) (C) UNICEF/UNI701428/Aldhaher

【2024年12月17日 ダマスカス発】
政権崩壊後のシリアを訪れたユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ事務所代表エドゥアルド・ベイグベデルは、以下の声明を発表しました。

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本日、私はダマスカス、ホムス、ハマ、アレッポ、イドリブを訪問し、シリアの子どもたちが置かれている悲惨な状況を目の当たりにしました。14年間にわたる戦争により、何百万人もの子どもたちは紛争以外の何も知らず、あまりにも早くおとなになることを余儀なくされています。しかし、より良い未来への希望と機会はあります。


ユニセフは引き続き現地で命を守る支援を提供し、シリアの人々が自国の新たな道筋を描くことを支えています。確実で包括的な政権移行は、シリアの1,000万人の子どもの権利を最優先しなければなりません。


シリア各地を訪問しましたが、支援ニーズの規模は驚くほどでした。750万人の子どもが人道支援を必要としています。治安の悪化と経済的苦境により、子どもの権利侵害、恐怖、不安が深刻化しているため、640万人の子どもが、緊急に保護サービスを必要としています。


シリアでは、燃料や食料、生活必需品の価格が上がり続ける中、最も弱い立場にある子どもや家族が極度の貧困に陥るのを防ぐために、大規模な社会的保護の取り組みが必要です。


家族が直面する課題は、長年にわたる紛争によってさらに深刻化しています。240万人以上の子どもが学校に通えず、さらに100万人の子どもが中途退学の危機にあります。そのため、子どもたちは児童労働、児童婚、人身取引、紛争当事者による徴兵や徴用のリスクにさらされる可能性が高くなります。教育を優先し、教員の能力を高め、教育システムを強化することは、社会的結束、寛容、平和を育むために不可欠です。


保険医療に関しては依然として不十分で脆弱です。病院や保険医療施設のほぼ40%が部分的に、あるいは完全に機能していません。1,360万人近くが水、衛生設備、衛生サービスを必要としており、370万人の子どもを含む570万人が栄養支援を必要としています。シリアの保健・水・衛生インフラの強化は最優先事項でなければなりません。


早期の復興は国際社会が支援しなければなりません。それがシリアの子どもたちや若者たちに持続可能で良質のサービスを確実に届ける唯一の方法なのです。


悲劇的なことに、紛争で荒廃した家に戻った家族にとって、地雷や不発弾(UXO)は死をもたらす脅威となっています。2020年以降、こうした戦争残存物によって1,260人以上の子どもが亡くなっています。この1週間だけでも、アレッポ、ダラア、ハマ近郊で少なくとも11人の子どもが命を落としています。


子どもたちはこうした危険に対して特に脆弱であり、不発弾をおもちゃや興味をそそる物と間違えることがよくあります。こうした危険は、子どもたちの安全を脅かすだけでなく、学校に通うことや保険医療サービスを受けること、生活を再建することを妨げることにもなります。不発弾の存在は農地を使用不可能にし、帰還した家族の食料不安と貧困を長引かせます。人道的な地雷除去活動の強化、地域社会の意識向上、地雷リスク教育、被害者支援など、緊急の行動が必要です。


シリア北部では、一般市民の生活の維持に不可欠な物が攻撃の対象となっています。数十万人にとって重要な水源であるティシレーン・ダムは、現在も続く戦闘により深刻な被害を受けています。ユニセフが支援するチームが修復作業を行っていますが、さらなる被害を防ぐためには、継続的かつ安全なアクセスが必要です。


国際人道法に基づく義務に従い、ダムとそこで働く職員およびダムの操業を危険にさらすような軍事活動を控えるよう、ユニセフはすべての当事者に強く求めます。ダムが崩壊すれば、30万の人々ーーその半数は子どもーーが暮らす下流の45の村々が壊滅的な被害を受け、未曾有の大惨事となるでしょう。


シリアの子どもたちに平和が訪れなければなりません。 今後待ち受ける課題は膨大ですが、ユニセフはすべての当事者および国際社会に対し、以下の4つの重要な対応を取るよう求めています。
- 国の機関は、教育を含む基本的なサービスを維持するために業務を再開しなければなりません。
- 徹底した人道的対応と経済回復を可能にするために、あらゆる手段を講じなければなりません。このプロセスには、公共部門と民間部門の双方が関与すべきです。方が関与すべきです。
- 国内避難民や難民の帰還支援を含み、人道支援は直ちに増強されなければなりません。また支援は、必要とする家族のもとへ安全に、かつ妨げられることなく届けられるようにしなければなりません。
- すべての当事者は、国際人道法および人権法に基づく義務を遵守し、常に市民の保護を担保しなければなりません。



ユニセフは、子どもたちのためにシリアに留まり、支援を届けることに引き続き尽力しています。2024年には、ユニセフはシリアにおいて、270万人の子ども、120万人の女性、4万人以上の障がい者を含む460万人以上に、極めて重要な教育、栄養、保健、子どもの保護、水、衛生、社会的保護サービスを提供しました。最近の事態の悪化を受けて、ユニセフは185の移動式医療チームを派遣し、1万2,000人の子どもに12のプレハブの教室で教育を提供し、300万人以上に清潔な水へのアクセスを確保しました。また、何千人もの避難民に心理社会的支援、保護サービス、生活技能教育を提供し、信頼、社会的結束、希望を醸成しました。


これらの取り組みにより、シリアは持続的な平和に向けて進み出すことができます。


これらの取り組みが実現し、2025年がシリアの子どもたちにとってようやく平和な年となることを心から願っています。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。https://www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます


■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。https://www.unicef.or.jp

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