Solana がポスト量子署名(耐量子署名 / quantum-resistant signatures)のテストネット実証を開始。Validators DAO は SLV 更新でバリデータ運用を支援

2025/12/20  ELSOUL LABO B.V. 

Solana がポスト量子暗号に基づく署名方式、いわゆる耐量子署名について、テストネット環境での実証を進めている動向を注視し、これに対応する形でテストネット運用およびオープンソース基盤 SLV を更新




ELSOUL LABO B.V.(本社:オランダ・アムステルダム、代表取締役 CEO:川崎文武)および Validators DAO は、Solana がポスト量子暗号(Post-Quantum Cryptography, 以下 PQC)に基づく署名方式、いわゆる耐量子署名(quantum-resistant signatures)について、テストネット環境での実証を進めている動向を注視し、これに対応する形でテストネット運用およびオープンソース基盤 SLV の更新を継続していることをお知らせいたします。

今回の動きは、量子コンピュータの実用化を見据え、将来にわたってブロックチェーンの安全性を維持するための準備段階に入ったことを示すものです。暗号方式の移行は、単なる研究テーマではなく、実運用を前提とした検証と段階的な更新が不可欠な課題となっています。

なぜポスト量子暗号が重要なのか
現在のブロックチェーンで広く用いられている公開鍵暗号は、「公開情報から秘密情報を逆算することが、現行の計算機では現実的に不可能である」という計算上の非対称性を前提に成立しています。
Solana で用いられている Ed25519 も、楕円曲線暗号の一種であり、この前提のもとで高い安全性が確保されてきました。

一方で、量子計算はこの前提を根本から揺るがす可能性が指摘されています。量子計算の特性によって、従来は極めて困難とされてきた計算が現実的な時間で実行可能になる場合、現在の暗号方式に依存するセキュリティモデルは成立しなくなります。

このため、量子コンピュータが実用化される前段階から、耐量子性を備えた暗号方式への移行を計画し、検証を進めることが重要となります。

2024年8月には、米国国立標準技術研究所(NIST)が複数のポスト量子暗号標準(FIPS 203、204、205)を承認しており、PQC は研究段階から標準化・実装検討の段階へと移行しています。Solana における今回のテストネット実証は、こうした国際的な動向を踏まえたものと位置づけられます。

Solana と Project Eleven によるポスト量子暗号検証の取り組み
Solana Foundation は、ポスト量子暗号および暗号移行分野を専門とする Project Eleven と協力し、量子計算の進展を見据えた Solana ネットワークの耐性強化に向けた検証を進めていることを発表しています。

この取り組みの一環として、Project Eleven は Solana に対する包括的な脅威評価を主導しました。評価では、将来的な量子計算技術の発展が、Solana のコアインフラ、ユーザーウォレット、バリデータの識別・認証、そして長期的な暗号前提にどのような影響を及ぼし得るかについて、技術的および運用的な観点から分析が行われています。

加えて Project Eleven は、ポスト量子署名を用いた Solana のテストネット環境を試作・展開しました。公開されている情報によれば、このプロトタイプでは、量子耐性を備えた署名方式を用いたエンドツーエンドのトランザクションが、現行技術の範囲内で実用的かつスケーラブルに成立し得ることが示されています。

Solana Foundation は、こうした検証を短期的な対策ではなく、今後数十年にわたってネットワークの安全性を維持するための準備の一部として位置づけています。複数クライアントの展開やコンセンサスメカニズムの進化と並行して、暗号基盤の将来リスクを早期に評価し、検証を進める姿勢を明確にしています。

Project Eleven は、先端的な暗号研究と実際のブロックチェーン運用を結びつける立場として、ポスト量子暗号向けのツール群、監視手法、移行戦略の開発を複数のプロトコルやエコシステムで進めています。Solana における今回の検証は、量子リスクが顕在化する前段階から、実環境での評価と準備を進めるという、業界全体の流れを象徴する事例と位置づけられます。
- Project Eleven 公式サイト: https://www.projecteleven.com/
- PRNewswire(公式発表): https://www.prnewswire.com/news-releases/project-eleven-to-advance-post-quantum-security-for-the-solana-network-302642847.html

移行は単発ではなく、継続的な運用課題
ポスト量子暗号への移行は、一度のアップデートで完了するものではありません。
クライアントソフトウェアの更新、設定変更、検証、再起動、挙動確認、場合によってはロールバック判断といった複数のステップを、正しい順序で確実に実行する必要があります。さらに、テストネットでの検証結果を踏まえた追加更新が、今後も継続的に発生することが想定されます。

このような移行局面では、「どれだけ速く更新できるか」以上に、「同じ手順を確実に再現できるか」「人的判断や環境差による揺らぎを抑えられるか」が、運用品質を左右します。

SLV によるバリデータ運用支援
SLV は、Solana バリデータおよび RPC 運用を支援するオープンソース基盤として、複雑化する運用を自動化と共通化によって支えています。
個々の運用者が異なる手順や環境に依存するのではなく、同一の成果物と更新経路を用いることで、移行局面における不確実性を大きく低減します。

特にバリデータ運用では、タイムゾーンに関係なく迅速な対応が求められる場面が少なくありません。SLV による自動化は、グローバルに分散した運用体制においても一貫した対応を可能にし、人的負荷や判断ミスのリスクを抑えます。

Validators DAO は、Solana のテストネット更新に追従するだけでなく、SLV 自体を継続的に更新することで、運用者全体が変化に対応しやすい環境を整備しています。

ERPC が提供する運用前提としてのインフラ
ERPC は、Solana ネットワークとの通信品質を最大化することを前提に設計されたインフラです。
RPC、ストリーム、バリデータが集積するネットワーク近傍に配置された構成により、Solana を利用するアプリケーションを VPS 上にデプロイする場合であっても、通信遅延や揺らぎを抑えた実運用が可能となります。

暗号方式の移行やネットワーク負荷の増大といった変化局面においては、暗号そのものの安全性に加え、それを支えるインフラと運用体制の成熟度が重要になります。ERPC は、こうした前提条件を実運用の中で積み重ね、Solana を安心して利用できる環境を提供しています。

今後について
ポスト量子暗号への対応は、特定の時点で完了する施策ではなく、長期的な検証と更新を前提とした取り組みです。
Validators DAO は、テストネット運用で得られる知見と実運用の経験をもとに、SLV および ERPC プラットフォームの改善を継続し、Solana エコシステム全体の信頼性向上に貢献していきます。

高品質な Solana 向けリソースや各種RPC回線に関するご相談は、Validators DAO 公式 Discord にて受け付けています。
- Validators DAO 公式 Discord: https://discord.gg/C7ZQSrCkYR
- ERPC 公式サイト: https://erpc.global/ja
- SLV 公式サイト: https://slv.dev/ja


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