まずは現場で回る仕組みを構築、将来はアルテグループ・業界全体へ

美容室チェーンを約370店舗展開する株式会社アルテジェネシス(横浜市中区/代表取締役社長 吉村 栄義)のグループ会社である株式会社C&P(横浜市中区/代表取締役社長 高橋 篤)は、カットカラー専門店「チョキペタ」において、これまで2025年10月より廃棄されてきたヘアカラー剤のアルミチューブを回収し、再資源化するリサイクル活動を本格的に開始しました。
本取り組みは、アルミニウム二次合金製造を手がける行う株式会社カンノ(長野県松本市)と連携し、約半年間にわたる実証期間を経て実装に至ったものです。今後はチョキペタでの取り組みを起点に、アルテグループ内および美容業界全体への展開を視野に入れています。
■取り組み概要
チョキペタでは、カット・カラー専門店という業態特性から、デザイン系の美容室に比べカラー剤の使用量が多くなっています。この日常的に発生する使用済みのヘアカラー剤アルミチューブについて、「分別」「回収」「再資源化」までの一連の仕組みを構築しました。
2025年3月より関東エリアのモデル店舗6店舗で試験的に導入を行い、工場への配送サイクルや配送にかかる費用、スタッフ教育、分別方法の標準化などを検証してきました。2025年9月末時点で計62kgの廃カラー剤アルミチューブを回収しています。配送料などコスト面において課題は残るものの、「リサイクル活動を実現し、環境配慮を最優先する」方針のもと、2025年10月より本格実施に移行しています。
■アルミチューブリサイクルが抱える課題
一般的な美容室では、日々多くのヘアカラー剤が使用されており、使用済みのアルミチューブは事業系廃棄物として処理されることが多く、再資源化が進みにくいのが実情です。アルミチューブは1本あたりが非常に軽量である一方、内容物の残留や臭気対策、分別の手間などが課題となり、回収・再資源化が難しい素材とされてきました。
一方で、アルミチューブの原料であるアルミニウムは、日本国内で新地金を生産することができず、輸入や再生材に依存している資源です。再資源化による環境負荷低減効果が高い素材として知られており、CO2排出量の削減や省エネルギーの観点からも、資源としての有効活用が求められています。
こうした背景から、アルミチューブは「環境負荷低減の余地が大きい一方で、現場での回収・運用が難しい」という構造的な課題を抱えており、実務として成立するリサイクルモデルの構築が長年の課題となってきました。
2025年3月よりモデル店舗6店舗で試験的に導入を行い、工場への配送サイクルや配送にかかる費用、スタッフ教育と分別方法の標準化などを検証しました。現時点では、配送料のコスト面や収益性においては課題がありますが、「リサイクル活動を実現し、環境配慮を最優先」に取り組みを進めています。
今後はチョキペタの実績をもとにグループ会社だけでなく、美容団体やメーカー・ディーラーなど幅広く呼び掛けを行い、美容業界全体へと広がっていくことを期待しています。
■現場の意識とボトムアップから始める取り組み
アルテグループでは、2025年4月に美容師・アイスタイリストを対象とした「SDGsに関する意識調査」を実施しました。本調査では1,104名から回答を得ており、81%が「使用済みのカラー剤や薬剤の廃棄方法について、環境に配慮した取り組みが必要」と回答しています。
(参考:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000294.000049680.html)
一方で、「環境配慮は重要だと感じているが、具体的にどう行動すればよいか分からない」「日常業務の中で無理なく続けられる形であれば取り組みたい」といった声も多く、意識と行動の間にギャップがあることが明らかになりました。アルテグループでは、こうした現場の温度感を踏まえ、トップダウンで制度を導入するのではなく、現場で実際に回る仕組みを一つずつ検証し、形にしていくボトムアップ型のアプローチを重視しています。その第一歩として、業態特性上アルミチューブの使用量が多く、直営運営により分別ルールや回収フローを統一しやすいチョキペタブランドから取り組みを開始しました。
【半年間の実証内容と判断】
実証期間中は、以下の観点で検証を行いました。

これらの検証を通じて、現場負荷と運用の両立が可能であることを確認し、本格実装を判断しました。
■社会的・環境的意義
アルミニウムは、飛行機・鉄道・自動車などの輸送分野をはじめ、建築、食品、日用品まで幅広く使われ、私たちの生活に欠かせない素材です。一方で、日本ではアルミニウムの原料となる新地金を国内で生産することができず、現在は輸入や再生材に依存しています。
一般に、アルミニウムはリサイクル適性の高い素材として知られており、新たに精錬する場合と比べて、再資源化の過程で必要となるエネルギーは大幅に少なくて済むとも言われています。文献等では、リサイクル時に必要なエネルギー量は新地金製造時の数%程度に抑えられるとされており、CO2排出量の削減や省エネルギーの観点からも有効な資源とされています。再生されたアルミニウムは、新地金とほぼ同等の品質を持ち、繰り返し利用できる点も特長です。
一方、ヘアカラー剤に使用されるアルミチューブは、1本あたりの重量が約1g前後と非常に軽量で、実際に回収できるアルミ量は約0.6g程度とされています。このように一つひとつはごく少量であることから、回収・再資源化が進みにくい素材とされてきました。しかし、ごみとして廃棄する場合にもエネルギーは必要であり、少量であっても確実に循環させていく仕組みを構築することが、資源の有効活用という観点から重要だと考えています。目安として、300kg規模のアルミ合金地金を製造するには、約50万本のアルミチューブが必要になるとされており、継続的な回収と仕組み化が不可欠です。
本取り組みを一社、一ブランドで終わらせるのではなく、私たちの取り組みを起点に、美容業界全体へと広げていくことで、持続可能な資源循環の実現につなげていきたいと考えています。
■株式会社カンノとの連携
アルテグループでは、廃カラー剤アルミチューブのリサイクルについて検討を重ねてきました。アルミニウム二次合金製造を手がける株式会社カンノと連携し、モデル店舗での検証を経て、実務として成立する仕組みづくりを進めています。
■株式会社カンノ コメント
株式会社カンノ 原料営業部 部長 小林 康治 氏
経済活動を血液循環になぞらえた表現として、「動脈産業」と「静脈産業」という言葉があります。天然資源を加工し、製品やサービスを生み出す産業が動脈産業であり、これに対して、動脈産業が生み出した製品のうち、消費され廃棄物となったものを回収し、再販売や再加工などを通じて再び社会に流通させる産業が静脈産業です。SDGsの考え方、特に省資源の視点が広がることで、最終ユーザーである一般消費者の方々が、リサイクル材を使用した製品を選択したいという機運が高まることを期待しています。そのためには、一般消費者との接点が多い美容室サロンが、リサイクルに取り組み、その意義を発信していくことは非常に効果的だと考えています。こうした取り組みが広がることで、動脈産業全体におけるリサイクル材活用の意識が高まり、静脈産業との連携が進むことで、結果として産業全体でSDGsへの取り組みがより一層加速していく──そのような好循環につながることを期待しています。
■今後の展開
今後はチョキペタでの実績をもとに、アルテグループ内の他ブランドへの展開を検討するとともに、美容団体、メーカー、ディーラーなど業界関係者へも広く呼びかけを行っていく予定です。リサイクルが難しいとされてきたアルミチューブの分野において、美容業界発の循環モデルとして業界全体へ広げていくことを目指してまいります。
【1】廃カラー剤アルミチューブの回収・受け入れ
全国各地の理美容関係者から、使用済みの廃カラー剤アルミチューブが集約されます。チューブは、キャップの取り外しや内容物の絞り出しなどの簡易的な選別を行い、臭気対策および残渣の漏れ防止のためビニール袋で密封し、段ボールに梱包した状態で搬送されます。
到着後は、段ボールを開封し、一箱ごとに異物や残渣の有無を確認(検収)したうえで、アルミニウムのリサイクル原材料として専用ボックスに一時保管します。一定量が集まった段階で、工場内へ搬送され、再生アルミニウム原料として次の工程に進みます。

左:分別た廃カラー剤アルミチューブを梱包したもの、右:検収したされチューブをストックしている様子
【2】仕込み(前処理)
廃カラー剤アルミチューブは、純度の高いアルミニウムでできています。一方で、1本あたりの重量が非常に軽量であるため、単体で使用すると酸化しやすい特性があります。そのため、他のアルミニウム原材料と組み合わせることで、溶解工程に適した状態へと整えます。これにより、再資源化に向けた仕込み工程が完了します。
【3】溶解
アルミニウムリサイクル工場では、用途に応じて複数のリサイクルアルミ品種を製造しています。メインとなるアルミ原料を投入し、高温で加熱する工程の中で、廃カラー剤アルミチューブも併せて投入されます。各種アルミ原料が溶解され、液体状の再生アルミニウムとなります。

左:溶解炉にチューブを投入している様子、右:800℃まで加熱させていく様子
【4】出湯・鋳造
溶解されたアルミニウムが液体状になった状態を「お湯になる」と表現し、この状態のアルミニウムを鋳型に流し込み、凝固させる工程を「出湯・鋳造」と呼びます。この工程を経て、再生アルミニウム地金が形成されます。
【5】再利用・社会への還元
完成した再生アルミニウムのベースメタル(再生地金)は、圧延・押出メーカーの原材料として使用され、成分調整や加工を経て、用途に応じた製品へと生まれ変わります。こうして、廃カラー剤アルミチューブは再び社会で活用される資源として循環していきます。

左:液体状になったアルミを型枠へ流し込む様子、右:凝固したベースメタルを冷ます様子
【株式会社C&Pについて】
本社:〒231-0031 神奈川県横浜市中区万代町1-2-12 VORT横浜関内III 8F
会長:吉原 直樹
代表取締役社長:高橋 篤
設立: 2019年1月4日
Tel: 045-222-7227
URL:
https://www.chokipeta.com/
事業内容:カットカラー専門の身だしなみメンテナンスサロン運営
【株式会社アルテジェネシスについて】
本社:〒231-0028 神奈川県横浜市中区翁町1-4-1 アルテマリンウェーブビル 5F
代表取締役会長:吉原 直樹
代表取締役社長:吉村 栄義
設立:2022年1月11日
創業:1986年8月7日
資本金:1億円
Tel:045-663-6123
URL:
https://artegenesis.com/
事業内容:美容室チェーン等を展開する持株会社
スタイルデザイナー事業部
https://www.styledesigner.net/
グループ会社
株式会社 アッシュ
https://ash-hair.com/
株式会社 ニューヨーク・ニューヨーク
https://www.nyny.co.jp/
株式会社 C&P
https://www.chokipeta.com/
株式会社 ダイヤモンドアイズ
https://www.diamond-eyes.net/
株式会社 東京美髪芸術学院