CBP501の米国における次相臨床試験予定及び欧州における臨床第3相試験準備について

2024/02/09  株式会社 キャンバス 

2024年2⽉9⽇
株 式 会 社 キ ャ ン バ ス

CBP501の⽶国における次相臨床試験予定及び 欧州における臨床第3相試験準備について

当社は、本⽇開催の臨時取締役会において、

(1) ⽶国における次相臨床試験を臨床第2b相試験とし、当⾯、そのうち1stステージについて開始準備を進めること

(2) 欧州で開始している臨床第3相試験準備を継続し、これが実現した場合には⽶国での次相臨床試験を中断または中⽌して欧州での開発を優先すること を決定いたしましたので、お知らせします。

1. FDAの開始承認を得た⽶国次相臨床試験について

当社は2023年初頭から、⽶国臨床試験の規制当局であるFDA(⽶国⾷品医薬品局)との間で、CBP501臨床第3相試験の開始に向けて協議を続けてまいりました。

この結果、当社はFDAから、新薬承認を⽬指すピボタル試験の前に⽐較的⼩規模な臨床試験(以下「臨床第2b相試験」といいます)の開始を承認する旨の通知を受領しました。

当社は本⽇開催の臨時取締役会において、この通知を受け⼊れ、FDAとの間でこれ以上の協議を継続しない旨を決定しました。

開始承認を受領した臨床第2b相試験は、
・CBP501+シスプラチン+ニボルマブ 3剤併⽤投与群
・医師の最適選択*1(Physicianʼs Choice)投与群
の2群、合計約150〜160名* による⽐較対照試験です。

*死亡120名まで試験を実施するプロトコールのため、登録予定数は概数です。

途中、両群計50名登録の時点で⼀旦登録を中断し、両群計30名死亡時に中間解析を実施します。

今回、臨床第3相試験でなく臨床第2b相試験の開始承認となったのは、CBP501を含む3剤併⽤投与の有効性・安全性等についてFDAから懸念や疑問が⽰されたものではありません。もしそうであればこの臨床第2b相試験も開始承認されていません。

協議の内容と経緯については次項でご説明します。

当社は、本⽇の決定を踏まえ、中間解析までの部分(以下「1stステージ」)の開始に向け、準備を進めます。CROとの契約や薬剤の製造・調達など規制当局の開始承認を待たずに進められる準備は概ね終えており、このあとFPI(最初の患者様への投与開始)までの準備項⽬は、臨床試験実施施設の開設(各施設の倫理委員会承認など)、薬剤のデリバリーの⼿配などが主なものです。

現時点の⾒通しとしては、この臨床第2b相試験のFPIは2024年半ば、1stステージ終了・中間解析は2025年頃、2ndステージLPO(最終の患者様への投与終了)は2026〜27年頃と想定されます。

臨床第2b相試験に今後必要となる費⽤は、どこまで進めるかによって異なります。たとえば1stステージ直前まで準備を進めておいてペンディングする場合は約2.5億円、1stステージの終了と中間解析まで進めた場合は約20億円、臨床第2b相試験全部を実施した場合は約35〜40億円と⾒込まれます。

もし、この路線で⽶国での開発継続・承認獲得を想定する場合、続く臨床第3相試験のための追加資⾦の確保(資⾦調達または製薬企業等との提携)が今後数年のうちに必要となるほか、上市⽬標時期も数年に及ぶ延期を余儀なくされることとなります。

2. 次相臨床試験の開始に向けた⽶国規制当局との協議の経過について

当社は、2023年2⽉、臨床第2相試験の良好な結果を受け、FDAに対して臨床第3相試験の実施を申請し、以後、CBP501臨床第3相試験の開始に向けてさまざまな論点にわたる協議を続けました。

前述のとおり、今回、臨床第3相試験でなく臨床第2b相試験の開始承認となったのは、CBP501を含む3剤併⽤投与の有効性・安全性等についてFDAから懸念や疑問が⽰されたものではなく、その点は協議の対象になっていません。

協議の中⼼となった論点は、3剤それぞれの寄与を証明することの必要性の有無やその⽅法についてでした。

寄与の証明の必要性やその⽅法をめぐっては今回次のような論点があり、当社は規制当局の意思決定や意⾒表明を求め、それに沿った臨床試験を実施するべく協議に臨んだのですが、FDAから明確な意⾒表明がなされないまま、協議の空⾛が⻑く続きました。

1) そもそも、多剤併⽤においては基本的に、併⽤する各薬剤の寄与を証明する必要があります。

ただ、そのための基準はFDAの中でも確⽴されていません。実際に、承認済みの2剤に別の適応で承認されている1剤を加えた3剤併⽤レジメンが、追加の1剤の寄与を統計的に証明することなくFDA承認されたケースも過去にあります。必ずしも、2剤併⽤と3剤併⽤の⽐較試験が常に求められるわけではありません。

2) 今回、併⽤する3剤それぞれの寄与を統計的に証明するためには、CBP501を含まない2剤併⽤投与群(シスプラチン+オプジーボ)を設定した臨床試験を実施し、CBP501を含む3剤併⽤投与群との間に統計的な有意差を得なければなりません。

しかし当該2剤併⽤群に関しては、有効性を⽰唆する過去の臨床試験は存在せず、当社の臨床第2相試験においても主要評価項⽬を達成していません。CBP501臨床第2相試験中間解析時に開催された安全性モニタリング委員会(臨床試験に参加した臨床医らで構成される、当社には投票権のない独⽴の会議体)においても、当該投与群に被験者を登録することはできず臨床試験を終了するべきと全会⼀致で推奨されました。したがって当該2剤併⽤群の設定は、被験者の利益に鑑みて倫理的に問題があります。

当社は、FDAに対して、当社がこれまで実施してきたCBP501臨床試験や他で実施されたさまざまな膵臓がん臨床試験に含まれる3次治療に関するデータをもとに、CBP501を含む3剤併⽤投与における3剤それぞれの寄与の証明を実施せず、医師の最適選択投与群との2群⽐較で有意差を証明する臨床第3相試験の実施が適切である旨について、粘り強く説明しました。

その結果、2剤併⽤投与群を含まない2群試験とすることに関しては当社の主張が採⽤されたものの、⽐較的⼩規模な臨床第2b相試験とするべきという、やや曖昧な開始承認となりました。

もし、シスプラチン+オプジーボ2剤併⽤投与だけでも有効な可能性(つまり、CBP501が有効性にあまり寄与していない可能性)をFDAが想定しているのであれば、投与群を設定しても倫理的な問題はないことになるので、2剤併⽤投与群を加えた3群での試験を実施せよという開始承認となるべきです。

当社は、その指⽰となった場合には3群の臨床試験を実施する旨の意思表⽰もしていましたが、その指⽰は出ませんでした。

この指⽰となった理由等については現在も明確ではなく、さらに、その後に実施するべき臨床第3相試験の内容についてもFDAの姿勢は明確でありません。

この結果は当社にとって満⾜できるものではなく、必ずしも全⾯的に納得しているわけではありません。 しかしながら、FDAとさらなる協議を継続して当社の希望する臨床第3相試験の実施を説得できる可能性との⽐較検討を慎重におこなった結果、当社は、CBP501の⽶国における臨床開発を最速かつ最⼩のコストで実現するためには、今回の指⽰に沿った臨床第2b相試験に向かうことが現時点で最善の⽅法であると判断しました。

なお今後は、次項でご説明する欧州における臨床試験実施に対する⼀種の「保険」「リスクヘッジ」として⽶国臨床試験を位置づけることとなります。⽶国における臨床第2b相試験の準備進⾏に関して開⽰すべき事項が発⽣または決定した場合には、すみやかに開⽰します。

3. 欧州における臨床第3相試験の準備と選択肢について

⼀⽅で当社はかねてから、FDAとの協議が当社にとって満⾜できる結果とならなかった場合に備え、欧州で臨床第3相試験を実施する可能性を模索してきました。

ESMO2023年次総会における学会発表を契機として強いご興味を⽰していただいた膵臓がん治療薬臨床試験で承認獲得実績のある欧州の医師らの協⼒を得て、現在も準備を進めています。

当社、当社科学顧問及び当該医師らは、FDAとの協議で臨床第3相試験の開始に⾄らなかった意⾒の相違について、欧州規制当局EMA(European Medicines Agency:欧州医薬品庁)との協議ではクリアでき、臨床第3相試験を開始できる可能性を⾒込んでいます。実際に、⽶国規制当局で開始承認を得られなかった試験が欧州で承認され実施されたケースは過去にもあります。

この⽬論⾒どおり欧州での臨床第3相試験開始・実施に⽬処が⽴った場合、当社は、⽶国での臨床第2b相試験を1stステージのみで中断し、あるいは、臨床第2b相試験を開始しない(時期や状況によって異なります)ことを選択する予定です。

現時点で想定している内容に基づくと、欧州における臨床第3相試験が実施できた場合の費⽤は約45〜50億円と⾒込んでいます。

今後、欧州における臨床第3相試験の準備進⾏に関して開⽰すべき事項が発⽣または決定した場合には、すみやかに開⽰します。

4. 開発資⾦の状況及び今後の⾒通しについて

これまで当社は、CBP501臨床第3相試験が2024年中に⽶国で開始できる想定のもとで、新薬承認・上市に⾄るまでの期間を今後約4年、必要な臨床開発費総額を55〜65億円と公表してきました。

今回の決定によって、開発期間や費⽤への影響が⽣じます。その詳細は現在精査中であり、今後判明次第改めてお知らせします。

現時点の概算に基づくと、仮に⽶国で臨床第2b相試験と臨床第3相試験を実施した上で承認・上市を⽬指す場合、上市までに要する期間はこれまでの⽬標であった2027年よりも3年程度⻑期化し、承認までの臨床開発費総額は30〜40億円程度増加する⾒通しです。

⼀⽅で、仮に欧州規制当局との協議と臨床試験準備が順調に進み、2024年中に欧州で臨床第3相試験を開始できるベストスケジュールが実現し⽶国での臨床第2b相試験を実施しないこととした場合には、承認・上市までに要する期間はこれまでの想定(⽶国で臨床第3相試験が2024年中に開始できる想定)とほぼ変わらず、承認までの臨床開発費総額についても、これまで公表してきたものから⼤きな変動はありません。臨床試験開始準備の⼀部(薬剤の調達など)は、既に⽶国で進めているものを転⽤することも可能です。

これらのことから当社は、⽶国においては今回取得した臨床第2b相試験開始承認に基づく準備を進めておきつつ、欧州においてCBP501臨床第3相試験実施が実現した場合には⽶国臨床第2b相試験を実施しないこととするのが、所与の条件下で最適の選択だと考えています。

当社は、2023年5⽉実施のファイナンスによって、臨床第3相試験費⽤を使途として、臨床開発資⾦の⼀部を調達済みです。

今回の⽶国での臨床第2b相試験費⽤(欧州での臨床第3相試験が開始できる場合には、欧州臨床第3相試験の費⽤)の半分以上を、現在保有している現預⾦でカバーできます。特に、次相臨床試験準備およびスタートに関する今後2年程度の⽀出については、今後どのような選択をしたとしても現有の現預⾦で⼗分に対応できます。

このほか、既に発⾏済の第19回・第20回新株予約権の今後の⾏使による調達も想定できます。

したがって当社は、株式希薄化を伴う追加資⾦調達をただちに必要とする状況にはありません。

以上

注 *1 医師の最適選択

膵臓がん3次治療の領域には承認済みの治療が存在しません。

現在、2次治療を終了した末期膵臓がん治療においては、医師が個々の患者の様⼦を⾒つつ、膵臓がん1次治療や2次治療で承認済みの医薬品を組み合わせた治療が⾏われています。

これを「医師の最適選択」(Physicianʼs Choice)といいます。

⼀般に新薬承認の際には承認済みの既存治療との⽐較が⾏われますが、今回の対象疾患である膵臓がん3次治療には承認済みの既存治療が存在しないため、この「医師の最適選択」との⽐較が⾏われます。

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