アストラゼネカのタグリッソとsavolitinibの併用療法を評価した第Ⅱ相試験(SAVANNAH試験)、高レベルのMET過剰発現および/またはMET増幅を有する肺がん患者さんにおいてORR49%を示した

2022/08/18  アストラゼネカ 株式会社 

アストラゼネカのタグリッソとsavolitinibの併用療法を評価した第Ⅱ相試験(SAVANNAH試験)、高レベルのMET過剰発現および/またはMET増幅を有する肺がん患者さんにおいてORR49%を示した

公開日 2022年 8月 18日

本資料はアストラゼネカ英国本社が2022年8月8日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

METはEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者さんにおいて
標的療法に対して耐性を獲得した際に最も多く発現するバイオマーカー

この併用療法を評価する国際共同第Ⅲ相試験(SAFFRON試験)が進行中

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])は、SAVANNAH試験の良好な暫定結果を発表しました。本試験において、タグリッソ(オシメルチニブ)とsavolitinibの併用療法は、タグリッソによる治療で病勢進行したMET過剰発現および/または増幅が高値(IHC90+および/またはFISH10+と定義)の上皮成長因子受容体遺伝子変異(EGFRm)陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんにおいて、49%の客観的奏効率(ORR)を示しました(95%信頼区間[CI]、39-59%)。

最もORRが高かったのは、化学療法歴のないMET高値の患者さんでした(52%[95% CI:41-63%])。MET高値を示さなかった患者さんのORRは9%(95% CI:4~18%)でした。これらの結果は、オーストリアのウィーンで8月6~9日に開催された2022年の世界肺癌学会(IASLC)で発表されています。

Savolitinibは、Orpathysというブランド名で中国で販売されており、当社とHUTCHMED社が共同で開発・販売している、経口で強力かつ高選択性MET受容体チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)です。

EGFRを標的とする治療で、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者さんは持続的な延命効果を得られますが、ほとんどの患者さんが最終的には耐性を獲得し、METはその際に最も頻繁に現れる耐性バイオマーカーです1。SAVANNAH試験参加のためにスクリーニングされた患者さんのうち、全員がタグリッソ治療後に病勢進行し、62%がMETの過剰発現および/または増幅を伴う腫瘍を有し、1/3以上(34%)が定義されたMET高値のカットオフ値を満たしていました。

韓国ソウルの成均館大学医学部附属サムスンメディカルセンターの血液腫瘍学教授で、SAVANNAH試験の治験責任医師であるMyung-Ju Ahn博士は次のように述べています。「標的治療に対する耐性獲得と病勢進行は、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者さんのほとんどが直面する困難な問題です。今回発表されたSAVANNAH試験の結果は、savolitinibのようなMETを標的とした治療法による治療効果が最も得られるようなMET過剰発現および/または増幅を有する患者さんを同定する新たなアプローチの裏付けとなる可能性があります。また、適切なバイオマーカー検査戦略により、耐性を獲得してしまった患者さんにとって、METはこれまでの理解よりも有力な標的となり、オシメルチニブとsavolitinib併用療法レジメンのさらなる探求につながります」。

アストラゼネカのチーフメディカルオフィサー兼オンコロジーチーフデベロップメントオフィサーであるCristian Massacesiは次のように述べています。「標的治療で増悪したEGFR遺伝子変異陽性の肺がん患者さんに対する現在の標準治療は化学療法です。SAVANNAH試験の結果は、病勢進行時にタグリッソにsavolitinibを追加した併用療法が、バイオマーカーで選択された患者さんにとって、毒性が低くより効果的な治療選択肢となる可能性を示唆しています。本試験およびSAFFRON試験によって、タグリッソとsavolitinibの併用療法レジメンの可能性をより深く理解していきたいと考えています」。

HUTCHMEDの最高経営責任者および最高科学責任者であるWeiguo Su博士は次のように述べています。「savolitinibとタグリッソの併用療法が、これまでの認識よりも多くの患者さんに恩恵をもたらす可能性があることが裏付けされた患者選択戦略をもって、国際共同第Ⅲ相試験(SAFFRON試験)に進んだことは心強いです。また、SAVANNAH試験の結果から、EGFR標的治療で病勢進行したNSCLC患者さんに対して、その後の治療を開始する前の分子検査が果たす役割も確認されました。私たちは、選択的かつ患者さん中心のアプローチを追求し、この設定でのsavolitinibの開発を進めていきます」。

今回の解析では、2つの検査で患者さんのMET過剰発現および/または増幅レベルを決定しました。一つは、がん細胞がその表面上に特定のタンパク質またはマーカーを有するかを検出する免疫組織化学(IHC)、もう一つは、がん細胞から特異的DNA配列を検出する蛍光 in situハイブリダイゼーション(FISH)です。今回解析した全ての患者さん(n=193)が少なくともIHC50+および/またはFISH5+であり、タグリッソ80mg 1日1回単独療法で病勢進行した後、タグリッソに加え、savolitinib 300mgを1日1回投与しました。

有効性概要i

i. 解析データカットオフ:2021年8月27日
ii. 検査成績が無効(invalid)または欠測のためにサブグループ解析から除外された患者さんは8名
iii. DoR:奏効期間
iv. PFS:無増悪生存期間
v. DCR:疾病コントロール率

タグリッソとsavolitinibの併用療法の安全性プロファイルは、併用療法およびそれぞれの単剤療法の既知のプロファイルと一貫していました。また、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。今回の解析において、グレード3以上の有害事象(AE)を経験した患者さんは半数未満(45%)であり、最も多く報告されたAEは肺塞栓症、呼吸困難、好中球数減少および肺炎でした。Savolitinibに起因し、中止に至ったAEは、患者さんの13%で発生しました。

国際多施設共同第Ⅲ相SAFFRON試験では、タグリッソ投与後のEGFR遺伝子変異かつMET過剰発現および/または増幅を有する局所進行または転移性NSCLC患者さんを対象に、タグリッソとsavolitinibの併用療法を、白金製剤ベースの2剤併用化学療法との比較で評価します。患者さんはSAVANNAH試験で同定されたMET高値のカットオフを用いて、前向きに選択されています。

※savolitinibは本邦未承認です。

以上

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NSCLCおよびMETの異常
肺がんは、男女共にがんによる死因の第1位であり、すべてのがんによる死亡の約5分の1を占めています2。肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)に大きく分けられ、肺がん患者さんの80~85%がNSCLCと診断されます3。NSCLC患者さんの大半(約75%)は進行がんで診断されます。欧米ではおよそ10~15%、アジアでは30~40%のNSCLC患者さんがEGFR遺伝子変異を有しています4-7

METはチロシンキナーゼ受容体であり、正常な細胞の発達に重要な役割を果たします8。METの過剰発現および/または増幅は、腫瘍の増殖およびがん細胞の転移性進行につながる可能性があり、EGFR遺伝子変異陽性の転移性NSCLCにおいてEGFR TKIに対する耐性獲得の主な機序です8,9。METの発現率/増幅率は、使用する検体の種類、検出方法および分析カットオフ値によって異なります10

SAVANNAH試験は、EGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移性NSCLCで、METの過剰発現および/または増幅が認められ、タグリッソによる治療後に病勢進行した患者さんを対象に、タグリッソにsavolitinibを追加した場合の有効性を検討する現在進行中の国際共同無作為化単一群第Ⅱ相試験です。患者さんは、経口オシメルチニブ80mgとの併用で、savolitinib 300mgまたは600mgを1日1回(QD)、またはsavolitinib 300mgを1日2回投与されました。

本試験は現在までに、米国、カナダ、欧州、南米およびアジアを含む世界80カ所以上の施設において294例の患者さんを登録しています。主要評価項目はORRです。重要な副次評価項目には、無増悪生存期間、DoRおよび安全性が含まれます。

タグリッソについて
タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)は第3世代不可逆的EGFR阻害剤であり、中枢神経系転移に対する症例を含め、NSCLCにおける臨床活性が実証されています。タグリッソ(40mg錠および80mg錠の1日1回経口投与)は、これまでに全世界で様々な適応にわたり575,000人以上の患者さんの治療に用いられています。当社は引き続き、様々な病期のEGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がん患者さんの治療薬として、タグリッソを研究していきます。

第Ⅲ相試験としてタグリッソは、切除可能な患者さんを対象とした術前補助療法の試験(NeoADAURA試験)、切除可能なIA2~IA3期の患者さんを対象とした術後補助療法の試験(ADAURA2試験)、化学放射線療法後のステージIII期の切除不能な局所進行の患者さんを対象とした試験(LAURA試験)および進行/再発の患者さんを対象とした化学療法との併用療法の試験(FLAURA2試験)でも検討が進んでいます。その他の現在進行中の試験として当社は、タグリッソとMET受容体チロシンキナーゼの強力かつ高選択性経口阻害剤であるsavolitinibとの併用療法を評価する第Ⅱ相SAVANNAH試験、第Ⅱ相ORCHARD試験、および第Ⅲ相SAFFRON試験を通じて、腫瘍の耐性メカニズムを解き明かそうとしています。

Savolitinibについて
Savolitinibは、経口で、強力かつ高選択性のMET受容体チロシンキナーゼ阻害薬であり、進行固形がんで臨床的活性が示されています。Savolitinibは、変異(エクソン14スキッピング変異や他の点突然変異など)、遺伝子増幅または蛋白質の過剰発現で起こるMET受容体チロシンキナーゼ経路の非定型的な活性化を遮断します。

Savolitinibは、全身療法による前治療後に増悪した、または化学療法を受けることができないMETエクソン14スキッピング変異を伴うNSCLC患者さんの治療薬として、Orpathysの販売名で中国で販売されています。現在、肺がん、腎がん、胃がんなどの様々ながん種に対して、単剤療法の治療薬として、また他の治療薬との併用療法で治験が進められています。

アストラゼネカとHUTCHMEDの共同研究について
2011年、アストラゼネカ社とHUTCHMED社は、savolitinibを共同開発・商業化するためのグローバルライセンスおよび提携契約を締結しました。中国でのsavolitinibの共同開発はHUTCHMEDが主導し、一方、アストラゼネカは中国以外での開発を主導しています。HUTCHMEDは、中国におけるsavolitinibの販売許可、製造および供給を担当しています。アストラゼネカは、中国および世界におけるsavolitinibの商業化を担当しています。Savolitinibの販売はアストラゼネカにより認められています。

肺がん領域におけるアストラゼネカについて
アストラゼネカは、疾患の早期発見と早期治療を通じて、肺がん患者さんを根治に導く治療を提供するとともに、治療耐性や病勢進行した状況においても効果が期待できる治療法を追求すべくサイエンスの限界に挑戦し続けていきます。また、新たな治療ターゲットを定義し、革新的なアプローチを評価することで、患者さんにとって最も高い治療効果が期待できる医薬品を特定し、提供していくことを目指しています。

当社の包括的なポートフォリオには、革新的な肺がん治療薬であるタグリッソ(オシメルチニブ)、イレッサ(R)(ゲフィチニブ)、免疫チェックポイント阻害剤であるイミフィンジ(R)(デュルバルマブ)およびトレメリムマブや第一三共と共同開発を進めているエンハーツおよびdatopotamab deruxtecan、HUTCHMEDと共同開発を進めているsavolitinibなど、新薬候補となる開発品および多様な作用機序を組み合わせた開発パイプラインが含まれます。

アストラゼネカはLung Ambition Alliance(LAA)の創設メンバーであり、LAAは、イノベーションを促進し、肺がん患者さんの治療を含め、治療を超えた人々に意味のある改善を提供するために取り組んでいます。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカは、あらゆる種類のがんに対して治療法を提供するという高い目標を掲げ、がんとその発見にいたるまでの複雑さを科学に基づいて理解し、患者さんの人生を変革する医薬品の開発および提供を通じて、オンコロジー領域の変革をけん引していきます。

アストラゼネカは治療困難ながん種に注力しています。当社は持続的なイノベーションにより、医療活動および患者さんの医療経験を一変させる可能性のある、製薬業界でもっとも多様なポートフォリオと開発パイプラインを構築しています。

アストラゼネカはがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、希少疾患、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオ・医薬品において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については
https://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Del MD, et al. Understanding the Mechanisms of Resistance in EGFR-Positive NSCLC: From Tissue to Liquid Biopsy to Guide Treatment Strategy. Int J Mol Sci. 2019;20(16): 3951.
2. World Health Organization. International Agency for Research on Cancer. All cancers fact sheet. Available at: https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/39-All-cancers-fact-sheet.pdf. Accessed July 2022.
3. American Cancer Society. What is Lung Cancer? Available at:
https://www.cancer.org/cancer/lung-cancer/about/what-is.html. Accessed July 2022.
4. Knight SB, et al. Progress and prospects of early detection in lung cancer. Open Biol. 2017;7(9): 170070.
5. Keedy VL, et al. American Society of Clinical Oncology Provisional Clinical Opinion: Epidermal Growth Factor Receptor (EGFR) Mutation Testing for Patients with Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer Considering First-Line EGFR Tyrosine Kinase Inhibitor Therapy. J Clin Oncol. 2011:29;2121-27.
6. Zhang Y, et al. The prevalence of EGFR mutation in patients with non-small cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Oncotarget. 2016;7(48).
7. Szumera-Ciećkiewicz A, et al. EGFR Mutation Testing on Cytological and Histological Samples in 11. Non-Small Cell Lung Cancer: a Polish, Single Institution Study and Systematic Review of European Incidence. Int J Clin Exp Pathol. 2013:6;2800-12. 
8. Uchikawa E, et al. Structural basis of the activation of c-MET receptor. Nat Commun. 2021;12(4074).
9. Wang Q, et al. MET inhibitors for targeted therapy of EGFR TKI-resistant lung cancer. Journal of Hematology & Oncology. 2019;63.
10. Coleman N, et al. Beyond epidermal growth factor receptor: MET amplification as a general resistance driver to targeted therapy in oncogene-driven non-small-cell lung cancer. ESMO Open. 2019;6(6).

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