当社子会社によるセンダイウイルスベクターにおける改良ベクター技術の特許査定に関するお知らせ

2021/12/02  株式会社 IDファーマ 

2021年12月2日

株式会社アイロムグループ

当社子会社によるセンダイウイルスベクターにおける
改良ベクター技術の特許査定に関するお知らせ

当社の100%子会社である株式会社IDファーマ(以下、「IDファーマ」という)は、基盤技術であるセンダイウイルスベクターについて、効率を高めた改良ベクター技術を開発し、欧州における特許査定を10月19日付で受けましたので、下記のとおりお知らせいたします。



1.特許技術について

本特許技術は、センダイウイルスベクターの遺伝子配列を改良することにより、ベクターに搭載された遺伝子を一過的に高発現とすることや、ベクターを迅速に除去するまたはベクターを増加させるなど、目的に応じてベクターをコントロールすることが可能となる技術です。

この技術により、本特許技術を用いたセンダイウイルスベクターは、細胞治療や再生医療における応用、癌を標的とする治療ベクターとしてより有用なウイルスベクターとなります。

2.改良ベクターの詳細

センダイウイルスベクターは、RNA ウイルスベクターであることから、搭載した遺伝子が染色体に組み込まれることがなく、遺伝毒性を生じる心配がありません。また、高い遺伝子導入および発現効率が得られることや培養細胞での長期持続発現を可能にすることもできるなど、いくつもの優れた性能を有しており、iPS 細胞などの多能性幹細胞の作製や遺伝子治療・遺伝子ワクチン、抗体産生、機能解析への応用など、遺伝子導入ベクターとして広く応用、利用されています。

ID ファーマでは、センダイウイルスベクターの遺伝子発現能力を維持しながら、より有用性を高めるために、ベクターの除去速度等をコントロールするための研究を進めておりました。この度、本特許技術の発明により、例えば以下のように目的に応じてベクターをコントロールすることが可能となります。

①iPS 細胞の作製・細胞分化や転写因子の発現調整などの速やかなベクター除去が必要な場合には、高い遺伝子発現能を保ちながらベクターの除去を促進する

②腫瘍細胞に腫瘍細胞を破壊する遺伝子を導入する場合やベクター自身に腫瘍細胞を破壊する効果を持たせた場合には、腫瘍細胞の中でベクターが増える(除去されない)ようにすることで、腫瘍を選択的に破壊することが期待できる

これにより、ID ファーマのセンダイウイルスベクターは、細胞治療・再生医療への応用や癌を標的とする治療ベクターへの活用など、さらに有用性の高いウイルスベクターとなっております。

なお、本特許技術は、ID ファーマが提供している iPS 細胞作製キット「CytoTuneEX®-iPS」などで使用しています。

3.特許査定の内容

名称
改良されたパラミクソウイルスベクター
国際出願番号(出願日)
PCT/JP2016/082821 (2016年11月4日)
特許権の存続期間
出願日から20 年
内容
本発明は、ベクターに搭載された遺伝子の一過的な高発現、および当該発現後のベクターの迅速な除去等を可能とする改良されたマイナス鎖RNA ウイルスベクターおよびその利用を提供することを課題とする。マイナス鎖RNAウイルスベクターが持つNP、P、または L 遺伝子にマイクロ RNA 標的配列を付加することにより、導入細胞が発現するマイクロRNA に依存してベクターの発現を制御することが可能であることを見出した。特に、NP、または P 遺伝子にマイクロRNA 標的配列を付加した場合は、マイクロ RNA に依存してベクターの発現は低下し、ベクターの除去も促進される一方、L 遺伝子に付加した場合は効果が逆転した。本発明ベクターは細胞治療や再生医療における応用や癌を標的とする治療用ベクターとして有用である。
特許査定が発行された国(査定日)
欧州(2021年10月19日付)、日本(2021年7月8日付)
審査中の国
米国、中国

4.業績に与える影響

本件による2022年3月期の業績への影響は軽微と見込んでおります。 ID ファーマでは、CytoTuneEX®-iPS を使用した研究開発等へのライセンス(実施許諾)を推進しており、特許権が確立することにより、今後、当期の業績予想に変更が生じる場合には、速やかにお知らせいたします。

以上

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