DICと日立、合成樹脂製造プラント運転自動化を図るデジタルツイン技術を実用化

2024/12/05  DIC 株式会社 

DICと日立、合成樹脂製造プラント運転自動化を図るデジタルツイン技術を実用化 -来年1月に本格稼働を開始、プロセス・インフォマティクスによりフロントラインワーカーの負荷軽減へ-

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2024年12月5日

#DX #デジタルトランスフォーメーション #スマート工場 #デジタルツイン技術

DICと日立が実用化した合成樹脂製造プラントにおけるデジタルツインのイメージ

DIC株式会社(以下、DIC)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、合成樹脂製造プラントの運転自動化を図るデジタルツイン技術として、プロセス・インフォマティクス*¹ を活用したシステム(以下、本システム)を実用化し、DICの国内プラントで来年1月から本格稼働します。両社は2021年から本システムの実プラントへの適用に向けて共同実証を行ってきました*²。その結果、製造工程における反応状態の予測および最適運転条件の探索技術を確立し、実用化に至りました。DICと日立は今後、本システムをDICの国内3拠点、海外1拠点へ展開していく予定です。

従来、プラントの現場では、サンプリングした製品の状態や品質を確認・監視しながら、熟練者がDCS*³ 操作値の補正や追加操作により反応を制御しています。本システムはAIなどを用いた反応予測モデルにより、サイバー空間上にプラントの運転状況を再現するとともに、プロセス・インフォマティクスの活用で、目標とする品質値に向けた調整タイミングや投入量を決めるための最適な運転条件を導き出し、それらをフィジカル空間(現場)にフィードバックすることを可能にしています。これにより、現場でのサンプリング確認回数の低減、品質の安定化、作業員の作業効率向上、新製品導入時の立ち上げ期間短縮に寄与し、フロントラインワーカーの負担軽減と生産性向上の実現に貢献します。

*¹プロセス・インフォマティクス: 統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により、製造条件を最適化する取り組み。
*² 2021年12月15日 DIC・日立 ニュースリリース「DICと日立、樹脂製造における次世代プラント実現に向け本格的な協創開始
*³ DCS(Distributed Control System):分散制御システム。

本システムの特長

● 合成樹脂の代表的な生産方法であるバッチ生産*⁴ に対応
● 目標とする品質値(粘度など)を得るための運転条件(調整タイミングや投入量など)を自動で算出し、「ヒートマップ(下図)」として作業員に明示し、バッチ生産に適切な運転条件を選択できるようになる
● 約20回のバッチ生産運転データのみで化学品製造に活用できるモデルの作成が可能*⁵
● システム画面に表示する粘度などの「品質予測カーブ」により、反応中の手動サンプリング分析操作を行うことなく、現在の製品品質、および将来の品質の推移と反応工程が終わるタイミングを確認可能
● 「品質予測カーブ」は反応終了時点(数時間後)までの品質を予測可能
● 過去の運転実績と比較する機能により、作業員が納得感をもって運転条件の確認を行うことが可能

<ヒートマップについて>
製造時の追加原料量(縦軸)と追加タイミング(横軸)の組合せにより、製品品質が所定の値に到達するための最短運転時間の予測結果を可視化。これにより、作業員は現状の予測結果から高い効果を見込める運転操作を選択可能です。また、色の濃淡は運転時間の差を表し、濃いほど短い時間となります。

最適運転条件の探索を支援するヒートマップの画面

*⁴ バッチ生産:原料投入・製造・製品取出しの工程を1回毎に実施する、少量多品種に適した生産方法。連続生産と対比して用いられる。
*⁵ 今回検証した製品でのモデル作成実績。

本取り組みの背景

一般的な合成樹脂のバッチ生産においては、製品品質を担保するために、反応工程の途中で人によるサンプリングや分析、反応進捗判断の作業を繰り返しながら、調整原料の投入を行います。反応工程中だけでなく、反応前工程の温度、圧力などの動向が製品品質に影響を与えるため、全工程にわたる運転状況の把握と考慮が不可欠です。そのため、作業は煩雑かつ属人的になる傾向があり、製品の品質検査合格率のばらつきといった課題もありました。

こうした中、DICと日立は2021年3月から合成樹脂製造プラントの運転自動化を図るデジタルツイン技術の実用化に向けた協創を開始し、第一フェーズとして、DICの国内3工場で製造される樹脂製品を対象に、「理論モデル」、「現場データ」、「AI解析」を組み合わせた反応予測モデルの構築と精度の検証を実施してきました。その結果、これまで熟練者の経験則で感覚的に認識していた反応影響因子を、定量的に把握できるようになり、業務の脱属人化を進めました。
反応予測モデルはDICにおけるバッチ生産の複数の製品群や連続生産*⁶ への適用検証を行っており、DICの国内外の樹脂製造全般への展開も見据えています。

*⁶ 連続生産:化学反応や工程を中断することなく、連続的に進行させ製品を連続して取り出す方法。エネルギー/時間の効率化などのメリットがある。

今後の展望

システムの本格稼働を皮切りに、DICはこれまでDIC社内で開発してきたAI技術の権利化*⁷ をより積極的に進めます。また、日立とともに、バッチ生産における巡回点検や原料の搬出入作業のロボティクス化、各システム間のデータ入力作業や生産計画立案の自動化など、高度な自動製造システムの実現をめざします。さらに、製造実行領域のみならず、サプライチェーンを含めた全体の最適化・効率化に向けた取り組みも検討していきます。

DICは、「長期経営計画 DIC Vision 2030」において、IoTの導入やAIを活用した製造現場の効率化とスマートな工場の実現をめざしています。自社工場内で適材適所を前提としたデジタル化を進め、販売先からの要望に応えながら、サプライチェーン全体で合理化を実現し、DICの生産力を新たな次元へ向上させていきます。

日立は、生産年齢人口の減少や社会課題の複雑化が進む中、製造現場のフロントラインワーカーの負荷軽減と生産性向上を喫緊の課題と捉えています。IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを併せ持つ強みと、幅広い製造業のお客さまとの協創を通じて得た豊富な知見・ノウハウ(ドメインナレッジ)を生かした日立のLumada*⁸ ソリューションにより、こうした課題を解決しています。今回のDICとの協創はその一環で、日立はLumadaソリューションである本システムを化学メーカー向けに広く展開していきます。

*⁷ 特許第7388606号(予測方法、情報処理装置、及びプログラム), 特許第7388607号(予測モデルの学習過程の評価を支援する方法、情報処理装置、及びプログラム)
*⁸ Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。

以上

- 日立製作所について
日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」という3セクターの事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。デジタル、グリーン、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。3セクターの2023年度(2024年3月期)売上収益は8兆5,643億円、2024年3月末時点で連結子会社は573社、全世界で約27万人の従業員を擁しています。
詳しくは、日立のウェブサイト( https://www.hitachi.co.jp/ )をご覧ください。

- DIC株式会社について
DICは日本で有数のファインケミカルメーカーです。DICを中心に世界全体でSun Chemical Corporationを含む約180の子会社によってグループが構成され、60を超える国と地域で事業を展開しています。グループ全体として、人々の生活に欠かせない包装材料 、テレビやPC等のディスプレイに代表される表示材料、スマートフォンなどのデジタル機器や自動車に使用される高機能材料を提供するグローバルリーディングカンパニーと認知されています。これらの製品を通じて、社会に安全・安心、彩り、快適を提供しています。DICグループは持続可能な社会を実現するため、社会変革に対応した製品や社会課題の解決に貢献する製品の開発にグループ一丸で取り組んでいます。連結売上高は1兆円を超え、世界全体で22,000名以上の従業員を有するなか、DICグループはグローバルで様々なお客様に寄り添っていきます。詳しくは、https://www.dic-global.com/ をご覧下さい。

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