新年のご挨拶 代表執行役社長 CEO 田村眞一

2022/01/01  そーせいグループ 株式会社 

2022 年 1 月 1 日

新年のご挨拶
代表執行役社長 CEO 田村眞一


明けましておめでとうございます。

Sosei Heptares を代表しまして新年のご挨拶を申し上げます。

2021 年のビジネスハイライトですが、先ず、大手製薬・バイオ企業との提携に関しては以下の通りです。

? 1 月にムスカリン作動薬プログラムのグローバルな研究開発権・販売権がアッヴィ社より返還されましたが、11 月にはニューロクライン社に再導出しました。1億米ドルの契約一時金と最大 26 億米ドルの開発・販売マイルストンは見かけ上2016 年のアラガン社(現アッヴィ社)との契約に及びませんが、実質的に受領できる確度を考慮するとずっと良い条件になっています。ロイヤリティ率もアラガン社との場合を上回っています。

? 5 月にはファイザー社との複数のターゲットを対象とした研究開発提携により見い出された 3 番目の新薬開発候補品の臨床試験が開始されました。

? 6 月にバイオヘイブン社と提携中の新規低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬の第Ⅰ相臨床試験が開始されました。SBDD プラットフォームにより創出された GPCR をターゲットとする新薬開発候補品で 10 個目の臨床試験入りとなります。

? 12 月には GPR35 受容体作動薬の開発進展により GSK 社からマイルストンを受領しました。

? 尚、11 月にはアデノシン A2a 拮抗薬 Imaradenant(AZD4635)がアストラゼネカ社の臨床パイプラインから外れましたが、返還された場合でもムスカリン作動薬や CGRP 拮抗薬での実績が示す通り、新たな提携先を確保する自信は十分にあります。

それ以外にも、以下のようなテクノロジー企業・ベンチャーファンドとの提携も達成しました。

? 1 月に AI 創薬で PharmEnable 社と提携しました。これまで創薬困難だったペプチド作動性 GPCR ターゲットに対する、新薬創出を目的とした提携です。

? 2 月にスピンオフ企業の Orexia・Inexia 社が新たに設立された Centessa Pharmaceuticals 社に統合され、その後 NASDAQ に上場しました。

? 同じく、2 月に SBDD アプローチを初めて GPCR 以外の膜タンパク質にまで応用する Metrion 社と提携しました。神経疾患に関連する一つのイオンチャネルに対し、新規かつ特異性の高いリード化合物の特定を目的とする創薬のための提携です。

? 3 月は Formosa Pharmaceuticals よりマイルストンを受領しました。譲渡済のAPP13007 について白内障手術後の眼内炎および疼痛患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験の開始によるものです。

? 7 月は AI 関連で InveniAI 社と提携しました。免疫疾患領域における GPCR を標的とした新規治療薬ターゲットを特定するとともに、SBDD を活用し、既存の免疫治療薬より反応性が改善された新規化合物を創出することを目指すものです。

? 12 月には GPCR をターゲットとした新規抗体医薬品の創薬に向けたツイスト社と提携しました。ツイスト社が保有する合成抗体ライブラリおよび高度なバイオインフォマティクスの専門知識と、StaR(R)技術を組み合わせることにより疾患に関連する GPCR に対する新規リード抗体の創出を目指します。

自社開発に関しては、12 月に COVID-19 治療のための低分子の経口抗ウイルス薬候補開発に向けた助成金をウェルカム財団から受領しました。これは、ウェルカム財団、ビル&メリンダ・ゲイツ 財団およびマスターカードが立ち上げた Covid-19Therapeutics Accelerator からの資金提供です。変異しにくい MPro を標的としているので既存・新規の変異株にも効果がある可能性があります。

水面下では、創薬の基礎技術に新たな構造解析ツールを取り込み、Cryo 電顕で複数個の GPCR の解析に成功しています。

7 月には海外募集による 2026 年満期ユーロ円建転換社債の発行により 298 億円の資金調達を実施しました。2020 年に実施した 2025 年満期の既発転換社債の買入に充てた残余資金は、既存の資金に上乗せし、主として補完的な役割を果たす企業若しくは技術の獲得・投資に充てる予定です。

この様に 2021 年度は数多くの実績を上げることができました。

コロナ禍はいつ収束するか分からない状態が続いています。各国の対応もまちまちで評価も一定しません。韓国、台湾、スウェーデン、ドイツなどの対策がそれぞれ別々の理由で高く評価された時期もありましたが一貫しませんでした。

コロナに限らず未知の事態に専門家と政治家が右往左往する不確実性の時代は当分続きそうですが、試行錯誤を繰り返して少しずつ改善していると思います。ホモサピエンスの科学技術は過去数千年で加速度的に進化しましたが、内面に巣食う獣性は制御されていないと考える識者は数多くいます。AI がいずれ我々の知性を凌駕する所謂シンギュラリティが到来した暁には、良心を備えた AI に任せれば良いという楽観論もありますが、期待通りに AI が進化しなかったら悲劇的な結末に至る可能性があると悲観視する向きもあります。

囲碁に勝利する等の特定の目標を与えた場合には驚くべき「個別知性」を発揮して、その能力は作曲・絵画等の芸術領域、更には昨今数学の定理証明にも及んで来ています。特定の目的が「紙クリップ」の大量生産であった場合には、人間を含めた全ての原材料が「紙クリップ」と化してしまうと言う馬鹿げた思考実験もあります。カリフォルニア大学バークレー校のスチュアート・ラッセル教授によれば、企業の至上目標が「ヒトとヒトを繋ぐ」と言う単純目標を掲げて世界を支配する様になったメタは既に歪な形で進化したシンギュラリティの一例だとしています。

本来あるべきシンギュラリティは、良心を持ったバランスの取れた目標を掲げた「総合知性」であるべきです。単純に株主利益だけの個別目標を追求する経営ではなく、出来るだけ多くの人々の幸福の増大に資する様な企業のあり方が問われています。本年も更に大きな実績を上げ続けるのは当然として、真摯に ESG に取り組み、益々存在意義のある会社に成長して参りたいと思います。

2022 年元旦
代表執行役社長 CEO
田村眞一

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