2023 年 10 月 17 日
株式会社レナサイエンス
当社 PAI-1 阻害薬の新規用途特許及び用法用量特許
(発明の名称:線溶系亢進薬、及びその用途)登録のお知らせ
この度、当社が出願しておりました用途特許及び用法用量特許について、下記のとおり日本において特許が登録されることになりましたのでお知らせします。
発明の名称 : 線溶系亢進薬、及びその用途
地域 : 日本
出願番号 : 特願 2021-556350
登録番号 : 未定
出願人 : 株式会社レナサイエンス
当社のプラスミノゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)阻害薬は、PAI-1 を阻害することで内因性の組織プラスミノーゲン活性化因子*1 を活性化して血液繊維素溶解系(線溶系)*2 を亢進します。PAI-1 阻害薬は、血栓性疾患に加えて、加齢に関連する疾患*3、急性呼吸窮迫症候群*4 といった肺疾患、さらに慢性骨髄性白血病*5 のようながんなど、様々な疾患の病態に関与しています。
本特許は、これら疾患における当社 PAI-1 阻害薬の医薬用途に関する発明を保護するのみならず、PAI-1 阻害薬の用法用量に関する発明を保護します。
当社はこれまでに日本、米国、欧州をはじめとした各国において、RS5614 を含む PAI-1阻害薬の特許(物質特許、用途特許を含む)を取得しています。本特許により、RS5614 を含む PAI-1 阻害薬の特許がさらに強化され、また特許期間の延長が可能となります。
なお、本件による業績への影響は現時点では特にありません。
以 上
*1 組織プラスミノーゲン活性化因子
蛋白質加水分解酵素の 1 種です。組織プラスミノーゲン活性化因子は、酵素前駆体であるプラスミノーゲンを活性化してプラスミンという蛋白質分解酵素に変換します。そして、プラスミンは血栓を形成するフィブリンを分解して血栓の溶解を促進します。
*2 血液線維素溶解系(線溶系)
血管が損傷したり組織が破壊されると、その部位からの血液の流出を阻止するために凝固系が働き血液が固まります。出血が止まり組織の修復が完了すると、できた血液の固まり(凝血塊)は、血液線維素溶解系(線溶系)の働きで速やかに溶解して取り除かれます。上記の組織プラスミノーゲン活性化因子やウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子がプラスミノーゲンを活性化し、生じたプラスミンが血栓を形成するフィブリンを分解します。
*3 加齢に関連する疾患
加齢とともに、がん、血管(動脈硬化)、肺(肺気腫、慢性閉塞性肺疾患)、代謝(糖尿病、肥満)、腎臓(慢性腎臓病)、骨・関節(骨粗鬆症、変形性関節症)、脳(脳血管障害、アルツハイマー病・認知症)など様々な疾患が発症します。これら疾患の組織ではPAI-1 の発現が極めて高く、当社は国内外の研究機関との共同研究で PAI-1 阻害薬によってこれらの病態が改善できることが示しました。
*4 急性呼吸窮迫症候群
敗血症(血液中に細菌などが入って増殖する状態)や肺炎などの経過中や、誤嚥(食べ物などを飲み込む時に誤って気道に入ってしまうこと)や多発外傷(体の複数の箇所に損傷を受けた状態)などの後に、急に息切れや呼吸困難が出現し、胸部の X 線写真で左右の肺に影(浸潤影)がみられる病態を言います。 動脈血液中の酸素分圧(PaO2)が低下し(低酸素血症)、 その程度に応じて、軽症・中等症・重症の急性呼吸窮迫症候群と呼ばれます。
*5 慢性骨髄性白血病
血液がんの一種である慢性骨髄性白血病は、血液細胞の元になる細胞(造血幹細胞)の遺伝子に異常が起こり、がん化した白血病細胞が無制限に増殖することで発症します。慢性骨髄性白血病はその原因となる細胞内蛋白質(チロシンキナーゼ)を阻害する抗がん剤(分子標的薬)により予後が大きく改善されました。しかし、この抗がん剤は慢性骨髄性白血病細胞には作用しますが、骨髄の中に休止期の状態で潜む慢性骨髄性白血病細胞の元になる細胞(慢性骨髄性白血病幹細胞)には作用しないことから、抗がん剤を休薬するとこの幹細胞が慢性骨髄性白血病細胞に変化して再発してしまいます。
骨髄に潜む造血幹細胞や慢性骨髄性白血病幹細胞を休止状態から活性化するためには線溶系の働きが必要であることが報告されました。当社は、東海大学と共同で、幹細胞が骨髄の中において休止期で潜むために PAI-1 が重要な役割を持っていること、またPAI-1 阻害薬が幹細胞を活性化して、慢性骨髄性白血病細胞への分化を促すことを発見しました。そこで、当社の PAI-1 阻害薬 RS5614 と抗がん剤を併用することで、慢性骨髄性白血病幹細胞を枯渇させて慢性骨髄性白血病の根治につながる可能性があります。
長期の RS5614 と抗がん剤併用の後期第Ⅱ相試験でこのコンセプトを証明しました。