プレスリリース
岩石蓄熱およびエネルギーマネジメント技術を用いたプラントの技術実証を推進するための連携に基本合意~再エネの導入拡大に伴う電力の需給ギャップ解消に貢献~
2024年11月13日
東芝エネルギーシステムズ株式会社
中部電力株式会社
新東海製紙株式会社
静岡県島田市
東芝エネルギーシステムズ株式会社(以下、「東芝ESS」)、中部電力株式会社(以下、「中部電力」)、新東海製紙株式会社(以下、「新東海製紙」)、静岡県島田市(以下、「島田市」)は、新東海製紙の島田工場(静岡県島田市)に岩石蓄熱およびエネルギーマネジメント技術を用いたプラント(以下、「岩石蓄熱エネマネ設備」)を設置し、技術実証を推進するための連携に基本合意しました。2024年11月25日に本連携に関する協定を締結する予定です。
東芝ESS、中部電力、新東海製紙は、2025年度末までに機器の製作を行い、2026年度に当該機器を用いた技術の実証試験(以下、「本技術実証試験」)を行います。島田市は地元自治体として、本技術実証試験を支援します。なお、本技術実証試験は環境省の令和6年度「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択されました。
電気は発電と消費が同時に行われるため、両者を常に一致させる必要があり、このバランスが崩れると、最悪の場合、停電が発生します。停電を防ぐために、国や電力広域的運営推進機関において定められた優先給電ルール(注1)に基づいて、自然変動電源(太陽光・風力)の出力が抑制されることがあります。近年、自然変動電源を中心とする再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の導入拡大に伴い、主に春や秋など、電力消費量が少ない時期における電力需給ギャップが拡大し、自然変動電源の出力抑制が増加していることが課題となっています。
この課題の解決に向け、余剰電力を岩石・溶融塩・コンクリートといった蓄熱材に熱エネルギーとして蓄え、必要な時に熱供給や発電することでエネルギーの安定供給や効率的利用を実現する技術(以下、「蓄熱エネルギー技術」)が注目されています。特に、今回実証試験を行う「岩石蓄熱技術」は、環境性・経済性・設備信頼性の観点で高い優位性が期待されています。
今後東芝ESS、中部電力、新東海製紙は、新東海製紙の島田工場において、国内初となるメガワット時(熱容量約10メガワット時(注2))級の岩石蓄熱エネマネ設備を設置し、本技術実証試験を行います。当該設備では、島田工場内の電力を利用して電気ヒーターを稼働させ、その熱を岩石蓄熱材で構成する蓄熱槽に貯蔵します。貯蔵した熱は、東芝ESSのエネルギーマネジメント技術を活用し、最適なタイミングで工場で熱のまま利用するほか、電力に変換して使用します。また、本技術実証試験では、余剰電力の活用に向けた岩石蓄熱エネマネ設備の運用性評価も行う予定です。
東芝ESSおよび中部電力は、蓄熱エネルギー技術として高い優位性が期待される岩石蓄熱技術に着目し、共同で研究を進めてきました。2022年には、熱容量約500キロワット時の岩石蓄熱システムの試験設備を開発し、株式会社東芝の横浜事業所内で、本格的な技術開発・実証試験を行いました。当該実証試験を通じて岩石蓄熱技術の蓄放熱に関する熱特性データを取得し、岩石蓄熱とエネルギーマネジメントを組み合わせたシステム設計において重要となる、蓄放熱予測手法を構築しました。
新東海製紙は、紙の製造時にバイオマスシステム燃料を使用するなど、脱炭素に向けた取り組みを進めています。このたび、工場内における電力の需要と供給バランスの課題解決のために蓄熱エネルギー技術が有効であると考え、本技術実証試験に参画することになりました。
島田市は、エネルギーを効率的に使える岩石蓄熱の技術実証を行うことに賛同し、岩石蓄熱エネマネ設備の島田市への導入を仮定し、市内のエネルギー収支・CO2削減効果に関する、エネルギーマネジメントのシミュレーション検証を実施します。
4者は、今回の連携に係る基本合意および本技術実証試験を通じて、再エネの導入拡大に伴い課題となっている電力の需給ギャップ解消に貢献すべく、岩石蓄熱技術の実用化に向けた取り組みを加速していきます。
(注1)発電量と消費量のバランスを一致させるために、消費量の変動などに応じて、稼働中の電源などに対する出力制御の条件や順番を定めたもの
(注2)約880世帯相当の1日分の電力使用量に相当、岩石蓄熱技術を用いたメガワット時級の設備は国内初(4者調べ)
各者の役割
東芝ESS |
技術実証における全体の取りまとめおよび岩石蓄熱エネマネ設備全般の設計・製作・施工・試運転 |
中部電力 |
岩石蓄熱エネマネ設備に用いる蓄熱槽の設計・施工、設備基礎の設計・施工、および市場調査 |
新東海製紙 |
岩石蓄熱エネマネ実証プラント設備の運用検証および既設工場動力設備改造の検討・施工 |
島田市 |
岩石蓄熱の島田市への導入を仮定した、市内のエネルギー収支・CO2削減効果に関する、エネルギーマネジメントのシミュレーション検証の実施 |
設備の機器構成イメージ
新東海製紙島田工場 外観写真
以上