2 0 2 3 年 4 月 7 日
東日本旅客鉄道株式会社
福島県沖地震に関する対策の方向性について ○ JR東日本では、東日本大震災や過去の地震被害を教訓とし、近い将来発生が懸念されている首都直下地震などの大規模な地震に備え、さまざまな取り組みを行ってきました。
○ 2022 年 3 月 16 日に発生した福島県沖地震を受けて、この 1 年の間、当社としても地震発生時の状況を分析し、今後の地震対策について検討を進めてきました。今回、その方向性をお知らせします。
○ 現在も運輸安全委員会や国土交通省の検証委員会が調査中であり、引き続き、その協力を行っていきます。
お客さまや列車を地震から守る大規模地震対策については、過去の地震被害を教訓に、以下の 3 点を柱として各種の対策に取り組んでいます。
・構造物が壊れないようにする ≪耐震補強対策≫
・走行中の列車を早く止める ≪列車緊急停止対策≫
・脱線後の被害を最小限にする ≪列車の線路からの逸脱防止対策≫
1.構造物が壊れないようにする≪耐震補強対策≫ 別紙-1
(1) 高架橋等
・高架橋柱や橋脚においては、耐震補強を実施した箇所については損傷が無く、効果を発揮しましたが、補強計画中の一部のラーメン橋台柱が損傷して桁の沈下が発生しました。
・この橋台は特徴的な構造形式・荷重条件を有しており、柱損傷時には桁が沈下、傾斜する可能性があることが分かりました。
・当社は、昨年度より同様の特徴を有するラーメン橋台に対して優先的に補強を行ってきたところでありますが、今後さらに前倒して補強を進めてまいります。
(2) 電柱
・今回の地震によって、コンクリート製電柱に損傷及び傾斜の被害が確認されましたが、以前より高じん性補強を施工した箇所と鋼管柱に建替えた箇所については、損傷や車体に支障するほど大きく傾斜した箇所はなく、耐震性能が発揮されました。
・このため電柱の耐震補強は、2021 年 7 月の公表の計画に基づき、高じん性補強の施工と鋼管柱建替えを引き続き進めてまいります。
・対策箇所については、地盤が揺れやすいなど地震の影響を受けやすい区間や運行頻度が高い区間など被害による影響の大きさ等、高い整備効果が得られる箇所を優先的に選定する予定です。
⇒高架橋等と電柱の耐震補強の全体計画についてはその詳細が決定次第、お知らせいたします。
2.走行中の列車を早く止める≪列車緊急停止対策≫ 別紙-2
・早期地震検知システムは、線路沿線や線路から離れた地点における地震計で観測される地震情報に基づき、停電をさせて非常ブレーキを動作させることにより、新幹線を停車させます。
・本システムでは地震動のはじめに観測する P 波と主要動である S 波それぞれを用いることにより、警報の早期化・多重化を図っています。
・本システムでは、緊急地震速報や海底地震計といった部外地震情報も活用しています。
・今回の地震では本システムが正常に動作し、主要動が線路に到達する前に新幹線が停車しました。
・今後とも、これまでに蓄積された地震情報に加えて今回の地震の知見を用いて、早期検知手法について弛まぬ改良を継続してまいります。
3.脱線後の被害を最小限にする≪列車の線路からの逸脱防止対策≫ 別紙-3、4
(1) 新幹線の脱線状況
・やまびこ 223 号は、非常ブレーキの動作から停止するまでの間に地震による若干の揺れがありましたが、その後、停止してすぐに地震による強い揺れがあり、全 68 軸中 60 軸が脱線しました。
・当初脱線した 60 軸のうち 50 軸が、L 型車両ガイド等がレールにかかる状態と発表しましたが、その後の調査で 48 軸が、L 型車両ガイド等がレールにかかっている状態であることが分かりました。
・多くの L 型車両ガイド等がレールにかかる状態であったものの、地震による左右の大きな揺れにより、レールを乗り越えたものが 12 軸あったことになります。
(2) 脱線時の車両挙動の推定
・脱線現場近傍の新白石き電区分所で観測された地表の揺れをもとに、脱線が発生した付近の構造物の揺れおよびそれに伴う車両挙動を概ね推定するシミュレーションを行いました。
・その結果から、地表での強い揺れの発生により、高架橋上で大きな揺れが生じて車体が揺れ、台車の片側を押し下げる力が働き、反対側の車輪が浮き上がった際に車体が線路に対して左右(線路直角方向)に移動し脱線したものと推定しています。
(3) 対策の方向性
・地震による脱線を完全に防ぐことは困難ですが、大きく逸脱することを防止するため、一部の箇所で逸脱防止効果を大きくするための改良を行うことや、車体の横揺れを和らげる効果が期待できる地震対策左右動ダンパ(新幹線試験車両 ALFA-X で試験中)の導入を検討してまいります。
・レール転倒防止装置についても引き続き、整備を進めてまいります。
構造物が壊れないようにする《耐震補強対策》
過去の地震を教訓に、高架橋柱・橋脚・駅舎・電柱等の耐震補強対策を順次実施しています。今後も福島県沖地震で分かった新たな知見を踏まえた耐震補強対策を進めていきます。
公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230407_ho01.pdf