安定同位体を利用した研究成果 「環境とライフスタイルに関連したヒトの身体における水の代謝回転量の変動」の米国科学誌「Science」掲載のお知らせ 【大陽日酸】

2022/12/02  日本酸素ホールディングス 株式会社 

2022年12月2日

安定同位体を利用した研究成果
「環境とライフスタイルに関連したヒトの身体における水の代謝回転量の変動」
の米国科学誌「Science」掲載のお知らせ

大陽日酸株式会社(社長:永田 研二)が長年協力してまいりました国際プロジェクト(IAEA Doubly Labelled Water Database)の研究成果が、米国科学振興協会で発行する科学誌「Science」に掲載されました(2022 年 11 月 25 日版)ので、お知らせいたします。

なお、本研究は、2021 年 8 月 13 日に Science 誌に掲載された論文『Daily energy expenditure through the human life course』(ヒトの加齢に伴う 1 日あたりのエネルギー消費量*1の変化)(著者:Pontzer H, Yamada Y, Sagayama H et al.)で用いられた国際二重標識水法データベースを活用した研究成果の続報となります。

(2021 年 8 月 20 日発表の当社リリース:『安定同位体を利用した研究成果「ヒトの加齢に伴う 1 日あたりのエネルギー消費量 の変化」の米国科学誌「Science」掲載のお知らせ』)



1.背景

ヒトの生命維持、体温調節、血液循環、身体活動には、水分が常に必要です。ヒトの体にどれだけの水分が含まれているか(体水分量)はかねてより分かっていましたが、ヒトの体にどれだけの水分が出入りしているか(水の代謝回転)については、
正確に把握することは困難でした。

そのような中、2014 年に国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市 理事長 中村祐輔)と大陽日酸で共同開催した国際ワークショップおよび Water-18O*2)製造プラント見学会を契機に、世界の研究者が協力し、ヒトの体水分量や総エネルギー消費量測定のゴールドスタンダードである二重標識水法*3)の測定値を一つのデータベースにまとめる国際プロジェクトが始まりました(chair: Professor John Speakman, University of Aberdeen/中国科学院)。

この度、医薬基盤・健康・栄養研究所身体活動研究部の山田陽介室長(博士)らは、世界の研究機関の研究者と共同で、23 カ国に住む生後 8 日の乳児から 96 歳の高齢者までの男女計 5604名について安定同位体を用いた調査を行い、ヒトの体の水の代謝回転量の変動要因について調査し、1 日に失う水分量を予測する式を世界で初めて明らかにしました。

今回の研究により、平均的な場合、乳児で体水分量の約 25%にあたる水分が、また、成人でも体水分量の約 10%にあたる水分がたったの 1 日で体外に失われることがわかりました。水の代謝回転量はこのように非常に速いことから、ヒトは水分が 3 日補給されないだけで生存が危うくなります。また、高温・多湿な環境や高地等の地理的環境、また、アスリート、妊産婦、筋肉量の多い人、身体活動レベルの高い人等、様々な要因が水の代謝回転量に影響を及ぼしていることが明らかになりました。

本研究成果*4)については、医薬基盤・健康・栄養研究所、早稲田大学、京都先端科学大学、筑波大学の合同プレスリリース(2022 年 11 月 25 日)をご参照ください。 (2022 年 11 月 25 日発表の合同プレスリリース『ヒトの体の水の代謝回転量を予測する式を世界で初めて発明 ~23 カ国 5604 人を対象とした国際共同調査の結果から~』)

2.当社の役割

当プロジェクトにおいて、当社は二重標識水法に必要とされる重水および酸素-18 安定同位体標識水(Water-18O)の提供、血液、尿、唾液といった生体サンプル中の安定同位体分析支援をしてまいりました。加えて、同手法を用いた安定同位体分析に関する講演、ワークショップなど、当プロジェクトの推進支援も国内外で行ってまいりました。

3.今後の展開

本研究の成果より、多様な環境下での脱水や熱中症の予防、さらには脱水に伴う腎臓や心臓の障害などの予防のために必要な水分摂取量の目安を明らかにできることが期待されます。さらに、国連によると、世界人口の約 3 分の1が、家庭で安全な飲料水が不足している状態にあると推測され、特に発展途上国において水不足の問題は顕著である中、本研究で得られた予測式は、各国における災害や有事の際の飲料水や食糧の確保の戦略立案や、世界における人口増加や気候の変動による水不足の予測モデル構築に役立つものと考えられます。

大陽日酸では、安定同位体の製造・分析技術を通じて、多岐にわたる分野で抱える様々な課題に対する革新的なソリューションの提供を継続し、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.tn-sanso.co.jp/jp/file_download.php?id=djjgACPBNAA%3D&fileid=kv%2FCKdxIxov7UyCNI%2BoIBkltfWbahhQzyF2SaaOLMkY%3D&link.pdf

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