日本初となる近視の進行抑制を目的とする点眼剤リジュセア(R)ミニ点眼液 0.025%(アトロピン硫酸塩点眼液)の国内における製造販売承認を取得

2024/12/27  参天製薬 株式会社 

2024年12月27日

日本初となる近視の進行抑制を目的とする点眼剤リジュセア(R)ミニ点眼液 0.025%アトロピン硫酸塩点眼液)の国内における製造販売承認を取得

参天製薬株式会社(本社:大阪市、以下Santen)は、近視の進行抑制を目的としたリジュセア(R)ミニ点眼液 0.025%(一般名:アトロピン硫酸塩水和物、開発コード:STN1012700 / DE-127、以下本剤)について、本日2024年12月27日付で国内における製造販売承認を取得しましたのでお知らせします。本剤は、日本で初めて製造販売承認を取得した近視進行抑制点眼剤です。なお、本剤は、薬価基準未収載医薬品として販売予定のため、健康保険等の公的医療保険の給付対象外となります。

近視とは、主に眼軸長が長くなることにより網膜の手前でピントが合ってしまい、遠くのものを見る時にうまくピントが合わせられずにぼやけて見える疾患です。近視は、体の成長とともに進行し、不可逆的であるため、患者さんのQuality of Life(生活の質:QOL)に影響をおよぼします1,2。また、近視が進行し強度近視になると、視力障害を伴う失明に至る可能性のある重度の合併症の発症リスクが増加すると報告されています3,4。低年齢であるほど年間進行量が大きいという特徴があり5、主に学齢期に進行することから6、この時期の進行抑制が重要と考えられています。一方、本邦において近視は、眼鏡やコンタクトレンズ等で矯正されるのが一般的で、近視の進行を抑制する目的で各種治療が行われている実態はあるものの、いずれも近視の進行抑制に係る承認はされていませんでした。そこでSantenは、日本初となる近視進行抑制を効能・効果とする承認薬の実現を目指し、本剤を開発しました。

1日1回就寝前に点眼する本剤は、近視進行抑制を目的として、Santenとシンガポールの国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュート(SERI)が共同開発した点眼剤で、アトロピン硫酸塩水和物を0.025%含有しています。アトロピンは、ムスカリン受容体の可逆的拮抗薬で、ムスカリン受容体の活性化を阻害することにより、網膜又は強膜に直接的もしくは間接的に作用し、強膜の菲薄化 (ひはくか) を阻害することで、眼軸の伸長を抑制する7と考えられています。本剤は、主に小児を対象に投与することから安全性を考慮し、防腐剤を含まない一回使い切りタイプのミニ点製剤です。

本剤の有効性については、国内で近視患者を対象に行われた第Ⅱ/Ⅲ相プラセボ対照二重遮蔽比較試験において、投与24ヵ月後における調節麻痺下他覚的等価球面度数の投与前からの変化量について、プラセボ群に対し優越性が検証されました。また、投与24ヵ月後における投与前からの眼軸長の変化量について、本剤群は、プラセボ群と比較して有意な差が認められました。以上のことから、本剤の近視進行抑制効果が認められました。なお、この有効性は3年間にわたり持続することが示されました。本試験における、主な副作用は、羞明9.0%(11/122例)でした。

近視は、患者数が2030年には世界人口の39.9%、2050年には49.8%に達する8と予想されています。日本においては、文部科学省が実施した学校保健統計調査で、裸眼視力1.0未満の者の割合は年々増加しており、2023年度調査では小学校で37.7%、中学校で60.9%、高等学校で67.8%という結果が示されています9。近年の近視の増加は、特に子供たちの屋外活動時間の減少と、読書、勉強、デジタル機器の使用等、近業作業(近くを長時間見る作業のこと)活動の増加が組み合わさったことによるライフスタイルの変化に起因すると考えられています3,4

Santenのチーフ メディカル オフィサーであるピーター・サルスティグは、次のように述べています。「近視人口の増加は、世界的にも日本国内においても大きな社会課題となっています。リジュセア(R)ミニ点眼液 0.025%の製造販売承認の取得は、近視の進行抑制を効能・効果として日本で初めて承認を受けた点眼剤治療となり、近視の医学的管理において非常に重要なマイルストーンと言えるでしょう。また、近視はSantenが本剤から新たに取り組む疾患領域であり、開発中の他のアトロピン点眼剤と合わせ、グローバルのピークセールス約600億円を見込んでいます。人々の目の健康を追求するSantenとして、日本を皮切りに世界中の近視患者さんに新たな治療方法を提供できるよう、引き続き注力してまいります」。

Santenは、世界の人々が「見る」を通じた幸せを実感できる社会の実現に向け、患者さんの治療に貢献できる新製品の創出を目指し、一人でも多くの患者さんのQOL向上に貢献してまいります。

近視について
目に入ってきた光線は、角膜と水晶体を通り、屈折して網膜に像が写し出されます。近視とは、無調節状態で目に入った光線が網膜より前で像を結ぶ状態を指し、眼球が前後方向に延びることが主な原因と考えられています。近視の程度は等価球面屈折異常の値(単位:ジオプトリー(D))で表され、日本近視学会による分類では、-0.5D以下を近視、-6.0D以下を強度近視と定義されています。

<参考文献>

  1. Han X et al, Curr Eye Res. 2023;48(12):1189-1194.
  2. Sankaridurg P et al, Invest Ophthalmol Vis Sci. 2021;62(5):2.
  3. Morgan IG et al, Lancet. 2012;379(9827):1739-48.
  4. Haarman A et al, Invest Ophthalmol Vis Sci. 2020;61(4):49.
  5. Sankaridurg PR et al, Eye (Lond). 2014;28(2):134-41.
  6. Takeuchi M et al, Sci Rep. 2022;12(1):2879.
  7. Upadhyay A et al, Eye Contact Lens 2020;46(3):129-135.
  8. Holden B et al, Ophthalmology 2016;123(5):1036-42.
  9. 文部科学省: 報道発表 令和5年度学校保健統計(確定値)の公表について.
    https://www.mext.go.jp/content/20241127-mxt_chousa02-000038854_1.pdf

Santenについて
Santenは、眼科領域に特化したスペシャリティ・カンパニーとして、世界中の患者さんや生活者、医療関係者の皆さまへの価値ある製品やサービスの提供を通じ、人々の「Happiness with Vision」の実現に貢献することを目指しています。創業以来、「天機に参与する」という基本理念の下、130年以上にわたり人々の目の健康維持・増進を追求してきました。現在、眼科領域における医薬品の研究開発、製造、販売・マーケティング活動をグローバルに展開し、世界60以上の国・地域で約5,000万人の人々の目の健康をサポートしています。私たちのミッションは、眼科領域における専門性と患者さん視点から創出される製品やサービスを通じて、目の病気の予防や診断、治療において今まで提供されていない重要な価値を患者さんや社会に提供し続けることです。一人でも多くの患者さんが幸せで豊かな人生を過ごすことができる未来を創り出すため、世界中の人々が「見る」を通じた幸せを実感できる社会の実現に向けて全力を尽くしています。
詳細については、当社ホームページhttps://www.santen.com/jaをご参照ください。

シンガポールアイリサーチインスティテュートについて
1997年に設立されたシンガポールアイリサーチインスティテュート(SERI)は、眼科領域および視力研究を目的としたシンガポールの国立研究所です。SERIのミッションは、失明や弱視、シンガポール人とアジア人に共通する主な眼病を予防する影響力の大きい眼科研究を実施することです。過去10年間、SERIは画期的な研究プロジェクトを実施し、具体的な成果と患者さんへのベネフィット、成功例を生み出し、シンガポール人やアジア人のみならず、世界規模で眼疾患の治療と予防の方法を大幅に改善する道を切り開いてきました。
SERIは1997年に設立された5名からなる創立チームから、臨床医科学者、基礎研究者、リサーチフェロー、博士課程の学生、サポートスタッフを含む249人以上の大きな組織に成長しました。SERIはシンガポールで最大の研究機関の一つであり、アジア太平洋地域で最大の眼科研究機関です。また、SERIは、シンガポールの様々な眼科研究所、生物医学研究所、および関連医療センターにおいて255人以上の非常勤教員を有しています。
SERIはこれまでに印象的な5,877本の科学論文を発表し、外部からの査読による助成金を獲得しています。2024年11月現在、SERIの教員は1,295以上の国内外の賞を受賞しており、188の特許を出願しています。シンガポール国立眼科センター(SNEC)の研究機関として、またシンガポール国立大学YongLooLin医学部およびデューク-NUS医科大学院の直属機関として、SERIはローカルの臨床眼科センターや生物医学研究機関、ならびに世界中の主要な眼科センターおよび研究機関と協力して視覚研究に取り組んでいます。SERIは、国民一人当たりの眼科論文発表数において、米国、英国、日本を大きく引き離し、世界第1位にランクされており、それらの実績により、SERIは地域的にも国際的にも著名な眼科研究機関と肩を並べる存在となっています。www.seri.com.sgをご参照ください。

-本件に関するお問い合わせ先-
参天製薬株式会社 コーポレート コミュニケーション
Email: communication@santen.com

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