アボット、国内初となる妊婦のトキソプラズマ感染時期を推定する検査薬で製造販売承認を取得

2024/10/21  アボットジャパン 合同会社 

~母子感染リスクを精査し、妊婦が安心して出産を迎えられるように~

・アボットは、日本大学、東京大学、福島県立医科大学、医療法人青山会 ミューズレディスクリニックおよび医療法人成和会 山口病院らとの共同研究により、妊婦のトキソプラズマ感染時期を推定するトキソプラズマIgGアビディティー検査薬「Toxo-IgG Avidity・アボット」の製造販売承認を取得しました。

・トキソプラズマ症は遍在寄生原虫による感染症で、妊婦が妊娠中に初めて感染した場合、胎児にも感染する可能性があります。本品は今後、国内の妊婦健診における選択肢として提供される予定です。

・本アビディティー検査薬は、現行の抗トキソプラズマ抗体検査で妊娠初期に感染が疑われた場合に追加検査として使用できます。アビディティー検査結果が高値であった場合は医師と相談の上、妊婦は分娩までの長期間に渡って投与される発症抑制薬(抗菌薬)の中止を検討することができます。

アボットジャパン合同会社(本社:東京都港区、代表執行役員社長:武知秀幸、以下「アボット」)は、日本大学、東京大学、福島県立医科大学、医療法人青山会 ミューズレディスクリニックおよび医療法人成和会 山口病院らとの共同研究(研究代表者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 森岡一朗教授)の結果に基づき、血液成分中のトキソプラズマIgG抗体アビディティー(IgG avidity)を検査する体外診断用医薬品「Toxo-IgG Avidity・アボット」(以下「本品」)について、2024年10 月10日に厚生労働省から製造販売承認を取得したことをお知らせいたします。

本成果は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業の「母子感染のリスク評価と先天性感染の新たな診断・予防法の研究開発」の支援ならびに成果活用によるものです。本研究は、国内の母子感染に関する実態調査および診断方法・診療体制の確立等を目的としています。

本品はアビディティーを検査することにより、トキソプラズマに感染した時期を推定するために開発された国内初の診断薬です。今後、妊婦健診における選択肢として国内販売ならびに保険収載を予定しています。

アビディティーとは抗原と抗体の結合力の総和のことであり、通常感染から時間が経つにつれて強くなっていきます。一般的にアビディティーが低値であれば、感染してから間もないということが確認できますが、本品はその原理をトキソプラズマ感染に応用したものです。本品によりアビディティー検査結果が高値であった場合、感染後4ヶ月以上経過したことを強く示します。

トキソプラズマ症は寄生原虫であるToxoplasma gondii(以下「トキソプラズマ原虫」)による感染症です。トキソプラズマ原虫は猫を最終宿主として哺乳類や鳥類の体内細胞に存在する微生物で、加熱不十分な食肉や飼い猫のトイレ掃除、園芸や砂場遊びによって感染することがあります。健康な人が感染しても多くは無症状ですが、後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)や癌化学療法などにより免疫力が落ちた状態では、脳炎などの重篤な症状を引き起こすことがあります。また、妊娠中の女性が初めてトキソプラズマ原虫に感染した場合は、胎盤を通じて胎児にも感染し、先天性トキソプラズマ症を発症する可能性があります。先天性トキソプラズマ症は死産や流産の原因となるだけでなく、出生時に視力障害や脳性麻痺等の様々な臓器障害を引き起こすことがあります。国内においては遅発型の発症例も含めて年間約130~1,300人の先天性感染児が発生していることが推定されています[1]。

周産期医療の現場では、先天性感染を減少させるために妊婦の初感染を疑う際には早期に発症抑制薬(抗菌薬であるスピラマイシン)を投与し、胎児への感染予防を行っています。しかしながら、妊婦の感染診断に用いられる従来の抗トキソプラズマ抗体検査だけでは感染時期の判断が困難であるという課題があり、初感染の可能性があると判断された妊婦に対しては分娩まで長期間に渡って投薬を続ける必要があります。一般的に、妊娠中の服薬に関しては多くの女性が不安を感じていることが報告されており[2]、医師から安全性について説明されていたとしても、妊婦の精神的負担が生じていると考えられます。

研究代表者である日本大学医学部小児科学系小児科学分野の森岡一朗教授は次のように述べています。「トキソプラズマIgG抗体アビディティー検査(以下「Avidity検査」)は、より高い精度で感染時期を推定することが可能となり、胎内感染リスクを見極めるための有効な検査法です。Avidity検査結果が高値であった場合、トキソプラズマ原虫に感染後4ヶ月以上経過したことを強く示すため、妊婦さんは医師と相談の上で発生抑制薬の投与中止を検討することができます。Avidity検査の有用性については、産婦人科診療ガイドライン産科編2023年版においても記載されており[3]、本検査の臨床導入が長年期待されていました。この度の薬事承認により、Avidity検査が追加されることで、先天性トキソプラズマ症の発症への不安を抱える母児を減らすことに大きく寄与すると考えられます。」

アボットジャパン合同会社の代表執行役員社長である武知秀幸は次のように述べています。「日本の少子高齢化が深刻さを増す中、妊娠中の女性やそのご家族が出産までの期間を安心して過ごし、授かった命が健やかに成長できる環境を整えることは、持続的社会の継続に向けた重要な課題です。アボットは、本品の迅速な発売と普及に向けて、今後も関係各位と協力して参ります。」


[1] トキソプラズマ妊娠管理マニュアル. 2023年12月1日(第6版)
[2] 高儀 佳代子. 医療薬学. 2011;37:111-117
[3] 日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン - 産科編 2023.

Toxo-IgG Avidity・アボットについて
本品は血清又は血漿中のトキソプラズマIgG抗体アビディティーの検出を使用目的とした体外診断用医薬品です。化学発光免疫測定法(CLIA法)を測定原理とする当社の自動分析装置ARCHITECTシリーズおよびAlinityシリーズで準備が整い次第発売いたします。

アボットについて
アボットは、人々が人生のあらゆるステージにおいて最高の人生を送ることができるようサポートをするグローバルヘルスケアリーダーです。業界をリードする診断薬・機器、医療機器、栄養剤、およびブランド ジェネリック医薬品分野の事業および製品を含め、人々の生活に大きな影響をもたらす画期的なアボットの技術は、ヘルスケアの広範な領域にわたっています。現在、世界160カ国以上で、約114,000人の社員が活動しています。

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