アストラゼネカのリアルワールドエビデンスとなるZORA研究、高カリウム血症の治療により、心腎疾患患者さんにおけるRAASi治療の維持向上の可能性を示す

2023/11/24  アストラゼネカ 株式会社 

アストラゼネカのリアルワールドエビデンスとなるZORA研究、高カリウム血症の治療により、心腎疾患患者さんにおけるRAASi治療の維持向上の可能性を示す

公開日 2023年 11月 24日

本資料はアストラゼネカ英国本社(AstraZeneca PLC)が2023年11月2日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。
※本プレスリリースはアストラゼネカ英国本社が発信した内容に、同研究報告より日本に関するデータを追加したものです。

新たな解析結果では、高カリウム血症を管理することで、管理しなかった患者さんと比較して
ガイドラインで推奨されているRAASi治療を維持できる確率が2倍以上(約2.5倍)に向上

本研究の別の解析では、RAASi治療を中止した腎疾患患者さんは
6カ月以内に末期腎不全に進行するリスクが73%増加

AstraZeneca PLC(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、高カリウム血症に対するロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)投与による、慢性腎臓病または心不全の患者さんにおけるレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬(RAASi)治療の維持の可能性に関するリアルワールドエビデンス研究となるZORA多国間観察研究(以下、本研究)の結果を2023年米国腎臓学会(ASN)にて発表しました1

本研究の解析から、高カリウム血症を治療し、症状を管理された患者さんは、管理されなかった患者さんと比較して、高カリウム血症の発症から6カ月後において、ガイドライン(*)で推奨されているRAASi治療を維持できる確率が約2.5倍となったことが示されました(OR 2.56;95% CI 1.92 – 3.41;P<0.0001)1。なお、この確率を国別にみると、米国、日本およびスペインでそれぞれ、2.02倍(1.65-2.46)、3.14倍(2.58-3.82)、2.83倍(1.46-5.46)でした1

本研究における別の解析では、高カリウム血症発症後6カ月以内に慢性腎臓病ステージ5として診断あるいは透析開始と定義した末期腎不全(ESKD)への進行リスクは、RAASi治療が維持された患者さんと比較し、RAASi治療が中止された患者さんでは73%増加、RAASiの投与量が減量された患者さんでは60%増加したことが示されました2。これらの結果は、高カリウム血症発症によるRAASi投与量の減量により、慢性腎臓病または心不全の患者さんにおける心腎イベントおよび死亡のリスクが増加することを示す過去のデータを補強するものです3,4

国別にみると、高カリウム血症発症後にRAASi治療を中止した患者さんにおけるESKDへの進行リスクはRAASi治療を維持した場合と比べて、米国では74%増加、日本では70%増加していました。なお、米国(24.8%)に比べて日本の対象患者さんでは慢性腎臓病ステージ4(62.6%)の割合が高かったという違いがありましたが、本研究により示されたRAASi治療が中止された患者さんにおけるESKDへの進行リスクは国によらず一貫していました2

UCLA Healthの腎臓内科主任であるAnjay Rastogi医学博士は次のように述べています。「高カリウム血症を積極的に管理することにより、ガイドライン(*)で推奨されているRAASi治療を最適用量で維持することができ、慢性腎臓病や心不全の患者さんの転帰を改善できることが、科学の進展により明らかになっています。しかし、本研究は、臨床現場で高カリウム血症発症後の心腎疾患患者さんに実際に起きていること、また、RAASiの減量や中止により重大な結果がもたらされ、転帰の悪化と死亡率の増加につながりうることについて直視すべき実態を提示しています」。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼バイオファーマビジネスユニットの責任者であるRuud Dobberは次のように述べています。「今回のデータは、高カリウム血症が適切に管理されなければ、RAASiの減量または中止によって、心血管疾患や腎疾患の転帰が悪化したり、死亡率が増加したりする可能性があるという過去に発表したエビデンスをさらに裏付けるものです。ロケルマは、このように、高カリウム血症というしばしば緊急処置を要することのある疾病負荷に対応するための重要な治療戦略となる可能性があります。アストラゼネカは、ガイドライン(*)で推奨されているRAASi治療を実施できるよう、また、より強力な心腎保護効果を患者さんにお届けできるよう、引き続き医療従事者と協力していきます」。

本RWE研究は、患者さんがRAASi治療を継続して受けるために、高カリウム血症の管理におけるガイドライン(*)遵守の向上が喫緊の課題であることを示しています。

* de Boer IH et al. KDIGO 2020 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease, Kidney Int. 2020;98(4S):S1–S115.

* KDIGO: Diabetes Work Group. KDIGO 2022 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease, Kidney Int. 2022;102(5S):S1–S127.

* McDonagh TA et al. 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure, Eur Heart J. 2021;42(36):3599–726.

※本プレスリリースは慢性腎臓病または心不全に関する治療の最新情報について客観的にご紹介するものであり、関連する各薬剤等の適正使用に言及するものではありません。

ロケルマの効能又は効果は、高カリウム血症です。本プレスリリースに記載の効能又は効果(適応症)については本邦で承認されている記載と異なる場合があります。そのため、本邦における本剤の効果又は効能および安全性等につきましては、最新の電子化された添付文書をご確認ください。

また、本プレスリリースに記載の内容は、国内におけるRAASiの承認内容と異なる記載が含まれる場合があります。本邦における承認状況については、最新の電子化された添付文書をご確認ください。

以上

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高カリウム血症について
高カリウム血症は、血中カリウム値の上昇を特徴とする、慢性となりうる疾患で、一般的には、血中カリウム濃度が5mmol/Lを超える場合と定義されます5,6。血中カリウム値が高い患者さんは、心停止を引き起こしうる不整脈という重大なリスクにさらされています7。世界中に、慢性腎臓病患者さんは約8億4,000万人、心不全患者さんは6,400万人いるとされ、これらの患者さんにおける高カリウム血症発症リスクは2~3倍高いと推定されています8-11。RAASi治療は、慢性腎臓病の進行を遅らせ、心血管イベントを低減させるためにガイドラインで推奨されていますが、高カリウム血症と診断されると、RAASiの投与量が減らされる、あるいは中止されることがあります12-15。これは患者さんの転帰に影響を与えることが示されており、RAASiの最大投与量で治療を受けている患者さんと比較して、RAASi投与量が漸減または中止された慢性腎臓病および心不全患者さんの死亡率は約2倍でした16

ZORA研究について
ZORA研究は、現行の高カリウム血症管理およびその臨床的影響について検証している世界規模のリアルワールドエビデンス(RWE)プログラムです。ZORA研究「高カリウム血症発症後におけるジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC)によるRAASi治療継続に関する研究」では、高カリウム血症発症後にRAASi治療を受けた慢性腎臓病および/または心不全の患者さんを特定するために、健康登録簿および医療機関の診療記録を使用しました1。SZC投与コホートには、同剤の投与を120日以上受けた患者さん565人(米国)、776人(日本)、56人(スペイン)が組み入れられ、カリウム吸着薬なしコホートは、カリウム吸着薬の処方を受けなかった患者さん2,068人(米国)、2,629人(日本)、203人(スペイン)が組み入れられました1。SZC投与コホートとカリウム吸着薬なしコホートのベースライン特性のバランスを取るため、傾向スコア(PS)マッチングを適用しました。2つ目のZORA研究「高カリウム血症を発症した慢性腎臓病患者さんにおけるRAASiの減量とESKDへの進行との関連性」では、慢性腎臓病ステージ3または4で、ベースライン時にRAASiを使用しており、高カリウム血症を発症した患者さん11,873人(米国)および1,427人(日本)が組み入れられました2。高カリウム血症発症の前後3カ月におけるRAASiの処方状況の比較に基づき、患者さんはRASSi減量群、中止群、維持群に分類されました2

ロケルマについて
ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)は、カリウムイオンを減少させるとともに、持続的にコントロールすることができる高カリウム血症治療薬です17。本剤は、慢性血液透析患者さん(透析を行わない日のみ投与可)を含む成人の高カリウム血症治療を適応としています18。本剤は、不溶性かつ非吸収性のジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物で、選択性の高いカリウム吸着薬として作用する経口懸濁用の粉末製剤です18。また、経口投与で用いられ、無味無臭で室温保存が可能です18-19。本剤は米国、EU、日本をはじめとする50カ国以上で承認されています20。なお、本剤は、効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しないこととなっています。

アストラゼネカの循環器・腎・代謝(CVRM)領域について
バイオファーマ領域の一部である循環器・腎・代謝(CVRM)は、アストラゼネカの主要治療領域の一つであり、当社にとって重要な成長ドライバーです。心臓、腎臓、肝臓、膵臓などの臓器の基本的な関連性をより明確に解明するサイエンスを追求し、疾患進行の抑制や防止、さらに最終的には再生療法への道を拓くことで臓器保護をもたらす医薬品のポートフォリオに投資をしています。また、当社は、CVRM疾患の相互関連への理解を深め、疾患を引き起こす機序を標的とし、より早期に、より効果的な検知、診断、治療を実現することによって、世界の何百万人もの患者さんの転帰を改善し、命を救うことを目指しています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.comまたは、ソーシャルメディア@AstraZenecaをフォローしてご覧ください。

References

  1. Rastogi A, et al. ZORA: Maintained RAASi Therapy with Sodium Zirconium Cyclosilicate Following a Hyperkalaemia Episode: A Multi-Country Cohort Study, presented at American Society of Nephrology Kidney Week, 1-5th November 2023, Philadelphia, PA, USA
  2. Rastogi A, et al. ZORA: Association between reduced RAASi therapy and progression to ESKD in hyperkalaemic CKD patients, presented at American Society of Nephrology Kidney Week, 1-5th November 2023, Philadelphia, PA, USA
  3. Kanda E, et al. Clinical impact of suboptimal RAASi therapy following an episode of hyperkalemia. BMC Nephrol. 2023. doi: 10.1186/s12882-022-03054-5.
  4. Epstein M, et al. Hyperkalemia constitutes a constraint for implementing renin-angiotensin-aldosterone inhibition: the widening gap between mandated treatment guidelines and the real-world clinical arena. Kidney Int Suppl (2011). 2016 Apr;6(1):20-28. doi: 10.1016/j.kisu.2016.01.004. Epub 2016 Mar 14.
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  6. Kovesdy CP, et al.Management of hyperkalaemia in chronic kidney disease. Nat Rev Nephrol. Nov 2014;10:653-662
  7. Kovesdy CP, et al. Serum and Dialysate Potassium Concentrations and Survival in Hemodialysis Patients. Clin J Am Soc Nephrol. 2007:2:999-1007.
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  12. McDonagh TA ,et al. 2021 ESC guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021;42(36):3599-3726.
  13. Heidenreich PA, Bozkurt B, Aguilar D, et al. 2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2022;79(17):e263-e421.
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  17. Kosiborod M, et al. Effect of sodium zirconium cyclosilicate on potassium lowering for 28 days among outpatients with hyperkalemia: the HARMONIZE randomized clinical trial [article and protocol]. JAMA. 2014;312:2223-2233.
  18. European Medicines Agency [Internet] Lokelma (sodium zirconium cyclosilicate). Summary of Product Characteristics; [cited 12 Oct 2023]. Available at: URL: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/lokelma-epar-product-information_en.pdf
  19. Lokelma(R) (sodium zirconium cyclosilicate) for oral suspension [Internet]. US prescribing information. Wilmington (DE): AstraZeneca Pharmaceuticals LP; [cited 12 Oct 2023]. Available from: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2020/207078s003lbl.pdf
  20. AstraZeneca. Data on file. [REF-198643]

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