高浜発電所4号機の原子炉自動停止について(「PR中性子束急減トリップ」警報発信に係る原子炉施設故障等報告書の提出)

2023/03/07  関西電力 株式会社 

2023年3月7日
関西電力株式会社

高浜発電所4号機の原子炉自動停止について
(「PR中性子束急減トリップ」警報発信に係る原子炉施設故障等報告書の提出)


高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉)は、定格熱出力一定運転中、1月30日15時21分、「PR中性子束急減トリップ」の警報※1が発信し、原子炉が自動停止しました。

警報発信の要因として、制御棒の挿入、炉心状態の急変もしくは中性子検出器の不具合などが考えられるため、事象発生前後のプラントパラメータの調査や中性子検出器、制御棒駆動装置の点検等を実施しました。

その結果、プラントパラメータや検出器に異常はなく、制御棒が実際に挿入されたことにより、検出器の指示値が大きく低下し、警報発信に至った可能性があると推定しました。

その後、調査の過程で、制御棒駆動装置の点検として制御棒(48本)の引き抜き、挿入操作※2を行いましたが、動作性に異常は認められませんでした。このため、詳細点検として、制御棒駆動装置制御盤の構成部品を工場で調査するとともに、制御棒駆動装置制御盤を通電した状態での各部(制御回路や各ケーブル)の電流値の連続測定(モニタリング)等を行い、データの解析等を実施することとしました。

なお、環境への放射能の影響はありません。

※1 原子炉の周囲には、運転中の中性子を測定する検出器が4つ設置されている。

中性子検出に異常があった場合、警報が発信する。

※2 制御棒は、上部で制御棒駆動軸と連結されており、駆動軸を動作させるために可動用と保持用のラッチ(爪)があり、ラッチにはコイルが取り付けられており、このコイルに通電することでラッチが駆動軸をつかむ状態となる。

(2023年1月30日、2月15日お知らせ済み)

当社は、調査結果や原因と対策を取りまとめ、本日、原子力規制委員会に原子炉施設故障等報告書を提出しました。

今後、原子力規制委員会が当該報告書の確認を行うことから、当社は、真摯に対応してまいります。

1.警報発信の要因に係る調査結果

(1)プラントパラメータ等の確認結果

2022年12月1日に第24回定期検査を終了し、1月30日に原子炉が自動停止するまで定格熱出力一定運転を継続していました。この間の1次冷却材系統の温度、圧力などプラントパラメータの履歴等を確認した結果、異常はありませんでした。

また、警報発信の要因として、1次冷却材系統のほう素濃度の過度の濃縮や主給水、主蒸気流量の異常急減などが考えられることから、それらのパラメータの履歴等を調査した結果、異常はありませんでした。

その他、当直員および保修課員に聞き取りを行った結果、警報発信前に関連する運転操作等は行っていないことを確認しました。

(2)中性子検出器等の点検結果

中性子検出器4つのうち、2つ以上の検出器の中性子束指示が低下すると警報が発信します。警報発信の要因として、中性子検出器の不具合も考えられるため、4つの中性子検出器を点検した結果、異常はありませんでした。

また、警報発信時の指示値を確認した結果、制御棒が実際に挿入されたことにより、4つのうち2つの中性子検出器の指示値が大きく低下し、警報発信に至った可能性があることを確認しました。

その他、誤信号の検出の有無について確認するため、原子炉安全保護盤、原子炉保護系計器ラック※3の健全性を確認した結果、異常はありませんでした。

※3 原子炉トリップ信号によって、原子炉の自動停止を行う設備。

(3)制御棒駆動装置の点検作業実績等

「PR中性子束急減トリップ」警報が発信する前の1月25日、29日に「CRDM重故障」の警報※4が発信したため、制御棒駆動装置制御盤の点検を行いましたが、制御棒駆動部のコイルに供給する電流値に異常は認められませんでした。

1月30日0時12分に再度、「CRDM重故障」警報が発信したため、コイルに供給する電流値を測定したところ、1本の制御棒(D6)の可動ラッチのコイルに供給する電流値が通常よりも低いことを確認しました。

このため、制御棒駆動装置の制御盤内の詳細点検を行うこととし、異常を確認した1本(D6)を含む4本の制御棒(D6、F12、M10、K4)※5について、保持ラッチのコイルの通電を継続し、制御棒を保持した状態で、同日15時18分に、可動ラッチのコイルの主電源を切り、15時21分に、制御電源を切りました。

その後、「PR中性子束急減トリップ」警報が発信し、原子炉が自動停止しました。

※4 CRDM(制御棒駆動装置)重故障警報は制御棒を電磁力で保持している保持コイルおよび可動コイルのうち、いずれかまたは両方で電流の異常(低下)を検知するなど、駆動装置の不調を検知した場合に発信する。

※5 電流制御装置により、制御棒は4本単位で制御している。

2.制御棒駆動装置の詳細点検結果

制御棒駆動装置の駆動部については、毎月1回、制御棒作動試験を実施しており、至近の試験(2023年1月17日)で異常は認められておらず、調査の過程でも制御棒の引き抜き、挿入操作を行い動作性に異常はないことなどから駆動部の機械的要因によるものではないことを確認しました。

このため、保持ラッチのコイルへの通電により、制御棒が原子炉上部で保持されていたにも関わらず、原子炉内に挿入された可能性が高いことから、制御棒駆動装置の電気的な故障によるものと推定しました。その後、2月1日、「PR中性子束急減トリップ」警報発信前に実施していた操作(保持ラッチのコイルの通電を継続し、制御棒を保持した状態で、可動ラッチのコイルの主電源を切とした状態)の再現性確認試験を実施しましたが、制御棒の挿入等の異常は認められなかったことから、制御棒駆動装置制御盤を通電した状態での各部(制御回路や各ケーブル)の電流値の連続測定(モニタリング)等を行い、データの解析等を実施しました。

(1)制御棒駆動装置制御盤の構成部品の工場調査

制御棒駆動装置制御盤の構成部品(ダイオード、ヒューズ等)について、電流の入出力試験等を実施した結果、異常は認められませんでした。

(2)制御棒駆動装置制御盤から制御棒駆動部(コイル)までの点検

制御棒駆動装置制御盤の構成部品を予備品に取り替え、健全性を確認した後、当該制御盤に通電した状態で、当該制御盤からコイルまでの電流値の連続測定(モニタリング)を行っていたところ、2月12日、「CRDM重故障」警報が発信し、4本の制御棒(D6、F12、M10、K4)のうち、1本の制御棒(D6)の可動ラッチのコイルに供給する電流値が通常よりも低いことを確認しました。

これらのことから、「CRDM重故障」警報発信の原因は、制御盤の出口からコイルまでの電気回路にあると推定しました。

その後、制御盤を切り離した上で、制御盤の出口からコイルまでの電気回路の電流値のモニタリングを継続していたところ、3本の制御棒(D6、M10、K4)に繋がる電気ケーブル※64本(D6の可動ラッチコイル用、M10の可動および保持ラッチコイル用、K4の保持ラッチコイル用)の電流波形に一時的な電流の低下が認められました。その一時的な電流低下が発生した箇所は、原子炉格納容器貫通部の端子箱の間であることを確認しました。

なお、原子炉格納容器貫通部の端子箱の間の区間以外の設備や他の制御棒の45本については、2月20日から電流値のモニタリングを実施していますが、異常は認められていません。

※6 制御棒1本に対して電気ケーブル6本が接続されており、3本の制御棒(D

6、M10、K4)で計18本ある。

(3)原子炉格納容器貫通部の端子箱間の点検

端子箱の内部を点検した結果、原子炉格納容器貫通部出口(格納 容器内側)と端子台の間の貫通部出口側電気ケーブル上にコイル側へ向かう電気ケーブル(コイル側電気ケーブル)束が覆いかぶさっていることを確認しました。

さらに、詳細に調査した結果、3本の制御棒(D6、M10、K4)に繋がる貫通部出口側電気ケーブルのうち、3本(D6の可動ラッチコイル用、M10の保持ラッチコイル用、K4の保持ラッチコイル用)は、覆いかぶさったコイル側電気ケーブル束と接しており、その荷重を受けやすい状況となっていました。

また、貫通部出口側電気ケーブルの抵抗値を測定した結果、4本の電気ケーブルの抵抗値※7が高いことを確認しました。

これらのことから、貫通部出口側電気ケーブルが、コイル側電気ケーブル束の荷重を受けることで、原子炉格納容器貫通部内から引き抜かれる方向に力が働き、貫通部内の接続部において接触不良が発生したものと推定しました。

なお、他の原子炉格納容器貫通部の端子箱の内部点検を実施した結果、ケーブル束が覆いかぶさっていないことを確認しました。

※7 抵抗値が高くなると電流値が低下する。

3.挿入された制御棒の特定に係る調査結果

原子炉周囲には、円周上に4つの中性子検出器が等間隔(90度毎)で配置されています。「PR中性子束急減トリップ」警報発信前の中性子検出器の指示値の動きを確認したところ、まず、1つの検出器(N 44)が反応し、他の3つの検出器の指示値に比べて大きく低下していることを確認しました。

これらのことから、検出器(N44)近傍の制御棒が挿入された可能性が高いと推定しました。

また、「CRDM重故障」警報発信の原因と推定される制御棒4本(D6、F12、M10、K4)を対象に、制御棒挿入に伴う中性子検出器の指示値の解析(シミュレーション)を実施した結果、制御棒1本(M10)が挿入された場合、今回と同様の傾向を示すことを確認しました。このため、「PR中性子束急減トリップ」警報発信直前に制御棒1本(M10)が挿入されたものと推定しました。

4.その他

今回の原子炉自動停止事象に係る原因調査の中で、2月5日に制御棒駆動装置制御盤の一部の電源を「切」状態から「入」に切り替えたところ、本来作動すべき制御棒とは別の2本(作動すべき制御棒と同じ制御盤から通電され、電源「入」の状態)が部分挿入し、その後の追加試験でも再発しましたが、本事象は、制御棒駆動装置の制御盤の主電源を入れた際に、ラッチコイルの電流が瞬間的に喪失することで発生する事象であり、設備の異常ではないこと、また、今回の原子炉停止事象とは関連がないことを確認しました。

5.推定原因

原子炉が自動停止した「PR中性子束急減トリップ」警報発信の原因は、点検のために可動ラッチのコイルの電源を切り、保持ラッチのみで制御棒を保持していたところ、原子炉格納容器貫通部内で接続している電気ケーブルに接触不良が発生したことにより、制御棒駆動部のコイルに供給する電流値が低下し、保持ラッチが開放され、制御棒1本(M 10)が挿入されたためと推定しました。

その結果、中性子検出器の指示値が中性子急減トリップの設定値に至ったため、原子炉が自動停止したものと推定しました。

また、電気ケーブルの接触不良の原因は、原子炉格納容器貫通部出口(格納容器内側)と端子台の間において、貫通部出口側電気ケーブルに、コイル側電気ケーブルが覆いかぶさっていたことにより、原子炉格納容器貫通部内から引き抜かれる方向に力が働いていたためと推定しました。

6.対策

・3本の制御棒(D6、M10、K4)の原子炉格納容器貫通部の端子箱(原子炉格納容器外側)から同貫通部の端子箱(原子炉格納容器内側)までの電路について、電流低下が認められた電気ケーブルを介さずに、予備用として敷設されている他の原子炉格納容器貫通部のルートに変更します。

・今回の事象を踏まえ、原子炉格納容器貫通部のケーブルに関する点検・保守方法や、ケーブル敷設時の注意事項を社内マニュアルに反映します。

以 上

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230307_1j.pdf

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